魔法少女リリカルなのは Endless Story 作:ヨシュア・ブライト
予定ではもう少しはやく書き終えたかったんですがね。
どうにも仕事というのはままならんものです。
話数では3となっていますが、内容的にはやっとこさ1ぐらいの進み具合で申し訳ありません。
ちゅうかですね、だんだん二人が恋人にしか(ry
相変わらず勢い重視ですので少しへんな表現があったら申し訳ありません。
まぁ、取りあえずどうぞ♪
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記憶を失ったアレンへ感情というものを教えるため、ティアナの休日を返上しての勉強会はほぼ丸一日をかけて行われた。
文字通り血の滲むような努力の結果――
「大、丈夫、か?」
「人の心配できるようになったのね。答えはノーだけど……」
「ノー……?」
――教える側であるティアナが力尽きていた。
知ること知ることの全てが新しい発見のアレンは一日中ティアナに疑問を投げかけまくった。
その一つ一つに彼女は丁寧に答え続けた結果、体力が底を尽きたのだ。
今や彼女の姿は机に伏し、後姿でさえ疲労の色が見て取れる。まだ若いティアナは当然部下などいないし、人に教えるという経験も浅い。疲労が溜まり易いのは必然と言えるだろう。
しかし、その甲斐あってか、アレンはどうにか生活出来る程度の知識を得た――
「ティアナ・ランスター。ノーとは何だ?」
「はぁ……。違うって意味よ」
「成る程。記憶した」
――はずだ。
些細なことでさえ疑問に思えば聞いてくるアレンに疲れたと言わんばかりの溜息をつきながらティアナは答えてあげた。
……違う違う。こんなんじゃダメ。アレンは悪くない。こんなことで疲れてなんていられない。
彼女はアレンではなく気だるいと思った自分に叱咤する。
アレンの会話スキルは少なくとも先日よりはマシになっている。
戦闘直結の物騒な思考は変わらないにしろ、それにストップをかける知識がある。
アレンは努力を惜しんでいるわけではない。寧ろ理解しようと必死になっていた。それがわかるからティアナも一日を潰して教えたのだから。
少しだとしても前進している。意味はあると気持ちを切り替えた彼女は笑うことが出来た。
「よし。じゃあ朝ごはん作るわね。ちょっと待ってて」
「……いただきます」
「いや、まだ作ってないんだけど」
「ごちそうさま?」
「何を食べたのよアンタは……」
「……言葉とは、難しいな」
「安心しなさい。アレンの頭の中の構造のほうがよっぽど難しいから」
「それは、まずいのではないか?」
「ふふ。はいはい。まずいかもねぇ」
「どう対処したものか……」
「朝ごはんできるまでには解決しといてねー」
切り替えた直後にボケをかましてくれるアレンに脱力しながらも体勢を立て直したティアナは備え付けのキッチンへと向かう。
その間にもアレンは頭を悩ませていたが、どうせアレンの頭の中では常人には理解できない悩みが発生しているに違いないと考え、クスクスと笑いながらティアナは朝食の準備に取り掛かり――
「さてと、何にしよっかなと……」
「疑問がある」
「ッ!?」
「どうした?」
「気配を殺して近づいてくるなぁぁあああああああああああああ!!」
「ゴッ!?」
――拳一発。音もなく背後に現れたアレンの顎を左アッパーで打ち抜いた。
余談だが、アレンは紛れもない戦闘のプロであり、その反応を超える左アッパーという時点で十分な戦力である。
閑話休題。
「で? 疑問って? さっき悩んでたやつ?」
「いや、そちらは専門外のために切り捨てた。私の頭がどうであろうと戦闘行為には問題ない」
「……その物騒な思考がすでに周囲には有害なんだけど」
「寧ろ、ティアナ・ランスターの思考回路が常人とは異なるのではないかということを主張し――ぐっ!」
「で? 疑問って?」
先刻の疑問ではないのなら何だというのか。間になにやらボディブローのようなものが入ったような気がするが何事もなかったと言うかのごとく平坦な口調で訊ねるティアナにアレンはむくりと起き上がった。
「先日から思っていたのだが、この手間は必要なのか?」
「この手間って、料理を作ること?」
「ああ。養分を得るだけならば無駄なことのように思えるが……」
「……全世界のコックに喧嘩売ってるわね」
湯気の上がる朝食を――ちなみに作る気が消し飛んだためトーストで終了した――差しながら首を傾げるアレンに呆れながらどう説明したものかと思考を巡らせる。
半端な答え方をすれば戦闘直結思考のアレンは素材のまま食べたほうが効率が良いなどと言いかねない。
あくまでも普通の生活を送れることを前提に教育している彼女からするとそれは許容範囲外だ。
「取りあえず、一口食べてみなさいよ。そうね、プレーンのままじゃ味気ないし、ラズベリージャムでも――」
「摂取完了。一口で食べきるという任務も同時に完了した」
「――つけて食べなさいよって言いたかったんだけどね……」
なんとか教えてみようと試みたティアナだが、そんな暇も許さず、アレンは一瞬でトースト一枚を食べきった。
一枚を飲み込むまでが数秒にも満たない。
「食べてみてどう思った?」
「どう、とは? 特にはないが……」
「まぁ、プレーンじゃそうか……。じゃあ、これ食べて」
「……?」
前提から吹っ飛ばされつつもめげずに彼女は自分が食べていたトーストをアレンに与える。
自分のモノを与えるという事に若干恥ずかしい思いもあったが、それ以上に教えることを優先したのだ。
すでにジャムが塗ってあるソレを不思議そうに眺めながらも受け取ったアレンはいぶかしみながらも一口かじる。
先ほどとは違い、一口だけかじっただけだったが、咀嚼の時間は倍以上長い。それは彼が味わって食べている証拠だ。
「……美味しい、という言葉はこういった時に使うのか」
「同じものにジャム塗ってあるだけだけど、結構違うでしょ?」
「ああ」
「それを踏まえてさっきの疑問の答えにいきましょうか。
全く同じ分量、全く同じ栄養分だけど味だけが違う食べ物があると前提して、片方は味気ないさっきのプレーントースト。片方はラズベリージャムを塗ったラズベリートースト。食べるならどっちを食べたいって思う?」
「……後者だな」
「でしょ? それを手間がかかるからとか、効率が悪いからとか、そんな理由で作らないなんて勿体ないじゃない?
何より、自分の作ったものを人に食べてもらって美味しいって言ってもらえるのって嬉しいものなのよ」
「ほう……」
「本当ならもう少しマシな料理の時に言えればよかったんだけど……」
長々と喋り、最後にその一言を追加した後でティアナは改めて後悔する。
偉そうなことを言っているわりには出しているものはトースト一枚。自分のものを合わせても二枚。
調理方法は買ってきた食パンを焼くだけ。拘りも何もあったものではなく、せいぜいがラズベリージャムが自家製な程度。お世辞にも手の込んだ料理とは言い難い。
「なんかごめん。こんな料理で」
「……何故謝る?」
「だって、どうみても手抜き料理だし」
「……理解不能だ」
「え?」
この程度のモノでごめんと謝るティアナにアレンは首を振る。
記憶のない彼からすれば何の変哲もないトーストすら新しい境地であり、新しい味だった。そしてそれを行う意味をティアナは教えてくれた。
「エネルギーの補給としか思っていなかった食事に意義を見出せた。ティアナ・ランスターの謝罪は不要だ」
無駄だと思っていた行為に意味を見つけた。料理がどうであろうと間違ったことをティアナは教えてはいない。
ならば彼が思うのはやはり感謝であり、逆に謝られる意味がわからない。
無表情にそう言うアレンにキョトンとすることになったのはティアナだ。
言葉はやたらと堅苦しかったが、噛み砕けば気にしないでいいと言っているのと同じだ。
一般人が言った所で何とも思わなかったかもしれないが、それを戦闘バカたるアレンが言っているからティアナは呆気にとられたのだ。
「もしかして慰めてくれてる?」
「……わからない。思ったままを口にしている」
「へぇ、そっか……」
慰めるという行為の意味も知らないままソレを口にする。
演技と言う可能性はアレンには無く、本当の意味で相手を思っての行為であるという証明に他ならない。
……もしかしてアレンって、意外と優しい?
まだ二日目故、人間性がわかったとは言い難いが、記憶を失っても人間としての本質は変わらないという言葉を彼女は知っている。
「何だ?」
「ううん、何でもない」
そう判断するのは時期尚早であると思いながらも、少しこれからが楽しみになる。
証拠になんでもないと言いつつティアナの表情は明るいものへと変わっていた。
これから彼女はアレンに様々なことを教えていくことになる。
それこそ数え始めれば星のようにあるだろう。だからこそ、だ。
「じゃあ、朝ごはんも済んだことだし」
ティアナとアレン、常識人と戦闘バカ。誰が見てもデコボココンビがパートナーとなるために。
「時空管理局に出発よ!」
「ああ」
最初の一歩を踏み出そう。
「待て。ティアナ・ランスター」
「……何よ?」
気分的には出発へと気を向けていた彼女に空気を読まないもとい、読めないアレンから静止の声がかかる。
疑問で返しはしたが、そこはかとなく嫌な予感を感じていた。
というか、アレンがトーストを指している時点で答えは出ているようなものなのだが、彼女は抵抗したかった。
「食べないのか?」
「何を?」
「トーストだが」
「アレンが食べていいわよ」
「私の分は摂取した。あれはティアナ・ランスターのモノだ」
「お腹空いてないし」
「ティアナ・ランスターの今の状況は十分な活動エネルギーを得ていない。食べるべきだ」
「……ダイエット中で」
「それが何かは理解しかねるが、エネルギーの摂取を怠るという理由にはならない」
「じゃあ、途中で何か買って食べるから」
「今ある食料が無駄になる」
「あーもう!! わかったわよ!! 食べればいいんでしょ!! 食べれば!!」
「……何故怒鳴る?」
年頃の乙女的には自分から間接キスを行うという事態を回避したかったのだ。
まぁ、効率を最優先に考えるアレンの前には乙女心など理解されるはずもなく、玉砕するわけだが。
「ティアナ・ランスター。顔が赤いが……」
「うるさい黙れバカ」
「……?」
そうしてトースト一枚を「あー」とか「うー」とか奇妙な声を発しながら赤くなってちみちみ頬張ることたっぷり十五分。
今日この日、二人はパートナーとしての一歩を踏み出すわけだが、記念すべき第一歩は何とも息の合わない出発となったが――
「身体、心配してくれて、ありがと……」
「問題ない」
――少しだけ、二人の歯車がかみ合った朝だった。
そしてこの日、ティアナの中では何の変哲もないただのラズベリートーストが好きな食べ物へとランクインしたのであった。
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予定よりやや遅れる形となったが、管理局へと到着した二人。
駐輪所へとバイクを停車し、バイクから降りたティアナはすぐ後ろに降りたアレンを見るなり溜息をついた。
「平然としてるアンタが謎で仕方ないわ……」
「……?」
驚きもあったがそれよりも呆れが勝った様子のティアナ。
というのも、ティアナが住むマンションから管理局までの十数キロの道のりを二人乗りをして通勤してきたわけなのだが、後部座席に乗ったアレンはティアナに掴まることもなく、支えなしでここまで座っていたのだ。それも一度も揺らぐ事もなく。
つまり、風圧やカーブ時の慣性などをもろに受けても耐え切れる超常のバランス感覚及び筋力を持っているか、その全てを受け流し、殺しているかのどちらかをアレンは行っていることになる。
明らかに一般人が出来る所行ではなく、出来たとしてもまずしない。ましてや平然としているなどありえない。
しかし、そのありえない存在がティアナのすぐ側に立っている。
「管理局――現在の世界において数多ある次元世界を管理している巨大組織、だったか……」
ありえない当人はと言えばそんなことには興味がないのか、前日に教えられたことを熱心におさらいしていた。
その姿にティアナは苦笑しながら先程の考えを切り捨てると同時に自分を叱咤する。アレンが学ぼうとしている時に些細なことで固まり過ぎだ、と。
彼は今、右も左もわからない状態でここにいる。導く側であるティアナが止まっていては進むことさえ出来無い。驚いたりするのは後で良い。
「海、陸、空、局は大きく三つにわけられるの。ここ、ミッドチルダ・クラナガンにあるのは陸の本部。ミッドチルダは魔法の文化が進んでる世界だから、この地上本部には多くの人材が集まってくるのよ」
「ほう……」
納得したように頷くアレンの前をティアナが歩き、「こっちよ」と中へと先導する。
中に入れば広々としたエントランスが二人を迎える。
地上本部は規模が規模だけに相応の広さがあるはずだが、それを全く感じさせないほどの人、人、人。
一般局員に武装隊に執務官、etcetc。
管理局では職種ごとに制服の色が違う。人種も様々、稀にではあるが、使い魔の類まで存在しているため、本当に色とりどりな光景がエントランスには広がっている。
その光景を見た瞬間、アレンの足取りがぴたりと止まる。
「アレン? どうしたの?」
「……全員、味方だと信頼して良いのか?」
不思議に思ったティアナだが、彼の問いに合点がいったとキョトンとしていた表情を微笑みに変化させる。
早い話がアレンは警戒しているのだ。
子供が保育施設などの未知の環境に放り込まれた時に見せる反応と何ら変わりない。
……子育てって例え、案外間違ってないのかもね。
などと、内心では考えながら頷いてやると、彼女が言うのならとアレンも歩行を再会する。
「ふふ……」
「どうした?」
「別に~♪」
ティアナの後に数歩遅れで続き、特異な格好故に集まる視線にいちいち反応し、時折人が肩をかすめる度に驚いたように身を退く。人馴れしていないのが明らかに見て取れた。
彼女は全身で警戒の色を示すアレンが微笑ましくて仕方ない。悪いとは思いつつもその様子が可笑しくて。
「大丈夫?」
「……問題ない」
「って感じには見えないけどね。はい、お水」
「毒は?」
「何で私が毒をアレンに盛らなくちゃならないのよ……」
そんな調子で三十分。
神経をすり減らし続けた結果、受付を終了した時点でやや疲労の色を見せていた。
……でもまぁ、ボケが出来るだけまだ大丈夫か。
彼女は水を飲みつつ横目でアレンの様子を伺い、そう判断を下す。
三十分の間、常時警戒でいたにも関わらずアレンはまだ警戒を解くことはしていない。視線に対する反応もまだ続いているし、アレンの近くを他の局員が通ろうものなら身を固くしているのがその証拠。
「そんなに信用出来ない?」
「……難しいな」
「まぁ、ゆっくりでも良いから慣れなさいよ? これからアンタも同業者になるんだから」
「……どういうことだ?」
だが、慣れてもらわねば困るのだ。
ティアナが言ったように、アレンはこれから同業者となる。
正確にはそのための試験を受ける。
「嘱託制度って言ってね? 外部からの協力者は臨時措置で管理局下に身を置いてもらわないと色々問題が多いのよ。だから、アレンにはこれからその試験を受けてもらうの」
「……管理局の指揮下に入れということか?」
「まぁ、簡単に言うとそうなるわね」
嘱託魔導師とは俗に言う民間協力者のことだ。
管理局の仕事は簡単に言えば大きな問題が起きている世界へ干渉し、そこの人々が平和に暮らせるように統治することにある。
その際に訪れる世界は様々であり、一つ一つが大きく異なっている。
自然環境の変化程度ならば魔導師はバリアジャケットの適応システムがどうにかしてくれるが、時としてそれ以外にも専門の知識や力を必要とする場合がある。
そんな時、現地の住民に力を貸してもらえるように作られた制度が嘱託制度だ。
この制度の大きな特徴は管理外世界にも対応するために市民登録などの一切が必要ない所にある。
つまり、アレンのような身分が証明出来ない人間でも管理局に有益であると認められれば嘱託魔導師になれるのだ。
前例としてはフェイトや八神家のヴォルケンリッター等がこれに当たる。
嘱託魔導師となり管理局下に入り、有益であると判断されればアレンの身柄は管理局預かりとなり、後ろめたいことは無くなる。
確かに管理局に監視されることになるため好き勝手やりたい放題とはいかなくなるが、逆に言えば必要な場所ではバックアップを受け取れるともとれる。
「勝手に申請したのは悪いと思ってる。けど、今私が貴方にしてあげられる最善はこれだと思うから、だから、お願い……」
とは言え、今まで単独で動いていたアレンが組織に属することを良しとするのかティアナには不安があった。
なんとかすると意気込んではいたが、相手が嘱託魔導師を拒否するという可能性もゼロではないことを彼女は今更になって思い至ったのだ。
アレンはと言えば大量に流れ込んできた情報を整理しているのか俯き、無言のままだ。
そのままの体勢で二分ほど経った頃、アレンは顔を上げてティアナと視線を合わせる。
「……一つ聞きたい」
「うん」
二分の間、アレンは管理局に入ることで生まれるメリットとデメリットを考え続けていた。
メリットはティアナに説明してもらった通り、有益だと判断されれば管理局がバックアップしてくれるということだ。
デメリットは少ないものの、後々に監視の目は邪魔になるかもしれない。
それでも、アレンは――
「ティアナ・ランスターが考えた結論が嘱託魔導師とやらになる。ということでいいのか?」
「ええ」
「ならば、私はその提案に従う」
――ティアナの提案を呑んだ。
あまりにあっさりとしたアレンに逆に驚くことになったのはティアナだ。
「えっと……、いいの? そんなに簡単に決めても」
「……? 最善ではないのか?」
「ううん、あんまり簡単に決めるからびっくりしちゃって」
「私が考えた所で最善が出せるとも思えない。ならば、この世界を知っているティアナが思う最善に従った。それだけだ」
「そう。ありがと」
至極当然のこと。
そういうかの如く淡々と述べるアレンにティアナは笑った。
アレンに信じられている。少なくとも名も知らぬ人よりは確実に。
他の人よりも一歩分、アレンのパートナーとして近しい距離にいる。その事実に優越感を感じながらティアナはアレンから背を向けた。
「何処へ行く?」
「もちろん、仕事によ」
少しでもアレンを動きやすくするために。
本来、彼女は海の本局所属執務官という立場であり、ここ、陸との関わりは薄い。
そんな彼女がここにいる理由が、魔法生物の異常発生の調査だ。
こういった筋道の立たない事件は苦手分野だったりしたのだが、アレンの登場で糸は一本に繋がり始めた。
そしてそれが魔族であるという確認が取れれば、討伐の専門分野であるアレンは事件の重要人物となり、多少のことでは咎めはなくなるはずだ。
一石二鳥。仲間のためにもなるのならやる気の乗り具合も違うというものだ。
「アレン・テスタクルさん、特別試験会場にどうぞ」
「ほら、アンタもお呼びよ? 頑張ってきなさい」
「……何をすれば良い?」
「嘱託魔導師になるためにはいくつかの方法があってね? 今回アレンが受けることになったのは一番例が少ないんだけど」
一つ目は学科試験、模擬戦、儀式魔法の三つを合格基準内の点数を収めること。これはフェイトが通った最も一般的な方法だ。
二つ目は提督以上の階級の局員が現場判断で臨時措置として認めること。そしてこちらはなのはが通った方法。
そして三つ目は――
「アンタが一番得意なことね」
「……了解した」
――模擬戦を行い、試験官を勤める教導隊員に認められること。
一つ目の模擬戦と違い、点数換算ではなく、試験官が直接判断を下す所が大きく異なっている。
この三つ目は魔法知識に乏しい突然変異型の魔導師のために設けられたものだが、模擬戦で全てが決まってしまうため選ぶ人間はほとんどおらず、一つ目の道を通る魔導師が多い。
だが、アレンの場合、魔法知識所か、魔導師ですらない。そもそもとして専門とする分野が違うのだ。
故に三つ目。アレンの戦闘能力に頼ってみたのだ。
「ティアナ・ランスター」
「ん?」
「対象の殺害は――」
「ダメに決まってるでしょうがバカたれ!!」
「――ダメなのか……」
ただ不安があるとすれば、教導隊の人間をアレンが誤って殺してしまわないかという不安だ。
「おいおい、いくらなんでもそりゃ無理だっての」
「……嘘」
その不安も一瞬にして消し飛んだ。
背後から響いた聞き覚えのある粗暴な声。
相手は教導隊の中の誰かだとは聞いていた。だが、こんなレベルの人間が出てくるとは流石にティアナでも予想外。
振り返れば彼女の視線の頭一つ分下あたりに子供が立っていた。
「おーティアナ。久しぶりだな。で? コイツがアタシの相手か?」
燃えるような赤毛を二つに下げた髪型。釣りあがった大きな瞳ニッと笑う口元。身長も相まって可愛らしいと言えば可愛らしいが、知る人が見れば、否、管理局に所属してその名を知らない者の方が少ないだろう。
八神はやてとは深い絆で結ばれた家族であり、エースオブエース、高町なのはの相棒。
「……貴様は誰だ」
「な!? すみません!!」
「いーけどよ。おめーアタシを知らねぇのか?」
「知らん。ただの子供ではないことはわかるがな」
「まぁ、いいや。アタシは――」
そんなことを知らないアレンは礼儀も何もあったものではなく、思ったことそのままを口にする。
キモを冷やしたのはティアナだ。こんな見た目をしているが少女はティアナやアレンよりも遥かに年上であり、階級もまた同じ。
それを気にした様子もないのか少女――少なくとも見た目の話だが――は不思議そうな表情を浮かべた後、自己紹介に移った。
その少女は教導隊所属、機動六課スターズ分隊、元副隊長。
「――《鉄槌の騎士、ヴィータ》。よろしくな」
そうしてヴィータはもう一度ニッと笑ったのだった。
はい、どうだったでしょうか。
んー、個人的には微妙に不調なような気がしないでもない文ですが、まぁ、気にしない方向でいくって決めたので押し通しました。
これに関してなにかあればお気軽にどうぞ。
最後に、ここまで読んでくださった方々に感謝を。
全力にて! ありがとうございます!!