目つきが悪いだけなんです   作:蛇神

3 / 3
一応後編です。まだこの日の話は続きますが、とりあえず優人視点はこれで終わりになります。


始業式の日2

感傷に浸る間も無く、どんどん生徒の数は増えて行く。それに応じて教室内にも居場所がなくなり、俺たちは廊下に出ることになった。

でも、悲しいかな、廊下に出たら出たで良くも悪くも注目されるんです。お前らそんなに目つき悪いの珍しいか。くっそ、お前らこっちみんな。

 

「ほんと、なんでお前怖がられるんだろうな。三白眼でもないのに。性格だって優しいじゃん?いくら顔…つーか目つきか。が、悪いったってここまで普通なんねぇだろ。」

 

ほんとそれ。俺もなんでここまでされるのか分かんない。でもさ…

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、そんな正面から言われると…」

 

「なんだ、照れたのか?」

 

そう言ってヘラヘラ笑う亮太。だって、優しいとかあまり言われたことないし…。

 

「ま、他の評価なんて気にすんなって。お前はお前なんだからよ。」

 

それが出来たら苦労しない、という言葉を飲み込む。こいつ、時々いいことを言う。しかも、それがピンポイントだもんで、困ったもんだ。

 

 

ーキーンコーンカーンコーン

 

 

「あ、予鈴が…。戻るしかないか、あの地獄に……。」

 

「地獄て。普通に教室って言えや。」

 

人気者にはあの突き刺さる負の視線が分からないんだ…、と嘆きながら戻る。

 

教室では、皆予鈴に反応して慌ただしく着席していた。中には、まだ先生が来てないから大丈夫と言っている猛者もいるが。

俺たちも例に漏れず着席する。俺が座った瞬間隣の女子の顔が引きつったのは見間違いであって欲しいところだ。

 

「うーっし、全員座ってるなーっと、水谷なに立ってんだ。予鈴鳴ってるぞー。」

 

「うわっ、すんません!」

 

なんの前触れもなく阿部先生襲来。そうか、先生G組の担任だったのか。クラス分けのとこに書いてあったんだろうけど、全然見てなかった。すまん先生。

 

「えーと、今日は始業式なので……あ、その前に朝の挨拶か。んー、じゃ、澄霧頼むわー」

 

「あ、はい。起立。おはようございます。」

 

『おはようございます!』

 

「着席。」

 

俺の後ろの席のやつ…澄霧と呼ばれた男子生徒が号令をかけ、挨拶。なんか手馴れてる感じがするな。去年もこの役割をしてたのか?

 

「さて、と。今日は始業式なのでこれから講堂に行きます。んで、始業式が終わったらここに戻って来て提出物の提出や、諸連絡をします。えー、もういい時間なので、このまま講堂に行きますか。座席はクラス分けのプリントの裏にあるので、自分の番号のとこに座ってください。んじゃ、移動開始ー。あ、あんまり騒ぐなよー。」

 

阿部先生がそう言うと、一気に皆が動き始める。既にグループを作っている者は、固まって駄弁りながら。そうでない者は一人で、講堂に向かう。俺たちはといえば、いつも通り二人で移動していた。

 

がやかやと騒がしい廊下を歩く。ま、多少騒ぐなと言われた程度ではそんなに静かにならないわな。人間だもの。

ちなみに、時々聞こえる金切声のような女子の声は、俺にとって恐怖の対象である。

 

◆◇◆

 

講堂についた俺たちは、人の波から外れて他より小さな扉から入った。というのも、この扉は舞台裏にそのまま繋がっていて、そこから講堂の放送室にはいった方が近いのだ。

 

「おっ、亮ちゃんゆーくんさっきぶりー。遅かったねぇ。」

 

「お前が早すぎるんだっての。なに、一番乗り大好きなの?」

 

「皆が遅すぎるんだよ〜。」

 

それ、待ち合わせ三十分前に来てるやつの台詞じゃないと思う。早すぎるのは失礼なんだぞ。

 

「さ、仕事仕事。ゆーくんプロジェクターの準備して来た方が良いんじゃない?」

 

「そうだけど、話逸らしたよな、今…。」

 

「細かいことは気にしな〜い。禿げちゃうよ〜。」

 

「そうだぞ優人ー。」

 

ふ、不吉なことを言うでない!そして亮太も乗るんじゃない。てか、その程度じゃ禿げないだろ、多分。……え、なに、本当に禿げるの?なにそれ怖い。

 

「じゃー俺はもう照明んとこ行くから。じゃあな!」

 

「あ、私も壇上の最終確認しなきゃ。バイビー!」

 

「あ、ちょ、え?言うだけ言って行っちゃうの?って、もう居ないし。」

 

はあ、相変わらず嵐のようなやつだ。本当に、もう…。

ま、時間も迫ってるし切り替えていかないとな。

 

 

◆◇◆

 

 

始業式は滞りなく進み、終了。何事もなくてよかったよかった。校長先生が思いっきり噛んでたけど。

 

後片付けを終え、他より少し遅れて教室に戻る。人が少なくなった廊下を歩いている間、俺と亮太の間に会話はなかった。別に喧嘩したとか、そう言う訳ではない。ただ話すことがないだけである。

 

居心地が悪くなるなんてことはないので、良いのだけど。

 

そんなことを考えていると、後ろから物凄い勢いで何かがぶつかって来た。何か、と言ってもだいたい分かっているけど。

 

「私を置いて行くなんて、酷いじゃないか。うん?」

 

「置いてった訳じゃないぞー。先に行ってただけだぞー、渚。」

 

「それを置いてったって言うの!亮ちゃん!ね、ゆーくんもそう思うよね?」

 

「んー、とりあえずもうちょっと静かにしようぜ。人の耳元で話すな騒がしい。はよどけ。」

 

「酷い!こんなか弱い女の子に向かってそんなことを言うなんて!」

 

「か弱い(笑)」

 

か弱い女の子は腕相撲で運動部の男子高生に勝てません!あんたこの前圧勝してただろ、白々しい。

 

ブーブー言いながら離れる渚。そう、最初からそうしとけば良かったんだ。

 

「あ、そうだ。お昼ってどこで食べるの?どうせ二人で食べるんでしょ?」

 

「昼食あるの前提かよ…。ま、食べるけど。」

 

「いつもんとこにする予定だぞー。それで良いよな、優人。」

 

「ああ。」

 

場所を変える必要もないので、肯定する。

 

「そっかー、分かった。今日は私も一緒に食べるね。」

 

「それはいいけど、今日は心も来るぞ?あいつコミュ力の塊だから、多分誰か連れて来るかも。」

 

「あー、ここちゃんもう高校生か。時が経つのは早いねぇ。一つしか違わないけど。」

 

「なんだ、心ちゃんも体験入部すんのか?」

 

「おう。今日俺らが部活乱入行くっつったら、『じゃあわたしも体験入部するー』って張り切ってたぞ。」

 

「はあ、さいで。じゃあ、今日の昼は賑やかになりそうだな。」

 

「楽しみだねぇ。あ、私こっちだから。まったねー!」

 

「また後でなー。」

 

ブンブン手を振って渚は廊下を右に曲がる。渚は文系なので、A〜D組のいずれかの筈だ。そして、A〜D組とE〜G組では教室のある棟が違う。だから、必然的にここで別れることになるのだ。

ちなみに、俺たち理系はまっすぐ行けば教室に着く。まあ、高二なので階段で二階に上がる必要はあるけども。

 

…にしても、教室に戻るの嫌だなぁ。早く昼になればいいのに。

 

 

◆◇◆

 

 

時間はとんで昼。なに、教室に戻った後?いつも通りの反応でしたが何か?あ、諸連絡はちょっとした注意みたいなものだった。

 

俺たちは、いつもの所ー-食堂裏の大きな木の下にいた。ここはいい感じで日向と日陰があるので、過ごしやすい穴場だ。

普段はその木の下に座って昼食を摂っている。

 

俺たちが来た時はまだ誰も居なかったので、皆が来るのを待ってから食べ始めようということになり、今に至る。

 

木に寄りかかってボーッとしていると、曲がり角から人影が見えた。三人。そのうち二人は見覚えがある。渚と心ちゃんだ。じゃあ、もう一人は?

 

「いやー、スマンスマン。待たせたみたいだね。ここちゃんがなかなか見つからなくてさ。」

 

そう言って笑う渚。後ろでは、心ちゃんが照れ臭そうに笑っている。

 

「だって、なぎねぇが来るなんて聞いてなかったんだもん。あ、そうだ。この子、紹介するね。ほらほら、隠れてないで出てきなよ。」

 

「ふぇ!?」

 

それまでずっと心ちゃんの後ろに居た人は、突然話を振られて驚いている。それはもう、変な声が出るほどに。

おずおずと出て来た子は、どこか見覚えがあった。

 

「じゃーん!この子があたしのファーストフレンド、華奈ちゃんです!可愛いでしょー。」

 

「あ、えっと、宮野華奈ですっ。一年G組ですっ。」

 

ペコリ、とこおじぎをして言う。礼儀正しいな。

 

「俺は中川亮太!一応心の兄だ。よろしくな!」

 

「俺は堺優人。よろしくな。」

 

「私は渚だよ。島崎渚。よろしくねぇー、華奈ちゃん。いやぁ、ホント可愛いよね。ゆーくんも亮ちゃんもそう思うでしょ?」

 

うん、そうだけどあんまりいってやるな。宮野さん顔真っ赤だから。明らかに照れてるから。やめたげろ。

 

視線を宮野さんに戻す。肩あたりまで伸びる茶髪に、クリッとした大きな目。前髪をヘアピンで留めている。今は真っ赤な肌だが、本来はもっと白いんだろう。

…うん、ここまでいっといてなんだけど、今の俺って変態じゃね?と言う事でここまでにしておこう。

 

というか、やっぱり見覚えあるんだよな。しかも、随分前じゃなくてここ最近の記憶で。なんだったかな。

 

「うっし、全員揃った事だし、飯にすっか!」

 

グダグダ考えている間に、亮太の音頭で飯になった。まあ、思い出せないんじゃ仕方ないし、また後で考えよう。

 

「えっと、ここに座るんですか?」

 

ある程度戻って来たらしい宮野さんがいう。そうか、普段は気にしてなかったけど、地面に腰を下ろすのは抵抗あるよな。

 

「ふっふっふっ…。こんなこともあろうかと、レジャーシートを用意して来たのさ!」

 

バーンと効果音が付きそうな勢いでレジャーシートを出す心ちゃん。用意周到だね。

 

「さ、華奈ちゃん。ここに座りたまえよ。」

 

「いいの!?ありがとう!」

 

パッとはながさくような笑顔でお礼をいう宮野さん。やっぱり見覚えあるんだよなぁ…。

 

「いただきまーす!」

 

早速弁当にがっつく亮太。相変わらずいい食いっぷりだ。

皆が食べ始めてから少し遅れて、俺もカバンからおにぎりを取り出して食べる。うん、うまい。

 

 

 

 

食べ始めてから大体十分。亮太はすでに食べ終わり、俺のぶんのおにぎりも食べた。俺もおにぎりな上、亮太に取られたので既に食べ終わっている。

 

渚も渚で、女子にしては多い弁当を今さっき食べ終わった。

現在は一年生コンビと話していて、たまに俺たちが加わるという構図ができている。今の話題は、部活だ。

 

「何部入るのかもう決めたの?」

 

「うん、あたしはバド部に入ってみようかなって思ってる。華奈ちゃんは?」

 

「私は、まだ…。あの、先輩方は何部に入っているんですか?」

 

「私は女バスだよー。この二人は帰宅部。んー、そうだ!華奈ちゃん予定がないなら女バスに来てみない?」

 

「でも私、バスケはあまりやったことがないんです…。」

 

「初心者大歓迎だよ!見学だけでもいいからさ、どう?」

 

「えっと、じゃあ、はい。行ってみます。」

 

「よっしゃ!仮入部員一人はゲットー!」

 

半ば無理矢理仮入部が決まってしまったが、本人は割と乗り気なようだ。まあ、嫌だったらやめればいいし、色んな部活を体験するのも悪くないだろう。

 

「あれ、そういえば堺先輩と中川先輩は部活入ってないんですよね?なのになんで、ご飯があるんですか?」

 

「お、気付いた?実は俺たち、部活によく乱入しててな。今日もその予定だから飯食ってんだ。あ、もちろん乱入って言っても迷惑にならない程度だし、顧問が許可くれたらだから心配すんなよ?」

 

「はあ、そうなんですか。」

 

この学校ってそんなことできるんだぁ、と呟いて最後の一口を放り込む。誤解の無いように言っておくが、普通はそんなことしないからね?しないっていうか出来ないからね?こいつがおかしいだけだから。

 

「じゃ、みんな食べ終わったみたいだし行こっか!亮ちゃん、今日はどこに乱入するの?」

 

渚が立ち上がって亮太に問いかける。心ちゃんもレジャーシートをたたみ、片付けた。

 

「そうさのう……、折角だしバスケ部にすっか!」

 

「おおー。じゃあ一緒に行こう。」

 

今日はバスケ部か。バスケは苦手じゃないが、疲れるからあまりやりたくないな。隙を見て隅っこに避難しよう。

 

 

五人で固まり歩き始める。駄弁りながら歩いていると、体育館の屋根が見えてきた。そこでなんの脈絡もなく渚が言った。

 

「そういえばさ、華奈ちゃんってゆーくんのこと怖くないの?」

 

と。

そういえばそうだ。忘れていたわけではないが、俺は目つきが凶悪だと言われる。警察からは職質され、チンピラからは絡まれる。数少ない友人からは明らかに堅気じゃないとのお墨付き。それが俺だ。

 

そんな俺が初対面の人となんの抵抗もなく話す。そんなの異常事態だ。明日は槍が降るかもしれない。

 

「えっと、あの…。」

 

そんな考えに浸っていた頭が宮野さんの声で引き戻される。どうやら亮太も渚の言ったことにハッとしたらしく、俺と同じように考えに沈んでいたらしい。

 

男二人ぶんの視線を受けて首をすくめながら、宮野さんは話し始める。

 

「き、昨日のことなんですが…私、怖い人たちに絡まれてしまって…。困ってたら、凄く目つきの鋭い人が来たんです。私は『あ、この人達の大将かな』って思って、怖くなっちゃったんですけど…。でも、その人は怖い人たちを追っ払ってくれて。その時に、私は人を見かけで判断しちゃいけないっていうのは本当だったんだなって思ったんです。だから、堺先輩も本当に怖い人じゃないなら、怖がるのはとても失礼だなって…。」

 

それを聞いて、渚なんかはなるほどねぇ、と納得しているが、俺はそれよりも違うことに驚いていた。

 

「昨日って、フレマの前のことか?」

 

「あ、はい。よく分かりまし…た……ぁあ!も、もしかして昨日の!?」

 

「あ、やっぱり昨日の醤油の子?」

 

「なになに、何の話なのさ。亮ちゃん分かる?」

 

「んー、かくかくしかじか。」

 

「なるほど理解。」

 

「優人さん、チンピラに一体何を……。」

 

えぇぇぇええ!?、と本気で驚く宮野さん。うん、俺もびっくりした。なんか見覚えあるなって思ったけど、会ってたんだね、昨日。世間って狭い。

 

あと心ちゃん、俺は何もしていないからな。相手が一方的に怖がって逃げただけだから。

 

 

 

 

この後は宮野さんが再びお礼を言ってきたり渚にからかわれたりしながら体育館に向かった。

 




人が増えてきたので人物紹介。ちゃんと作った方がいいのかな?
とりあえず長くなりそうなので簡易的に。

堺優人(さかいゆうと)
本作主人公。9月14日生まれの16歳。目つきが悪く、昔から怖がられていたせいであまり人と関わることが得意ではない。2年G組の放送委員。

人の呼び方
亮太…亮太
渚…渚
心…心ちゃん
華奈…宮野さん(←現時点では)
阿部先生…先生、阿部先生

中川亮太(なかがわりょうた)
優人、渚の幼馴染で親友。10月5日生まれの16歳。コミュ力がそれなりに高いイケメン。

人の呼び方
優人…優人
渚…渚
心…ここ、心
華奈…華奈ちゃん
阿部先生…先生

島崎渚(しまざきなぎさ)
優人、亮太の幼馴染で親友。6月29日生まれの16歳。美形が好きな女バスのエース。男気のある美人。

人の呼び方
優人…ゆーくん
亮太…亮ちゃん
心…ここちゃん
華奈…華奈ちゃん
阿部先生…先生

中川心(なかがわこころ)
亮太の妹。7月20日生まれの15歳。兄を超えるコミュ力の塊。かわいい(渚談)。

人の呼び方
優人…優人さん
亮太…亮にぃ
渚…なぎねぇ
華奈…華奈ちゃん

宮野華奈(みやのかな)
優人、亮太の後輩で心の友達。11月11日生まれの15歳。人と積極的に関わろうと頑張るけど結局テンパっちゃう子。

人の呼び方
優人…堺先輩
亮太…中川先輩
渚…島崎先輩、渚さん
心…こっちゃん

水谷…モブ。もう出てこないかもしれないし、出てくるかもしれない。

澄霧…まだ出てくる予定。

阿部先生…数学科の先生。人望があり生徒からの人気が高い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。