とある位相の狭間。
ここは酷く暗く、一点の穴から見える景色が唯一色を知れる場所である。
こんな場所から彼等の状況を見ている者がいた。
その声は低く唸るようだった。
「バグ共が……これではフィギュア化できぬではないか。
チッ早くせねば、世界が……」
この場から去る彼の者の背中は、実に寂しそうであった。
―――
「第48層攻略おめでと「「「おめでとーー!!!」」」うわっ!?」
第48層主街区『プププランド』の街外れの岬にあるDDD城。
ここでは今回の攻略に参加したギルドやパーティによる打ち上げが行われていた。
さすが王城。騒げる程の空間があるとは!
ただこのフロアの下部には、カスタマーサービスの転送門がある。
それがない現状は、広い広間であるため躊躇なく行える。
皆が皆思い想いに、今回の事を肴に箸を進めていく。
そんなどんちゃん騒ぎな中。
誰も来れないDDD城の屋根に座る人物が二人いる。
「カービィ。パック解放はできたのか?」
「ううん」
頭を横に振る彼は、キリトの横にいる。
カービィは林檎を手に持っていて、キリトも桃を右手にもっている。
彼等は今回で今までの事が全く通用しない事で会議をしたのだ。
普段はテーマフラグ解放英雄と共にテーマフラグを踏むと、その層のテーマの解放とパック譲渡解除が行われる。
しかし今回はテーマフラグ解放が、ダークマター族と呼ばれる者達の反乱だった。
テーマフラグの解放は、そのゲームの主人公またはプレイヤー・そのゲームの敵により行われることがある。
それをメタナイト卿から聞いてから、今後の動向に気を付ける様にする必要がある。
この事はまだ他の者に言っていない。
やはり混乱の種だからとしか言いようがないからだ。
変に混乱させて、意見を二分したり内部分裂を画策させるような事をさせてはいけない。
表面上を取り繕って生きていくのは、何気に面倒だったりするのだ。
とにかく今はボスであるダークゼロと二分化・テーマフラグ解放条件の多様性については黙っておくつもりだ。
いや多様性については、ギルドマスターに話す方が良いだろう。
そうすれば急なテーマフラグ解放による、一般プレイヤーの事故死率が減少するだろう。
「カービィ、やっぱり君自身もバグだと思うのか?」
「そうだね、ヒースクリフが階層の入れ違いとかなんとか言ってたし……。
なによりボクに、パックというものがないんだ」
カービィに備えられた基幹部位は、スマブラキャラとしてのストック制の付与・テーマフラグ英雄としての知識・その他の技に関しての技術だけだ。
他には思考や考え方というものもあるが、そういうのはここでは除外する。
彼は今までの英雄にあるまじき、パックという存在がない英雄。
しかもこの世界のテーマは、『夢』である。
テーマとゲームの主題の乖離で、このような現象に陥っているのか……。
もしくは元々あったところに、強制的にその存在を認可したのか……。
それは今現在、誰も知る由もない。
ただこの場にカービィ達がいるという事実は、真であるとしかいえない。
何せちゃんと情報をアップデートして、攻略者に情報や助言を渡しボス撃破に貢献したのだから。
「もしバグだったらどうなるんだろ?」
「……異常なものと認知され、消されるだろうさ」
カービィは眼下を眺めながらキリトに質問する。
彼は、何も表情を浮かべず淡々と告げる。
この無表情な返答に、カービィはえっという驚愕の表情を浮かべキリトの方を見る。
キリトはカービィの驚きように少し笑う。
彼はカービィに性質の悪い事を云ってしまった事を少し反省し、事実を誤魔化して伝える事にする。
「なんてな!そんな事だったら、俺達は今頃ここにいねぇよ!」
「そ、そうだよね!」
「っし、カービィ、フレンド登録しようぜ!」
「うん!僕たちは、此れからも友達だよ!」
彼らは右手同士を差し出し、握手しあう。
これでフレンド登録が完了された。
フレンド登録されると、フレンドメールや居場所の確認を行える。
そしてあまり見ないプロフィールは、その人との出会いの場所や日時だけが書かれている。
普通なら普通のunicodeから選択された文字列がそこに並ぶが、彼等の場合……文字化けをしていた。
二人は今後このプロフィールを見ない。
メールや居場所の確認しか見ない。強固なフレンドであるため、一々相手との出会いを視覚情報で思い出す必要がないのだ。
この出会いの瞬間が、第三者視点からの写真があれば見るのだが……生憎そんな機能はない。
彼等はこれを知らずして、今後も世界を旅する事になる。
「よし、下で皆と宴会だ!」
「うん。DDD大王やメタナイト卿、フームにブンと久しぶりに話せるよ!」
彼らは屋根から飛び降りて、ドラグーンとスターシップを取り出してそれに乗り、会場へ向かった。
二人は和気藹々と仲間達とつるむ。
しかし気の緩んでいる英雄やプレイヤーの中で、只一人隙を見せない者がいた。
その者は何かを感じ空を見る。
だがその空は何も変化がなかった。
(「……気のせいか」)
(「どうしたんだよ、ダーク」)
(「いや、なんでもない」)
影キリトは殺気のような物を感じて、空をにらみ続けていた。
だがそれは杞憂と結論付け、キリトとシンクロ率を100%にする。
―――
はるか遠くの場所。
ここはとある裏ダンジョン。そしてそのダンジョンにある城の玉座の間。
その神聖なる場所に二つの陰がいる。
それらはその玉座の間を埋め尽くす程の大量の電子機器を操り、下界を覗き状況を確認と共に把握していた。
「……気のせいではないのだよ」
「ああ」
二つの陰。
一人は赤い頭髪に様々な装飾とマントを羽織る、巨大な漢。
もう一人は緑の甲羅を背負う、魔王と呼べる者。
「クッパよ、英雄共は何人フィギュア化した」
「約190といったところだ、ガノン」
マリオシリーズでラスボスを務める、永遠の宿敵クッパ。
ゼルダの伝説で怨念だろうがなんだろうが、世界征服を目論むガノンドロフ。
彼等はお互いに協力し、レッドプレイヤーやオレンジギルドと提携を組んで世の中を乱している。
今までの功績としては、中堅ギルドを40個解散・オレンジギルドの結束と団結・英雄190フィギュア化・NPCに高度AIを搭載し、プレイヤーを扇動し町中での乱闘へと発展・ラフィンコフィンとの提携等だ。
だがこれらの功績を無為にする功績がある。
それはスマブラキャラのフィギュア化0%という数字だ。
クッパやガノンも、スマブラキャラでストックを使用可能だ。
彼等もそうだが反攻略主義に染まっているスマブラキャラは、非常に少なく戦力が乏しい。
復活できるとは言っても、命の珠がなければストック残量を増やすことができない。
故に彼等は焦っている。
このまま50層にこられると、非常にまずい。
そこで反攻略な彼等は、宗主であるマスターハンドに通知を入れる。
すると通信画面に、マスターハンドが描写される。
「我らが主よ。確実に世界を我らのモノにするため、アレを目覚めさせてもよろしいでしょうか」
「うむ。よきにはからえ」
「はっ。有りがたき幸せ」
(どこの戦国だ……?)
拳を合わせる中国式拝礼(臣下の礼)をするガノンと、人差し指を伸ばしやるように指示するマスターハンド。
彼等の会話とその姿勢に、クッパは思わずにはいられなかった。
マスターハンドがログアウトしたので、彼らは行動を始める。
彼等は指向性迷彩マントに身を包み、第一層のボス部屋へ向かう。
二人は歩み壁伝いで、未来的な様式を採用している三角形の扉を見つける。
ガノンはその扉に近づく。
<DNAスキャンを開始します……適合率0%……>
「黙れ」
ガノンドロフは右手を掲げ、手の甲に描かれているトライフォースの一角である『力』を発動する。
これによりガノンの全身を闇が包み込む。
そして彼は闇を練り上げ、大剣を作り上げる。
大剣の刀身の両側に、トライフォースが描かれ黄金に光り出す。
ガノンはその大剣を上段に構え、一気に振り下ろす。
ガゴォォオオォォン……
三角形の扉は見るも無残に、周辺に破片を飛び散らしていた。
この光景にガノンは口元を歪める。クッパは当然の如く溜息をつく。
「さて、奴のコンソールを……あったな」
「置き方が雑だな!」
「全くだ」
ガノンは乱雑に置かれた物資の中から、一つのディスク型のコンソールを発見する。
それを『力』のトライフォースで、電力を与えることで再起動を促す。
コンソールは光を発して、起動音を鳴らし始める。
……ィィィイイイ
コンソールは空間に様々な難解な文字列を並べ、処理をこなしていく。
そして最終的にコンソールは爆発した。
木端微塵になったが、そのかわり3D空間にその目的となる者を出現させる。
<……ここはどこだ>
「ここは神代の叡智の中だ、”サイレンス”」
ガノンの目の前には、肉体を緑の光電子で彩られた知識欲でしか動かないサイレンスが出現していた。
目の前の者は、ガノンへ疑いの目を向ける。
行き成りの初対面で、己の名前を言われたのだ。そこに疑念が入るのも無理はない。
「サイレンス。貴様は一度死んでいる。しかし、この世界で我々の要求を呑めば、肉体の復活と叡智を授ける事を約束しよう」
「……たしかに。貴様の提案は魅力的だ。だが、何を対価にしたい」
「お前にはこの最奥部にいる、過去の大災厄の前の知識を全てバックアップしている存在を使い、この場所の外にある『はじまりの街』を含めた全てを破壊してもらいたい」
そこからサイレンスにとって必要な事を上手く引き合いに出して、物事の決定と最良な裁量を計らい事を実行させる。
サイレンスはガノンとクッパの言い分に納得と共に、契約することを決めた。
サイレンスは彼等から情報を貰い、この機械炉の最奥部へ歩みを進めていく。
彼の後ろをガノンとクッパはついていく。
そして最奥部にいく。
最奥部には機械炉があり、いろんな機械獣を作っていた。
だがそこが機械炉としての最奥部で、施設としては最奥部ではない。
直ぐに前時代の様式である扉を発見する。
そこから奥へ歩んでいくと、開けた場所にでる。
<ほほぅ、なるほど……使えそうな物ばかりだな>
「ああそうだ。だが、この中央の機械だけは、意思を持っている。
こいつは己の過去を消し去りたいという狂気に駆られている為、そこをつけばお前の手駒になろう」
<なるほど、使いやすいというわけか>
ガノンドロフは、『力』のトライフォースで奴らを起動状態に移行させる。
その瞬間その場に存在する全ての機械獣に、光が灯り始め起動音を爆音と化して周囲に拡散させる。
全ての機械が起動するが、最後の一機だけが起動が遅い。
そこで吹っかけることにした。
<おい、貴様。たしかお前が戦犯だな?お前の我儘により、我々はお前と同じ過ちを犯そうとした。
何故その歴史[アポロ]を残さなかった。今この世は、お前への怨嗟の聲に満ちている。
だが私はそう思っていない。
どうだ、共に来ないか。来れば、世界を見ることができる>
<私の……歴史……過去……消すッ消す……壊ス!!>
皇帝級始皇帝―――
又の名を、テッド・ファロという。
「本来なら、マスターオーバーライドで止まるが。
ファロの災禍・ロボットスワームが引き起こされた時期のだ。
止められるのは、カオス級を破壊するクラウドオーバーライド(物理)。
またはこの弩阿呆を破壊する、ブレインオーバーライド(物理)。
これしかない。だから、こいつらは無敵だ」
「時間稼ぎはできそうだな」
ガノンの言葉にクッパは頷き、そのままサイレンスに任せてその場を去る。
彼等はすぐに上層へ帰還する。
上層といっても、最上層である100階や攻略している49層の事ではない。
彼等は玉座の間へ行くと、クレイジーハンドから通信が来る。
急いで二人は配下の礼を取る。
「ヨォ、元気か?アノ計画、上手くいってっか~?ヒハハッ」
「ハッ、既に完了しております。作戦は此度の時間稼ぎの時に行います故」
「良い良い……実に良い!我々の悲願は、もう少しダ!ハハハハハッ!」
真っ黒なクレイジーハンドは、指をわきわきさせて荒ぶっている。
めちゃくちゃ気持ち悪いが、一応マスターハンドと同列なので同じく頭を下げる。
クレイジーハンドはログアウトする。
そして二人はため息をつく。
「最大音量設定、最小なんだが」
「実にうるさい。けたたましく、煩い。喧しいし、煩わしい、騒々しい、仰々しい」
ガノンは放心しその場でぼけーっとする。
クッパはぶつぶつと言って、計画の再確認をする。
確認を行ったので、再度1階へ行く。
彼等の計画の第二段目は、その『ファロの災禍』に行われるようにする。
そしてまだガノン達は知らない。
この思惑を知らないギルドパーティが、一層に集結しつつあることを……。
「パパ!ママ!」
「そうだ、ユイは俺達の娘だ!」
「ええ、そうね」
「ところでパパ?」
「んー、なんだー?」
「どうしてパパは二人なの?」
「「!?」」
一階へ向かう前の事。
Yuiが起きるのと共に、キリトとアスナを刷り込みで親と認識する。
そんな他愛のない会話の中で、キリトが隠していたことを言われる。
アスナには誤魔化したが、今後の隠し事としてYuiと約束する。
キリトは冷や汗しかでなかった。
「よーし、二人とも、行くぞー?」
「アーロイおばちゃん♪」
「おばっ!?」
波乱はまだまだあってしまうようだ。
熱い、暑い無理無理無理!
楽しんでおりますか?
伏線も糞もないですが、今後の展開は急かもしれません。
その前に『解章』どうしよう……。
まあ、なんとかします。
それと、ストックがなくなってしまいました。
ですので、週一が不可能になりました。
これもなんとか頑張ります。
皆さん、熱射病に気を付けてください。
では、またいつか。