艦これ戦記 -ソロモンの石壁-   作:鉄血☆宰相
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リアル事情の関係で投稿が5ヶ月も空いてしまって本当にすいませんでした。

リアル事情も一段落ついて時間に余裕が出てきたので投稿を再開致します。

楽しんでいただければ幸いです。


第十一話 仄暗い水底から

 群狼作戦で本土がどったんばったん大騒ぎになっている一方そのころ。

 

 ハワイ島、パールハーバーにて深海棲艦の首脳級の会談が行われていた。通称『大深海』とよばれるこの会議は姫級や鬼級達が一同に会する深海棲艦の議会の様なものであった。

 

「では、南方棲戦鬼が討ち取られたというのは事実なのだな?」

「ええ、間違いないわ」

 

 議長を務める戦艦水鬼の言葉に、とある深海棲艦が答えると、議場は俄にざわついた。

 

「馬鹿な、あの南方棲戦鬼が……」

「あの破壊の化身を打ち破るとは……」

「一体どれほどの戦力が……」

 

 南方海域は人類と深海棲艦が一番激しくぶつかりあう激戦区である。その地域一体の方面軍最高司令官であったのが南方棲戦鬼であった。

 

 単純な戦闘能力だけでいえば、彼女を凌ぐものも居る。だが、彼女はどれだけ戦っても燃え続ける人類へのもっとも強力な憎悪をもつ艦であった。故に彼女が率いる艦隊の苛烈さは他のどの深海棲艦より激しく、その破壊力で持って大日本帝国の南進を幾度も叩き潰し続けてきたのである。南方海域の方面軍最高司令官であったのは伊達ではないのだ。

 

「落ち着きなさいよ」

 

 そんな中、先ほど南方棲戦鬼の討ち死にを報告した深海棲艦が、平坦な声で皆をたしなめる。

 

「確かに南方棲戦鬼が討ち取られたのは痛手よ?でも、まだ私がいる……いえ」

 

 その瞬間、絡みつく様な不敵な笑みを浮かべて続ける。

 

「私がいれば、彼女が抜けた穴もじきに埋まるわ」

 

 彼女の言葉は絶対の自信をもって発せられた。

 

「確かに……」

「彼女がいれば南方を抜くことなどできないだろう……」

「そうだな……そうに違いない」

 

 先ほどの同様とは真逆のざわつきが議場に響く。その反応に、彼女は己の言葉が受け入れられている事を察して更に笑みを深くする。

 

「『常勝』の飛行場姫が守る鉄底海峡がまだ残っているのだからな」

 

 彼女は飛行場姫、ショートランド泊地から東に進んだ所にある深海棲艦最強の牙城、鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)を守る姫級の深海棲艦である。

 

 ソロモン諸島は太平洋戦争でも屈指の激戦地であるが、その中でも特に海戦が集中したのがガダルカナル島の周辺であった。海の底が沈んだ船の鉄で埋まったとまで言われた地獄の様な海域である。

 

 その結果、この海域は鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)と呼ばれる様になったのだ。そしてそれは沈没した軍艦が憎悪によって変じた彼女達深海棲艦にとってすれば、海峡全体が大軍事工廠に等しい。南方海域の深海棲艦の物量は無尽蔵とまで言われるほど驚異的な数であるが、その驚異的物量の約7割がこの海峡で生まれると言われれば、その恐ろしさが分かるかもしれない。

 

 これだけでも十二分に驚異的だが、飛行場姫の恐ろしさはこれだけではない。

 

「飛行場姫と鉄底海峡の闇の防護があれば、我々に負けはない筈だ」

 

 とある深海棲艦の呟きに、その場の殆ど全員が頷く。それをみて飛行場姫は我が意を得たりとばかりに言葉を続ける。

 

「南方棲戦鬼が抜けた穴は私が埋める。だから、南方海域の方面軍最高司令官の地位を頂戴」

「……いいだろう、ならその言葉を事実にしてもらおうか飛行場姫。貴様に南方海域方面軍をまかせる。やれるな?」

 

 戦艦水鬼の言葉に、飛行場姫は不敵な笑みで応える。

 

「いいわよ。結果をもって応えてあげるわ」

 

 ***

 

 それから間もなく会議は終了し、各々が自身の根拠地へと帰投を始める。

 

「飛行場姫」

「あら?」

 

 飛行場姫が部屋を出ると、一人の深海棲艦が彼女を呼び止めた。

 

 彼女は背が高く、額にユニコーンの様な角をもっている。鋭い鍵爪からみてもパワーファイター系の深海棲艦に見える。

 

 が、その瞳にギラついた憎悪や闘争心といったものは殆ど感じられず、どちらかというと穏やかな雰囲気が見て取れた。

 

「どうしたのかしら?港湾棲姫」

 

 彼女の名は港湾棲姫、オーストラリア大陸攻略軍の司令官である。

 

「確認をしておく事がある。オーストラリア攻略軍の指揮は、今後も私に一任されるということでいいか?」

「……ふぅん?」

 

 オーストラリアは戦略的にはとっくの昔に孤立しており、今は残敵の掃討を目的として海岸線を中心としたゆるやかな包囲網が引かれているにすぎない。

 

「今までどおりの体制を維持したいのね?」

「そうだ。貴方のやり方に一切口出しはしないが、今までどおり独立した指揮だけはとらせてほしい」

 

 なぜそんな状態で戦線を維持しているのか?それは深海棲艦内部における派閥闘争に原因があった。

 

(港湾棲姫は厭戦派や穏健派の最大派閥。彼女の元にいる深海棲艦はどいつもこいつも逃げることしか考えてない約立たずばかり……)

 

 深海棲艦も一枚岩ではない、あまり戦う事を好まないモノもそれなり以上にいる。港湾棲姫の派閥はそういった連中の寄り合い所帯という側面があった。

 

(むりやりコイツを解任して戦力として取り込む事も出来ない訳じゃないけど……戦力を再編してウチに組み込んだ所で穏健派と厭戦派じゃ逃げ出してしまうのがオチね)

 

 こういった『逃げ出されるくらいならオーストラリアで敵と睨み合って戦略的圧力を与えていてくれ』という意図の元、港湾棲姫の指揮下で彼女らは纏まっているのである。

 

 直接戦闘では約に立たなくても、そこに『いる』という事そのものに意味がある戦力というのも確かに存在するのである。

 

「……まあ、いいわよ。貴方の指揮権は取り上げない。これからもオーストラリアで役目を果たしていなさい」

「……感謝する」

 

 そういうと、港湾棲姫は踵を返して離れていった。

 

 

 ***

 

(しかし。こういった形とはいえ、私に指揮権が転がり込んでくるとはね)

 

 飛行場姫は廊下を歩きながらほくそ笑む。

 

(南方棲戦鬼は確かに強かった。でも、毎回敵基地を攻めきれずに押し返されていたのは、彼女が単体戦力にのみ突出し、戦略的な面をおざなりにしていたのが原因)

 

 憎悪を燃料にひたすら暴れ狂う彼女の戦い方は、強力ではあったが方面軍の最高司令官としては足りないものがとても多かった。故に人類側を追い詰めきれないのだ。毎回後一歩で叩き返されているのがその証左であった。

 

(私は違う。私は常に勝てる戦いしかしない。『常勝』こそが私の誇り、時間がかかっても最後に必ず勝つ事こそが大切なのよ。それを照明してみせるわ)

 

 南方棲戦鬼というバケモノの死が、もう一人のバケモノを目覚めさせた。後世においてその厄介さは南方棲戦鬼以上であったと評価される事になる『常勝』のバケモノ飛行場姫。

 

「イシカベ……貴方を踏み潰してそのまま南方海域を飲み込んであげるわ」

 

 彼女は己の戦略を成就させる為に動き出していた。

 

「首を洗って待ってなさい」

 

 意地の悪そうな笑みを浮かべて、鉄底海峡の女王は己の玉座へと帰るのであった。

 

 ***

 

 目的の言質を得て飛行場姫と別れた港湾棲姫は、一人で廊下を歩いていく。

 

(あの南方棲戦鬼を打ち負かす程守りに長じた提督で、名前がイシカベ……か……)

 

 港湾棲姫は先ほどの会議で出てきた提督の名を思い出していた。

 

(もしや……ひょっとすればひょっとするかもしれない……)

 

 彼女は懐に手を入れると、一冊の古びた手帳を取り出した。その手帳の表面は黒ずんでおり、かなり昔に血液を浴びて変色しているらしかった。

 

(本当に“イシカベ”の正体が……“石壁堅持”だとするならば……その時は……)

 

 港湾棲姫は複雑な感情を滲ませながらその手帳を見つめてから、大切そうにそっと懐へと戻した。

 

「……いずれにせよ、私に出来る事はオーストラリアを護る事だけか」

 

 彼女はそう独り言をつぶやくと、廊下の向こうへと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

~おまけ いっぽうそのころまるゆたち~

 

 

 港では輸送物資があつまっており、まるゆ達に大量の荷物が積み込まれている。食料、軍需物資、嗜好品まで様々な物品が集まってくる中、異様な存在感を放つ一角があった。

 

「まったく重てえなあ、何が入ってんだ?」

「知るか、夕べ妙な妖精さんがきて頼んだんだよ。この大量のゲーム機」

「はあ、しかしなんでまたこんなに大量に」

「つべこべ言わずにさっさと詰め込めぇ!ちゃんと納品しねえと代金貰えねえぞ!」

 

 ドカドカと海岸線に積まれていくゲーム機を、まるゆの格納庫へと皆が協力して運び込む。

 

「よし、これで作戦を完遂できるな」

 

 妖精さんはそういいながら、代金を業者へと支払う。彼が手に持つのは石壁から渡されたクレジットカードである。それを見たまるゆが不思議そうな顔をして妖精さんに問いかける。

 

「なんですかそのカード?」

「これはクレジットカードというそうだ。このカードを使えば現金がなくとも買い物が出来るのだ」

 

 石壁は私物の購入にあたって経費で落ちない場合はここから引くように頼んでいた。自分の買い物分くらいなら普通に払えるはずであるから。

 

「まいどありがとうごぜえやす!支払いは一括、分割、リボ払いとごぜーやすが……如何いたしやしょう。オススメはリボ払いでごぜえやすよ」

「一括と分割はなんとなくわかるが……リボ払い?」

 

 首を傾げる二人。

 

「へい、リボルビング払いと申しまして。毎月少しずつ無理無く定額を払っていく形式でごぜーやす」

「うーむ、よくわからんがオススメというならそれでいいか」

「まいどありでやす!」

 

 余談だが、石壁を含めて『提督』は皆限度額が無茶苦茶高いクレジットカードを持っている。これは海軍がカード会社と提携して発行しているカードで、給料が凄く高いのと、社会的地位が高い事もあって所謂ブラックカードが全員に配布されるのだ。仮に支払いが滞った場合は給料から直接引かれる仕組みのため踏み倒される心配は無い安心設計だ。

 

 その為、このべらぼうに高い買い物が決済できてしまったのだ。

 

「へい、確かに」

「領収書を頼む」

「誰あてでごぜえやすか?」

「石壁堅持で」

 

 サラサラと領収書が作られて手渡される。

 

「よし、じゃあ大本営の経理にもっていって経費で落としてもらおうか」

「はい!じゃあいきましょう!」

 

 この後滅茶苦茶経理に怒られた。

 

 





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