本日は【最終話とエピローグの二話同時投稿】となっております。
こちらが【エピローグ】です。【先に最終話を読んでから】ご覧くださいませ。
遥か未来の教室にて、一人の若い男性教諭は続けた。
「石壁提督が『ソロモンの石壁』と呼ばれるようになったきっかけである南方棲戦鬼の討伐。これによって時代が大きく動いたといっていい。さながらサラエボでオーストリア皇太子が暗殺されて
物事には必ず因果がある。歴史を紐解けば一つの歴史的事件の背景には連綿と続く歴史の因果があるのだ。歴史にIFはないと言われるように、一つの「きっかけ」を回避したところで、多くの場合それはあくまできっかけでしかない。結局のところ歴史は似たような流れへと収束していくのだ。その過程に差異こそあれ、『誰が』引き金を引いたかの違いこそあれ、マクロな視点で見れば着地点にそう大差はないのだ。
「彼が引き金を引いたのは歴史の偶然だったけど、彼が英雄になったのは歴史の必然だった。彼は時代が求めた英雄の玉座に偶然座ってしまったんだ。一度座ったが最後、歴史に飲まれて命を落とすか、歴史に乗って運命に抗いぬくかの二択を強いられる覇王の玉座にね。身の丈に合わない名声なんて、彼はきっと欲しくなかっただろう」
男性教諭の言葉は、英雄にならざるをえなかった凡人への憐憫がにじみ出ていた。
「石壁提督が英雄として世界に名を轟かせれば轟かせるほど。彼を英雄へと追い込んだ大日本帝国という国の歪な構造が表面化していった。政治腐敗、軍部の癒着、マスメディアの統制、迫害される南洋諸島の人々……大本営にとって隠しておきたい国家の恥部が、石壁提督が生きているだけで白日の下に晒され続ける。大本営にとっては彼が生きている事そのものが罪だったんだ。彼はただ生き残る為に足掻く事さえ、最初から祖国に許されていなかったんだ」
生きることを否定された時、人はそれに従うか、抗うかの二択しか取ることが出来ない。世界に否定されたなら、世界を否定するしか、それを覆す方法はないのだ。
「彼をさす二つ名はいくつもあるが、その中である意味もっとも的確で、皮肉のこもった呼び名がある。当時を生きた人の中には彼の事を憎悪を込めてこう呼ぶものが居たんだ」
故にこそ、石壁の戦いは、彼の進むべき道はーー
「祖国である大日本帝国を滅ぼした、日本史上最悪の『逆臣』である、と」
ーー己の祖国を、否定する道になるのだろう。
これにて第二部完結でございます。ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
最終章である第三部の開始時期については未定ですが、少なく見積もって半年以上先になると思われます。書き溜めが開始可能な水準に到達したらまた再会致しますのでいつになるかは少しわかりません。
図々しいお願いではございますが、帰ってくる日をのんびり待って居て頂けたら幸いです。
それではまたいずれお会い致しましょう。
2018/08/30 鉄血☆宰相
追記、本日か明日位には後書き的なモノを活動報告に追加致しますので気になる方はどうぞ。なお読まなくても作品を楽しむ上で全く問題はございませんのでご安心ください。
2018/08/31 あとがき追加しました