魔法少女リリカルなのは Endless Story 作:ヨシュア・ブライト
凄まじい勢い書きでございます(笑
というのも細かいことで悩むのは止めてとにかく物語を進めることを最優先に書きました。
そのため少々荒い部分もあるかもしれませんが、手抜き、というわけではありません。
寧ろ前より細かくなってきているのが現状でして(笑
まぁ、とにかく中身をみてからってことで、どうぞ♪
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朝。カーテンの隙間から差し込む暖かな陽光。小鳥がさえずる声と合わせてどこからか響く人の声。恐らく母親が子供を起こしているあたりなのだろう。これだけはどこの世界も変わらない。
和やかな朝のコーラスを聞きながらティアナ・ランスターの朝は始まる。
いつも通りなら、の話だが。
つまり、いつも通りではないのだ。
アレン・テスタクルという身元不明の男を保護し、自宅に連れ込んでみればその男は記憶喪失。戦闘関連の知識以外はほとんどまっさら。かろうじで名前だけは思い出したがだからと言ってどうなるわけでもない。
そんな男を保護していつも通りの朝なはずがない。
全力でいつも通りから逆走しているといっても過言ではないだろう。
「いい? 楽しいって言うのは気分が高揚することなの。わかる?」
「……」
逆走の結果は朝っぱらからお勉強という展開に発展していた。
ホロウィンドウに展開したペイントツールにサラサラと簡易的な人間を書き、飛び跳ねさせて『楽しい』という感情を表現する。
小さな子に教えるようなやり方であり、他人から見れば教えられている青年は何か問題を抱えているのかと哀れみすら覚えそうな場景ではあるが――
「ティアナ・ランスター」
「ん?」
「この人間は身体のどこも使わずにこれだけの跳躍を行えるのか? だとすればこの人間の身体能力は――」
「そういう話じゃないってさっきから何回言わせるのよ!!」
「……?」
――断言しよう。アレン・テスタクルはその小さな子以下の理解力しか持っていない、と。
正確には理解力は高いのだが、間違った方向に直結しているため問いに対しておかしな解が出てくるのだ。
……ここまで戦争馬鹿だなんて。
つきたくもないのに溜息がつけてしまう。
ティアナが分かりやすく教えようとしてもアレンは全く違う所へと着眼してしまう。
度し難いほどの戦争馬鹿。何をどうすればここまで戦うことに思考が傾くのか彼女には理解できない。
原因となっている当人はと言えば頭を悩ませるティアナを見て首を傾げるばかり。
「……ねぇ?」
「なんだ。ティアナ・ランスター?」
「アンタ、怖くないの?」
「怖い、という意味が先刻の通りならば怖くはない。魔族の気配も感じない。問題はないはずだ」
「そういう表面的意味じゃないってば。
自分の記憶が全部無くなってて、知らない世界に放り込まれて、目的は魔王なんていう得体の知れない敵と戦うことで。
何でだろうって思わない? 何で自分がって。私なら、そう思う……」
精神的に怖くはないのかと、憂いを帯びた表情でティアナは問う。
アレンを保護した後、少しではあるが、現状のアレンの情報と最終目的を得た。
まず、アレンはこの世界の住人ではない可能性が高いということ。
記憶喪失にしてもアレンの場合は自分に関する記憶が抜け落ちているだけでその他の記憶は残っているケースだ。
訊ねてみれば下着の一件も衣服を衣服だと認識していない所から始まっている。得意の戦闘関連から引っ張りだしてみればさらに明確だった。
一流剣術士だの三流魔術士だの聞き覚えのない言葉がアレンの口から次々と出され、さらに訊ねてみればそれは魔導師で言うランクのようなものだということがわかった。
検索してみるもふざけたものが引っかかるばかりでアレンが言うような意味合いは載っていない。
アレンの知識が異世界からの知識であることは明白だった。
目的は【魔王】を含む全ての【魔族】を討伐すること。
記憶のないアレンだが、これだけは覚えていた。というよりは記憶に焼きついているというのが正確らしい。
漠然とではあるが、魔王の存在は確実に在るとアレンは断言する。
魔王は知らないが魔族に関してはティアナにも心当たりがある。
ここ最近になって魔法生物による被害が爆発的に増大している。話を聞けばその魔法生物は新種ばかりであるという。
アレンが言う魔族とは人ではないモノの総称であるため魔法生物と勘違いしてもおかしくはない。
これが魔族なのだとすればアレンの言う魔王も本当にいる可能性が出てくる。
不確定要素としてアレンの【仮面】。
仮面舞踏会などでも使われる目の周囲だけを覆うタイプのアレンの仮面。
ただの趣味かとも思ったが、起きて動いている時も、寝ている時も、なによりティアナがアレンを全力で叩いた時ですら微動だにしていない。
明らかにおかしくはあるが、ただでさえ普通ではないアレンだ。何かあるとティアナは予想し、一先ずはそのままにした。
ある程度の情報を得たティアナが最初に問題視したのは魔族や仮面のことよりも記憶喪失のことだった。
魔族はまだ管理局という存在があるため相手取ることも可能だが、記憶ばかりは局に頼った所で戻りはしないだろう。
そしてなにより問題なのは――
「ティアナ・ランスターの問う意味の全ては図りかねるが、それが任務なのならこなすだけだ。恐怖する理由も拒否する理由もない」
「……それは、悲しいわね」
「悲、しい?」
――感情、というものがアレンからはごっそり抜け落ちてしまっている。
アレンには人間の誰しもが備えている、笑う、泣くなどの喜怒哀楽の感情が表現出来ない上に理解出来ない。
合理的思考で最も効率の良いとされる答えを弾き出しているが、思考回路は戦闘直結。これをティアナは危険だと判断した。
魔族との戦闘に民間人が巻き込まれたと仮定して、アレンの脳が人を切り捨てるのが是であると答えを出した場合、アレンは躊躇いなく民間人を見捨てて魔族討伐のみに専念するだろう。
討伐に支障をきたせば下手をすれば人間と敵対する危険すら孕んでいる。
それをさせないために貴重な休みを潰し、朝から勉強会などを開いているのだ。
しかし、結果は芳しくなく、時間だけが空しく過ぎていくばかり。
何か手はないものかと頭を悩ませ続けるティアナを見て、アレンは首を傾げた。
「一つ聞きたい」
「何?」
「何故、ティアナ・ランスターは他人の私のことを気にかける?」
「何故って……」
言われてみればそうだ。
アレンとティアナはつい数時間前に偶然が重なり同じ時を過しているだけ。ここまでティアナが世話を見る必要もない。
世間的に見ればアレンは渡航許可どころか、身分証明すら出来ない身。警戒対象として登録されても何ら不思議はないのだ。
利益どころか不利益しかもたらさない。これ以上助けるメリットが存在しない。
ここでアレンを放り出した所で彼女に責任はない。寧ろ局に預けるのが正解なのではないかとすら思う。
それを本人から問われてそこまで気付き、彼女はクスリと笑った。あまりにも自分が間抜け過ぎて。
職業柄、そういったことには敏感のつもりでいたが、どうやら思い過しだったことが可笑しくてたまらない。
「何故って言われると、性分って答えるしかないわね。昔から厄介ごとに巻き込まれやすいのよ」
「理解不能だ」
「奇遇ね。私も理解不能よ?」
「……それも、理解不能だ」
ティアナの人となりを理解しようとしても、機械的思考しか出来ないアレンにはティアナの思考は複雑怪奇。到底理解が追いつかないのも仕方がない。
ティアナ自身も何故自分がこんなにも厄介ごとに関わりたがるのかはわからない。それこそ性分だからとしか答えようがない。
ただ、わかったことが一つある。
ティアナはこの厄介ごとという物事は嫌いではない。好いている節すらある。
「一つだけ私も聞いていい?」
「答えられるかどうかは保障しかねるが……」
「アレン・テスタ――ううん、アレンは感情を学ぶってこと嫌い?」
だから、決めた。
「よくわからないが、無駄が多いとは思う」
「そうね」
もしも――もしも、アレンが。
「戦闘で役立つわけでもない」
「うん」
感情を知りたいと思うなら。
「非効率的ですらある。任務に支障をきたす可能性も無ではない」
「寧ろ有害かもしれないわね」
それでも、人でありたいと願うなら。
「しかし、いつかわかる時が来て欲しい……とは、思う」
「……そっか。ありがと」
「曖昧な答えではあるが……」
「十分よ」
この関わりを、繋ぐと、最後まで関わり抜くと決めた。
想像するだけでも前途多難な日々が思い浮かぶ。
言うなれば部屋の中に引きこもり、一度も外を知らない子供を外に連れ出すようなものだ。
しかもその子供自体が数々の問題を持っている。世話役である人間はどれだけの苦労をするかわかったものではない。
それでも良いとティアナは思う。このまま放り出して何か問題を起こしでもされたらそれこそ寝覚めが悪い。罪悪感に苛まれなくてはならない。
どうせ悩むのなら目の届く所に置けて、自分自身が良いこと、悪いことを教えていけばいい。
要は躾と同じだ。少し早い母親体験が出来るとでも思えば今後の良い経験にもなるだろう。
「じゃあ、これからよろしくね」
「よろしく? 何のことだ?」
「私がアンタの世話をするって決めたから。だから、よろしく。わかった?」
「……理解不能だ」
「はいはい。理解不能で良いからよろしく!」
「……?」
何が何やらわからない。すでに何度目かわからない首を傾げる動作をするアレンにティアナは強引に彼の手を持ち上げ、自分の手と重ね、握る。
「握手って言って、これも挨拶の一つなの。わかったら握る」
「……そうか」
混乱するアレンではあったが、握れと言われたならばそうするより他にないと割り切って――握った。思いっきり、握った。
「痛ッ!? アンタはバカかァァーー!!」
「ぐぁ……!」
そして危険を察知したティアナの見事な左アッパーカットに下顎を打ち上げられる。
アレンは握れと言われたが故に思いっきり握っただけであり、悪気はないのだが、まぁ、仕方のない結末と言える。
「握手で骨砕こうとするとかどこの格闘技の選手よ!!」
「しかし、握れと……」
「挨拶って最初に言ってるでしょうが!! はい! 復習!!」
「挨拶――おはよう、こんにちは等、道行く人々にすれ違った場合や、親しいものと出会った際に行われる行為の一つ、だったか」
「アレンと私は今親しくなったの! 親しいものにする挨拶で骨砕こうとする?」
「……しないのか?」
「し! ま! せ! ん!」
「ったくもう」と呆れ果てながらもアッパーカットにより赤くなった顎に当てるために氷を取りにキッチンへと向かうティアナ。
その後ろ姿を見ながら、アレンは懐かしい想いへと浸る。
……遠い昔、こんなことがあった気がするな。
仲間と呼べる人達とふざけ合って、他愛もない話をして、一緒にいられるだけで楽しかった。それだけで満足していた。
『だーかーらー、悪かったって! そんなに怒るなよ。な?』
『知らない!』
『頼む許してくれ! このとーり!』
『ふん!』
何がきっかけだったのか、アレンの脳は昔のやり取りを見せてくれた。
アレンと思われる男性が――今のアレンには想像もつかないが――女性に平謝りしているのが見える。
あれは誰だったか。女性の名はまだ思い出せない。が、とても大切な人であったことだけは思い出した。
だからこそ、夢の中のアレンは本気で謝っているのだろうから。
『師匠に黙って無理に魔術使うから暴発なんて起こすの』
『そのとーりでございます。お師匠様! 故にもっと教えて欲しいと思う所存でございまして! 何卒許してくださいまし!』
『……バカ?』
『バカでいいから! 頼むよ! な? な?』
『仕方ないなぁ……。次やったら本気で怒るからね?』
そう言ってクスリと笑った女性に記憶の中のアレンは釘付けになり。
『お前のいろんな綺麗なとこ知ってっけど、やっぱ笑った時が一番綺麗だよな』
『も、もう! 調子良すぎだってば……。 許してあげるからそういうこと言うの禁止!』
思わず、と言った様子でホロリとそんな殺し文句を口にした。
いきなりだったせいか、それとも単に言われ慣れていないのか、真っ赤に染まる女性は照れ隠しなのかプイっと顔を背けてアレンの視線から逃げる。
一方でアレンは許してもらえたこと自体が嬉しいらしく、飛び跳ねんばかりの勢いで立ち上がって快活に笑う。
『ありがとうございます師匠! これからはもう貧乳なんていいませ――』
『あーあ。またやってらぁ』
『こりませんねぇアレンさんも』
『ですなぁ』
『……(コクコク)』
そして、地雷を踏んだ。
やれやれと肩をすくめた仲間達にアレンはきょとんとして、失敗を悟る。
目の前に立つ、女性の負のオーラを目の当たりにして。
『えーと……待ったは?』
当然、無しである。
『吹っ飛べぇえええええええええええ!!!!』
『ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!』
何やら記憶の中のアレンは大変なことになりつつあったが、現実のアレンはそれを見て羨ましいとすら思う。
記憶の中のアレンも、相手の女性も周囲から見守る仲間達も、皆が皆、楽しそうで、生き生きとしていて。
映像が終わり、真っ白に染まった世界の中、アレンは今の自分を見つめ直す。
大よその感情というものを失い、意味もわからずただ魔族の討伐のみを目的として生きる今の自分は、昔の自分とはかけ離れている。
取り戻そうにも記憶が欠け過ぎてどうしようもない。仲間達がいればまだ何か変わったかもしれないが、昔のような日々は戻ってこない。
恐らく記憶の中の世界はもう、終わった世界の話であるとなんとなくだがわかってしまったから。
がらりと変わった世界が別世界の話であると否応なしにアレンに事実を突きつけている。
そこにかつての仲間がもういないのなら、それはもう……。
「アレン?」
「……何だ? ティアナ・ランスター」
ティアナの声に現実に引き戻される形でアレンは彼女に焦点を合わせた。
目の前には覗き込むような形で心配そうにティアナがアレンを見つめていた。
「いや、何ってほどでもないけど、なんとなく、悲しそうだったから」
「悲しい?」
不思議に思いながら自分の今の状態を確認する。
……自身の状態、身体には特に不調は感じられず。戦闘には支障無し。精神状態にやや乱れあり。理解不能。制御を試みる。失敗。
今までのように完全に自己をコントロールすることが出来ないことにアレンは無表情ではあったが驚いた。
何度も何度も制御を試みて、その度に失敗する。
なんのことはない。失敗の原因はアレン本人だ。
不確定要素は排除したいと思う一方で、大切にしたいとも思う。
そう、この不確定要素こそが――
「そうか。これが、悲しいということか」
――欲していた感情なのだから。
「何か思い出した?」
「昔のことを、少し……」
「そう」
「恐らくあれは――」
「言わなくてもいいから」
「しかし、報告が……」
何故思い出したのか、どうして思い出したのか。
そんなことは聞かず、深くは踏み込まず、話そうとしたアレンを首を振ったティアナが止める。
何故? 任務報告をしないなど傭兵としてあってはならないことだとアレンは言おうとした。
が、アレンの隣にストンと座ったティアナは変わらず首を振る。
「これは任務じゃないから報告義務なんてないの。悲しい時は素直に悲しめばいい。だから、無理に言ってくれなくたって良い。その辺りも理解してのパートナー。分かる?」
「……善処する」
「ん。よろしい」
理解不能、ではなく善処する。
アレンにすれば最大限に前向きの言葉を聞いてティアナは優しく微笑んだ。
その優しい笑顔が、記憶の中の女性と重なる。
そして、考える。あの時、記憶の中の自分は女性に対し、なんと言っていたのだろう? と。
思えば、ティアナと記憶の中の女性には共通点がある。
怒った時の顔も、呆れた時の顔も、人を引きつける不思議な力。笑った時に最大限に発揮されるその力は、言葉に出来たはずだ。それを昔のアレンは言葉にしていたはずで。
「先程の表情もそうだが、今のティアナ・ランスターは先程より……」
「何?」
顎に手を当てて考え込むアレンの顔を横に座るティアナが覗き込む。
交わる視線と視線。正面からティアナの顔を見た時、その言葉は自然と頭の中に落ちてきた。
「……綺麗、だな」
「ッ!? な、何言ってんだか」
「事実だが?」
「もういいから!!」
言葉にすれば、記憶の中の女性と同じように頬を朱に染めたティアナ。
「全くもう」と呟きながらも満更でもないのか、頬が緩んでいるのがわかる。
かと思えば、ハッとした表情を浮かべ、心配そうな目、というよりは疑いの目でアレンを睨む。
何かしたのだろうかと疑問に思うアレンだが、思考の結果そんなことはないと――アレンの中のみ――結論をだした。
ならば、何も引け目を感じることはないとしたアレンだが――
「アレン?」
「なんだ。ティアナ・ランスター」
「今日は私もお休みモードだったし、いきなり過ぎたから間に合わなかったけど、明日はアレンのことをなんとか出来るように手筈を取ったから、一緒に管理局にきて」
「管理局がどのようなものなのかはわからないが、了解した」
「でも、管理局の女の人にさっきみたいなこと言っちゃダメだからね?」
「……事実でもか?」
「言って良い場合とダメな場合があるの。いい?」
「……理解不能だ」
「ダメなものはダメなの! 返事は!?」
「……了解した」
――何故か、悪いことをした気分にされてしまっていた。
僅かばかりに思い出した感情ではどうしようもないのか、それともティアナがただそういう気分にさせるだけなのか。
どちらにせよ、感情というものは難しい。と改めて思い直す。アレンであった。
次回に続く
どうでしたでしょうか?
いやぁ、本当なら管理局までいきたかったんですけどね(笑
そうすると日付またいじゃうせいで区切りが悪くなっちゃうんできりました。
さて、荒かったですかね? ここまで勢いで書いたのは久しぶりなので何か気になる点があればご指摘いただければ幸いです。
質問などもお答えしますのでお気軽にどうぞー。
ではでは♪