艦これ戦記 -ソロモンの石壁-   作:鉄血☆宰相
<< 前の話 次の話 >>

48 / 82
第十話 KONOZAMA

 これは、南方棲戦鬼との決戦が始まる少し前の事である。いつもの作戦会議室に集まっていると、石壁がこんな事を言いだした。

 

「本土との輸送ラインが回復した場合に備えて、まるゆ隊を本土へ即座に送れる様に事前準備をある程度整えておきたいんだ」

「それはいい考えであります。事前に輸送計画を策定しておけば時間を無駄にせず出航できるでありましょう」

 

 石壁の言葉にあきつ丸が賛成の意を示す。

 

「私が持ってきた物資では賄いきれない嗜好品や雑貨の類もある程度輸送して貰えますか?艦娘も女の子です。少しくらいは彼女達の士気を高める為には普通の軍需物資以外も必要だと思うんですよ」

 

 間宮がそういうと、石壁は頷く。

 

「そうだね。幸い食料にはまだまだ余裕がある。全部は流石に駄目だけど、士気高揚の為の品目はあって然るべきだと僕も思う」

「賛成して貰えてよかったです」

 

 石壁の言葉を聞いた間宮がほっとしたような顔をする。

 

「陸軍妖精隊は美味い飯を食っていれば大体満足するが、可能なら酒とタバコを用意してやってくれ」

「やはりその二つが軍人にとっては一番の嗜好品でありますからな」

「皆頑張ってくれているし、それくらいはたっぷり用意してあげたいね」

 

 伊能とあきつ丸の言葉に、石壁が同意する。

 

「じゃあ、艦隊の面々にも欲しいものをアンケートとったりして品目を詰めていこうか、間宮さんよろしく頼める?」

「了解しました」

 

 ***

 

「んー、でも嗜好品かあ」

 

 石壁は、希望品目を書くための紙を目の前に考え込んでいた。

 

「総司令官があんまり私的なモノを頼むのもなあ……でもこんな機会じゃないと娯楽物資なんて頼めないし……」

 

 ブツブツと独り言をいいながら、石壁用の注文枠に無難なモノを書き込んでいく石壁。

 

「……」

 

 そして、最後の注文枠を前にして、ペンが止まる。

 

「……一つくらい、良いよね?これならそんなに高くないし、皆で楽しめるだろうし」

 

 そういいながら石壁が最後の枠に記入した瞬間。室内にノックの音が響く。

 

「どうぞ」

「失礼します」

 

 扉をあけて間宮が入ってくる。

 

「石壁提督、輸送品目の希望はできましたか?」

「ん、ああ、丁度かけたよ」

 

 そういって石壁は紙を渡す。

 

「ありがとうございます。では清書してまいりますね、一旦失礼します」

「よろしくね、間宮さん」

 

 間宮がぺこりと頭をさげて出ていくのを、石壁は手をひらひらと振って見送った。

 

「……あ、しまった。さっきの注文、もっと細かく書かないと多分間宮さんわかんないか」

 

 間宮が部屋から出ていってしばらくたった後、石壁は先ほどの最後の注文が色々と駄目な事に気が付いて顔を上げた。

 

「……まあ、後で言えばいっか。急ぎの案件って訳じゃないんだし。間宮さんも聞きに来てくれるでしょ」

 

 そういって、石壁は執務へと戻った。いつ使われるかわからない輸送計画であった為、石壁は優先すべき執務へと戻ったのであった。

 

 そんなこんなで仕事をしているうちにすっかりと頭からこの件が抜けて落ちてしまった石壁は、間宮に確認を取ることをすっかり忘れてしまったのであった。

 

 後に石壁は、この時の判断を死ぬほど後悔する事になる。

 

 ***

 

 間宮は普段からとても多くの仕事を抱えている為、いつ使われるかわからない輸送計画の清書は当然ながら後回しになってしまう。

 

 石壁の執務室から物品リストを持ち帰ってから数日たってようやく、チマチマ進めていた品目整理がようやく終わろうとしていた。

 

 間宮がさらさらと平坦管理部の机でリストを清書をしていると、部下の妖精さんがやってくる。

 

「まるゆ隊への輸送物品依頼リストは出来ましたか?」

「ちょっと待ってくださいね、あと少しです」

「では出来上がっている分を纏めておきます。えーっと?食品、雑貨、嗜好品、娯楽品目リスト……あ、これは途中か」

「今書いてるページで最後ですよ」

 

 間宮は会話をしながらさらさらと娯楽品目を記入していく。

 

「娯楽物資まで輸送できる様になるなんて素晴らしいですね」

「あはは、食料も物資もそれなりに余裕がありますしね。ちょっとくらいそういうのがあっても良いでしょう」

 

 和やかに会話をしながら項目を記入していく間宮だったが、石壁の注文品を書き写していた彼女の手がピタリと停止する。

 

(……ん?なんでしょうこの『中古○S2(【ピー】エスツー)』とは?)

 

 現代機器には若干疎い間宮は、往年のS●NYの名作ゲーム機の事がわからなかった。これはネット環境がなくても遊べるゲームソフトが多くて、なおかつ安く手に入るゲーム機として石壁が発注したものだったのだが、そんなことを間宮は知る筈もない。これが第一の悲劇であった。彼女がゲーム機に詳しければ、これから発生する事態は防げたのだから。

 

(石壁提督の発注したものですし……そんなに変なモノではないと思いますが……あれ?発注個数が抜けています……)

 

 第二の悲劇が、石壁がうっかり発注の桁を記入してなかったことだ。内容をよく知らない間宮は、取りあえず書類を書き上げてしまう。

 

(ええっと?何個でしょうか?とりあえず適量、としておいて……分類もとりあえず戦略物資にして……念のためにまるゆさん一人を提督用に割り当てて、と。厳密な内容は後で確認しておきましょう……よし、これでとりあえず終了、と)

 

 ここで話が終わったならば、石壁の予想通り間宮が確認を取ることで全てはうまく行ったであろう。実行されるまで日にちがある作戦なのだから修正も効く筈だから。

 

「よし!後は提督に確認をとーー」

 

 その瞬間、基地全体に警報が鳴り響く。

 

「緊急警報!?な、なにごと!?」

「これは……とにかく急いで会議室に向かわないと行けません!!」

 

 第三の悲劇が、この書類が作られたのが要塞での決戦の直前であったことだ。この後の要塞全体のゴタゴタの中で、書類の確認そのものが忘れ去られ、そのまま清書されてしまった事であった。

 

 こうして、曲がりなりにも数十トンの物資を輸送できるまるゆ一隻が、ゲーム機の輸送の為に一人割り振られてしまったのであった。

 

 ***

 

 それから半月、本土にやってきた数十名のまるゆ達は、群狼作戦によって大本営が盛大に燃え上がっている間に、それぞれがショートランド泊地へ持って帰る物資を集めていた。

 

「隊長、まるゆが持ってかえる物資はなんですか?」

「えーっとな?」

 

 まるゆが問うと、艦長妖精さんが目録を確認する。

 

「なんだこれ……中古○S2(【ピー】エスツー)……適量……?」

○S2(【ピー】エスツー)……?」

 

 ゲーム機などさっぱり知らない二人は、首をひねりながら考え込む。

 

「よく分からんが……目録にはそれしか書いていない……しかもこれ石壁提督の直接命令だぞ……?どうすればいいのだ?」

 

 ひとしきりうんうんと二人が首を捻っていると、その会話を聞いていた一人の艦娘が声をかけてきた。

 

「あのー?○S2(【ピー】エスツー)がどうかしたの?」

 

 そこに居たのは、緑色の髪をポニーテールで纏めた、セーラー服の艦娘であった。

 

 彼女は夕張、様々な実験的要素を組み込まれた軽巡洋艦の艦娘であった。

 

「えっと?夕張さん?ご存知なんですか?」

「ええ、私も一台もっているし。それがどうかしたの?」

 

 夕張がそう言うと、輸送隊の隊長が応じる

 

「実は、この○S2(【ピー】エスツー)と言うものを(まるゆ単位で)適量買ってきてほしいという依頼を受けておりまして、よくわからないのですが」

「え?○S2(【ピー】エスツー)を(個人レベルで)適量?また難しい依頼ねそれ」

「と、言いますと?」

「えっと、○S2(【ピー】エスツー)というのはそれ単体では殆ど意味が無いの。メモリーカードとか、それを使う為のソフトとかがいるんだけど……人によって「ソフトの適量」なんてばらばらだし……」

「なんと……」

 

 それを聞いて艦長妖精がどうしたものかと頭を抱える。

 

「うーむ……恐らくは、適量という曖昧な表現である以上、現場の采配に任すということでしょう。夕張殿、申し訳ないのですが……貴方が思う『適量』というのを教えて頂けますか?」

「いいわよー」

 

 夕張はサラサラと手帳に○S2(【ピー】エスツー)と必要なその周辺機器、そして夕張オススメセレクションのゲームソフトを記入していく。

 

「はい書けたわよっと」

 

 ビリビリと手帳のページを切り取って渡してくれる夕張。

 

「取り敢えず(個人レベルの適当な)一式としてはこんなもんだと思うわよ。ソフトはまあ、適当にこの中にあるもの見つけられたぶん買っとけば良いと思うわ」

「おお、忝い」

「それ、軍の酒保じゃ手に入らないから……欲しかったらAmaz●nから送ってもらうか、B●●K●FFにでもいって買うといいわよー。えっとねー、Amaz●n会員登録の仕方はーー」

 

 それから二人は夕張にみっちりと講義を受けてAmaz●nの使い方等を教えて貰ったのであった。

 

 ***

 

「こんなものかしら?」

「本当に何から何まで忝い、この御恩は忘れませんよ」

「いいわよこれくらい、困ったときはお互い様よ」

「それでも助かりました。何かお礼を……そうだ」

 

 気持ちの良い笑顔で笑う夕張に感動した隊長妖精は、かばんから羊羹の包を取り出す。

 

「現物で申し訳ないのですが、こちらの羊羹をどうぞ。うちの鎮守府の間宮殿の特製です」

「え?間宮さんの羊羹?うっそありがとー、美味しいのよねこれー」

「喜んでいただけて幸いです……それでは我々はこの○S2(【ピー】エスツー)を買って参ります」

「ありがとうございましたー!」 

 

 夕張がその羊羹の包を受け取った後、艦長妖精とまるゆはペコリと頭を下げて歩きだしたのであった。

 

 ***

 

「ふふ、情けは人の為ならずかしら?良い事したら気分が良いし、こんないい物もらえちゃうし、やっぱり人には優しくするのが一番ね」

 

 ニコニコしながら羊羹を持って歩いていた夕張は、己の提督と出会う。

 

「あ、七露提督ー!いい物手に入れたんで一緒にたべませんかー?」

「おや?夕張どうしたんだい?」

「えへへ、実はーー」

 

 この後滅茶苦茶御茶した。

 

 ***

 

「取り敢えず、このメモにしたがってありとあらゆる店舗から○S2(【ピー】エスツー)の一式をかき集めよう。一式で十キロ弱との事だし、まるゆがいれば嵩張るのを考慮しても数百セットくらいなら余裕で積み込めるな」 

「そうですねー。まるゆ、なんだかんだで35トンも物資を詰めますし、積み込めるだけ積み込みましょう」

 

 なんだかとっても危険な事を言い出す二人。

 

「ソフト、でしたっけ?何をかうんですか?」

「うむ、夕張殿はあの短時間で『二枚も』メモを書いて渡してくれたのだ。一枚目はふつうなのだが、二枚目によくわからないが、『マゾゲー&K●TY夕張セレクション』というランキングが乗っているので、このランキングから重点的に買うとしようか」

「K●TY?なんですかそれ?」

「さあ?何かの略称だろう」

 

 雲行きがどんどん怪しくなっていく。 

 

 ***

 

「あれ?」

「どうしたんだい夕張」

「いえ、おかしいなぁ?メモ帳は1ページしか切らなかったはずなんですが……2ページ分切れてる……えっとこのページは……あっ」

「夕張?」

「……やっちゃった」

 

 ***

 

「支払いは経費扱いで取り敢えず大本営に申請しておくか」

「そうですね」

「では、かき集められるだけかき集めようか。しかし便利だなこのインターネットというのは、世界中の物品を簡単に調べて注文出来るんだからな」

「そうですねー。これで石壁提督の依頼を完遂できそうでよかったです」

 

 笑い合う二人、数日後、大本営に大量のゲーム機とゲームソフト(主にクソゲーとマゾゲー)が経費名目で配達されるという最悪の事態が発生し、当然ながら経費申請は却下されることになった。

 

 石壁の元に大量のゲーム機が、数百万円分の請求書と一緒に届く日は近い。

 

 

 

 

 

 

 




【読者の皆様へお知らせ】12月28日

いつも拙作をご愛読いただきまして誠にありがとうございます。

今後の更新についてですが、
年末年始は色々と予定がございますので誠に勝手ながら
一時更新を停止させていただきます。

続きをお待ちいただいている皆様にお詫びを申し上げます。

更新再会は年が明けて一週間前後位を予定しておりますので
今年の更新はこれで最後になります。

来年も精一杯頑張って書きますので
どうかこれからも拙作をよろしくお願いいたします。

それでは皆様よいお年を。



【お知らせ】
1月7日
大変申し訳ございませんが、作者多忙につき再会をもう少し遅らせて頂きます。
お待ちいただいている皆様に深くお詫び申し上げます。
再会目途がたちしだい改めてご報告いたします。




感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。