この素晴らしい決闘者に祝福を!   作:ナレーション響

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デュエル無し回


おい、対話しろよ

めぐみんSIDE

 

「………様が、………なんだ」

「………大変ですね。もし……………ですよ」

 

遠くでシンタローさんと誰かが話す声が聞こえる。

どうやら、しばらく意識を失っていたらしい。

今の自分は、地面に横向きになって倒れている様だ。

ほっぺたに木の枝か何かが当たって痛い事から、ここはまだ森の中らしい。

うっすらと目を開けると、目の前にゆんゆんの寝顔があった。

目の前の頬をペシペシと叩く。

辛そうに顔をしかめるゆんゆんを見て、ちゃんと息があることにホッとした。

 

気を失っていたのはどのくらいなのだろう。

爆裂魔法を放ったのに、身を起こせる程度には魔力が回復している事から、少なくとも短い時間ではないのだろう。

 

「ん?目が覚めたかめぐみん、自分もついさっき目が覚めた所でさ、この人…人?が気絶していた自分達を守っていてくれてたんだ!あっ、一応回復させたけどどこか痛い所はないか?おお、ゆんゆんも目が覚めたか!」

 

「……うう、ここどこ?」

どうやらゆんゆんも目を覚ました様だ。

 

「うん?その瞳…、お前ら紅魔族か?」

 

頭上から声が聞こえる。

おそらく、この声の方が私達を守っていてくれた方なのだろう、私は声の方へ体を向けてお礼を言おうとした。

 

「ええ、私は紅魔族のめぐみんと申しま──」

振り向いた先の相手を見て、私はそのまま固まった。

 

隣では、ゆんゆんが同じく身を起こしながら。

 

「……?どうしたのめぐみん、変な顔して。って、あーっ!思い出した!ちょっとめぐみん、あんな至近距離で魔法を放つなんて、一体何考えて……、ねえ、ちょっとどうした……の……?」

食ってかかろうとしたゆんゆんは、固まっている私を見て、その視線を声の主の方へと……

 

「よう、ちょっといいか?俺様はホーストってもんだが……、実はこの辺りで、真っ黒で巨大な魔獣を探しているんだが。……って、あれ?おいお前、どこかで見た顔だな。いや、誰かに似ているっていうか……」

 

そこにいたのは悪魔だった。

 

金属の様な光沢を放つ漆黒の肌、蝙蝠を思わせる巨大な羽。オーガですらねじ伏せそうな体躯を持ち、角と牙が禍々しさを際立たせている。

 

上位悪魔。

 

どこからどう見ても最終ダンジョンに住んでいそうなその悪魔は、私達と目が合うと。

 

「我が名はホースト、でっけえゴブリンではなく上位悪魔にして、やがてはとあるガキに使役される者。……どうだ?俺様の挨拶は。お前ら紅魔族だろ?こんな感じの挨拶が──」

「ああああああぁぁぁ!」

 

ニンマリと牙をむき出しにして笑う悪魔を見て、私達は悲鳴を上げて逃げ出した。

 

 

 

 

 

一体どれくらいの距離を走ったのだろう。

いつの間にか森を抜けた私達は、あの悪魔が追って来ていない事を確認すると、その場にへたり込んだ。

 

「はあ…はあ…!…な、なな、何よあれ!悪魔よ悪魔、それもとびきりの上位悪魔!めちゃくちゃ凄そうで怖そうなのが!」

 

「はあ…はあ…。正直こんな所に出没する悪魔という事で、舐めてました。まさかあんな大物が現れるとは……」

 

正直言って、一人で遭遇していたら失禁していたかもしれない。

一応、以前戦ったアーネスも上位悪魔といえば上位悪魔なのだが、なんというか見た目が怖い。

今思えば、あんなのと遭遇して良く逃げ切れたものだ。

 

「あれ…?ね、ねえめぐみん?シンタローさんは?」

 

「へ…?……っ!い、いないのですか!?あ、あの場にはいましたけど…」

 

「ま、まさか逃げ切れなかった…?それとも私達が逃げ切れるように囮になったとか?」

 

「いえ…、もしかしたらシンタローさんはあの悪魔に洗脳か認識を操られて人質になっているのかもしれません……、妙にフレンドリーに接していましたし、あの悪魔を人と認識していましたから…」

 

「そ、そんな!?どうしよう…、私達の魔力は今日はもう尽きているし…」

 

「ゆんゆん、今日はもうギルドにあの悪魔を報告して後日救出しに行きましょう。ギルドの他の冒険者の方々の力があれば救出もしやすくなります」

 

「う、うん」

 

私達はアクセルの街にまで走り、ギルドで悪魔の報告をした。

 

 

 

 

 

 

慎太郎SIDE

 

ゆんゆんとめぐみんがホーストさんの顔を見るなり悲鳴を上げて逃げていった。

 

「あー…、行っちゃった。ごめんなさいホーストさん、自分の仲間がお礼も言わずに…」

 

「いや、いいっていいって、怖がられんのは慣れているしな。っていうかそれが普通だぞ?召喚した訳じゃないのに普通に接しているなんてお前ぐらい…、いや、あの紅魔族のガキもいたな…」

 

そうなのか、話せば気安い感じで話し安いんだけどな。

 

「まあ、情報収集がしづらいのはこたえるがな。なあシンタロー、報酬は出すから、街に戻ったら俺の代わりに聞き込みしてみてもらえねぇか?黒い巨大な魔獣、情報だけなら5万エリス、捕まえたなら、そこまで大金持っている訳じゃないし、そうだな…1回だけ俺様に自由に命令出来る権利とかどうだ?」

 

「その命令出来る権利って永続的な物?例えば、一生自分の奴隷になれ、とかでずっと従わせるとか」

 

「随分と物騒な例えだな。まあそれでもいいぜ、俺様はうウォルバク様の半身を捕まえて、復活さえ出来ればいいんだ」

 

なるほど、そこまでしてでも復活させたいって事は、よほどそのウォルバクっていうのを敬愛している。

それか、ウォルバクさえ復活すれば、奴隷になってても問題なく奴隷から抜け出せるからっていう事なのか…

 

「もう一つ質問していいか?この依頼は悪魔の契約を交わすということで、魔獣を捕まえたらホーストさんは命令を拒否する事が出来ないって事でいいのかな?」

 

そう問いかけるとホーストさんは少し考える素振りを見せ、そして口を開いた。

 

「ああ、契約で俺様は基本は拒否する事が出来ない、ただし俺様にも不可能な命令は拒否出来る。……なあ、お前って親しく会話は出来るけど、全く信用してないよな?どうやって悪魔を殺すか考えているだろ?」

 

信用していないのは当てられてしまった。

 

「いや、殺す気なんてまだないよ?自分はただ街の人達の迷惑にならないように君とウォルバクを無力化したいだけだよ、……正直言うと最初に目覚めてホーストさんを見た時は殺そうと思ったよ。元々そういう依頼でこの森に来たんだ。けど、会話が出来る存在ならまずはお互いの目的を話し合い、本当に殺す必要があるのかを確かめてじゃないと殺せないよ。対話も無しに殺し合うだなんて、そんなのただの獣だよ…」

 

うーん、まあ、最初は殺していいかを確かめるために会話し始めたけどさぁ、今は出来れば、ホーストさんも死なず街にも被害がない平和的な解決をしようと、こうして対話している訳でして…

 

「…なるほど、今はまだ殺意はないという事は分かった。ただ…さっきから聞いてたら。まるで俺様を殺せるのは当然の事の様に話しているが、本気か?あんなウサギ共と相打ちになって倒れていたのに?」

 

「…?ああ、本気で殺せると思っているよ?まず1対1なら負けないと本気で思っているよ」

 

仲間がいない今なら全力で全体破壊も使えるしな。

それに、二人が逃げた時、ホーストさんの意識が二人に向いている隙に、デッキケースから3枚ほど選んでディスクに伏せてある。デュエルじゃないから魔力が減るだろうけど。

 

森の中を緊迫した空気が漂う、ホーストさんはすぐに戦えるように構えを取っている。自分もカードをデッキケースから何枚か取り出していつでも召喚と発動が出来てもいいように構える。

 

「最後の質問だホーストさん、ウォルバクを復活させてどうする気だ?」

 

ホーストさんは構えをしたまま静かに答えた。

 

「…俺様はウォルバク様の命令を聞くだけだが…、そうだな。おそらく人間達を襲うだろうな…」

 

「そうか、分かったよホースト──、魔法カード発動!悪魔払い!」

 

悪魔払い

通常魔法

フィールド上の悪魔族モンスターを全て破壊する。

 

自分の前に牧師が現れ、手に持った十字架を掲げ、聖書を読み始めた。

 

「この上位悪魔のホースト様に、そんなただのエクソシズムが効くかよ!」

 

聖書を唱え続ける牧師を殴り殺し、こっちへ向かってホーストが走る。

 

効果破壊は効かない、なら!

 

「モンスターを一体伏せる!」

 

アークファイブに出てきた黒い球体姿の伏せモンスターがホーストの目の前に現れる。

 

「邪魔だ!」

ホーストはそのまま伏せモンスターを蹴り、攻撃した。

黒い球体だったモンスターは蹴られた瞬間に姿を蛇の体をした女の子に変え、ホーストの腹部に噛み付いた。

 

「な、ナーガのガキ!?」

 

「レプティレス・ナージャの毒は猛毒だ、お前の戦闘能力を限界まで奪う」

 

レプティレス・ナージャ

効果モンスター

星1/闇属性/爬虫類族/攻 0/守 0

このカードは戦闘では破壊されない。

このカードがモンスターと戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、

そのモンスターの攻撃力を0にする。

また、自分のエンドフェイズ時、

フィールド上に表側守備表示で存在するこのカードを表側攻撃表示にする。

 

「くそっ、か、体が、うご、け…」

 

ホーストは地面で仰向けになり毒で動けなくなり。

獲物を仕留めたナージャが褒めて褒めてと顔をすり寄せてくる。

 

かわいい

 

自分はナージャの頭を撫でながらホーストへと歩いていく。

 

「なあホースト、ウォルバクの封印を解くのは止めないか?お前、別に人間を殺したりしたい訳じゃないんだろ?なんなら契約するか?自分は君を殺さないから、お前も封印を解くのを止める。こんな契約ならどうだ?」

 

「はっ…!俺、は悪魔だ、悪魔の命は、残機性なん、だよ!ここで、死んだって、俺は、ウォル、バク様をあきらめねぇ!殺すんなら、殺せぇ!」

ホーストは毒で苦しそうにしながらも言葉を紡いだ、ウォルバクへの忠誠は捨てないらしい。

 

「そうか、じゃあまた会おう、次会った時も諦めていなかったら──」

 

ナイフを手にし、ホーストの眼球の上に切っ先を向ける。

 

「──今度は除外してやる」

 

自分はナイフを振り下ろし眼球から脳までを貫いた。

 

初めての感触が手に染み込む。

 

「……やっぱりデュエルじゃないと分かり合えないのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ホーストを倒した後、自分はアクセルの街まで戻った。

 

もう夜になってしまった。さて、ゆんゆんとめぐみんと合流しないと、ギルドに行けば会えるだろうか?

 

自分はギルドの建物前まで行き、なにやら中がいつもより騒がしい事に気づいた。

不安な気持ちになりながら、意を決して自分は扉を開いた。

 

「お願いします!シンタローを、シンタローを助けて下さい!!」

「お、お願いします!」

 

めぐみんとゆんゆんが色んな冒険者の人達へ頭を下げていた。

 

「おい落ち着けって!そのシンタローって奴は操られている感じだったんだろ?ならすぐには殺されねぇって」

「そうよ、貴方達も今は休んで、明日救出に行きましょう?」

「上位悪魔がなんだってんだ!俺だってレベルは30越えてんだぜ?ギルドの皆で行きゃあ問題無し!なんならついでにその悪魔も倒してやらぁ!なあお前らぁ!」

 

おぉぉぉっ!っとギルド内に冒険者の声が響く

 

あぁ…これは入って行きにくい、でも帰ってきた事はちゃんと報告しないとな…

 

「おい、入り口で立ち止まってちゃ迷惑だぜ、兄ちゃん!なんだ?お前も明日のシンタロー救出クエスト行きたいのか?」

シンタロー救出クエスト!?なんで個人名!?

 

「人を操る上位悪魔がいるから厳しいが、後日討伐隊を編成して行う討伐クエストの情報収集も含まれているからな。報酬ははずんでくれるらしいぜ」

 

もうダメだ、これ以上話しが大きくなる前に収拾をつけないと──!

 

「遊佐慎太郎帰還しましたぁ!」

 

叫んだ瞬間、ギルド内が静まり返った。

全員の視線が自分に向けられる。

 

「シ、シンタローさん……?」

 

「はいシンタローです……」

 

「う、うあぁぁんっ!よかったぁぁぁっ!生きててくれたぁぁっ!置いていってごべんなざいぃ!」

ゆんゆんが泣きついてきた。

 

お、おおおぉ、柔らかいのが…

 

「シンタローさん、あの悪魔は…?」

めぐみんがこちらに歩み寄りながら問うてくる。

 

「ああ、倒したよ、後なめぐみん、別に自分は操られてないから!ただ自分達の都合で倒していい存在か話していただけだから!」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!?」

 

「ん?ああルナさん、すいませんクエスト依頼の取り消しですよね?依頼を出したのはゆんゆんかな?ほらゆんゆん、あの恥ずかしいクエスト剥がしてき「いえ、それではなくて…」ん?」

 

「あの、倒したんですか?上位悪魔を?」

 

「はい、倒し…いや、悪魔の命は残機性だから、とか言ってたから完全に倒した訳じゃないですね……あ、これが証拠です」

 

懐から冒険者カードを見せ、そこの倒してきた欄に悪魔ホーストの名前が入っているのを確認させる。

 

ナイフを抜いたらホーストの体が塵に変わっていったから、ドロップ品とかはなかったのが悔やまれる。

 

「確かに…、ですが本当に上位悪魔かどうかは過去の王都のギルドの資料と照らし合わせるので、すいませんが報酬は後日ということになってしまいます」

 

「はあ…、分かりました」

今はまだ所持金があるのでまだ大丈夫だが、今日から「天よりの宝札」が禁止カードに入れられて使えなくなったからな。またクエストに行く事になるだろう。

 

「あの、シンタローさん…」

ようやく泣きやんだゆんゆんが耳打ちをしてきた。

 

「救出クエストの依頼なんだけど、私じゃなくめぐみんが出してくれたんだよね。私はただ泣いていただけで……、めぐみんが昨日組んだパーティーに声を掛けてくれて、更にギルドの人達へ依頼の報酬は私が将来払いますって無茶言ってくれて……だからめぐみんにお礼を言っといた方が良いかと……」

 

クエストが貼り出されているボードの方へ目を向けると、めぐみんが1枚の紙を剥がしている。

 

めぐみんの方へ歩いていく。

 

「めぐみん、心配掛けてすまなかった!」

 

「はい?心配なんてしてないですよ?私が森のクエストに誘ったのに、それのせいで死なれたら明日から目覚めが悪くなるじゃないですか、ただそれだけの為です」

 

「……お前可愛いなツァンディレかよ」

 

「ツァン…?でも馬鹿にしたのは分かりましたよ!」

馬鹿にはしてないんだが!?

 

「そういえばめぐみん、お前の魔法凄かったな!あの威力は魅力的だったぞ!もしよければこれからも一緒のパーティーにならないか?」

 

あのウサギに放った魔法、あの至近距離でもちゃんと味方へのダメージは最小限にしてくれていた。

自分がライトニングボルテックスのような相手への全体破壊を使ったら、おそらく同じパーティーの味方にも破壊効果が適用されてしまう、これからパーティーの時の全体破壊をめぐみんが担当してくれるなら実際凄く助かるんだ。

 

「ほほう!我が爆裂魔法に目を着けるとは、いいセンスをしてますね!いいでしょう!これからも一緒のパーティーに居てあげます!」

 

「よしっじゃあ記念に今日は自分の奢りだ!好きな物頼んでいいぞ!」

 

めぐみんが正式に仲間になった!




デュエル無し回(バトルが無いとは言っていない)

ちなみに伏せてあったのは「攻撃の無力化」「神の警告」「もの忘れ」でした。

「攻撃の無力化」は言わずもがな。
「神の警告」はもしホーストが仲間を召喚するような効果を持っていたら厄介だったので伏せていて、「もの忘れ」はデモチェとかと違って対象を取らずにモンスター効果の発動を無効にして破壊するので、ホーストがもし対象にすることが出来なくても対処できるので伏せていました。

本来なら本編中に説明するべきですけど、発動する前に説明するとか、負けフラグなのでしませんでした。


ウォルバクの眷属ホースト
効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻2800/守2000
このカード名の(4)の効果は1ターンに1度しか使用できない
(1):自分フィールド上に「邪神ウォルバク」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる
(2):フィールドのこのカードは相手カードの効果によって破壊されない
(3):「邪神ウォルバク」モンスターが自分フィールドに存在する場合、このカードの攻撃力は1000アップする
(4):このカードが戦闘によって破壊された場合、発動出来る。デッキから『ウォルバクの眷属ホースト』1体を手札に加える
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