ある新鎮守府と料理人アイルー   作:塞翁が馬

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 烈風は知らない子な赤城さんですが、今作では見た事は無いが知識としては知っているという設定です。


決戦の時!

「―――。…成程。おおよその状況、及び次の作戦の内容は理解しました」

 

 大淀から説明を受けた赤城が真面目な顔で頷きながら言葉を発する。

 

 この鎮守府初の大型艦であり、殲滅力に優れた空母でもある赤城。そういう理由で、この場にいる全艦娘から程度の差こそあれ期待の眼差しを向けられているのだが、対する赤城の表情と声には、どこか苦々しい何かが混じっている。

 

「あかぎさん~、なにかもんだいでもあるの~…?」

 

 赤城の様子がおかしいのは直ぐに全員が分かったが、何となく聞き辛い雰囲気だった。そんな中で、こういう状況でも物怖じしない文月が口火を切る。

 

「ええ。正直に言いますと私の練度と乗せられる艦載機の質…この二つが絶望的に足りません」

 

 文月の質問に、難しい顔をしながらもキッパリと答えを言う赤城。

 

「まず、練度は先ほど建造されたばかりなので言うまでもありませんが、空母という艦種は他の艦種以上に搭載装備に性能が左右される艦種です。烈風や流星改、彗星一二型、等の新型機であれば空母の性能を十分に引き出せるでしょうが、その様な新型機はまだこの鎮守府には配備されていません。建造と同時に配備された旧型機はありますが、それで戦艦クラスを撃滅できるかと聞かれると、難しいと言わざるを得ないですね…」

 

 悩まし気に俯きながら空母という艦種の特性を語っていく赤城。その芳しくない内容に、一時は沸き立っていた室内の雰囲気が再び重苦しいものとなる。

 

「…とにかく、その深海棲艦にイキナリ挑むのはお世辞にも得策とは言えません。私も含め、もう少し練度と装備を共に高めてからの方が」

 

「皆、ここにいるか!?」

 

 続けて提案を口にした赤城だったが、その台詞は途中で慌てた様子で乱入してきた提督に遮られてしまう。その後ろでは吹雪も若干顔を青ざめさせながら立っていた。

 

「お~提督~、大丈夫なの? もう気持ちに整理はついた?」

 

「…あ、ああ。いや、まだ完全には割り切れ…ではなくてだな!!」

 

 北上が笑みを浮かべながら提督に質問し、釣られたようにその質問に答えようとした提督だが、かぶりを振って話題を逸らされそうになるのを防ぐ。

 

「偵察隊からの報告だ! 先ほど我が鎮守府の主力艦隊を不意打ちした戦艦タ級が、数体の僚艦を引き連れてこの鎮守府に接近中! 直ちに迎撃に出なければこの鎮守府はおろか、民間にまで被害が出る可能性が高い!!」

 

 瞬間、室内に緊張が走った。と、同時に先ほどまでの議論で今のままでの撃退は難しいという結論が既に出ているからか、全員が俯いたり顔を顰めたりしている。

 

「…へっ。ま、そりゃそうだな。敵は待ってなんかくれねぇよ」

 

「相手が万全ではないその隙を突いて叩き潰す。戦略としては当然の判断だ」

 

「う~ん、難しいねぇ…。ま、とりあえず迎撃に出るしかないんじゃない?」

 

「向こうから来るなんて良い度胸ニャ! ボコボコにぶっちめてやるニャ!!」

 

「…ん? サイファーも出撃するつもりなのか?」

 

 暗い雰囲気の中、一人だけ闘志を漲らせているサイファーに、提督が不思議そうに尋ねる。

 

「そのつもりニャ!」

 

「………。分かっているとは思うが、戦場は海だぞ? どうやって戦う気だ?」

 

「ニャ………。そ、その、誰かに乗せてもらうニャ! 爆弾とブーメランで戦うニャ! 必要であらば笛とかも吹きまくるニャ!!」

 

 提督の問いに、少しの間硬直した後しどろもどろになりながら答えるサイファー。どうやら、戦場が海である事を失念していた様だ。

 

「自信満々に一緒に行くと言っていたので、てっきり海を渡る手段をお持ちなのだと思っていました…」

 

 その様子を見ていた大淀が、若干の呆れを乗せた声でポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 今回の出撃メンバーは北上を旗艦とし、僚艦に赤城、神通、磯風、雷、吹雪の六人だ。赤城か北上のどちらかを旗艦にするかで少し口論となったが、瞬間火力なら北上の方が上だという結論に至った故の布陣だ。

 

 そして、サイファーだが吹雪に肩車してもらって一緒に出撃する事となった。乗せて欲しいというサイファーの頼みに、真っ先に反応したのが吹雪だったのだ。

 

 こうして、準備もそこそこにこの鎮守府の恒例である、出撃前の料理の時間がやってきた。

 

「出撃前に料理を食べるなんて、変わった鎮守府ですね…」

 

 風変わりな恒例に多少面食らったらしい赤城だが、その双眸は早々に料理を作るサイファーに注がれている。どうやら、サイファーが作る料理にかなり興味があるようだ。

 

 その興味に、サイファーは見事に応えて見せた。出された料理を一口食べた赤城は、少し目を見開いたかと思うと、直後に凄い勢いで食事を平らげてしまったのだ。

 

「ふう…。少し異質な感じがしますが、凄くおいしかったです」

 

 

   スキル:ネコの火事場力が発動!!

 

 

 いち早く食事を終えた赤城が、緑茶を啜りながら感想を述べる。満足そうな笑みを浮かべている事から、サイファーの料理をかなり気に入ったようだ。

 

「うまいだけでなく、力が湧いてくる感じもするからな。本当に不思議な料理だよ」

 

「出撃自体はあまり好きではありませんけど、サイファーさんの料理は毎回楽しみです」

 

「欲を言えば、このままぐでーっとしてたいよね~。ま、太るからそんな事しないけど」

 

「サイファーの料理は本当に美味しいから、幾らでも食べられるわ!」

 

「うん! 私もサイファーさんの料理大好きです!」

 

「今回は強敵を狩猟するって事だから、いつも以上に腕によりをかけて作ったニャ! 皆満足してくれたみたいでボクも嬉しいニャ!」

 

 食事を終えた順に口を開く艦娘達に、サイファーもおたまを掲げて嬉々として語る。

 

「…さて、じゃそろそろ皆行こうか。難しい戦いだけど、やる以上は勝つ気で行こうね~」

 

 不意に、北上が立ち上がりながらその場にいる全員に話しかける。口調自体はいつものおどけた感じだが、その中には確かな決意の色が見えた。

 

 そして、その言葉に呼応するか゚の様に他の艦娘達も立ち上がり、一斉に決意の顔で頷いた後大食堂を後にする。勿論、サイファーも彼女達に続いた。

 

 

 

 

 

 鎮守府を発った北上達は、情報にあったタ級の現在地に急行する。その途中にも何度か深海棲艦に襲われたが、その殆どは赤城の先制爆撃の餌食となった。

 

「やはり、なんだかんだ言っても空母がいると殲滅力が段違いですね」

 

 赤城の先制に蹴散らされた深海棲艦を見ながら、神通が感動した面持ちで口を開く。

 

「確かにそうね! でも…てぇぇいっ!」

 

 神通の言葉に賛同しながらも、雷が先制爆撃を免れた深海棲艦に砲撃を見舞う。その直撃を受けた深海棲艦は、成す術無く海の藻屑と消えた。

 

「どう!? 私だって負けないわ!」

 

「ニャ! かっこいいニャ!!」

 

 自慢する雷を、サイファーが褒め称える。すると、雷は嬉しそうに「でしょ!?」と微笑んだ。

 

「そろそろ目的地だよ~! 皆、覚悟はできてるね~!?」

 

 先頭を往く北上が後ろを振り向きながら確認を取る。返ってきたのは、必ず勝ってみせるという強い意志を見せる五つの笑み。

 

「ならば、景気づけに一発笛を吹くニャ!」

 

 そう言って、吹雪の頭上で笛を吹くサイファー。全員が何事かとサイファーに視線を送るが、笛を吹き終わると、全員のここまでに受けた小さな損傷がみるみるうちに消えていった。

 

「わっ!? き、傷が消えて…!?」

 

「これは!? い、一体…?」

 

「薬草笛ニャ! ささやかだけど、小さな傷程度ならたちどころに回復しちゃうニャ!」

 

「…料理もそうだが、本当に不思議なネコだな」

 

 驚愕に目を見開く吹雪と、同じく驚きながら聞く赤城にサイファーは得意げに語り、それを聞いた磯風が言葉通り不思議そうにサイファーを見つめる。

 

「あははっ! こりゃ幸先いいや! そんじゃ、いっちょやってみますかっ!!」




ネコの火事場力

 中破、及び大破状態で逆に能力値が上がる。上昇率は、中破状態で火力、装甲、命中、回避がそれぞれ10%ずつ上昇。大破状態で、火力、装甲が50%、命中、回避が30%上昇する。

薬草笛の技

 笛の音を聞いた者のHPを10回復する。ただし、中破、大破した場合はそれ以上には回復しない。


※モンハンのネコの食事スキルの雰囲気を出すために、作中ではネコの~スキル発動!! と表現していますが、実際にどんなスキルが発動しているかは艦娘達は分かっていません…どころか、スキルという概念すら認識できていません。そして、それはサイファーも同じなので、うっかり悪運や暴れ撃ちを発動させてしまうと、後が大変な事に…。
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