魔法少女リリカルなのは Endless Story 作:ヨシュア・ブライト
久しぶりに戦闘描写かいたのと微妙に書くのが苦手なヴィー娘がマッチングしたせいかいまいち乗り切れないというね。
誰か、ヴィー娘を上手に書く方法を伝授してくだせぇ!!
という悲しみの咆哮をあげつつ、作者は去ります。どぞ♪
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ヴィータの後ろについていく形でアレンが《特別試験会場》と書かれた部屋に入る。
入る前の印象はただ広いだけの真っ白空間。としか思わなかったが、ヴィータが指先を宙に走らせたかと思うと空間が変質を始める。
何もない所から物質が生まれ、硬質化し、組み上げられていく様子は街が出来上がっていく仮定を早回しで見ているようだった。
「これが魔法とやらか……」
「まぁ、その一種だろ。機械に関してはなのはみてーに好きでもねーし、専門分野でもねーから詳しくは教えられねーけど、結界魔法の類なのは確かだな」
「なのは?」
「そういうのに詳しい奴がいんだよ」
帰ったらティアナにでも聞いてみな。と話を切り上げる。
世間話話は終わり。ということだろう。
「試験方法はティアナから聞いてるな?」
「ああ。ヴィータを殺さずに倒せばいいのだろう?」
「ま、簡単に言えばそういうことだな」
ともすれば挑発とも取れる発言にもヴィータは毛ほども動じず《グラーフアイゼン》を起動、騎士甲冑を身に纏い、戦闘準備を終えていく。
彼女から漲るのは並々ならぬ自信と気迫。奢りでも過信でもなく、経験から裏づけされた実力者が持つ独特の気配。
虚勢でも気を張れれば上場。怯えて逃げ腰でも並。何も考えられなくなれば下。
アレンの反応はいかほどのものかと窺うヴィータ。
「アタシからしてやれるアドバイスは一つだけだ。余計なこと考えずに持ってるもん全部絞り出せ」
「了解した」
「お、おう。そうか」
が、予想された反応のどれともアレンは違っていた。
全くの無反応。変化という変化が感じられない。
淡々とし過ぎている返事にヴィータは本当に始めていいのか決めかねる。
……コイツ、こんなんで大丈夫か?
彼女にはどうにもアレンがボーっとした締まりのない男にしか見えない。
というのも、必要なこと以外には無口で、無愛想で、無表情。緊張しているというのならわからないでもないが、そんな様子も感じられない。
逆にどうすればこうなるのか逆に不思議でならない人間。それがヴィータの抱いている印象だ。
「バリアジャケット、と言ったか」
試験開始直前、ほとんど無言を貫いていたアレンが口を開く。
「アタシのは騎士甲冑って言うんだが、大きい違いはねーよ」
「どちらでも構わない。その騎士甲冑とやらの防御機構は万全だと信頼していいのか?」
「……問題ねー」
問いに答えながらヴィータは瞳を細めた。
アレンの問いは明らかにヴィータの身を案じている。そこがまずおかしい。
普通ならば試験官に当てること自体が難しい。加えて試験官を務めるのはエースと呼ばれる人間が数多くいる教導隊に所属しているヴィータだ。
この時点で戦意を喪失するものもいるだろう。それ以外にしても何らかの反応を見せているはずだ。
だが、アレンは変わらない。ヴィータのことを知らなかったにしても変化が無さすぎる。
そんなことが出来るのは力量知らずの愚か者か、熟練した戦士以外にはありえない。
どちらにせよ、ヴィータの取った行動によって答えは出る。
小さな身体が宙に浮く。それはゆっくりとした速度で上へ上へと上昇していく。
やがてヴィータが停止した時、高度は高層ビルの屋上よりもさらに高い。アレンの姿は遥か下。
「試験開始だ! 全力で来い!」
どう来るのかと、アレンがこれから取る行動を予測しながら彼女は試験開始の声を響かせる。
「戦闘状態へと移行。対象との距離推定四十メートル。得物は槌、能力未知数。確定情報として飛行能力有り――」
「おいおい……」
開始の声を聞いた瞬間、アレンの中のスイッチが切り替わる。
纏っていた外套から闇が生まれ、液状であったソレはやがて漆黒の大剣となり形を成す。
ここは魔法の世界。それだけならばヴィータも左程驚かなかっただろう。彼女が息を呑んだのはアレンの変化であった。
「別人じゃねーかよ」
ぴりぴりと肌がひりつく感覚。この感覚を彼女は知っている。――威圧だ。それを放っているのは嘱託魔導師になろうかというはずの人間で。
だが、遥か下にいるはずのアレンから放たれる闘気は明らかにソレから逸脱している。
「――任務遂行に、支障なし……」
見上げるアレン、見下ろすヴィータ。
空と地上、異なる舞台で交わされる視線と視線。
この戦いのキーパーソンは空にいるヴィータをアレンがどう攻略するかという所だが、それを支障なしとアレンは断じた。
「ッ!!」
またしてもヴィータは驚愕に目を見開くことになる。
アレンにとっては至極当たり前の事。彼女が虚を突かれたのは彼を常識の範疇で捉えていたから。彼女でなくとも我が目を疑っただろう。
地上にいた人間が”ただの一跳び”で目の前に現れたのだから。
飛行ではなく、跳躍。発動までのタイムラグはゼロ。何らかの術式を行った形跡も見られない。
つまりこれは、”アレンが素の身体能力で跳んだ”という証明。
「はぁッ!!」
「アイゼン!!」
【Panzerschild!】
ヴィータとて基準は人間。虚を突かれれば反応は遅れる。
遅れの代価は攻防の差に明確に現れ、攻撃モーションに入っているアレンに対し、ヴィータが出来たのは手をかざすこと。
上段に振りかぶられた大剣が裂帛の気合と共に叩きつけられる。パンツァーシルトを展開するも即席の障壁で防ぎきれるほど斬撃は甘くはない。
食い込む刃、ひび割れる障壁、限界だと障壁が一際輝いて――
「ぁぁぁあああ!!」
――ガラスが砕け散るような破砕音と共にシールドが砕け、ヴィータの小さな身体が吹き飛んでいった。
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半壊した高層ビルから瓦礫がガラガラと崩れ落ちる。アレンの一撃により衝突したヴィータが起こした被害だ。
それだけで先刻の一撃がどれだけ重い一撃であったかを物語る。
魔導師ではない彼に非殺傷設定などというモノは存在しない。繰り出した斬撃はそのままの威力で対象に向かい、傷つける。
魔族を狩るために磨かれた剣技が人に向けられた場合、並の魔導師ならば即死級。
だが――
「フリーゲン!」
――ヴィータは並の魔導師ではない。
直撃の瞬間にバリアバーストを行うことで自ら吹き飛び最小限に被害を抑え、すでにシュワルベフリーゲンによる反撃を行っていた。
紅い線を引き、高速で飛翔する鉄球。空中で動くことの出来ないアレンに襲い掛かる。
数にして四つ。紛れもない直撃コース。
「……捕捉」
「チッ」
が、鉄球は着弾することなくアレンのコートより放たれた漆黒の牙状をした射撃によって一つ漏らさず打ち落とされる。
舌打ちをするも一箇所に止まってもいられない。すぐさま飛翔しビルより脱出すればヴィータの眼下に無数の射撃によって完全に倒壊するビルが映る。
障壁を破壊するだけの膂力。ビルを倒壊させる射撃。破壊力は一級品とヴィータは判断づけ、身体を横にスライドする。
頬をかすめて黒光を放つ鎖がジャラリと揺れる。ヴィータを捉えることは出来なかったが、代わりに背後にあった別のビルの壁に突き刺さる黒鎖。
ピンと張る鎖。見れば根元はまっすぐにアレンのコートに伸びている。
また古風なものをと、内心苦笑しながらヴィータはアイゼンを、アレンは大剣を構える。高低差にして三十メートル。
「「オォ!!」」
距離は互いに詰め寄ったことにより零となる。
アレンは射出した鎖を引き戻し、ヴィータは重心を傾けた急降下。
共に狙うは勢いを乗せた渾身の一撃。振り抜かれる剣と槌、大気を震わす咆哮を放ち、激音が大気を揺らす。
すぐさま離れて”空戦”へともつれ込む。
「身軽な奴……」
市街地エリアは足場や隠れるものが多く、陸戦を得意とする魔導師に有利に働きはするが、アレンほどではないだろう。
元より常識を逸した脚力が可能とする壁蹴り移動に加え、黒鎖によって行われる変則軌道。
フリーゲンを放って牽制を試みるも、漆黒の弾丸となったアレンは易々と潜り抜け大剣をヴィータに叩きつける。
しかし、いかにアレンの身体能力が高くとも、空はやはりヴィータの土俵。
空では一撃離脱を行わざるを得ないアレンに対し、彼女は地形の有利を活かして攻めたてる。
アレンが一度の攻勢の間にヴィータは三度。しかも、アレンの体制が崩れるに連れ四度、五度と数を増していく。
直撃こそ無いものの、アレンの劣勢は言うまでもなく、防戦一方となったアレンは弾き飛ばされ、並び立つビルに叩きつけられて――
……来る!
――違うとヴィータの直感は判断を下した。
弾け飛ばされたにしては足裏がビルの壁に対して平行過ぎる。弾き飛ばされたのではない。自分から飛んだのだ。
彼女の直感は正しく、ビルの壁へと着地し、思い切り膝をたわませる。
今までほとんど行っていなかった予備動作だ。アレンは壁を蹴って跳躍するだけなら必要ないからだ。
必要ない動作が追加された。それが意味する所は一つ。
全力での跳躍、だ。
ガン、と言う破砕音。彼の跳躍力に耐え切れずビルの壁が砕けた音だった。
アレンの姿が一瞬にして残像と化し、音速に等しい速度で跳ね上がる。ヴィータのとの接触までは瞬きの間もないだろう。回避しようにも速すぎる。
故にヴィータが選ぶのは迎撃一本。
「オオオォォォ!!」
「りゃぁああああ!!」
大気に再び震えが走る。
が、拮抗は今度は一瞬で崩れる。
乗っている勢いが違いすぎた。加えて、単純な膂力はヴィータよりアレンが勝る。拮抗が崩れるのは必然とも言える。
膂力勝負になれば今度はアレンの土俵。鍔迫り合いへともつれ込もうとするアレン。
しかし、この状況に持ち込むことこそがヴィータの狙いだった。
「さっきの! 返すぜ!!」
「……ッ」
アレンが突貫してくるであろうことは彼女は予想済みだったのだ。
やられっぱなしでは終わらないそれが鉄槌の騎士だ。
二人の間にキラリと光に反射する黄金の弾丸――カートリッジが落ちていく。
【Flammeschlag】
重く響いた金属音声をアレンの聴覚は一瞬しか捉えない。
そんなものより眼前に炸裂する大音響のほうが何倍も大きいからだ。
アレンの眼前が紅蓮に染まり、直後に彼を襲うのは身を焦がす熱風と叩きつけられる衝撃だ。
反発する磁石のように漆黒の身体は風を切り裂きビル郡へと突っ込んで停止する。
濛々と上がる土煙。直撃だ。衝撃を逃がす間すら与えない。
――ジャラリ。
という音を足元よりヴィータは聞いた。
そして悟る。逃がす間がなかったわけではなく、”衝撃を逃がす必要すらない”が正しい解だったのだと。
ヴィータの足首に絡みつく黒鎖がそうであると告げている。
些細なダメージを気にして防御を行うよりも次なる攻撃に繋ぐ一手を優先した。それだけの話だ。
「どんだけ攻撃一辺倒な頭してんだよオメーは!!」
「無駄は省く。それだけだ……」
飛行魔法で抵抗するも、鎖は千切れる様子もなく確実にヴィータを引き寄せる。
待ち受けるのは大剣を構えるアレンだ。その身で硬質の壁を砕きながらもダメージを受けた様子もない。
インレンジに入れば寸分違わぬ威力で大剣が唸ることだろう。元よりそれを見舞うために防御を捨てたのだから。
並外れた頑強さがなければそんな発想すら浮かばない。つまりはアレンの計算通り。ヴィータの攻撃力はアレンの計算内のレベルだということだ。
……インレンジだとちっとばかし厳しいか?
もう一度フリーゲンを叩き込んで隙を作るか、それとも鎖自体に攻撃して破壊するか、どちらにせよ離脱をしなければヴィータに不利。
そうして考えている間にもアレンとヴィータの距離は確実に縮まり続けている。手遅れになる前に、そこまで考えてヴィータはおかしなことに気付く。
何故こんなにも自分は逃げ腰になっているのか、と。
遠隔攻撃を打ち込んだ所で近接の一撃を耐え抜いたアレンに効果があるとは考えにくいし、鎖を破壊した所でその後に何が出来る?
思わずヴィータは笑いそうになる。日よっている、と。
小さな事件はもちろんあったが、彼女が前線に出るような大きな事件はここの所起こっていない。
しばらく続いた平和は彼女を教導官としては成長させてくれたが、教える側の人間は生徒を潰してはならない。本気で攻撃に出るということが極端に減ったのだ。
それが彼女にストッパーをかけていた。故に浮かぶ逃げの判断。
《逃げ》では届かない。ならば《攻め》に転じる必要があるだろう。
「ワリーなアイゼン。目は覚めた」
【Kein Problem】
問題ないと答えると同時にアイゼンはその姿をラケーテンフォルムへと変形させる。
これまでの彼女は教導官としてのヴィータだ。これより先こそが鉄槌の騎士と鉄の伯爵の真骨頂。
何であろうとも、何人であろうとも、鉄槌が捉えた全てを砕き、叩き潰す。例外はない。
「なぁ、アレン」
「何だ?」
「ちょっとマジになってもいいか?」
口調は寧ろ今までよりも穏やかに、落ち着いた雰囲気を放ちながらヴィータが尋ねる。
無論この間も引き合いは続いており、気を抜けばヴィータはアレンのレンジ内へと引きずり込まれる。
が、ヴィータは動かない。
ヴィータの纏う空気が変質しつつあるのをアレンは感じ取る。
マジになる、の言葉の意味はわからなかったが、気配が全てを語っていた。
故に、答えは一つ。
「無論だ」
「戦闘バカめ」
犬歯を覗かせニッと笑う。笑みそのものは子供のソレであったが、ヴィータの中ではスイッチが切り替わっている。
《教官》から《騎士》へと。
「ラケーテン!!」
アイゼンがラケーテンフォルムへと変形し、噴射口から噴出する魔力によって生まれた推進力により、猛烈な勢いで鎖とは逆方向にヴィータが飛翔する。
撒きついた鎖を逆手にとり、身体ごとビル内から引きずり出さんという勢いだったが、脅威的な脚力でアレンは耐え忍ぶ。
あろうことか鎖を手で掴み再びヴィータを引き戻す。
「ハンマァァァアアアーーー!!」
「……ッ」
それが失策。ヴィータは逃げるために行動を起こしたのではない。思惑は全く逆のところにあった。
アレンが逃すまいとして鎖を引いた瞬間、ヴィータは転進。相手の力をも利用しての攻撃へと転化させる。
ロケットの推進力とアレンの膂力、二つが合わさった一撃はまごうことなき必殺級。
右即頭部へ向けて叩き込まれた一撃は。
「……良い攻撃だ」
「あっさり防いだ奴が言う台詞じゃねー」
篭手を纏った右腕によっていとも容易く防がれる。
反応されたこと自体が驚きだが、彼女の一撃を篭手があるとはいえ右腕一本で受け止めるその膂力に改めてヴィータは辟易する。
与えた被害は篭手にヒビを入れ、アレンを数歩分横に動かした。それだけ。
しかし――
「けどな……」
【Explosion!】
――ヴィータは止まらない。
カラリと落ちる三発目のカートリッジ。死んでいた推進力が息を吹き返し、篭手に食い込んだピックがさらに押し込まれる。
「そんなモンで止められると思うな!!」
加わる力、篭手に広がる亀裂、カタカタと揺れるアイゼンは脈動か。
「ブチ、抜けぇええええええええ!!」
炸裂、衝撃、激痛。
同時に襲いくる三つの感覚。
加わる力に篭手が耐え切れずに砕け、ピックが横腹に突き刺さった瞬間、アレンの足から地表の感覚が消え去り、身体ごと持っていかれたのだと知覚した時には対処は間に合わない。
易々壁を突き破り、それでも尚ヴィータの攻勢は止まらない。
進路上には以前としてビル郡が立ち並んでいる。ヴィータはソレに構わなかった。
「オォォォォォオオ!!」
貫通、倒壊、貫通、倒壊、貫通、倒壊。
突き抜けて突き抜けて突き抜けて破壊を繰り返してまだ先へ。
破壊者となった真紅の流星はどこまでも真っ直ぐ空を駆けて行く
「オオゥゥ、ラァァアアア!!」
そうして限界――結界の壁へとアレンを叩きつける。
己の運動エネルギーを全て乗せた上で、衝撃を逃がしようもない体勢で打ち付けられる。容赦のない、教官ではなく、騎士の一撃。
アイゼンから放熱される膨大な煙の量が彼女がどれだけの魔力を込めたのかを物語る。
どんな防御をも打ち砕く。鉄槌の騎士と鉄の伯爵の名を体現するかの如き一撃であった。
「オメー、実は人間じゃねーだろ?」
「……?」
が、届かない。
全力を持って打ち込まれた鉄槌。アレンは未だ意識を保っており、戦闘可能であることを告げていた。
出力リミッターのかかった状態のヴィータとアイゼンではアレンを倒すに至らない。それが全て。
満足はいかないが、局に身を置く以上仕方のない措置なのだ。
「次は、本当の全力で戦いたいものだな」
「上が許してくれたら、な」
「楽しみにしている……」
だからもし、次の機会があったのなら、そして上の許しが出たのならその時はリミッター無しの真の意味での全力をこの日の仕切りなおしをこの日二人は約束する。
こうして、アレン・テスタクルの試験は合格、という形で幕を閉じた。
黒衣の男が八神ヴィータに勝利した、という噂を局内に残して。
はい、どうでしたでしょうか?
うーむ、初戦闘ってことでちょっと気合いれたかったんですけどね、なんか気合いれるとこがずれたような気も……。
ま、深く考えずにいくって決めたのでこのままの勢いで走りますってことで!
最後にここまで読んでくださった読者の皆々様に感謝を込めまして終わりとします。
ありがとうございました!
ではでは~♪