「ここはポッケ農場にゃ!」
「色々な鉱石や素材が手に入るんだよ」
集会所から村の反対側。勾配の多いポッケ村では比較的平坦な場所を利用して、農場が開拓されていた。
「ニャニャ! 初めて見るハンターさんだニャ!」
入り口付近にいたアイルーが、五人の元へと駆け寄ってきた。
「ボクはこの農場の管理をしてるんだニャ。分からない事があったら、何でも聞いて欲しいニャ」
「よろしくね〜」
農場のアイルーと凛と花陽に案内され、農場の設備を見て回る三人。
「なるほど、畑では植物が栽培できるんですね。“薬草”を植えておくといいかもしれません」
「こっちの草むらで虫が獲れるのかぁ。武器の素材によく使われるし、なるべく集めておかないと!」
「この壁、鉱石が沢山あるんだね〜。ピッケルも貸してくれるなんて優しい〜」
一通り農場を見学した三人は、入り口まで戻る。
「なるほど。クエストでフィールドに出る以外にも、ここで素材を集められるという事ですか。うまく活用していきたいですね」
「ハンターさん達の頑張り次第では、より良い施設を開発できるかもしれないニャ。頑張って欲しいニャ」
「よーし、じゃあ早速、クエストに行こう!」
「はいはーい! 凛も行くよー!」
「せっかくだから、一緒に行こっか!」
「面白そうにゃ!」
「……凛からは、穂乃果と同じ匂いを感じます。あの二人だけでクエストに行かせるのは心配なので、私も同行します」
「大丈夫だと思うけどなぁ……」
はしゃぐ二人に小言を入れながら、海未は歩き出す。
「えっと……」
取り残された花陽に、
「じゃあ、花陽ちゃんは私とだね〜」
ことりが横に並んで微笑んだ。
「あ、よ、よろしくね、ことり……ちゃん?」
「うん♪ よろしくね♪」
同じ頃。
「クエェェア!」
大きなクチバシと首を一周するほどの大きな耳を持ったモンスターと、二人のハンターが対峙していた。
一人は自分の頭の倍近くある鉄製のハンマーを構え、
「ほいっ!」
こちらに向き直ったモンスターの頭めがけて、まっすぐ振り下ろした。
「クエェアッ⁉︎」
頭を揺さぶられて限界が来たのか、モンスターは脳震盪を起こして倒れもがく。
「チャンスね」
もう一人は、こちらも鉄製の太刀を両手で構えると、大きく振りかぶり右に斬りはらい左に斬りはらい、左右から逆袈裟に切り上げると全力で振り下ろした。
めまいから復活したモンスターの反撃を警戒して、太刀を左から右へ大きく斬り払うとバックステップで距離を取る。
「まだまだチャンスやん?」
ハンマーを持った一人が、入れ替わるように懐へ潜り込むと回転しながらモンスターの脚を殴りつけ、
「……そうね!」
もう一人が太刀を斬り上げ斬り下ろす。そしてとどめと言わんばかりにモンスターの翼目掛けて鋭い突きを繰り出した。
「クエァ……」
その一撃で体力が限界に達したのか、モンスターは力なく倒れると小さく土煙を上げた。
「相変わらず、的確な攻撃するやんなぁ」
「あら、それはお互い様じゃないかしら?」
余裕を見せたままの二人は、仲良く談笑しながら空に浮かぶギルドの気球に手を振った。
「──イヤンクックの討伐?」
「はい。近隣住民から、農作物の収穫に支障が出ると依頼が入ってるようです」
海未はクエストの依頼書を手に取った。
「場所は、シルクォーレの森とシルトン丘陵……ですか」
「それってどこにゃ?」
「高低差のある丘陵地帯と、鬱蒼とした木々で覆われた狩猟場所です。私も行った事はありませんが……モンスターを見失いやすいと聞きます」
「へー。じゃあ、ペイントボールが必要かもね!」
「そうですね。ハンターの基本です」
ドヤ顔で放った穂乃果の一言は、海未の一言に一蹴される。
「……念の為訊いておきますが、穂乃果、凛。イヤンクックの知識は持っていますね?」
「え? そりゃあ〜……ねえ?」
「ももも勿論にゃ」
分かりやすいほどに目を逸らした二人。海未は小さく肩を落とす。
「……だと思いました。狩場に着くまでに、私のレクチャーを受けてもらいますからね」
「「はーい」」
逆らえる訳もなく。穂乃果と凛は渋々返事をした。
「穂乃果ちゃん達は、クエスト決まったみたいだね〜」
「えっと私達はどうしよう……」
花陽は、自分の実力は把握しているつもりだった。それ故に、自信を持って選べるクエストが見つからないのだ。
「私達は、これにしよっか〜」
そう言ってことりが見せてきたクエストは、
「えっ、素材ツアー……?」
狩場にある素材を集めるハンターの為に用意された、特に狩猟対象のモンスターもいない安全なクエストだった。
「これで……いいの?」
「うん。私は武器新調したばっかりで鉱石とか少なくなっちゃったから、集めておきたいんだ〜。それに、無理してモンスター狩る必要もないもんね〜」
見透かされていた、と花陽は自分の意気地のなさを少し悔やむ。
「──お、ことりちゃん達もクエスト決まったの?」
準備を終えたらしい穂乃果が、二人へ駆け寄ってきた。
「素材ツアー?」
穂乃果も、意外そうな声を上げる。
「花陽ちゃんとのんびり、素材集めようって思って。穂乃果ちゃん達は、イヤンクック? 頑張ってね〜」
「うん! 穂乃果がビシッと倒してくるから、期待しててよ!」
穂乃果はグッと拳を握ると、集会所の出口へと歩いていく。
「凄いなぁ……私もあのくらい自信持てたらなぁ……」
その背中を見ながら、花陽はポツリと呟く。それを側で聞いたことりは、
「ハンターになるだけで、凄い事だよ♪ それに花陽ちゃんは、この村を守りたかったんでしょ? 花陽ちゃんだって充分凄いよ」
「そうなのかな……。私は、凛ちゃんにやろって言われてハンターになっただけで……」
「大丈夫だよ。きっと花陽ちゃんにも、ハンターになって良かったって思う時が来るから♪」
「そうだと、いいな……」
「さ、行こ、花陽ちゃん。早くしないと、穂乃果ちゃん達行っちゃうよ」
「う、うん!」
差し出されたことりの手を取った花陽は、おっかなびっくり歩き出した。