魔法少女リリカルなのは Endless Story 作:ヨシュア・ブライト
これは嘆くべきなのか、細かくなってきていると無理やりプラスに持ち込むべきなのか。う~む。
まぁ取りあえずは次の話への流れは作れたのでよしとします。
後は更新速度だけですね。頑張ります。
ではどうぞ~♪
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「で、アンタは勝っちゃったわけね……」
「そうらしい。正確にはヴィータが判断して試合が中断しただけだが」
帰宅後、晴れて嘱託魔導師となったアレンから内容を聞いたティアナは、驚くを通り越して呆れていた。
だから局内が賑やかだったのか、と額を抑えてぼやきながら。
「何故だ?」
「アンタがヴィータさんに勝っちゃったからよ……」
「だが、ヴィータには枷があった」
「それでも、よ」
相手は全力ではなかった。全力ではない相手に勝利した所でそれが普通なのではないかと思っている彼は首を傾げる。
そうは言うが、ランクこそダウンしているが、彼女が培った戦闘経験はリミッターではどうにもならない。
機動六課設立当初、同じく教導隊に所属するなのはは、AAランクまでリミッターをかけられて尚、当時新入隊員だったとはいえFWメンバー四人を纏めて相手にして手玉にとっていたのだ。
一対一となれば並大抵の魔導師では相手にもならない。それほどまでに教導隊に属する人間に勝つことは難しい。それを倒したともなれば噂になるのも頷ける。
……頼もしいって思うのが普通なんだろうけどね。
確かな力量を持った人間が自分を守ってくれている。そのことに全面的に良いことだと頷けない。寧ろ不安が大きい。
何故ならアレンが何かをしでかした際、それを止めるのはティアナなのだから。
そしてアレンはその何かをしでかす可能性が凄まじく高い。頑張っているのはわかるのだけれど。
「どうした。ティアナ・ランスター?」
「別に。ちょっと先のこと考えて頭痛がしてただけ――どこ行く気?」
「医師、とやらを呼びに……」
あぁ、気を使ってくれたんだと微笑んだのも束の間だった。
呼びに行くのは良いとしよう。素直に嬉しいし、気を回せるようになったのは確かな成長ではある。ただ、方法が問題だ。
普通にアレンが医者を呼べるわけがないという確信がある。
病院に突撃し、拉致するが如く医者を連れ去ってくる想像が容易に浮かんで青ざめた。
バカらしい話だが、それをやりかねないのがアレン・テスタクル。
「いいから! っていうかアンタが行くととんでもないことになりそうだから!」
「そうか?」
「その不思議そうな顔が何で出来るのかしら……。じゃなくて!」
違う違うと首を振る。そんなことより話したいことがティアナにはあった。アレンが試験を受けている間に調べたことについて、だ。
情報が得られると判断したのか立ち上がろうとしていたアレンがストンと座り込む。
きちんと聞こう。そういう姿勢が見られるようになったことをティアナは内心で喜びつつも気を引き締めてから話を切り出した。
「アンタと私が会う少し前からね。新種の魔法生物による被害が拡大してるの。――有り得ない規模でね」
「ほう?」
「今までだって魔法生物による被害もあるにはある。けどね、今回の数は常識を逸してる。
歴史的に見ても稀なケースなの。あまりにおかしいから、”海”に所属してる私まで陸に出向するように命じられた。海と陸と空の多方面から状況を見て判断しようってのが現状」
ティアナら執務官の他にも武装隊も動き、目は向けられ始めてはいるものの結果は芳しくない。
人員を導入したことで民間人の被害縮小には成功しているが、原因は不明のまま。ここまでの成果はゼロに等しい。
確かな情報もないままの戦闘のせいか、隊員達の被害はどんどん増えている。中には殉職した者もいる。
このまま行けば膨大な数の死傷者が出るだろう。早急な対策が必要だった。
その対策法が確立されていないのが問題なのだが、もしそれがティアナの予想通りだったならばアレンは人々の希望足りえるかもしれない。
「この世界のものさしで考えれば魔法生物の異常増殖。そうとしか判断出来ないから誰もわからない。私だって自分の身に何もなければそうとしか思わない」
けどね。そうティアナは繋げた。
彼女は関わってしまった。魔族を滅ぼすと宣言している存在と。
アレンが言う、魔族が本当に存在し、魔王がいると過程するならばたどり着ける答えがある。
魔族の存在。それはあくまでも可能性の話だった。しかし、今日の時間を利用し、被害が大きな地帯へと赴いた時、可能性は核心へと変わり掛けていた。
荒れ果てた現場の状況は文字通り滅茶苦茶だった。至る所に残された巨大な傷跡と踏み砕かれた大地。目的というものが感じられない。否、破壊こそが目的だったのではないかとさえ彼女は思う。
それを前提に踏まえ、推測出来る答えは――
「これって、魔族がミッドを侵略してるんじゃないかって思ったの」
――侵略行為ではないか、と彼女は言った。
口にしながらも馬鹿げた話だとティアナは思っている。
時空の守護者。だから時空管理局。展開規模は文字通り全次元空間。
そんな相手に正面きって喧嘩を吹っかけよう。などと考える輩がどれだけいることだろう。テロリストですらもう少しモノを考える。
それが呪縛。あり得ないと誰もが考えるから予想もつかない。
あり得ないことなど、あり得ない。どんなに可能性が低くともゼロで無いのなら、ましてや不確定要素が転がっている今は疑ってかかるべきなのだ。
「どう? アンタが知る限り、その魔王ってのはやりかねない相手なの?」
「……魔王がどんな人物であったか、記憶を失っている今、正確な所はわからない」
が、わかることがあった。
何故そこを自分が記憶しているのかは謎ではある。ただ、なんとなく昔の自分は魔王のそんな所が嫌いではなかった気がする。
だからこそ、最大の敵であるはずの魔王の特徴を覚えているのだろうから。
『古風だと? 貴様はわかっていない。魔王が普通の城に住んでいては魔王らしくないだろう? 魔王は魔王らしく振舞うから魔王なのだ。魔王に生まれた宿命と言っても良い』
『じゃあ何だ? 俺が魔王討伐なんて言いださなけりゃお前は何もしなかったのか?』
『それはない。宿命と言っただろう? 私と貴様は争いあう運命にある。そういう星のもとに生まれた。……生まれてしまった。だからこそ私は魔王であり続けなければならない。貴様も同じだ。故に、魔王らしく私は振舞うためこの城を建てた。理解したか?』
『……お前、ややこしい理由つけてっけど、実は城作ってみたかっただけだろ?』
『……仕方のない奴だ。この城を作らねばならない理由をもっと詳しく話してやろう』
『マジ、イラネーっす』
この会話が敵同士の会話、付け加えるならば、光の陣営と闇の陣営の頂点同士の会話だというのだから不思議だが今は置く。
重要なのは記憶の通りに考えるのならば魔王は魔王らしくあるための行動を取る。
行動理念をそこに置くと、魔王がどう動くかが見えてくる。
「ありえる、な」
「……そう」
可能性はある。と、アレンは重々しく頷いた。
時空管理局は守護者。つまりは光の陣営と仮定できる。ならば魔王が取る行動は敵対。滅ぼすために動いてもおかしくない。
付け加えるなら、魔王軍は明確な敵意があるのに対し、管理局側は敵がいることに気付いてもいない。
なんとかしなければならないとティアナは思う。局の意識を変えるだけの材料がいる。
「んー……」
「何を悩んでいる?」
「交渉の材料。管理局は組織だからね。上の人間が頷かない限り人は動かないの。で、全員が全員そうってわけじゃないけど、上の人って言うのは体裁を大事にするから頭が固いことが多いのよ。それを頷かせるための材料がいるってわけ」
「私にはわからない思考だ」
「上に行けば行くほど責任は大きくなるから。はいそうですねって簡単には言えなくなるのよ。組織が大きくなればなるほど、ね?」
「……大軍を率いる将と同じ、ということか?」
「あー……まぁ、そんな感じ。多分……」
半ば投げやりに答えたティアナを気にかけることもなく、ふむと一つ頷くアレン。
そんなアレンにティアナはそこはかとなく、いや、かなり、いやいや、凄まじく、嫌な予感がした。
長年スバルに付き添い、鍛えられた苦労人センサーが告げている。絶対ろくなこと考えていないぞコイツ。と。
「ティアナ・ランスターの目的は指揮官なる人間の意識を変えること。そのために、魔族が存在する、という証明を行えば良い。相違ないか?」
「う、うん……」
「ならば、狩れば良い」
「……もう一度言ってくれる?」
訊ねはしたが、彼女の耳はしっかりとアレンの言葉を捉えていた。
ただ、その方法が間違ってはいてくれないかという希望をこめて聞きなおしたのだ。っていうか察してよというオーラを発して。
アレンは戦闘バカである。戦うことにおいてのみ、彼は満点の成績を誇るが、コミュニケーション能力はゼロ点。いや、最近は血の滲むような努力の甲斐あって十点ほどだろうか。
問、そんなアレンが空気を読む、ということが出来るのか?
「狩れば良い、と言った。魔族の殆どが魔王の影響下にあるのなら特有の反応があるはずだ」
最も早いのは邪気を感じ取れる人間がいることだが、などなど、アレンの話はまだ続いていたが根拠を語っているようで実はそうでもない。
結局、アレンの言っていることは敵を倒す。ということが大前提の上での話しなのだから。
これ以上ない直球勝負。脳筋ならではの発想と言える。ついでに言うならアレンの中には罠を張って捕獲するという案すらない。
堂々と正面から打ち倒す。それだけだ。気持ちいいほどにティアナと真逆の思考である。
「最も効率が良いと思うが、どうだ?」
「………………ちょっと、泣きたい」
「……理解不能だ」
ここで先程の問に対する解を述べよう。出来るわけがない。
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沈んだ気持ちを切り替えて翌日――
「酷いわね……」
「ああ……」
――二人の姿は事件現場にあった。アレンは事件関係者として同行。ティアナが監督の下という条件で許可を貰っている。
残された傷跡は凄惨と言うほか無く、ほとんどの建造物は瓦礫の山と化し、良くて半壊と言った所か。
不幸中の幸いなのはここはすでに民間人の非難は完了しており、人的被害は出撃した武装隊以外にはない。
問題はその場所だ。というのも、ここは地上本部を中心とすれば西側にあたり、首都であるクラナガンからそう遠くない位置にある。このまま進めば近いうちに首都に交わるのは想像に難くない。
必然的に警戒レベルも上がり、警備も堅くなる。それは人員が増えるということであり、目撃証言が取れる可能性が高い。だからこそここを選んだのだ。
「じゃあ、私は聞き込みしてくるからアレンは――」
「……濃い」
「――アレ、ン?」
「どうした?」
「ううん、何でもない。何でもないから……」
「……」
まずは情報収集。そう思い、分担を割り振ろうとしたティアナは固まった。
一瞬。本当に一瞬だったが、背筋が凍るほどの殺意が無差別にアレンから放たれたのだ。
手を見れば、震えていた。デスクワークが増え、前線からは遠ざかったが、JS事件を乗り越えた実績あるティアナが、だ。
――世話役なのに、情けないわよ。ティアナ・ランスター。
前途多難なことはわかっていたはず。心の内で自分を叱咤する。
右にいるアレンからは見えないよう、左手の拳を握り、巣食った恐怖心を飲み下す。
それでも、それでもまだ、震える手は止まらなくて、止まってくれなくて。
「……私が、怖い、か?」
「――え?」
「ティアナ・ランスターが感情を殺す必要はない。私は、問題ない……」
「違っ!?」
ポツリと呟やかれたアレンの言葉。内に込めた想いは読めずとも、対象の精神状態を把握することに関しては彼は異常なほど鋭い。
つまり、ティアナが自分に対して何らかの理由で恐怖している。ということは読み取れるのだ。
これはどちらが悪い、という問題ではない。ただ、偶然が重なってしまっただけ。
それを弁明しようとティアナは口を開き――
「ティィィィーーーーアァァァァァーーーー!!!!」
「誰か来るぞ。迎撃するか?」
「え!? 迎撃は止め――きゃあっ!!」
――その声は突如として響いた大声にかき消された。
声の人物が誰かを確かめる間もなく、横合いから謎の人物に押し倒され悲鳴をあげる。そんな状況でもアレンの戦闘ボケを止めた彼女の手腕は流石としか言い様がない。
「あのねぇ……」
「久しぶりだね! ティア! 半年振りくらい?」
「メールならしょっちゅうしてるでしょ。しかもアンタの要望の映像付きで」
「そういうことじゃないんだよ! 私が生ティアとの会話をどれだけ心待ちにしてたと思う?」
「生ティアって何よ!!」
「生ティアは生ティアだよ!」
「過度の興奮による思考能力の低下を確認――止めるか?」
「アンタがやったら死人が出るから止めなさい!!」
「ティアー! 生ティアー!」
「比較的容易な行動をティアナ・ランスターより推奨。再思考……」
「あぁぁーーーもう!! うっさいってんのよバカァァァァァァーーーー!!!!」
朝、詳細時間は八時四十六分。
本日のミッドチルダは穏やかな気候、雨の確率はゼロ。絶好の洗濯物日和。誰もが認める爽やかな朝、ティアナの咆哮がコダマする。
その様を眺める他の局員は口を揃えて言う。「嵐のような三人だ」と。
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嵐の発端となった女性は、スバル・ナカジマだった。
災害が相次ぐ中で最も本部に近いとされ警戒レベルの高いこの区域だが、被害も大きいため、もしもの場合に備え、自己防衛も出来る人員として派遣されて来た所を、偶然ティアナと出合った、というのがことの経緯である。
「私はスバル・ナカジマって言います。所属は防災課の特別救助隊に所属してます」
「……」
「? どうしたの?」
「あぁ、ごめん、スバル。コイツちょっと訳ありでね。――アレン、スバルは私の仲間で、友達だから」
「……アレン・テスタクル」
騒動を経て、自己紹介を行うも、差し出された手を握ろうとしないアレンにティアナがフォローを入れられ、警戒を薄めたのか、ようやく言葉を紡ぎ、おそるおそると言った様子で右手を持ち上げ――
「よろしくね! アレン!」
「ッ!? ッ!?」
――電光石火。それこそ手が霞むほどの勢いでアレンの手を取り、否、奪い取るというに等しい速度でスバルが握り締め、ぶんぶんと振り回す。
彼には当然ながら体感したことのないフランクさ。元より警戒心の塊とも言って良いアレンにとって予想外過ぎる事態。
きょろきょろと周囲に視線を泳がせる彼はどこからどうみても挙動不審そのものだ。
身体は予想外の行為に離脱を働きかけているが、頭ではティアナの仲間という前情報があるため悪意がないのは確認済み。この状況がアレンを混乱させるという事態を招いている。
「ティアナ・ランスター。救援を、依頼する」
「んー?」
「救援を……」
「気が向いたら、ね?」
「ッ!?」
ついでに言うならば、アレンにとって唯一の助けになりうる存在のティアナが笑いながらその光景を見ているだけで手を出す様子がないことがさらなる混乱を呼んでいる。
どうすればいいのか、落ち着いて考えればわかるだろうが、なんせ、落ち着く間がない。
「私のことはスバルでいいから。私もアレンって呼ぶし」
「……ス、バル?」
「うん!」
ぶんぶんと手を振りながらも人懐っこい笑みを浮かべる彼女。
相変わらず落ち着けないに限るが、もしかしたら無理に落ち着く必要もないのではないか? という思考が浮かぶ。
初対面で、しかも上手く挨拶も出来ない自分にスバルは近づこうとしてくれている。寧ろ、そんな彼女を警戒している自分が愚かだと思う。
……ティアナ・ランスターが信頼している。根拠は、十分だ。
ティアナが仲間だと言った。友達だと言った。
何をしているのだろう。躊躇う理由など最初からありはしない。
「……よろしく、だ。スバル」
「よろしく! アレン!」
やっとの思いで紡いだ言葉を聞いて、より一層嬉しそうに笑ったスバルは「友達の
儀式しゅーりょー!」っと叫ぶ。
「……儀式、だと」
儀式。その言葉を聞いてアレンの背筋に冷や汗が流れる。
彼の記憶によれば前提条件が必要な儀式系の魔法は大半が強力なものが多い。
最高クラスのものになれば世界を滅ぼすものさえあるのだ。最も、儀式=破壊に限ったものでもないのだが、戦闘直結な彼の頭にそんな考えは浮かびもしない。
「……言っとくけどアンタが考えるような怪しいやつじゃないから」
「……世界の、危機だ」
「だ~か~ら~! 聞きなさいってば!」
「止めるな。ティアナ・ランスター。私は命を賭して止めなければならない」
素晴らしく無駄な男気を見せるアレン。正しく火に油であった。
逆にティアナから放たれるモノはそれはそれは寒々しいモノではあったが。
「……私さ、言ってもわからない奴には、相応の手段ってものをとっても罪にならないと思うわけよ」
「何故、ティアナ・ランスターは殺気を放つ?」
「ん~、それは難しい問題だね。まぁ、ティアも難しいお年頃ってことじゃないのかな?」
「お年頃とやらになれば殺気を放つのか?」
「ん~、どうなのかな? ティアは昔から短気なほうだったし……」
「難しいな」
「ね~」
「……」
そこから先、ティアナは一言も言葉を発することはなかった。
ただ、周囲の人間がその光景を見て、口を揃えてこういうのだ。阿修羅が降臨なされた、と。
この騒動で薄れていた。いや、意図的に忘れようとした、というのが正解なのだろうか。
ティアナは心の底に沈めたのだ。先刻、アレンを怖がってしまったという嫌な記憶を……。
はい、第五話でしたー。ほんとはもうちょいのほほんとした話だったはずなんですけどね。あまり気にせずに書きたいことかいてたらこうなりました。
相変わらずのスローペースですが、頑張りますのでよろしくです。
ここまで読んでくださった読者の皆様にありがとうございます。
では、これにて失礼します。