とらドラ!腐った目の物語 作:手乗りタイガー
川島から半分逃げるようにして大橋駅まで戻って来たときは既に3時になっていた。
「はぁ.....」
『逢坂の事は比企谷に任せる』この言葉が頭から離れてくれない。
俺に何をしろって言うんだ。俺に何が出来るって言うんだ。北村が逢坂のマンションに行ってやれば全て解決する筈だったんだ。
「マッカン....飲みてえな.....」
俺はふと思い付き携帯のYahooで「マッカン 作り方」で検索した。
「あった.....あったぞぉぉおおお!!あっ.....」
駅周辺で叫んでしまった為大変恥ずかしい....がマッカンを作る方法が分かり急いでデパートに向かう。ん?お金はあるのかって?ふふふ....男は常にへそくりというものを持っているのさ...財布の小銭入れの中に小さく折り畳んでいれておいた五千円札を握りしめて俺は材料をふんだんに買い込んだ。
うちには小町がお菓子作りに使っているシャイカーがあるから入れ物は良いとしてインスタントコーヒー瓶のタイプを5個と砂糖6個牛乳3本(八幡が持つには3本が限界だった)を購入した。
うちに帰るなり台所に駆け込みシャイカーを取りだしインスタントコーヒーを子さじ一杯入れて砂糖を4杯入れて牛乳を300cc入れて水を50cc入れてシェイクした!
そして飲んでみると.....。
「これではマッカンではない.....」
俺はあるものをスーパーに買いにいき急いで戻って来た。
「よし」
先程作ったマッカン(仮)に買ってきた練乳を流し込んだ。
「ごく......おっしゃああああ!!!」
探し求めていたあの味に一気に近付き暫く作っては飲みを繰り返した。
「はぁ....やっぱり落ち着くなぁ。この甘さ」
俺は水筒にマッカン(オリジナル)を流し入れ逢坂のマンションに向かった。
呼鈴を鳴らすが中から声どころか物音さえも聞こえてこない。
ドアノブに手をかけてゆっくりと下にさげるとガチャっという音がして扉は開いた。
「どんだけ不用心なんだよ...」
悪態を吐きながら玄関を抜けてリビングに来るとそこはまるで地獄画図となっていた。
異臭は未だに漂っているが一番変わったのは台風でも来たのか?って聞きたくなるくらいリビングが荒れていたことだ。皿は床に落ちて割れ、床にはお菓子やら、衣類などが散乱している。
「.....」
右手で掴んでいる水筒を握りしめて寝室につながる扉を開けた。
「.......」
寝室もそうとう荒れていて流石に生ゴミの類いはないが衣類で床が埋まっていた。
ベットの中央では布団が丸まっていた。
丸まっているサイズ的に逢坂がくるまっているのだろう。
「逢坂」
「........なによ」
布団と話すと言うのはかなりシュールな光景だ。と思いながら続ける。
「もう夕方になるぞ。お前の分のカレーだってあるんだからちゃんと食べに来いよ」
「いらない....何も食べたくない」
逢坂の口調は徐々に嗚咽を伴い泣いているのが分かる。
「俺さ今日北村に会ってきたんだ」
「........」
俺は嘘をつくのが嫌いだ。
嘘をつくのは相手の意思を尊重するときに使うことが多いし後になって自分に返ってきて良いことがないからだ。
でも.......。
「北村に聞いたんだよ。あの後川島はどうだったって。そしたらあー亜美なら問題ないよ。それより逢坂にはすまないことをしたなって」
たまには優しい嘘があっても良いんじゃないかって思う。
「北村君が.....」
「ああ。北村は川島の性格を理解してる。あーいう性格なのをな。だから問題ないんだよ、心配すんなって」
布団がめくられ目を赤く腫らした逢坂が出てきた。本気で逢坂は北村の事が好きなんだなと思う。
「お腹空いた」
「.....ほいよ」
俺は持ってきた水筒を逢坂に渡した。
訝しげに水筒を見る逢坂に俺は一言。
「落ち着くから飲んでみろ」
「......分かった。.....うえっ甘っ.....なにこれ...うえっやっぱり甘い....」
文句を垂れ流しにしながらも少しずつマッカンを飲んでいる逢坂を見てホッとした俺がいた。
逢坂は無事に?元気になり俺の家で現在カレーを食べている。いや暴食している。先程から何回おかわりするの?ってくらい食べるこいつにおかわりを盛ろうとしてご飯が底をついていることに気付いた。
4合も炊いたのに冗談だろ....。
終始川島の悪口を言っている逢坂をよそに俺は今日の出来事を思い出していた。
逢坂の事で考えてる余裕が無かったが川島は最初何かに追われているような素振りを見せていた。俺の気のせいなのかもしれないが真っ青になった川島のあの顔は何処と無く異常ということは俺にも分かる気がした。
今日は入学式だ。春うららとは良く言ったもので桜が咲き誇りまるでピンクの絨毯になっている。
大橋高校に到着した俺は、まず時間を潰すことにした。別に友達を作る気もなく逢坂も流石に今日は一緒ではない。ならばと、俺は一人体育館裏へと足を運ぶ。
「あれー?君は新入生君かな?」
体育館裏まで来ると何故か話しかけられた。それも女子に。何故?
「そうですけど...」
「あ、ごめんね。あたしは櫛枝実乃梨。あたしも今日からここの高校に入学したんだ」
新入生か聞いてきたのに自分も新入生って...。
「えーと俺ちょっと急いでて...それじゃ」
「あ、ちょっと待って。あたし友達100人目指しててさ!良かったら友達になってよ!」
「は?」
いきなりの言葉に疑問で返してしまった俺は何も悪くないだろう。つーか高校生にもなって友達100人て...。
「いやいや、は?は酷くないかい?いいじゃねーか!友達になろうよ!ね?」
携帯を出しながら詰め寄ってくる櫛枝、恐らくアドレスの交換をしようとしているのだろう。これ以上下手に拒むよりは受け入れた方が楽だろうと携帯を渡す。
「け、携帯を人に渡せるって凄いね」
「そうか?そもそも見られても困るもんとかないし」
「そうなんだ...と、これでよしと。それじゃこれからヨロシク頼みますぜ!比企谷君!」
「おう...て何で俺の名前を?」
「ん?だって携帯のメルアドhikigay@だったし」
そう言えば...次からはl love max coffeeにでもしとくか。
「成る程...それじゃ」
「また会おう!」
所々話し方が変わった子だなとは思ったが特に気にせず携帯を開くと後30分もまだ時間があった。体育館裏で時間潰そうと思ったら潰せなかったので当たり前なのだが、校門の前にいたのがいけなかったのだろう。俺はこの時の俺自身を後々恨むことになる。
「あれー?比企谷君じゃーん!久し振りだね♪」
「....誰でしたっけ?」
この頃の俺のストレスを権化にしたような存在が目があった瞬間に近付いてきた。てか唯一川嶋とはしょっちゅう会っていたのだ。無理矢理呼び出されてだが。
「あれ~もう忘れちゃったの?ひどーい、亜美ちゃん、比企谷君と会えると思って今日の入学式楽しみにしてたのに」
心にもない川嶋の言葉により周りの生徒の目を集めてしまう。川嶋は現役のモデルらしい、電話で話しているときに自慢されたのだが結構売れているようで、そのような売れっ子の女の子と仲良く話していれば周りも集まって来るわけで。
「あ、あの!川嶋亜美さんですよね?ぼ、ボク貴女の大ファンで同じ高校に入学できるなんて夢みたいです!!これから三年間よろしくお願いします!!」
「んー?あーごめんね。今亜美ちゃん、大切な話をしてるから後にしてくれないかな♪」
ゾクッと背筋が凍る感覚に陥る。少しの付き合いだが分かる。川嶋は確実に怒っている。何故怒っているのかは、分からないがかなり怒っている。
(あーもう。ほんと最悪...今超楽しいのに邪魔しないでくれないかな?てか誰だよ、あんたに興味すらないんだけど、亜美ちゃんと一緒の高校に入れただけ有り難いと思って黙っててくれないかな?)
「こんな目の腐ったような男と話していたら川嶋さんの品格が落ちてしまいます!どうぞ一緒に来てください!」
「は?」
「おい、川嶋」
一緒に川嶋と出掛けている時に何度か川嶋は、ナンパされていた。決まって言われるこの言葉だが...最初はそこまででもなかったが徐々に川嶋がキレたのだ。それはもう俺に言ってる訳じゃないのに俺がビビる程度には。
ただ此処は校門だ。更には入学式でこれからの高校生活がかかっていると言っても良いくらい大事な行事だ。そんな大切な日に問題を起こしたら川嶋は孤立してしまうかもしれない。それだけは駄目だ。
「川嶋。落ち着け」
「でも!」
「えーと何君だっけ?」
「ああ?誰もお前になんて話しかけてねーんだよ!」
今時いるんだな、こーゆう奴って。こーゆう奴に限って有ること無いこと噂にするから困るんだよな。だから標的を川嶋から俺に移す必要がある。
「はぁ...高校生にもなって餓鬼かよ。よくここの高校受かったな。いや人数足りなくて仕方なく取ったのかもな」
「んだと!てめー喧嘩売ってんのか!?」
拳を握る?君に挑発を続ける俺。よし後はその拳で俺を殴ってくれれば問題なく終わるな。
「馬鹿....。はぁ...ねえ、あんた。何様なの?言っておくけどあんたなんかより比企谷君の方がずっと一緒にいて楽しいから、てかあんたに興味すら無いし。とっとと失せてくれない?」
俺と?君が固まる。川嶋が急に発した言葉が理解出来ない俺と?君。
「は?え、えと?」
「意味わかってないの~?えーと邪魔だから消えて?って言ってるの」
「くそがっ!何がモデルだよ!性格なんて最悪じゃねーか!!」
叫びながら走る去る?君。でもどうしてこんなことを...あれじゃあ。
「おい、川嶋」
「どうしてこんなことを?でしょ」
「あ、ああ」
「比企谷君が、やろうとしていた事でしょ?あいつの注意を全部自分で被るなんてやり方を」
「....でもあれじゃ川嶋が有ること無いこと「言われるわね」....」
「でもそんなのかんけーないの。だって亜美ちゃんってこんなに可愛いんだよ?性格なんてどうでも良いの♪」
「そっか...」
初めて会ったあの時の川嶋が付けていた仮面は少しずつ剥がれているそんな気がした。