艦これ戦記 -ソロモンの石壁-   作:鉄血☆宰相
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後編なので今日は2日連続投稿です
楽しんでいただければ幸いです


第二十一話 鎮守府正面海域の死闘 後編

 鎮守府正面海域を巡る死闘、泊地の全ての人員が死力を尽くして戦い続ける中、じっと待機を続ける一団があった。

 

「……」

 

 軍刀をもって無言で椅子に腰掛けている伊能を中心とした、鎮守府最精鋭陸軍突撃隊の面々であった。

 

 彼等は石壁にとって最高の切り札であり、彼等が投入される時は即ち決着の時であると言っても過言ではない。

 

 故にこそ、終わりの見えぬ攻防戦が続く現状において彼等の出番はなく、ただひたすらに待機を続けるしかないのだ。

 

 彼等は精鋭だ。一度戦場に投入されればどんな状況でも戦える。否、戦えねばならない。

 

 だからこそ、来たるべき『その時』まで彼等は動くわけないはいかぬのだ。例え味方がどれだけの苦境にあったとしても、彼等を使うわけにはいかないのだ。

 

(俺は何をやっているのだ……)

 

 伊能は、自分達が完全に予備戦力と化した現状において、戦力として活躍する機会がこないことを察していた。それでもここを動くわけにはいかない事も、ここにいることに意味が有ることも痛いほどわかっていた。

 

(今ここに座っている俺はカカシ以下の訳にしか立てん。石壁が必死に戦っているというのに、ただ待つことしか出来んのだ)

 

 だが、理解出来ることと、それを納得できるかは全く別のことだ。

 

(ああ、この身の無能さが恨めしい……何故俺は、石壁と共に戦えんのだ……ッ!!)

 

 握りしめられた軍刀が鈍い音をたてて軋む。いつも共にあった戦友の背中が、どこまでも遠い。ずっと二人三脚で進んできた筈なのに、今彼の相棒は独りで戦っているのだ。伊能は己の心が無力感で軋む音を聞いた。

 

「……」

 

 伊能は、いつまでもじっと、耐え続けていた。

 

 

 いつまでも、ずっとーー

 

 

 ***

 

 

 突如として始まった深海棲艦の大規模攻勢、日の出から始まった戦いは既に24時間を経過しているが、一向に終わる気配を見せない。

 

 

 石壁は医療用の覚醒剤を明石に注射してもらいながら、カフェイン錠剤を噛み砕く。極度の精神的疲弊を根性とカフェインと覚醒剤でごまかしながら石壁は指揮を続ける。

 

 

 興奮作用のある薬剤を過剰に摂取した事で石壁の心臓が危険な脈拍を奏で、止まっていた鼻血が溢れてくるが、それを無視して石壁は立ち上がる。南方棲戦鬼の臓器によって強化された石壁の体は、石壁の無茶なオーダーを必死に遂行しようとしていた。 

 

「提督、鼻血が……」

 

「これくらいどうってことはない!状況を知らせろ!」

 

「……はい!」

 

 

 石壁は指揮が滞った数分の情報をさっと確認しながら、また最適な防衛指揮を取り直す。

 

 

「沿岸砲台陣地の右翼側が劣勢だ、重巡艦娘達を重点的に配置し、敵を叩け!」

「了解しました!」

 

「左翼側対空砲台陣地の3割が機能を停止しました!」

「対空装備の軽巡と駆逐隊を派遣し対空戦闘に加勢させろ!」

「はい!」

 

「石壁提督!沿岸砲台の破損率が飛躍的に増大してきています!戦艦砲クラスの砲台の修理が追いつきません!」

「右翼側なお劣勢!増援求む!」

「左翼側で大規模な攻勢開始され、戦艦砲が破壊されました!このままでは肉薄されます!」

「左翼側には戦艦艦娘を重点的に回すんだ!右翼側へは治療中の艦娘が回復しだい向かわせる!うすこし粘れと伝えろ!」

 

 

 

 二日目の戦いも石壁達の優勢のまま戦況は推移していく。25時間、30時間と、石壁の連続戦闘時間を更新しながら続いていった戦いだったが、40時間を過ぎたあたりから石壁の意識はもはや限界に達しようとしていた。

 

(頭が……頭が割れるように痛い……!)

 

 戦闘開始からずっと石壁の頭脳は極限まで回転し続けていた。しかも、それは自分で頭を回すというよりも、無理やり外から圧をかけて回転率を向上させているに等しい。

 

 高速で回転する歯車が摩擦で加熱していくように、石壁は脳髄が摩擦熱で焼かれるような痛みを感じていた。

 

(視界がレッドアウトしそうだ……心臓が痛い……)

 

 石壁の半ば人外化した肉体をもってしても、薬で誤魔化し続けた負担が限界を越えようとしていた。

 

(耐えろ、耐えろ僕の体……僕が倒れたら、もう後は無いんだ……)

 

 石壁は終わりの見えない苦行の中で、ただ独り戦い続けていた。

 

 ***

 

 基地航空隊指揮所では鳳翔が中心となって大勢の空母艦娘が艦載機の指揮を行っていた。

 

「赤城航空隊壊滅!!赤城は疲労困憊で戦闘不能!!」

「飛鷹航空隊損耗率50%!粘り強く抵抗を続けていますがそろそろ限界です!!」

「隼鷹航空隊再配備が遅れています!」

「瑞鶴航空隊奮戦中!!損耗率拡大傾向!!」

「翔鶴は指揮用トーチカに空爆が直撃して昏倒!!後方へ移送しました!」

 

「防空網の穴は私の部隊が一時的に穴埋めします!再配備を急いでください!!交代時間をなんとか縮めて、すぐに部隊を入れ替えて!!」

 

 鳳翔は基地航空隊総司令艦として全体の指揮を取りつつ、航空隊全体を支え続けていた。

 

(航空隊の回復が、追い付かない!!)

 

 この泊地の基地航空隊は無人の艦載機を艦娘が直接操縦する形式をとっている。

 

 これによって艦載機が撃墜されて航空隊が磨り潰されても、機体さえあればすぐに戦力を回復することが出来る。

 

 だが、この艦娘の艦載機の直接運用は艦娘の戦闘への負担が格段に上昇するというデメリットがあった。

 

(皆さんの疲労の回復が追い付きません……騙し騙しやっていますが……もう限界です!!)

 

 戦線を支え続けた赤城は先ほど疲労に耐えかねて昏倒、現状瑞鶴と飛鷹が辛うじて最前線を支え、それを周りが補助しているが、それも限界が近かった。

 

(せめて、もう一艦隊分、空母機動部隊があれば……!!)

 

 現状の泊地には石壁以外に空母を保有する提督が居ない。提督一人分の艦娘だけではローテーションさえままならないのだ。

 

「なんとか日暮れまで持たせねばなりません!私の航空隊数を3割増加させて穴を塞ぎます!!」

「鳳翔殿!!それでは貴方の負担が大き過ぎます!!」

「かまいません、いま無理をせねばどの道破綻します。私が時間を稼ぐ間に、急いで航空隊の充足率を回復させてください!!」

 

 石壁の初期艦だけあって、彼女の防空指揮能力は通常の空母に比べ突出していた。だが、彼女の力をもってしても崩壊は刻一刻と近づいていた。

 

(提督……どうかご無事で居て下さい……)

 

 鳳翔は航空隊総司令艦として基地航空隊の総指揮を取らねばならない。故に戦闘開始からずっと石壁の側を離れているのだ。

 

(さっきから胸騒ぎが止まない……このままでは、何か取り返しがつかない事になるかもしれません……)

 

 鳳翔は、魂が繋がった相手の危機を敏感に感じ取りながらも、そこに駆け付けられない事に焦りを感じていた。

 

(せめて、少しでも提督の負担を減らさないと!!)

 

 鳳翔は歯を食いしばって艦載機を全力で操作し続けるしかなかった。

 

 

 ***

 

 

 

 戦闘開始から50時間、石壁は殆ど一時も休む事無く戦闘指揮を取り続けている。石壁以外の班員は適宜休憩を取らせているが、防衛戦闘指揮の全てを取り図る石壁だけは休めない。 

 

 石壁は戦闘中の本当に短い隙間を見つけて、なんとか数十秒から数分程椅子で目を閉じて休み、すぐに飛び起きて指揮に戻るという行為を繰り返していた。

 

 疲労と眠気を薬で誤魔化しながら戦う石壁の瞳の下には、真っ黒いクマが浮かび、目は充血し、時々溢れてくる鼻血をが口元を汚している。

 

「はぁ……はぁ……あ、かし、薬を」

 

 真っ赤に血走り、顔の色は土気色になり、食いしばられた口元を時々あふれてくる鼻血で汚しながら、掠れる様な声で薬を求める石壁。その姿はもはや健常者ではなく裏路地で薬を求める廃人の如き有様であった。

 

 何度も何度も繰り返し撃たれた薬のせいで、彼の腕は注射痕だらけになっており、その痛々しさは見るものの心を締め付けている。

 

「ゴホッゴホッ……うっ!?おげぇええッ!?」

「て、提督!!」

 

 石壁は腹の底からこみ上げる吐き気をこらえかねて蹲り、血反吐の混じった吐瀉物を吐き出した。度重なる投薬と負担に耐えかねて胃壁に穴が空いたのだ。

 

「はぁ……はぁ……うっぷ……糞ったれ、これ以上錠剤は飲めないか……明石、注射を……」

「提督!もう限界ですよ!これ以上は、もう駄目です!!」

 

 明石があまりの悲惨さに涙を流しならそう叫ぶが、石壁はうんとは言わない

 

「どこが限界だ?防衛戦はまだ充分に機能している……戦線はまだ維持できる。撤退に移る程じゃ……」

「そんな事は言っていません!!貴方です!貴方がもう限界なんです!!このままじゃ、壊れちゃうんですよ!!艦娘とちがって貴方は壊れても直せないんですよ!?貴方が壊れたら、一体誰がこの泊地を護るんですか!!」

 

 明石の叫びはその場の者の総意であった。自分たちの敬愛する提督がまるで廃人のごとく薬物に身を委ねて命を削り戦い続ける様は、石壁よりも先に周りの人間の心をへし折った。総司令官にあれ程に命を削らせなければ戦うことすら出来ない自分たちの無力が、何よりも辛かった。

 

 だが、普段なら石壁も受け入れられただろうその指摘は、既に限界ギリギリまで摩耗していた彼の心を逆撫でするには充分過ぎる力をもっていた。

 

「……おい」

「えっ!?」

 

 胸ぐらを石壁に掴まれて、明石は驚愕する。これまでこんな暴力的な行動を石壁はとった事などなかったからだ。

 

「じゃあ聞くが」

 

 至近距離で目の座った石壁に睨まれて、明石は息を飲んだ。

 

「現実問題として誰が指揮を取る?伊能か?君か?間宮か?馬鹿を言うな、だれが指揮をとれるというんだ!!この鉄火場を、この攻勢を、誰が代わりに指揮してくれると言うんだ!!」

 

 決壊した感情の奔流が次から次へと溢れ出していく。

 

「て、提督?」

 

 石壁が部下の前で感情をむき出しにするの事は殆ど無い。石壁が部下に八つ当たりをしたところなど誰も見たことはなかった。だが、度重なる薬物の過剰摂取がもたらす極度の躁鬱状態が彼の感情のタガをあっけなく弾き飛ばしていしまう。明石は生まれて初めて、石壁の内部に燻ぶるドス黒い感情を叩きつけらた。

 

「この泊地でたった一人、僕だ、僕しか居ないんだろう!?僕以外の一体誰が指揮を取れるというんだ!!誰が、僕らを助けてくれると言うんだ!!僕らを見捨てた大本営か!!自分たちの命で精一杯な南洋の他の泊地か!!誰もいない、誰も居ないんだよ!!」

 

 それはこの泊地にやって来てからずっと石壁の心のどこかに燻っていた感情、総司令官という仮面で押さえ込んできた諦念と絶望であった。

 

「僕らを助けてくれる人なんて誰も居ないんだ!!なら、僕がやるしかないだろうが!!!!」

 

 石壁は血を吐く様に叫ぶと、呆然とする明石の腕から注射器を奪い取った。

 

 

「やめて、やめてください……!お願いです提督、それ以上戦わないで下さい……!!」

「離せ明石!!僕が戦わないと皆死ぬんだ!!頼むから戦わせてくれ!!」

 

 注射器を射とうとする石壁を明石は泣きながら羽交い絞めにする。周囲の仲間達はそれを呆然と見るしか無い。

 

 組み合う内に二人は無線機に衝突する。

 

「誰か居るはずです!誰か、この現状を救うために助けに来てくれるはずです!だから……だからヤケにならないでください!!」

「ならだれがいるのか教えてくれよ!!この場所に、誰も来ようとしない世界の果ての地獄まで、だれがくるっていうんだよ!!」

 

 その瞬間、石壁の絶叫が無線機を通して泊地周辺へと放送された。先ほどの衝突でマイクの電源が入ってしまったのだ。

 

「なっ!?」

 

 それに気が付いた瞬間、石壁は全身の血の気が引いた。最高司令官の錯乱と絶望が電波にのって広がってしまったのだ。折れる、折れてしまう。戦線を維持する最後の頼みの綱が、これで折れてしまう。石壁がそう絶望したその瞬間ーー

 

 

 

『助けならここにいるぜ』

 

 

 

 無線機から声が響いた。

 

 

 

『ようブラザー、オイラの声を忘れちまったか?』

 

 

 

 居るはずのない、もう二度と聞くことはないだろうと思っていた、『最高に陽気な男の声が』無線機から流れた。

 

 

「じゃ……」

 

 

『例え世界の果てにいたって、オイラ達は仲間だろ?』

 

 

「ジャンゴ!!」 

 

 希望はまだ、残っていた。

 

 ***

 

 

「ジャンゴ!!」

 

 その無線を聞いた指揮所が俄に活気づく。

 

「援軍!援軍です!」

「援軍!?嘘!?」

「『金剛型戦艦四隻』を含む艦隊が先頭を航行中!」

 

 石壁が金剛型戦艦という言葉を聞いた瞬間、広域無線を無線機が捉える。

 

『遠からん者は音に聞けぃ!!近くば寄って目にも見やがれい!』

 

 あまりにも聞き覚えの有りすぎる名乗りに、石壁は思わず破顔する。

 

 ***

 

 

 改造巫女服の如き傾いた服装、意志の強そうな凛とした瞳に、ふてぶてしい不敵な笑み。

 

「撃てば必中、駆ければ韋駄天、進む姿は鉄(くろがね)の城!!」

 

 戦場のど真ん中に大輪の花が咲く。無線封鎖など知ったことかと傾く漢女(おとめ)の大音声が、世界へ向いて響き渡る。

 

「えげれすはろんどん生まれの帰国子女!天下無双の鬼金剛たぁ……」

 

 金剛が手を前に突き出す様な歌舞伎めいたポーズを決めながら、砲門を敵へと向ける。

 

「アタシの事でい!!」

 

 

 ドドン!と太鼓を打つ代わりに砲弾を一斉射撃する一同。その砲弾は一切ぶれることなくそれぞれが敵艦に叩きこまれ、一斉に爆散した。

 

「助けにきたぜい石壁提督!この金剛が来たからには最強の大戦艦に乗ったつもりで待ってやがれ!」

 

 地獄の泊地に、最高に頼もしい援軍たちがやってきたのだ。

 

『Fuck!ズルいぜ金剛!オメーばっかりカッコイイとこ持っていきやがって!オイラにも名乗らせろよ!』

「ああん?きこえないねぇ?なんかいったかい宿六!」

 

 艤装と無線から響くジャンゴの悔しそうな声に、わざと耳元に手を持って行って煽る様な仕草をする金剛。戦場ですら常態を保つその有り様は、敵にイラつきを与え、味方を鼓舞する。

 

『HollyShit!!ええいもういい!聞こえてるかブラザー!助けにきたぜー!』

 

 ***

 

 

 ジャンゴの楽しそうな声が無線を通じて広がると、その無線を聞いていた鎮守府のすべての者達に喜色が浮かんだ。ジャンゴ達の事を知らないものは、援軍というその単純な言葉に、ジャンゴ達の事を知る者たちは、その相変わらずの破天荒さに、笑みを浮かべた。

 

『嬉しいだろ!?けどオイラだけじゃないんだぜ!』

『ジャンゴ!先行しすぎだ!すこし引け!』

『新城提督!全艦隊所定位置に到着!これより戦闘にはいります!!』

『石壁ー!元気だったー!?山城お姉ちゃんが助けにきたわよー!」

 

 ジャンゴに続いて、無線が届く距離にきたらしい男女の声が続いて響く。忘れるはずもない、新城提督とその艦娘、扶桑と山城だ。

 

『この無線を聞く全ての者に次ぐ、自分は新城定道中佐、これより指揮下の全艦娘を率いてショートランド泊地を救援する!攻撃を開始せよ!』

 

「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!」」」」

 

 無線から大勢の艦娘の声が響く。

 

「石壁提督!電探に感あり!総勢100名以上の艦娘が現れ、敵艦隊へ横から攻撃を加えております!」

 

 その瞬間、水平線を埋めるような大艦隊が、水平線から現れた。その数24艦隊、96名、新城が指揮下におく全艦娘が、一糸乱れぬ航行を行っているその様は、圧巻であった。

 

「あ、あれが新城の艦隊!?どうやってあれだけ多数の艦娘を一度に指揮しているんだ!?」

 

 一般的に提督が一度に統制できる艦娘は一艦隊六名、才能のあるもので限界が4艦隊24名であるといわれている。それ以上の艦娘を指揮しようとしても提督の能力を超えてしまい、援護が及ばず轟沈率が跳ね上がるのだ。石壁は数十名の艦娘を戦場に投入したことはあるが、それが出来たのは一切指揮をせずあくまで兵士として艦娘を扱い、彼女たち自身に戦場での判断を委ねていたからだ。

 

 だが、新城の艦隊は明らかに違う。あれだけ多数の艦娘を、組体操の如く一切の無駄なく、整然とした艦隊行動を取らせている。どうみてもあれは提督の『指揮下』にあり、信じがたいことに通常の24倍、熟達した一流提督の4倍もの艦娘を一度に指揮しているのだ。

 

 これに面食らったのは深海棲艦側である。艦娘が深海棲艦にまさる最高の点が、提督の有無である。提督指揮下にある艦娘一人の戦力は深海棲艦一人を大きく上回るのだ。それが96名も、しかも一つの意志の元一糸乱れぬ戦闘を行うのである。その戦闘力は、推して知るべきであろう。

 

 現に、無警戒に近寄った航空機は、圧倒的な数による空を埋め尽くすような防空射撃に叩き落とされ、凄まじい量の砲撃が、艦隊単位で深海棲艦を消滅させていた。

 

 ***

 

「なんだあのバケモノ染みた動きをする艦隊は!?」

「まともにぶつかればただじゃすまないぞ!」

 

 新城達の艦隊と衝突した深海棲艦達はバターが溶ける様に削られていく。

 

 突如吹き込んだ神風が、戦場の流れを一変させる。その勢いは未だ止まず、更なる追い風を引き寄せる。

 

 

「電探に感有り!あの艦隊の後方よりさらなる増援を感知!!……ら、ラバウル航空隊!ラバウル航空隊だ!!しかも多い!!かなりの大規模な増援です!!」

「チッ……遂に出張ってきたか」

 

 二千機の艦載機が先行する新城達の上空を護る。その全てが妖精さんが操作する精鋭航空隊であり、その攻撃力の高さは凄まじいモノとなる。

 

 深海棲艦の指揮艦は、新城艦隊がラバウル航空隊の援護を得てじわじわと近寄りながら深海棲艦を撃滅していく様をみて、決断を下した。

 

「……全艦隊に通達、一時撤退だ」

「……よろしいので?」

 

 指揮艦はその言葉に応じる。

 

「構わん、もともと第一次攻撃は『威力偵察』だ。イシカベの泊地の戦力も増援の戦力も充分に測れた。次で仕留めればいい」

 

 飛行場姫は今回の攻勢で石壁が崩れないことや大規模な増援が来ることも充分に想定していた。その場合は今回の一連の攻撃を偵察と割り切りショートランド泊地の戦力を測って、第二撃で石壁を仕留めるつもりであったのだ。

 

「どの道我らに負けはない。じっくり腰を据えて攻めればよいのだ。撤退に移れ」

「はっ!総員に撤退命令を出します!」

 

 そういって指揮艦は、艦隊に退却命令を出す。

 

『全艦撤退せよ!鉄床海峡へ引け!』

 

 ***

 

 こうして、第一次鎮守府正面海域海戦は幕を閉じた。攻め寄せた深海棲艦の内数千名を叩き潰したショートランド泊地であったが、飛行場姫の手元にはまだ一万以上の深海棲艦が残っている為、勝利とは程遠い結果であった。

 

 むしろ、泊地の基地機能や海岸の防衛線は崩壊する寸前であった。そして何よりも、石壁が最早限界であった以上彼等は敗北したと言っても間違いではなかった。

 

 だが、それでも石壁たちは今日を乗り越えたのだ。石壁はまだ死んでいない。ならばまだ終わりではないのだ。

 

 ショートランド泊地の全てのモノに刻まれた敗北の苦渋が、どう作用するのか。そして、いずれもう一度押し寄せるであろう飛行場姫の本命の第二撃がどうなるのか、今はまだ誰にもわからない。

 

 

 


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