宿毛泊地提督の航海日誌 春イベ編   作:謎のks

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お待たせしました。e5編でございます。

はたして、北方を守りきることができるのか?
そしてヴェルちゃんの話とは…?

それでは、どうぞ!


宿毛泊地提督の航海日誌 春イベ編 E-5

―聞かせたいことがあるんだ、君に。

 多分、これからの事と関係があるから…でも、難しいな…

 色々な出来事があった…辛いこと、悲しいこと、もちろん嬉しいことも。

 私自身「語ること」は苦手だ…。

 だから―

 

  少しだけ長い話になることを、許してほしい…。

 

 

 

 

 

白く、白く、只々白い地獄がそこにあった…。

 

暖かい日差し、温かな風、汗さえ気持ちのいい南国。

…この国は、それらとは全て真逆の環境。全てが極寒だった。

不凍の地を求めて侵し進む彼の地…私が赴いたのは、そんな生き地獄の背景だった。

 

 敗北

 

 絶望

 

 負の螺旋

 

  私が感じた感情

 

それらは全て、その国と皮肉にもマッチングしていた。…私がここへ来たのも、運命だったのかもしれない…。

 

そんな時だった…彼女が語り掛けてきたような気がしたのは…「気がする」というのは、語ることはない私たちの感覚としての受信だったから。

 

彼女は―

 

 

『これはまたちっこいのが来たな?』

 

と鼻で笑いながら…プライドは高そうだ、と一目で解った。

 

『…ああ、気に障ったのなら謝る。…我が祖国へようこそ、異国のモノよ。』

 

彼女はこの後も、まるで独り言を呟くように私に語り掛けてきた…。

この国は寒いだろう?とか、それでも皆ココロの暖かい連中ばかりだ。とか…

日本にもいつか行ってみたい…と、ここで私ははじめて彼女にキャッチしたボールを返した。

 

『…キミは誰?…私に何を期待してるの?』

『…私はただの老朽艦だ。なに、少しばかり昔語りの話し相手が欲しかっただけだ。』

 

それから私たちは、時間の許す限り話すようになった。

私も相当の苦痛を味わったが、彼女もまたそうだと、話すうちに分かった。

 

『ヴェールヌイ…我が祖国の言葉で「信頼」という意味だ。』

『…私の?』

『そうだ、もう戦争は終わった…私たちもそのうち「お役御免」だろうが、我々は次の任務に臨むのだ。』

『…任務?それは…?』

『未来だ…未来への導(しるべ)となって、我々はその任を解かれる…だから、それまではその名に恥じぬ行いをしてほしいものだ。』

 

期待してるぞ?同士よ?…彼女は皮肉交じりに、そう言ったんだ…。

 

 

 

 

2017年 春イベント

「出撃!北東方面 第五艦隊」

 

Last Stage E5 北の魔女

 

敵北方艦隊主力が、日本侵略を目指して南下、接近中です!

 

連合艦隊、出撃せよ!

 

 

 

北方より侵略せんと下り、それを阻止せんと幾度となく戦いを繰り広げた、深海群と艦娘。

 

占守島防衛戦は、艦娘側の勝利に終わった。

しかし、去り際の敵旗艦「北端上陸姫」の一言により、事態は急展開を迎える。

 

『ヒトツダケ…教エテアゲルワ。』

「?、急に何なが?」

『イイカラ聞キナサイ…アナタタチハ、”北の魔女”ハ知ッテル?』

「?、なぁにそれ?」

「…最近向こうで暴れ周りゆう姫クラス…やったか?」

『ソウ…ソノ魔女ガコチラ二向カッテイル…トイッタラ?』

「え?!」

 

艦隊一同に、衝撃が走った。

北端の話では、北の列強諸国の海上防衛艦隊が、いとも容易く撃退され、更に運営鎮守府より派遣された艦娘艦隊まで勝利することが叶わなかった。

霧の中から突然現れ、状況の分からぬまま一方的にやられてしまう、という。

 

その脅威は、正に「魔女」。

噂ではその姿を捉えても、尋常ならざる戦闘能力に敗北を喫するらしい…。

 

『彼女ハカツテ、ワタシタチヲ支配シテイタ「姫」ニ匹敵スル力ヲ有シテイルワ…ドウ?アナタタチニ、ドウニカデキルカシラ?…フフフ。』

 

北端は意地悪く笑い、そう言いながらその場を後にした。

 

 

―宿毛泊地、提督執務室。

北端よりの情報、北の魔女の対策会議が執り行われていた。

提督、吹雪、ヴェールヌイ、更にe5攻略艦隊の主要メンバーが顔を揃えた…そこに、大淀を加えた会議は、彼女の差し出した一枚の写真から始まる。

 

「…こちらが、北の魔女を捉えた画像となります。」

 

スッ、と写真が差し出され、机を囲んだ一同の目に映ったのは、魔女の姿。

手を広げ、今にも艦載機を繰り出さんとしている瞬間…ただ、暗がりから撮影したため、鮮明な姿は視認できない。

特徴的なのは、白い毛のマントに丈の長い帽子…そして暗がりでも分かる、透き通った白い肌…

生まれたままの姿なのか、胸部等の大事な部分にはマントで隠すなり「前張り」を張るなりしているが、総じて「恥じらいのない」装いだった。

…大事な局面というのに、この男が反応を示さないはずがなかった…。

 

「うっひょおーぉう!だ、大胆~!?前張りやん!これメル〇リリスやーん!!」

「司令官いい加減にしてください!…ヴェルちゃん!」

「ハラショー」

「ペシッ)ん”ん!?」

 

ヴェールヌイが提督の口に栓(テープ)を張って事なきを得て、会議が再開。

魔女は主に北方海域で活動していたが、最近の深海群の動向の例に漏れず、日本海域に進出しようとしていた。

その予測出現ポイントは、北海道は北東「大ホッケ海」の最奥地。

それを割り出せたのは、宿毛泊地の誇る主力戦艦。

長門型一番艦「長門」率いる水上打撃連合艦隊の、戦果の賜物であった。

 

「…」

「長門さん達の情報によりますと、事前に運営鎮守府より伝令のあった地点にて、「戦艦棲姫」との交戦が確認されました。」

 

戦艦棲姫とは、深海群が確認された頃より活動している、凶悪な深海姫クラス。

巨大な化け物を型どった超大型深海艤装を操り、凶暴性及び破壊力はどの姫クラスにも引けを取らない正に「戦艦」…しかしその反面、艦隊を自在に指揮する知性も持ち合わせており、敵深海艦隊旗艦として艦娘たちと幾度となく激闘を繰り広げた。

 

「どうやら彼女たちは、魔女艦隊のルートを確保しようとしていたみたいです。」

「いわゆる掃討任務っちゅうやつやにゃ?…お?ほれやったらもう魔女さんは来んちゅうこと?」

 

いつの間にかテープを外した提督は、大淀に質問する。

戦艦棲姫の部隊は、長門たちにより壊滅的ダメージを与えられ、そのまま後退した。

となれば、もう魔女艦隊は、「来ない」はなくとも遅れが生じるのではないか?

大淀はそんな憶測を、首を横に振り否定した。

 

「…いえ、魔女艦隊は依然と南下を続けており、こちらに来るのは時間の問題かと。」

「ほうか…しゃあないにゃぁ?長門、また頼まれてくれるかよ?」

「…ああ、任されよう。」

 

魔女艦隊を迎え討つ、決戦仕様連合艦隊。

旗艦に再び長門を迎え、後は残された時間で編制を決めるのみとなった。

 

「気ぃつけよ?長門…オマエまでおらんなったら…。」

「提督」

 

不意に、長門は懐から何かを取り出した。

 

「…大丈夫。私は貴方と共に在る。」

 

提督に、ネックレスに取り付けられた指輪を見せつける長門。

何を隠そう彼女こそ、時雨、榛名に続く「三人の嫁」最後の一人。

戦闘中に無くしてはいけないと、ネックレスにして「証」を肌身離さず持ち続けていた。

 

「長門おぉ〜!」

 

提督は隣にいた長門を抱きしめ、長門もそれを受け入れるように提督の頭を優しく撫でた。

 

「…ンン”!」

 

大淀のお叱りを受け、ハッとしながら衣服を整える二人。

 

「…まあ、そういうことよ。…あ、第二艦隊にはヴェルも入れるきにゃ?」

 

水先案内人としてにゃ?と言う提督に反対する者はいなかった。

 

「えいかよ?ヴェル?」

「…(コクン)」

 

何かを示し合わせるように、目を合わせる二人。

果たして、魔女艦隊の実力は如何に…未知なる敵に警戒しながらも、提督編制の連合艦隊は、決戦の海へと赴くのであった。

 

 

 

数時間後ー。

 

 

 

進むにつれ増していく凍てつく強風。

それを肌やマフラーで感じながら、連合艦隊の各員は、魔女艦隊の予測出現ポイントへとたどり着いた。

 

「…あれか?」

 

連合艦隊旗艦、長門の艦載機が捉えたのは、紅く染まった海に揺蕩う深海群…その中央に。

まるで雪のような肌に、ロシア風の優雅な衣装。

そんな美麗な外見からは想像もつかない…低く、勇ましい声で「敵」は艦隊との会敵を吼えた。

 

 

 

―侵略艦隊・会敵―

 

北方連合艦隊旗艦

 

  戦艦

北 方 水 姫

 

『コノワタシト…ヤルトイフノカ……!……オモシロヒッ!』

 

 

 

遂に姿を現した、敵深海の最新兵器…「北方水姫」。

圧倒的な威圧感を受けながら前に出たのは、連合艦隊・第二艦隊旗艦「阿武隈」だった。

かつて北方で奇跡の作戦をやってのけた、第一水雷戦隊の旗艦。

普段は頼りないが、その指揮系統能力には目を瞠るものがあった。

今回は第五艦隊を主軸に作戦が展開されている。もちろん彼女や、第五艦隊の雄「那智」や「木曾」も決戦艦隊に同行していた。

 

「…あなたが「北の魔女」さんですね?」

『フン!ニンゲンタチハソフ呼ンデヒルヨフダナ?』

「では、北方水姫さん…で間違いないですね?」

 

深海群の幹部クラスは大きく分けて2種類。

「鬼」、そしてその上位の力を持つ「姫」…その改良型かもしくは実力、外見が大きく異なる場合「棲」が「水」に変わる。これは「水鬼」をして、航海中の船を襲う怪物・船幽霊を表す。

北方の深海棲艦…その脅威はもはや誰にも止められない「化物(モンスター)」となった。

 

「北方水姫さん、私たちは貴女の侵略行為を、断じて認められません。」

『…』

「故に我々は、貴女達に対し”降伏勧告”を行います…もし従う意思があるなら」

『下ラヌ』

「…!」

『能書キハ良ヒ…貴様ラノヨフナ雑魚ニモ興味ハナヒ…戦艦ハ?空母ハドコダ?奥ニヒルノダロフ?』

 

さっさと呼んで来い。とまるで邪魔者を追い払う仕草で阿武隈たちを隅に追いやろうとする…強者の余裕か、心底興味ないという顔をしていた。

 

「…聞き捨てならんな?」

「俺たちを差し置いて雑魚とはいい度胸だ…?」

 

阿武隈の後ろで待機していた那智と木曾が前に出る。

 

『雑魚ハ雑魚…ダ、二度モ下ラヌ事ヲ言ワセルナ?』

「貴様…!」

「…交渉が決裂なら、嫌でも艦隊戦となりますが?」

『ハッ!ソレハ良ヒ…ナラバ』

 

北方水姫は、自身のマントに隠された、巨大なアーム型艤装を展開すると…

 

『フン”ッ!』

 

爆砲により前方の味方随伴艦…深海駆逐艦を一隻沈める。

 

『GAAaaa!!!!!』

「なっ!?」

『…「ハンデ」ダ…ドフダ?嬉シヒダロフ?』

「き、貴様ッ!自分の仲間を!!」

『仲間…ナンダソレハ?私ノ砲撃ヲ満足ニ受ケキレヌモノナド、知ッタコトデハナヒ!』

 

ニヤリと、口を大きく歪め嘲笑する北方水姫。傲慢に相手を見下し、冷徹に味方を切り捨てる…正しく「魔女」の名に相応しい所業だった。

…その時、風切り音と共に、一発の弾丸が真っ直ぐ北方水姫に向かっていた。

 

『ヌッ!?』

 

アームを突き出し、そのまま爆撃を防御する…が。

 

「…」

『…キ、貴様…?』

 

銀髪蒼眼の少女…斜めに被った帽子から見える眼から闘志を感じる、自分に砲塔を向けている小さな「モノ」。

その光景を目にした瞬間、彼女の中で何かが”弾けた”。

 

『!!…グッ、アア”ァ!!!』

 

頭を押さえ、苦しみを露にする北方水姫。

 

『ナ、ンダ…オマ…エ……頭ガ…割レル……』

「…」

『…ナニモノダト聞イテイル!!』

「…”私はただの駆逐艦だ。なに、少しばかり相手をしてほしいと思っただけさ”。」

『…!』

「ヴェルちゃん!」

「阿武隈、戦闘の用意を…あいつは私が引き付ける。」

「うん!頼んだよ!ヴェルちゃん!」

「…ハラショー(ニッ)」

『オ、マエ……オマエ、バ!!ア”ア”アアアアアアアア!!!!!』

 

錯乱し、狂った叫びをあげながらヴェルに向かい突進してくる水姫…ここに、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

―敵艦発見!攻撃開始!!―

 

先ずは小手調べと飛び出したのは、基地航空隊。

三隊による同時攻撃により、着実にダメージを与えていく。

 

『邪魔ヲ…スルナアアアアア!!!』

 

対する北方水姫も艦載機を繰り出し迎撃、随伴艦がそれに合わせ攻撃機を発艦させる…最早、艦隊戦でなく個人のそれだった。

しかし水姫の名は伊達ではなく、一切の隙を突けず、そのまま航空戦へ…。

北方水姫の、容赦ない航空爆撃に対応するのは…

 

「…さて、やりますか。」

 

対空砲火の構えを取るヴェールヌイ、一機ずつ確実に落としていく。

 

「ウラァー!」

 

ロシアの兵の如く、雄たけびを上げる…そんな彼女に恨み節を唱える北方水姫。

 

『ナンナンダ…オ前ハ…ッグ!イ、一体……コノ私ガ…駆逐艦ゴトキニ…!!』

「「如き」?…そうじゃないよ、貴女は”そんなこと言わない”…どんなモノにも対等に、厳しく、そして時に優しく…誇り高い祖国の守護者だった。」

『マ、ダ…言ウ、カ……!』

「いいよ、無理に考えなくて…私が「思い出させる」から…!」

『貴様ア”アアアアアア!!!』

 

旗艦でありながら、前面に突出する水姫。しかしそれは得策ではなく…艦隊の指揮はそっちのけで、獣のようにただひたすら得物を狙い続けていた。

そこには、北の海で猛威を振るい続けた魔女は無く、艦隊戦は混迷を極めた…。

 

そんな激戦を平静に見つめる長門。

彼女は、副旗艦の榛名に戦況を聞いていた。

 

「…敵第二艦隊はほぼ沈黙、第一艦隊は旗艦を除けばどうにかなるかと…」

「榛名。」

「はい?」

「…後は、頼めるか?」

 

重い口を開けた、大戦艦長門の一言。

榛名が副旗艦として指名された理由がこれである…役割を理解している榛名は…?

 

「…もちろんです。どうぞお気をつけて。」

 

にこやかに笑う榛名を確認すると、長門は助走をつけ最大船速で海を駆けた。

 

 

 

『GUrAAAAA!!!!!』

 

突如として身体の底に響き渡る轟音が第二艦隊の前に立ち塞がった。

 

「!?、ウソでしょ!!?」

「戦艦凄姫!」

「クソッ!後退したんじゃなかったのか!?」

 

そこに現れたのは、後退したはずの戦艦凄姫だった。

吼え猛る巨大な魔獣と、それを操る黒い長髪の女…一組の脅威は北方水姫の前に、壁として立ち塞がる。

 

『…』

 

女性が合図を出すと、双肩の砲塔、口からの高圧エネルギー弾の構えを取る魔獣。

 

「!やばい!!、みんな下がれ!!!」

『GUgAAAAA!!!!!』

 

魔獣の特大爆砲撃と灼熱弾が繰り出される…多くの艦娘たちを苦しめた凶悪な攻撃が宿毛艦隊を襲う…!

 

…ズゥン!!……

 

重い反響音と共に硝煙が舞い上がる…阿武隈達の命運は…?

 

「…!、長門さん!!」

『…!』

「戦艦長門、我が盟友の窮地に参上した!」

 

そこに立っていたのは、仁王立ちし平然と敵艦を睨む護国の守護者「長門」。

阿武隈達に襲いかかった凶悪な攻撃を難なく受けきってみせた。

 

『Gurrr…GrAAA!!!』

 

魔獣は急速に接近し、その大木のような腕を長門に向けて振り回す。

しかし長門はそれを避けるでも受け流すでもなく仁王立ちのまま攻撃を受ける…ズンッという重い音と共に風が吹き荒ぶ。

しかし…美麗の武人はなおも崩れる様子はなかった。

 

「この長門を…侮るな!」

 

逆に腹部に重い一撃を喰らわす長門。

その衝撃に呻き声をあげながら一瞬宙に浮く魔獣…それを見るや否や、すかさず砲連撃を叩き込む…!

 

「お”おおおおお!!!!!」

『GUgyA”AAAA!?』

『…ッ!』

 

強烈な攻撃と共に空中へと放り出された魔獣は、そのまま海面に叩きつけられた。

かつてその脅威を「ビッグ7」として讃えられた長門…練度の上限を突破したその強さは、最早敵なしであった。

 

「…こんなところか?」

 

長門が辺りを見回すと、敵連合艦隊の状況がうかがえた…。

敵旗艦・北方水姫、そして瀕死の魔獣を従えた戦艦棲姫…のみ。

後は夜戦で残り二人を仕留める…それだけであったが?

 

『…モウイイ、充分ヨ。』

 

魔獣のそばに寄り添うと、戦艦棲姫はそのまま自ら海中に沈み…戦線を離脱した。

 

『ドイツモコイツモ…コ、シヌケ…メェ!!』

 

頭を抱えてながら、ふらつく北方水姫。

ヴェールヌイを狙い続けた過程で、肢体に損傷を受け、衣装はボロボロ、息も絶え絶えといっていい。

…しかし深手にはなっていないようで、依然として脅威は続いている…。

阿武隈は北方水姫の説得を続ける。

 

「…これで分かったでしょ?もう抵抗は無意味です…どんなに優勢であっても、貴女が向かってくる限り、こちらも手を緩めるつもりはありません。」

『黙レ…!私ハ…貴様ラゴトキニ…背中ヲ見セルツモリハ…ナイ!!』

 

深海の姫の意地をみせる北方水姫は、帽子をはねのけ、なお勇ましく叫ぶ。

 

『引キ下ガルワケ…ニハ……イカナイ…ッ!…貴様ラマトメテ、カカッテ…コイヨォオ!!』

「…ここまでか。阿武隈、後は任せる。」

「は、はいっ!ありがとうございました!長門さん!」

 

心からの謝意を込めた敬礼を、長門に向ける阿武隈…日が傾き、夜の戦いの幕が上がろうとしていた。

長門は阿武隈達に後を託し、後退する。

その時、ヴェルと目が合った長門は…

 

「…上手くやれよ?」

「(ニッ)…ああ。」

 

小さな声で言葉を交わし、満足げに笑みながらその場を去った。

 

 

 

 

―我、夜戦ニ突入ス!―

 

漆黒の闇が空間を支配する…辺りはさざめく波の音以外は何もない。

そんな暗がりの中でも分かるほど、北方水姫の体は上下に揺れていた。

 

『ッフー!…ッフゥーー!!』

 

歯を剥き出し、怒りを露にしで歪む麗顔。

目から迸るオーラは、通常時の青色から憤怒を表す赤色に変わっていた。

憎しみの権化と化した彼女の前に、進み出るヴェールヌイ。

 

「…」

『…フゥウーッ!』

「…ふふっ」

『何ガ可笑シイ!!』

「いや…貴女を見ていると、あの頃を思い出して…ね?」

『…?』

 

訝しむ彼女に、誰とも言わず語りだす。

 

「…私は、貴女と出会った時、処分されるものだと思っていた…いや、私自身がそれを望んでいた。」

『…ナゼダ?』

「単純な答えさ?…姉妹の元に、行きたかったんだ。…あの時の私には何も残されていなかった…絶望に侵され、使命も失い、途方に暮れていた私に…貴女が新たな道を指し示してくれたんだ。」

『…』

「貴女の言葉は…私の戦う意志を癒してくれた。…「信頼」に応えるために、何年も戦い続けた…それは、あの時に比べたら、本当に小さなものだったのだろうけど…実に、有意義な時間だったよ…?」

『オ、マエ…?』

「ねえ?私は…貴女の期待に…信頼に応えられたかな?」

『…』

 

―ああ、お前は役に立ってくれたさ…

 

「!」

 

彼女の意志の目覚めを感じ、そのまま近づいていくヴェールヌイ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………ハァ!!』

 

不意にマントを広げ、その中からアーム砲を展開する北方水姫…!

 

「!?」

『愚カナ…冷タイ処ニ沈ンデイケェ!!』

 

そのまま砲撃が放たれようとした…瞬間。

 

「ヴェルちゃん!!」

 

五連装酸素魚雷を装備した阿武隈のカットインが炸裂…!

 

「-ッ!」

『ヌゥッ!?』

 

咄嗟にアームで防御する北方水姫は、そのまま爆発にのまれる。

ヴェールヌイは一歩後ろに下がり、ギリギリ爆破を避けることが出来たが…盛大な爆風を受け、吹き飛ぶヴェールヌイ。そしてそれを即座に支える阿武隈。

 

「スパスィーバ…!」

「全然!…ヴェルちゃんなら避けてくれるって思ってた!」

「やれやれ…作戦どおりとはいえ、無茶するね…?」

「えへへ…ほーらね!そこでよかったでしょ?」

 

阿武隈のカットインにより、アーム型艤装に損傷を受けた北方水姫。

その左右を挟み撃ちにするように、暗闇から現れた二人。

 

「…フッ、アリだな!」

「さて…何か言い逃れはあるか?」

 

満足に砲が撃てない、その上隙を作り挟み撃ちにされた…阿武隈の采配により、正に「詰んだ」状態の北方水姫は…

 

『ア”アアアアアア!!!』

 

アームを左右に広げ、最後の抵抗にでる。

 

「残念だが…沈むのは!」

「「お前だ!」」

 

挟撃による砲火(クロスファイア)を受け、北方水姫にようやくまともなダメージが入る。

 

『グッ、ガ、ア”アアアア!!?!?』

 

―獣の咆哮をもって、ここに、春の戦は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ウソダァ…コノ……ワタシガ…モウ、ツメタイトコロハ……イ…ヤ………アタタカイ…セカイヘ……モド、リ…タイ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!、オマエ、ハ…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……アタタカい…?…わたシ…ワたしタチ……カえっても…いいノ?…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ありがとう…!

 




〇宿毛泊地メモver.2

〇長門
長門型戦艦一番艦。宿毛泊地の三人の嫁の一人。
主力級戦艦を練度上限開放(ケッコンカッコカリ)したことにより、比類なき強さを手に入れた。様々な局面で艦隊を護る守護者。
少し無口だが駆逐艦などの可愛いもの好き…が表情を顔に出さないので、真顔で近づく不審者とよく間違えられる。

〇阿武隈
かつての第一水雷戦隊旗艦。北方で「奇跡のキスカ作戦」をやってのけた。
頭を使った連携作戦が得意だが、普段の頼りない態度から評価は低く見られがち。
雷巡「北上」と仲がいい…はずだがそれ以上の好意を隠し持ってるかもしれない(大井様が見てる。)

〇那智
強者ぞろいの妙高型重巡二番艦。
第五艦隊旗艦も務めた軍人肌の女性。宿毛泊地では随一の酒好きであり、また一番酒に強い。お酒にだらしない泊地の酒豪共を「マナーがなってない」と叱りつけている。

〇木曾
数少ない雷巡の一人。
乱暴な口調だが、眼帯やマントなどの容姿、スタイリッシュに敵を屠る姿は正しく「おっぱいのついたイケメン」。

―提督、今日の一言―
「作戦終了やにゃぁ!皆ぁようやった!!…でもあのおっぱいはもったいないにゃぁ?」
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