6:鏡の世界 決戦3 VS影キリト
基本的なボス戦が行われている最中、ある者はその拉致した存在をまじまじと見つめる。
「ククク、矢張リ……貴様の四肢ハ美しい」
「何を馬鹿な事を云っているんですか?」
短剣を振るう。
しかしその者は、一瞬でその場から退避する。
そして再度接近する。
まるで美しい彫像を見る芸術家のような動きだ。
ただなんというか、動きが気持ちが悪い。
影キリトの姿を借りているというのに、気持ち悪い。
「して、シリカよ。我のモノにナラヌか?」
「いやです」
「何故?」
「私にメリットがない。それに勧誘もソレだけですよね。
私が頷くわけがないでしょ」
ツインテールの少女シリカは、今までずっと観察されては口説かれていた。
しかしどう考えても、影キリトを切り捨ててシリカを乗っ取るとしか聞こえなかった。
この言葉は頷けない。
理由は複数あるが、一番の理由はポケモンを操られること。
彼女が持っているのは、デルタ化だけではない。
やぶれた世界の主ギラティナに指示できるのは、アルセウス・サトシ・シリカのみ。
この世界には、今の一万人のプレイヤーが抗えない物量と質がそろう伝説や神のポケモンが多くいる。
その為、デルタ化・ポケモンの総攻撃は避けるべき問題だ。
それにシリカもアルセウスとユニゾンする。
デルタ化とユニゾンをされたら、実質勝利できるプレイヤーが皆無と化す。
これはだめだ
非常にあかんことになる。
(この人?は何を考えてるんだろ?
私のデルタ化ねらいだろうけど、何が目的?
喋ってくれるかな?
ふっかけてみよう)
「あの~、私を乗っ取って何するの?」
「……”アルセウス”ダ。あのモノトの神化統一は、トテモスバラシイ!
コレを使えば、この世三千世界を我ガ手中に収められる!
故ニ、あの糞ウザゼロをぶっ殺せる!」
つまり、ただの反逆行為。
こんな稚拙な理由で、私が利用されるの?
いや、稚拙じゃなくても、これは許しがたい。
シリカはそのように考える。
彼女はピナに指示を出して、影キリトにダメージを与える。
「交渉決裂カ……わかっていたツモリだが……致し方あるまい。
実力行使で乗っ取ってクレる!」
「ピナ!」
「オオオオオ!!!」
破壊光線が奴に中るが、効果が無いように見える。
「効かぬ、効カヌ!」
影キリトは、今まで真っ黒だった瞳を真っ赤に燃やして、片手剣で攻撃してくる。
攻撃は単調で、第一層のプレイヤーが行う左右のホリゾンタル攻撃しかしてこない。
シリカはこの事に少し感づく。
あの影のメタナイトから影キリトに乗り移ってから、そんなに時間が経過していない。
つまり体がその影に、適合していないと考えられる。
<シリカ。一度、あの者の眼を攻撃してくれないか?>
イヤリングとなっているアルセウスが、彼女に聲をかける。
彼女はその狙いにハッとする。
影キリトは基本的に黒色だが、一か所だけ赤い。
それは左の眼だ。
敵の正体は不明だが、攻撃する価値がある。
その提案の中に、もう一つこの不思議な状況を打開するアイテムがある事を告げる。
それは『ドリームキャスト:ダガーハンド』。
ダークマター族に大ダメージを与えるそれを、『フラッシュチェンジ』という武器高速換装スキルで今現在の武器を変更する。
そして目に突き刺す事で、何か確証を得られるのではないか。
このようにアルセウスは、彼女に作戦を推す。
(わかりました。ダガースキルの『シェイドスラッシュ』で仕掛けてみます)
『シェイドスラッシュ』は、最初の攻撃を囮に使い後の攻撃を本命とする。
フェイントをかけられた敵は、最初の攻撃が囮と気づかないで迎撃する。
そして攻撃を防御した敵は、再攻撃が可能な相手の腕の動きに自身がついていけなくなり攻撃を受けてしまう。
そんな技だ。
彼女はピナに攻撃させる。
『神速』で近距離攻撃。これを迎撃しようとした影キリトは、そのまま攻撃する。
ソードスキルは未使用。
次にシリカの『シェイドスラッシュ』。
影キリトはピナを打ち払った剣に、ソードスキルをかける。
しかしその剣技は、囮に引っかかってしまい空ぶってしまう。
おかげでクールダウンが、敵に攻撃が当たる筈の抗力の分の時間が重なってしまい長くなる。
その間にシリカの本命が、『フラッシュチェンジ』で換装して影キリトの眼に突き刺さる。
「ぐあぁァアアああァァアア!!!」
攻撃してきたシリカに、急激な攻撃を彼の者は仕掛け後退する。
攻撃を仕掛けられた彼女は、何ともなっていない。
実質高レベルボスに、たった一人で戦っているのと同じなので、
どんなにせこいことでもやる。
ちなみにこの攻撃を守ったのは、空間的な防御だ。
今彼女の肉体は、別の位相空間にいるので攻撃等全て効かない。
「……」
影キリトは苦しみ、一時的に何かが外に出てくる。
そのナニカは不定形であった。
しかし徐々に形を成していく。
その者は、星型になる。
いや、黒いヒトデと云った方が良いか。
そのヒトデの中央に、真っ赤な瞳が出来上がる。
「ククク……我を直接攻撃するとは……やるではないか。
ますます欲しくなってきたぞ!」
「欲しくなっただけですか?自分の力で奪ったものでもないくせして、
いまだに欲しがるなんて子供みたいですね」
シリカはこの空間に誰も仲間がいない事をいいことに、相手を煽っていく。
「黙れ!我が宿った肉体は、全てにおいて凌駕するのだ!
故に肉体の本来の力を引き出している我は、その肉体が行った事全てが我の功績なのだ!」
ヒトデは咆えている。
ピナが攻撃したそうに唸るが、シリカは頭を横に振ってピナに攻撃禁止命令を出す。
流石に主に何かの考えがありそうなので、此処は引き下がっておく。
「へぇ、貴方の功績ですか。成功はともかく、失敗もですか?聞き分けの良い子ですね」
「違う!成功は我が居たことによる成果だ!失敗はこの肉体がそれほど弱かっただけで、
我のせいではない!偉大な我がいるからこそ、全ては成功となるのだ!」
「まるで負け犬の遠吠えですね。
自分の負けの部分を認めないなんて、子供でもできますよ?
逆に負けを認め、向上心を得ることは誰でもできます。
それすらできないなんて、確かにあなたは全てにおいて負の面で凌駕してますね」
「小娘め!言わせておけば!」
ヒトデは再度影キリトに入り込み、片手剣での攻撃を行う。
しかしシリカやピナに、それらの攻撃は当たらずすり抜けてしまう。
彼女はそのヒトデに対して、苦笑いと共にふつふつと怒りが湧いてくる。
だが我を忘れさせるために、ここは敢えて感情を抑えて置く。
「あたりませんよ?」
そういうと彼女は、影キリトの鳩尾を捻り上げる。
「ごがあっ!!?くそっ、なんて脆弱なんだ!」
「じゃあ、その身体を脱ぎ捨ててみては?」
「ふん!こんな弱いモノ等、壊れるまでこき使ってくれる!」
そういって威勢を張るのはいいが、全く攻撃が効かずシリカに反撃ばかり受けてしまう。
受けていると影キリトの偶像は、徐々にほころびが見え始める。
「な、何故だ!我は至高!最強だというのに!」
「私に攻撃を与えられず、右往左往してますね。
私を簡単に手に入れられると思っているのですか?
自分自身の負ではなく、正を受け入れられない腑抜けでありヒトデなしな貴方が、
人である私に勝てるとでも?」
彼女は思考する余裕をもって、人でなしなヒトデと会話する。
既に対話に移行してあるので、ヒトデは消え去る運命にあるようだ。
「負こそ、我の得意分野である!要らぬものを受け入れる余地などないわ!」
そういいつつ攻撃を受ける。
影キリトは徐々に、肉体をポリゴンへ変化させていく。
まだ残っている部分もあるが、胴体は既にキリトの象形を保っていない。
「好き嫌いしてちゃだめですよ、おぼっちゃま。
それとも赤ちゃんですか?まだまだ精神も体も赤ん坊ですね~」
にこやかに影キリトをぼこる女の子。
普通に見ればありえない風景で、ギャグっぽく見えるが……。
命が常にかかっているので、かなり真面目だ。
「貴様、まだ我を愚弄するか!生娘の分際で!」
「それでも、貴方よりも年上ですよ?生まれたての赤ちゃん♪」
「糞老婆が!母屋でうら若き過去に未練を残し、そのまま先細りになって死に絶えろ!」
彼女は少々いらだったが耐える。
「ピナ」
「グル」
ピナの破壊光線は、影キリトに衝突するがあまり効いていないようになった。
「ふはは!我も同じ様になってやったぞ!これで、我も貴様も同等よ!」
「そうですか。それでも、元の三次元に戻れますか?」
「フフフ……当然ではないか……我は全知全能な神である!ガハッ!?」
影キリトは苦しみだす。
腹を抑え、肩を抑え、首を抑え……苦しみもがきだす。
彼女は何もしていない。
「馬鹿なんですか?影はもともと2次元ですよ?
ですから、わざわざ同じ位相になってあげたのに、拍子抜けな強さですね。
当然です。それが自然の摂理なんですから。
そもそも相反する存在を、その身に身に着けていない時点で貴方の負けは確定でしたよ」
「な、何故だ!どこで我は間違えた!」
彼女は既に相手を見下すようになった。
自分の存在の定義を知らぬ者が、やっと自分の存在の形を知ったのにまだ勘違いをしている。
その態度が気に食わなくなったのだ。
怒り心頭・堪忍袋の緒が切れる程ではないが、確実な殺意をこの影キリト内の人でなしに向ける。
わからずやであるヒトデは、その明確な殺意に身に覚えがない。
この状態であたふたしている影キリト。
「……確かに貴方は脆弱であり矮小です。
答えを知れば知るほど、自分が小さく見えるでしょう。
ですので……答えを知らず、無念を抱きここで消えろ!」
「嘘だ、何故我が……ぐああああああ!!!」
何もしていないのに影キリトは苦しみだし、その存在を抹消する。
ポリゴンとなり散った影キリトだったものは、そのまま異空間へ消える。
少しすれば、今のキリトは完全体になるだろう。
[さて、ここでヒトデ……ダークゼロがやられた理由について語ろう。
彼の者が影キリトに憑依したのは予想外だったのだ。
本来はシリカの神化統一を利用した、三千世界の支配をする筈だった。
その為、その手違いや焦りで、影キリトと自身の繋がりが弱かった。
更に憑依したてや負が好きな影に憑き立ては、肉体の全体把握ができていない為非常に弱い。
何せヒトデから影メタナイト、影メタナイトから影キリトだ。
一頭身、二頭身、三頭身と変化したのだから、非常に脆弱だった。
ただ逃げ出す為の脚・思考の頭・抗いの腕に関しては、大体同じなのでそんなに苦労はない。
それに飛翔ができるので、急いで逃げればあとでどうとでもなる。
そんな事情の中、アルセウスがそれをヒトデが彼女を観察している間に見抜いたのだ。
その為ダメージを鳩尾あたりに集中して、外部へはじき出し再度中に入ってもらう計画にした。
ここまで書くと、強化につながると思うだろう。
だがこれは大きな間違いである。
負は脳内で描かれる電子信号そのモノだ。
それが影という確立した物体の中にはいれば、影キリトという人物が出来上がる。
この時点で影キリト=ヒトデ(ダークゼロ)という式が出来上がる。
また影はどのような状態であろうと二次元である。
それを踏まえ、煽りに煽って自身を見失わせ、シリカ自身と同じ状態になろうと頑張ったのだ。
頑張った結果が、二次元ではなく三次元内に存在する複素二次元(4次元空間)の内の複素直線の二つに分割したのだ。
つまりダークゼロ(ヒトデ)は、自分を今まで同じ位相の平面に居たのに存在を二つに分けてしまったということだ。
今まで二次元であったので、強制的に原点を呼び込んで殴っていた。
彼女は不動で、影キリト(ダークゼロ{ヒトデ})だけが無駄に動き回っていた。
だから彼女は正と負が交わった射影の一つである三次元のZ軸を呼び込み、
これを利用してZ軸(0,0,0)にきた、影キリトの肉体を殴ったのだ。
対して影キリトは二次元だ。(0,0)でしか認識していないので、たとえ(0,0,0)で攻撃しても当たらない。
何せその存在をしらないのだから。
影キリトはデータ上は、同じデータっぽいものに黒のポリゴンをかぶせただけだがデータ的に平面である。
故に縦や横の存在は視認できるし攻撃できるが、奥行きは攻撃できない。
分かりにくいか。
つまり……
ファミコンでゲームしていても、私たちはゲームを壊せるし作ることもできる。
でもファミコン側は、プレイヤーに自分の意思で攻撃できない。
プログラムとかの問題じゃない。
彼等の世界は、XとYが自分の世界の全てだ。
だからそれ以外の世界(Z軸)は、全く知らないしあることすら分からないのだ。
現実世界でいう力のベクトルが見えないのと同列だ。
さて、ダークゼロ/影キリト/ヒトデが、生兵法で大怪我どころか存在をなくしてしまう前まで説明した。
そこで何故、二つにわけないといけなかったのか。
それは存在定義からになる。
確立されたデータ的に、ダークゼロや影キリトは、平面情報をもっている。
だから確立したデータに、ダークゼロと影キリトを同列にして内部データの中で二つに分けた。
どうみても情報が足りないね。
ここで一つ渡す情報があるが、キリトが本物にならないと消えてしまうという事実がある。
それは以前に書いたが、渡す情報というのは影キリトとダークゼロの取り扱い方だ。
キリトが本物になるためには、影キリトを壊さないといけない。
しかしどんな状態であっても、影キリトはダークゼロと内部データ的につながっていた。
そう内部データだから、下手に扱えなかった。
そこで確立されるデータとして保管すればどうなるだろうか。
そうすると、内部データという方法で扱える場所がでてくる。
(別処理という方法もあるが、ここは既にカーディナルの域を超えているので万が一のための方法ということも含め、確定された安全な攻略方法である)
この内部データを利用して、影キリトとダークゼロという矛盾したデータを確立させたところから、別はもともとは違うんだという処理を行わせる。
基本的にゲームは確立されたデータを以って、ゲーム再生に勤しむ。
この事から、ダークゼロは確立されたデータに則って言葉を発した。
これにより勘違いを発生させられた。
もともと違うという内部処理やデータを使って、ダークゼロの別次元への転送を
パルキアによって別位相にしてもらったのだ。
御蔭で二次元平面のままで、ありながら複素二次元の平面という4次元の別情報を持った存在になってくれた。
ゲームのクリア的に、このまま撃破すればいいが確立されたデータが既にビルドエラー不可避な矛盾を弾きだしている。
そこで影キリトというデータは、普通にボスになったという処理の中で普通に撃破扱いにする。
影キリトは別位相状態なので、ダークゼロ自身のデータには全く干渉しない。
これで撃破された影キリトは、そのキリトが何故真っ白なのかという矛盾を生み出したまま抹消する危険がなくなった。
そして用済みのダークゼロは、その確立された矛盾データと共に亜空切断[強制break;]で破壊した。
結果影キリトは、元々ダークゼロという存在を補完することになってしまうが、
キリトが無意識のうちに現実からゲームオーバーするよりましだろう。
そういうアルセウスの考えだった。
纏め:ダークゼロと影キリトが一緒なので、別々にして別の処理を行わせて完全体キリトにしようという作戦でした。
]
「ありがとうございました、アルセウス」
<うむ。よき働きだった>
アルセウスとユニゾンし、位相移動をしまくって煽りに煽った彼女はダークゼロに勝利した。
このまま元の境界に戻るのを待つことになる。
それまでサトシがアスナに教えたポカロンやポロックを、ピナ達に与えて遊ぶことにした。
この場にアルセウス・パルキア・ディアルガ・ギラティナ・ピナが揃うが、
彼等の本当の恐ろしさを知るのは誰もいない。
長時間スクリプト起動のおかげで、ハーメルンを開けませんでした。
今回の話では、位相の話が出てきましたね。
これ等は動画説明を見て、10分で理解したものをそのまま使っています。
間違っていても突っ込まないでください。
今回も非常に短いですが、お楽しみいただければ幸いです。