そして全くない恋愛要素。あれ、おかしいな。こんな(2回目
あ、後半はもう少ししたら投稿します。
ピピピピピ…
早朝から自己主張する目覚まし時計を止める。カーテンの隙間から覗く空は、まだ暗い。それなのに、鳥の囀りが聞こえる。鳥は、何時に起きてるんだろうか、なんて取り留めのないことを考えながら時計を見やる。
五時。うん、いつも通りだ。のそりと起き上がると、二階の寝室から一階のリビング、その中にあるキッチンへ向かう。弁当を作るためだ。
別に作らなくても学校には食堂があるが、作れるなら自分で作りたいというのが俺の気持ちだ。米は昨日のうちに炊いておいたので、問題ない。
さて、弁当の中身だが…ぶっちゃけ、考えてない。毎朝気分で作っているからだ。おかげでこんな時間に起きることになってしまっているが、習慣なので変えられない。
そして今日の弁当だが、正直がっつり食べる気もないので、おにぎりにしようと思う。具は梅干しとおかか。たまたま有った。
◇◆◇
さっさと作って約十分。さすがおにぎり手軽で早い。…が、時間がずいぶん余ってしまった。ただいま五時十五分くらい。二時間近く暇になってしまった。
いや、実際には着替えがあるので一時間半くらいだが、そんな時間をどう潰せと言うのか。課題は終わってるし、たもはまだ起きてない。ゲームはあるが、朝からゲームもなぁ。あいつなら迷いなくやるんだろうけど。
今日は学校の始業式。新入生の入学式は春休み中にやるので、入学式ではなく始業式なのだ。
今年で俺は高校二年生になる。が、俺は部活に入ってないので後輩とかはあまり関係ない。いや、乱入なら時々させられるが、部員の人とは話すことがない。
つまり、どっちにしても直接的に関係のある後輩ができるわけではないということになる。別に先輩って言われたいわけじゃないし、いいんだけどさ。あ、でも委員会があるか。
さて、本当にやる事がないぞ。掃除は昨日したし、他の細々としたことも休日のうちにやってしまった。二度寝してもよかったが、目が冴えてしまったし。早起きは三文の得というが、早すぎてもな。んー、テレビでニュースでも見るか。
ニュースで時間を潰して今は七時。朝ごはんは昨日の残りの肉じゃがを食べた。煮物はいいぞ、たくさん作れるし残っても日持ちするし。一人暮らしの心強い味方である。何より美味いし。
閑話休題。さて、そろそろ身支度を済ませないと。早朝に起きたくせに遅刻とか笑い話にもならん。
顔を洗って歯を磨いて、着替えを済ませて持ち物確認。もちろん眼鏡は掛けた。所要時間は十分。ちょうど良い時間だ。
「行ってきます。」
家を出て、鍵をかけるのも忘れない。前にかけ忘れた時はどうしようかと思った。幸い何事もなかったけど、もうあんなに不安になりたくない。
未だ少し涼しい道を進み、俺の家から三件隣の家に向かう。学校に行く前に此処に寄るのは俺の日課だ。確か、小学校中学年あたりから習慣化されていた気がする。最初は待ち合わせ場所を決めてたんだけど、時間になっても来ないんだ、あいつ。
インターフォンを鳴らし、少し待つと『今行くー』と若干間延びした眠そうな声で応答される。
それから数秒、ガチャッと勢い良く扉が開き、寝癖をつけた俺の数少ない友人が現れた。右手にトーストを持って。相変わらず寝起きが悪いようだ。単に朝に弱いだけかもしれないが。
「おはよう。」
「おっはー。いやぁ、たった今起きたばっかでねー。超眠い。」
見ればわかる。若干間延びした声と、手に持ったトーストを見る限り、本当にさっき起きたばかりなのだろう。ふぁ、と大きなあくびをすると「行こうぜー」とトーストを食べながら歩く。行儀が悪い。
この男が、俺の幼馴染であり親友の『中川亮太』だ。中川家長男で、爽やか系イケメン。そう、イケメン。大事なことなので二回言った。人当たりが良く、明るい性格のため友達が多い。成績も上位の方で、なんでもそつなくこなす。そしてモテる。すごくモテる。しかし、本人は女子にさして興味がなく、告白されても断っている。その子がどんなに可愛くても、だ。全国の非モテに喧嘩を売っている。このやろう。因みに今年からこいつの妹がうちの学校に入学する。
「にしても、面倒だよな。放送委員って。朝早くから準備しないといけないし、舞台裏とか忙しいし。やりがいあるっちゃあるけどさ。」
「しゃーないだろ、そう言う仕事だし。」
学校までは十五分。今から行っても、七時半には着いてしまう。なぜそんな時間に行くか、と言われれば放送委員の仕事があるからだ。早く行って始業式の準備をするという仕事が。
ちなみに、七時半に学校にいるのは先生と、俺たちのような仕事がある生徒と、部活の朝練に来ている生徒だけだ。人気のない校舎は不思議な雰囲気で、結構嫌いじゃない。
「クラス、また一緒になるといいな。」
「そうだな。お前、俺が居ないとクラスで孤立するもんなー。」
「そ、そんなこと………ないし?」
「目、泳いでるぞー。」
はっはっはー。と笑う亮太に言い返したいが、結局事実なので諦める。仕方ないじゃん、怖がられるんだもん。実際に打ち解けた人は両手でも余裕で足りる。悲しいことにな。
◆◇◆
二人で話しながらの登校は、存外早く感じるものである。昨日の醤油事件の話や、休みの間にあった事とか。楽しい時間は早く過ぎるように感じるからね。
校門をくぐり、下駄箱へ向かう。そういえば、一年生の頃と場所が変わるんだったな。
俺たちの通う『藤咲高校』は、それなりの進学校で私立校だ。指定校推薦が多く、そのため受ける人も多い。俺たちが受験を受けた時の倍率は、五倍に近い四倍だったか。とりあえず、人気は高い。
一学年三百人で、全校生徒は九百人前後。他の学校を知らないから多いか少ないか分からない。一学年七クラスで、一クラス四十四、五人。中学時代と比べたらずっと多い。
下駄箱の近くへ行くと、先生が待っていた。ほい、と渡されたプリントは、クラス分けのものだ。裏にプリントされた物は講堂の席かな?放送の仕事で居ない俺らには関係ないが。
俺たちは文理選択で理系を選んでいるので、E組かF組かG組になるはずだ。クラスが同じになる確率は三分の一。さて、どうなるか。
さ…さ…、と、自分の名前を探す。
『堺優人』
あった、G組だ。そしてついでに亮太の名前も発見。
「一緒のクラスだ。」
「マジで?…お、本当だ。よかったよかった。」
二年G組の下駄箱へ向かい、自分の名前の書かれた所に靴を入れ、上履きに履き替える。そのまま教室には向かわずに講堂へ。少し早いが、まあいいだろう。
亮太と話しながら食堂前を通り、講堂に入る。舞台裏に向かうと、既に数人が忙しなく動き回っていた。その中に、もう一人の幼馴染の姿も見つける。どうやらあちらも気付いたようだ。
「おっはよー!二人とも元気してたー?」
「この前二人でうちに飯たかりに来たくせによく言えるな。おかげで余計な手間が…」
「エーソンナコトアッタッケーアレーオボエテナイナー。」
白々しすぎる…!が、ここでいくら言ったってこいつに意味がないのが分かっているため、「今度は事前に言っておけ」と注意するだけで終える。というか、いつもこれ言ってるんだけどな…。
この幼馴染こと『島崎渚』は、この学校にある女バスのキャプテン候補と言われる程の女子高生である。三度の飯と同じくらい運動が好きで、活発なやつだ。あと、よく亮太と飯をたかりに来る。何を言っても聞きゃしないから、もう半ば諦めてるけど…。
趣味は運動と美形な人を探すこと。本人曰く、『鑑賞に性別は関係ない』だとか。
「おー、堺に中川か。おはよう。」
「先生、おはようございます。」
「阿部ちゃんじゃん。ちーっす。」
「ちーっす。あ、島崎こんなとこにいたのか。あっちで呼んでたぞ。」
「リョーカイです!じゃ、亮ちゃん、ゆーくんまた後でね!」
バタバタと忙しなく走り去る後ろ姿を見送り、溜息をつく。相変わらずあいつは落ち着きがない。
「堺と中川は無線の用意しといてくれな。俺は一旦職員室行って来るから、任せたぞー。」
そう言うと阿部先生は、いそいそと行ってしまった。大方朝食でも摂りに行くんだろう。あの人は学校の食堂でよく見かけると有名だし。
さて、しょうもないことを考えているうちに亮太は準備を終えたらしい。両腕に番号の書かれた無線を抱えてやって来た。
「俺があっこからやるから、お前はあっちでな。聞こえなかったら教えて。」
「ん、了解。」
無線の一部を受け取ると、講堂の端に行く。亮太は、放送の機材がある部屋に向かって行った。
しばらくして、無線から「聞こえるかー?」と亮太の声が。
「聞こえてるぞー。うん、全部異常なしみたいだ。」
『おー、よかったよかった。今回も全部平気そうだな。』
「もう戻るぞ?」
『オッケー。』
無線チェックはすぐに終わった。以前、まだこれをやっていなかった時に無線が通じなくてグダグダになったことがあるそうだ。それ以来、これは毎回やっているらしい。
ま、そんな事は置いといて次の仕事に向かうかね。
◆◇◆
あの後は、大体始業式での動きの最終確認をして終わった。現在八時十分ちょい過ぎ。もう来てる人もちらほらいる。
『2-G』と書かれた教室に入ると、既に数人が固まってグループを作っていた。俺たちはというと、自分の机に荷物を置いてそそくさと教室の端に寄った。
教室に入った瞬間は若干視線が集まったが、すぐに散った。むしろ俺を見つけた瞬間勢いよく逸らされた気がする。慣れてても多少ダメージはあるんだからね!
まあ、察しの通りいつもこんな感じだ。不本意ながらな。
「うわ、やっぱり堺ってあいつのことじゃん。サイアクー。」
「うわマジだ。ちょっとー、わたし、もうクラス替えしたいんだけどー。」
「それな。マジ最悪。」
聞こえてるから。ヒソヒソやってるけどバッチリ聞こえてるから。ああ、肩身がせまい。居づらい。外見がいじめの種になるとよく聞くが、何もここまで顕著にならなくてもいいと思うんだ、俺は。
「あー、まあ、最初はこんなもんだろ。大丈夫、すぐ無くなるさ。」
どうやら亮太にも聞こえていたらしく、フォローしてくれる。ああ、俺はお前みたいな友達がいて幸せだよ。これだから飯をたかりに来ても許せるんだ。事前に言ってこないのは別として、ね。