艦これ戦記 -ソロモンの石壁-   作:鉄血☆宰相

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幕間 さようなら

 これは石壁が南方へと赴く少し前の話である。

 

「……」

 

 石壁は一人、本土のとある場所へとやって来ていた。

 

「……此処に来たのも、久しぶりだなあ」

 

 石壁の目の前にはそこそこ大きな建物があった。数十年モノの木造建築であり、所々に素人仕事丸出しな修繕の後が目立っている。いかにも貧乏ぐらしといった佇まいだ。

 

 それだけならばただのデカイだけのボロ屋であるが、建物の頭頂部に立つ十字架がその建物の特別性を主張していた。

 

「……あの、どうかしましたか?」

「へ?」

 

 石壁がなんとも言い難い顔で十字架を見つめていると、背後から少女に声をかけられて我に帰る。

 

「あ、ああ、ごめん。怪しいもんじゃないよ。僕は此処の出なんだ」

 

 石壁が振り返ると、そこには十代中頃あたりの少女が立っていた。飾りっ気のない長い黒髪に、意思の強そうな切れ長の目が印象的な少女である。彼女は制服を着て石壁を見つめていた。

 

「此処のって……あっ」

 

 振り返った石壁の顔を見て、少女は目を丸くする。

 

「ケンジ兄さん!?」

「あ、洋子ちゃんか。久しぶり、大きくなったねぇ」

 

 久しぶりにあった親戚のおじさんみたいな感想を零しながら笑う石壁。洋子と呼ばれた少女は唖然としたまま石壁を見つめていたが、はっと正気に戻って駆け寄ってくる。

 

「久しぶりじゃありませんよ!?帰ってくるなら帰ってくるって連絡ください!!というか急に居なくなって、一体何処で何やってたんですか!?」

「あはは……ま、まあそれはいいからさ」

 

 石壁は苦笑しながら誤魔化すと、手提げ袋を掲げる。

 

「とりあえず、院長先生に取り次いでくれないかな?これ、お土産だから皆で食べてね」

 

 ふにゃっとした石壁の笑みと言葉に、少女は脱力しながら手提げ袋を受け取った。

 

「はぁ……分かりました。とりあえず中へ入ってください」

「ありがとー」

 

 少女は数年ぶりにあった石壁の変わらなさに安心するやら呆れるやらで、頭痛を堪えるように額に手をやっている。

 

「あ……そうだ」

 

 石壁を先導するように建物に入ろうとした彼女は、石壁を振り向き口を開いた。

 

「お帰りなさい。ケンジ兄さん」

「……ただいま」

 

 石壁の返事に嬉しそうな笑みを浮かべて、少女は建物に入っていく。

 

「……」

 

 石壁は、少女が潜った入り口に添えられた看板へと目をやる。『岩倉孤児院』という古びた看板が、石壁を出迎えていた。

 

「……ただいま……か」

 

 石壁はふっと笑うと、少女の後に続いていった。

 

 ここは本土のとある孤児院。

 

 石壁が数年前まで暮らしていた場所である。

 

 ***

 

「……建物、あんまりかわってないなあ」

 

 廊下を歩きながら石壁が呟く。それを聞いた少女は、苦笑しながら言葉を返す。

 

「昔に比べれば余裕が出来てきましたけど……院長、建物より先に私達にお金を回しちゃいますから……」

 

 石壁が暮らしていた孤児院はキリスト教の教会に併設されており、教会の持ち主である牧師が慈善事業として細々と運営していた施設である。

 

 だが、戦争で身寄りを失った大勢の子どもたちを抱え込んだ為に経営は火の車となり、建物の修繕費などとてもではないが捻出出来なくなってしまった。歩くたびに軋む廊下の床板や、ガタつく立て付けの悪い戸板や窓枠が苦労の具合を物語っていた。

 

「はは、院長らしいや」

 

 だが、石壁はそんなボロ屋の変わらなさにどこか安心していた。住んでいるときはボロ屋のボロ具合に辟易としたものだが、建物の年季の深さは染み付いた思い出の深さでもある。

 

 バリアフリーどころかバリアマックスなくせに隙間風だけはバリアしてくれないボロ屋だが、それでも思い出だけはバリアしてくれているのだ。もしも完全バリアフリー冷暖房完備の最新設備に変わっていたら、懐かしさ皆無で石壁は複雑な気分になっていただろう。

 

 そうこうしている内に、二人は礼拝堂へとたどり着く。そこには院長である男性と少女よりも早く帰宅していた小学生達が集まっていた。

 

 院長は年の頃50代後半程の優しげな顔立ちの男性であった。くたびれた牧師服と白く染まった髪が、苦労をしてきた男性、という雰囲気を醸し出していた。

 

 名前は岩倉清秀(いわくら きよひで)、この孤児院の院長である。

 

 院長は少女に気がつくと、穏やかな笑顔で彼女を迎える。

 

「ただいま、院長先生」

「お帰りなさい。おや……後ろにいるのは……」

 

 洋子の後ろに誰かが居る事に気がついた岩倉は、石壁へと顔をやる。そして、目を見開いた。

 

「……ケンジ君?」

「えっと……あはは」

 

 石壁はぽりぽりと頬を掻きながら、口を開いた。

 

「お久しぶりです……院長先生」

 

 院長はその瞬間、走り出すと石壁に駆け寄った。今まで見た事が無い位機敏なその動きに石壁はギョッとして目を見開く。

 

「へ!?い、いんちょぐへぁ!?」

「院長先生!?」

 

 タックル気味の勢いで抱きしめられた石壁が呻き声をあげる。

 

「ケンジ君……!無事でよかった……!あの後急に居なくなったから心配で心配で……!!」

「ぐ、ぐるじい……」

「先生!!落ち着いてください!!ケンジ兄さんが神の家から神の国に逝きそうですから!!」

「あ、すまない!」

「ぷはぁ……いえだいじょーー「ああ、ケンジ兄ちゃん!!」「ケンジ兄だ!!」「兄ちゃんひさしぶり!!」ーーぐおわぁ!?」

 

 院長から開放された石壁であったが、今度は来訪者が石壁である事に気がついた少年少女達からもみくちゃにされてしまう。勢いのついた子供のパワーは凄まじく、(貧弱ボーイだが一応)軍人の石壁でも堪え切れずに押し倒されてしまう。

 

「ちょ、お前ら、まっ!?」

「兄ちゃん今何やってんの!」

「遊んでくれー!」

「お土産ー!」

「彼女できたー?」

 

 ワイワイギャーギャーと石壁に群がって好き勝手に声をかけるので場は纏まるどころか更に狂乱としていく。子供達は久しぶりに石壁に会えた事が嬉しくて堪らないらしく、全然話を聞いてくれない。

 

 もみくちゃにされて大変そうな石壁であったが、久しぶりに会った子供達が元気そうである事が嬉しくて、石壁は困ったような笑顔であった。

 

「あはは……相変わらず、ケンジ兄さんは子供達に人気ですね」

「いや、ごめん!人気なのは嬉しいけどちょっと助けて!?いてて髪引っ張らないで!?」

「はいはい」

 

 洋子は石壁のそんな様子をみてクスクスと笑い、石壁を助けてくれた。

 

「ほら、これケンジ兄さんからのお土産だから皆で分けてきなさい。宿舎にいる子達にも配りなさいよね」

「やったー!」

「兄ちゃんありがとー!」

「あとで遊んでね〜」

 

 お土産の菓子を受け取った子供達は、宿舎の方へと走っていった。

 

「ふぅー助かった。相変わらず元気な子達だねえ」

「相変わらずなのはケンジ兄さんもですよね」

「うるせーやい」

「……まあ、何はともあれだ」

 

 酷い目にあったと言いながらも楽しそうな石壁に、洋子がつっこむ。そんな二人の様子を見守っていた岩倉は、笑みを浮かべたまま口を開いた。

 

「お帰りなさい。ケンジ君」

「……ただいま。院長先生」

 

 石壁は、恥ずかしそうに答えた。

 

 ***

 

 それから三人は応接間という名の談話スペースへと移動した。石壁が洋子が淹れてくれたお茶を啜っていると、岩倉が口を開く。

 

「ケンジ君……」

「はい」

「……ちゃんと、ご飯は食べられているかな?」

 

 真剣な岩倉の顔に少し身構えた石壁であったが、その問に肩の力を抜いた。

 

「あはは、大丈夫ですよ先生。ご飯は毎日しっかり食べられますし、健康そのものですから」

「本当かい?辛い目にあったりしてないかい?君の年頃で働ける場所は、どうしても限られてくるからね」

「しっかりした場所で働いてますから、大丈夫ですよ」

 

 それからも岩倉は、石壁の体調や近況について質問を繰り返した。どれも石壁を心配したから出てくる問ばかりで、心の底から彼の安否を気にかけていたのだという事が伝わる内容であった。

 

 石壁はともすれば過保護とも思えるほどの質問攻めに、嬉しいようなくすぐったいような思いにかられながらも、一つ一つに答えていった。

 

「そうか……ひとまず元気そうで、本当によかった」

 

 一通り健康関連の質問を終えると、岩倉はほっと息を吐いた。

 

「院長先生……」

 

 石壁はそんな岩倉の姿に感謝と申し訳なさを感じて口を開いた。

 

「……長い間育ててもらったのに、恩知らずにも黙って孤児院を飛び出してしまって、本当にすいませんでした」

 

 石壁が頭を下げると、岩倉は苦しげな顔で首を左右にふった。

 

「頭をあげなさい。君は何も恥じる事はない……むしろ、謝らなければならないのは私の方だ」

「院長先生……?」

 

 岩倉のその様子に、洋子が不思議そうな顔をする。

 

「……洋子くん、少しだけ席を外してくれないかな?」

「え……わ、分かりました」

 

 一瞬どうしたのかという顔をした洋子だったが、岩倉の真剣な顔を見て立ち上がり部屋を出ていった。

 

 扉がしまって数秒後、岩倉は口を開いた。

 

「……君があの日孤児院を飛び出してから、定期的に孤児院に寄付が振り込まれるようになった」

「……」

 

 岩倉の言葉を、石壁は黙って聞いている。

 

「ここから巣立っていった誰かという可能性もある。だが、確認できた人の中には仕送りの主はいなかった。それに、働きに出ている年長組の子供達は、殆どが大学はおろか高等学校にも入れてあげられなかったんだ……彼らには、あれだけ多くの仕送りを出せる余裕はない」

 

 石壁達が孤児院に居たころは、深海大戦勃発直後から、一番追い込まれて余裕がなかった時代であった。孤児であり、ろくな教育も受けられなかった彼らがいい仕事につけるのは稀を通り越して奇跡の類であった。

 

「ケンジ君、君は昔から優しくて頭がよかった……此処に居た頃から、少しでも皆の生活が良くなるように色々と動いてくれていた……此処を飛び出したのも、その為なんだろう?」

 

 岩倉は、まだ十代半ばの少年をそこまで追い込んでしまった自分の力不足を、心底苦しく思って頭を下げた。

 

「すまない……そして、ありがとう……君のお陰で、洋子君達を学校に行かせてあげられた……本当に……ありがとう……」

 

 下げられた顔から、雫が落ちる。石壁がこの孤児院に居た頃は、今よりももっと小さかった。そして、院長はもっと大きく見えていた。

 

 だが、数年の時をへて再び出会った院長の姿は、記憶の中の彼よりもうんと小さく見えたのだ。岩倉は爪に火を灯すような生活の中で、苦労に苦労を重ねて子供達を養っていた。それでも子供達の前では泣き言一つ吐く事無く、ずっと「優しい院長先生」でありつづけたのである。

 

「院長先生……」

 

 そんな岩倉が、涙を流しながら自分に謝罪と感謝を述べているのだ。石壁の中に、形容し難い感情が溢れてくる。

 

「……っ……ほら!顔を上げて下さい!大丈夫です、僕は自分の意思で此処を飛び出したんですから!先生が気に病む必要なんてないんですよ!」

 

 石壁は零れそうになる涙を拭うと、努めて元気に声をだした。

 

「仕送りの事も、気にしないで下さい。僕の仕事は三食きちっと支給されて住む場所も提供して貰えるんです。だからあれだけ仕送りしても大丈夫なんですよ」

 

 岩倉を安心させるためにそう言葉を続けると、漸く彼は顔を上げる。

 

「……君が今働いている場所は、恐らく軍隊なんじゃないか?」

「……っ」

 

 その言葉に、石壁は言葉を詰まらせる。それが、何よりの答えであった。

 

「……やっぱりか」

 

 先程も言ったように、このご時世に学校も出ていない子供がお金を稼ぐ手段は限られる。それも、人を複数養える仕事など、違法な事か、危険な事の二択しかないのが現実であった。石壁は違法な事に手を染める人間ではない。であれば、答えは自ずと決まったようなものである。

 

「……すいません、先生」

 

 石壁が黙って孤児院を飛び出したのは、軍の扉を叩くと言えば反対されるのが目に見えていたからであった。敬虔な信徒であり、争いと最も遠い所にいる彼にこんな事言える訳がなかった。負い目があった。合わせる顔が無かった。だから今日までここに帰ってこなかったのだ。

 

「……君が謝る事はないんだ。さっきも言ったように、私達は皆、君に助けられて生きてきたのだから」

「……」

 

 沈黙が部屋に落ちる。互いが、互いの事を思うが故の、どうしようもない沈黙であった。

 

「……君が此処を出てから数年がたった。軍人になったのなら、そろそろ任地に赴くんじゃないかい」

「……はい」

 

 石壁は、真っ直ぐと岩倉を見つめる。

 

「遠くへ……行きます……だからその前に……最後に一度、先生達に挨拶がしたくて此処へ来ました」

 

 ずっと彼らに会いたかった。会って、言葉を交わしたかった。

 

 合わせる顔がなかった。神の教えに生きる彼に、なんと言えばいいのかわからなかった。

 

 それでも、もう二度と会えないかもしれなかったから、最後に一度だけ会いたかったのだ。

 

「行き倒れて死にかけていた僕を助けてくれて……家族として育ててくれて……本当に……ありがとうございました……」

 

 石壁は立ち上がると、深く深く、頭を下げた。それは感謝の言葉であり、謝罪の言葉であり……別れの、挨拶であった。

 

「……」

 

 岩倉は、これから戦地に赴く石壁の姿をじっと見つめていた。目に、心に、焼き付けるように。

 

 数秒の間、誰も、何も言わなかった。

 

「……僕はもう行きます。どうかお元気で、岩倉さん」

 

 石壁が頭を上げた。そこに居たのは、もう少年だった彼ではない。軍人となった、一人の男であった。

 

「……ケンジくん」

 

 岩倉は、そんな彼の姿を見つめながら……微笑んだ。石壁がよく知る、院長先生の笑みで。

 

「此処はずっと、君の家だ。神の家は、誰にでも、開かれている」

「……っ」

 

 いつもの笑みのまま、岩倉は目尻に涙を湛えて、続けた。

 

「……『行ってらっしゃい』」

 

 その言葉に、石壁は言葉を失った。

 

「あ……」

 

 行ってきますと返したかった。いつものように、昔のように。

 

 別れを告げねばならなかった。その為に、ここまできたのだ。

 

 だが、開かれた彼の口から言葉が出てこない。

 

 切り捨てるには、余りにも大切で、温か過ぎる。

 

 持っていくには、余りにも重くて、未練に成り過ぎる。

 

 だから何も言えなくて、言いたくなくて、言わなくてはならなくて……石壁は言葉を返す事が、出来なかった。

 

「……ッ!」

 

 石壁はぐちゃぐちゃの心をむりやり抑え込むと、敬礼を返す。それが……それだけが精一杯であった。

 

 石壁は涙を堪えて走り出すと、そのまま部屋を出ていった。

 

「……神よ、願わくば」

 

 岩倉は、一人残された部屋で、涙を流しながら言葉を紡いだ。

 

「彼の道行きが、幸多きもので、あります、ように……」

 

 ***

 

 部屋から出てきた石壁は、そのまま孤児院の出口へと歩いていく。もう二度と此処に来る事はないのだろうと思うと、涙が溢れそうになる。それを堪えて、歩く。歩く。歩く。これ以上ここに居たら、何もかも耐えられなくなる。歩けなくなる。それは、それだけは、許されないから。

 

 もうこれ以上、誰も声をかけてくれるな。そう願い、石壁は歩いた。

 

「あれ……ケンジ兄さん、何処に行くんですか?」

「……っ」

 

 だが、無情にも石壁の足は止められてしまう。出口を目の前にして、後ろから洋子が声をかけてきたのだ。

 

 震えそうになる声を抑え込み、彼女に背を向けたまま、石壁は口を開く。

 

「……実は仕事の関係で、もう帰らないといけないんだ」

「えっ!?そんな……せめて晩ごはんだけでも食べていけないんですか!?今日はケンジ兄さんの好きだったカレーライスなんですよ!?」

「うん……ごめんね……もう帰らないといけないんだ……」

 

 努めて平静に、石壁は言葉を続けていく。震えるな、躊躇うな、動揺を見せるな。石壁は己に言い聞かせ、飲み込んで、耐え続ける。

 

「じゃ、じゃあ次はいつ来られるんですか?その時は、色々準備して待ってますから!最近は美味しいご飯も色々食べられるようになって、みんな喜んでるんですよ!きっとケンジ兄さんも驚きます!前はめったに食べられなかったご馳走も出せるようになったんですから!」

「……そっか、美味しいご飯を食べられるようになったんだね。本当に……良かった」

「……兄さん?」

「洋子ちゃん」

 

 そこにきて違和感を覚えた洋子であったが、石壁が言葉を続ける。

 

「今、幸せかな?」

 

 静かな、それでいて何故か響く問であった。洋子は暫し考えると、石壁へと思ったままを答える。

 

「……はい、学校にも行けますし、ご飯もしっかり食べられますし……みんな元気にやっていますから」

「……そっか」

 

 石壁は、そこでようやく振り返った。洋子の記憶にあるままのいつもと同じ笑顔を浮かべて、彼女の顔を真っ直ぐ見ながら口を開く。

 

「それなら、良かった。元気でね。洋子ちゃん」

 

 その笑顔に、彼女は気のせいだったかと思いながら笑顔を返す。

 

「はい。ケンジ兄さんも、お元気で。また来てくださいね」

 

 洋子は石壁に手を振りながら口を開く。

 

「いってらっしゃい」

 

 石壁は、笑顔を返して手を降ると、前をむいて孤児院を出ていった。

 

「……『さようなら』」

 

 孤児院の出口を出た後、石壁は小さく呟いた。顔をぐしゃぐしゃに歪めて、堪えていた涙を流しながら。

 

「さよう……なら……」

 

 涙が溢れて止まらなかった。石壁は今、大切な繋がりを……護りたかった人々との絆を……自ら断ち切ったのだ。

 

「……」

 

 石壁は、前へ向かって歩き出した。止まる事も、戻る事も出来ない旅路。力尽きるまで終わらない地獄へと、歩き出したのであった。

 

 

 

 

 孤児院の皆が再び石壁の名を目にするのは、それから1ヶ月後……石壁の死亡通知が届けられる日の事であったーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





石壁君が天を仰ぐ時の口癖は院長先生から移ったモノだったりします

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