原作まで加速していきたいですね。
「そんな…そんな事が……」
自分の移動式研究所の中で、篠ノ之束は戦慄していた。
「一体どうして…いや、いつ…私のゴーレムが……」
彼女が密かに開発をしていた試作型の無人機『ゴーレム』が、いつの間にか束の元から 消えていたのだ。
しかも、それだけではない。
その無人機が何者かによって改造された挙句、無断で使われたのだ。
「も…もしかして……」
自分の元から全く悟らせないで機体を奪取した上、それを自分が製造した時よりも高性能に改造された。
こんな芸当が出来る人物…否、存在に束はたった一つだけ心当たりがあった。
「まさか……あの『声』の主が……!?」
己を閉じ込めて、完全に嵌めた存在。
自分を『天才』と自称するからこそ、その悔しさは一塩だった。
「あの親子がどうなっても別に気にしないけど、あんな下らない事に使われたことが凄くムカつく…!」
大島親子は束にとっての粛清対象だから、その生死に関しては特に拘らない。
だが、その殺害に自分の子供に等しい存在であるISが使われたことが問題なのだ。
「にしても……父親は死んだけど、どうして息子の方は連れ去ったんだろう…?」
あの後、ゴーレムの行方は全くの不明。
束の頭脳と技術を持ってしても、ゴーレムの反応を捕える事は出来ずにいた。
「もしもゴーレムがなっちゃん達に危害を加えるなら、その時は……」
密かに自分の手でISを破壊する決意をする束だった。
それは、彼女にとっても苦渋の決断であった。
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季節が流れるのは非常に速い。
訓練を順調にこなしていき、芳美さんが言うには、もう既に俺の実力は代表候補生クラスを超えつつあるとのこと。
俺には全く自覚は無いけどな。
だって、未だに簪との勝率は五分五分ぐらいだし。
他の子達には圧勝出来るようにはなったけどさ。
その間もピーノはずっと俺の護衛をしてくれた。
お蔭で、かなり話す機会が増えた。
未だに彼の詳しい素性は教えてくれなかったけど。
そういえば、今、簪には倉持技研とかいう場所で専用機を開発中だって聞いたな。
どんな機体なのかとても気になる。
簪が専用機を手に入れたら、確実に負け越してしまうな。
もっともっと精進しなくては。
で、気が付けば世間は受験シーズン。
それはウチの中学も例外じゃない。
クラスの皆は夏辺りから受験勉強を頑張っていて、一夏や弾も同じだった。
そして、既にIS学園に入学が確定している俺は、表向きの受験勉強とISの訓練を両立をしていた。
それに加え、訓練の合間に訓練所で皆と一緒にISに関する勉強もしていた。
そんな描写は無かったかもしれないが、ちゃんとやってたんだよ?ほんとだよ?
もうすぐ一夏も受験の日だったな。
確か、弾も一緒の高校を受けるんだったっけ?
今日は休日で、俺はいつものように一夏と千冬姉さんと一緒に家で過ごしていた。
「一夏。準備はちゃんと出来てるのか?」
「勿論だって。受験票も筆記用具も鞄の中に入れてあるし、大丈夫だよ」
「油断は禁物だぞ。今日寝る前と当日出かける前にもう一回確認しておけ」
「千夏姉って…なんかオカン属性だよな」
「だれがオカンか」
一応、表向きはお前の姉だぞ。
「ははは……それだけお前の事を心配しているんだろう」
「分かってるって。そういう千夏姉はどうなんだよ? 確か、IS学園を受験するんだろう?」
「まぁな」
他の受験生と一緒に受験はするらしいが、点数や受験結果に関わらず、俺の入学は確定しているらしい。
まぁ…今なら普通に受験しても、そこそこいい線行ける自信はあるけどな。
「……少しいいか千夏」
「ん?」
姉さんが急に肩をトントンと軽く叩いて俺を呼んだ。
俺は姉さんに従うように部屋の端まで行った。
「お前の委員会代表を発表する日は何時になってるんだ?」
「詳しい日程はもうすぐ知らせるって芳美さんが言ってた。少なくとも、学校の卒業式の前にはするらしい。多分、受験シーズンに合わせるんだと思う」
「そうか…。お前も有名人になるな」
「不本意ではあるけどな」
「言うな。気持ちは分かる」
そういや、姉さんも今や世界的有名人だっけ。
お互いに苦労が絶えないな。
「緊張するな…とは言わん。だから、緊張を楽しめ」
「簡単に言ってくれる…」
それが出来たら苦労はしない。
こうして普通を装ってるけど、内心は今から緊張しまくってるんだよ。
前世でも記者会見なんてしたことないんだし。
というか、それが普通だけど。
「大丈夫だ。現場には芳美や山本さん、それに彼…ピノッキオ君も来るのだろう?」
「まぁ……一応……」
ピーノは俺の護衛として、山本さんと芳美さんは俺の付き添いして来るらしい。
山本さんは別の仕事もあるらしいけど。
最初は半ば流されて、今はちゃんと自分の意思で選んだ道だけど、これからどうなるのやら…。
楽しみと不安が半々って感じだな。
今はとにかく、目の前の事に集中しようか。
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「はぁ……遂にこの時が……」
「緊張してる?」
「あぁ……」
やってきました、俺の委員会代表発表会見の日。
俺は会見場の裏で待機している。
隣にはピーノが一緒にいる。
流石に私服では来れないので、今日は学校の制服だ。
会見場では今、芳美さんが司会進行をしている。
まさか、あの人も参加しているなんて思わなかったな。
山本さんは誰かを迎えに行っているらしい。
「君の出番はまだ先だから、これでも飲んで落ち着いて」
「そうだな……ありがとう」
ピーノがミネラルウォーターを渡してくれた。
下手に味が付いているドリンクよりも、こっちの方が有難い。
「ところで、山本さんはどこに?」
「もうすぐ来るんじゃないかな?」
もうすぐ?
頭の上に疑問符を浮かべていると、俺たちの後方にあるドアが静かに開いて、そこから山本さんと一緒に誰かが入ってきた。
「おう。もう嬢ちゃんも来てたのか」
「貴方は……」
組長さん? どうしてここに?
「前に、俺があのバカの後任として日本支部の支部長をするって話は知ってるな?」
「は…はい」
そういえば、初めて会った時にそんな事を言っていたな。
「で、お前さんの代表発表と同時に俺の事も発表しようってことになってるのよ」
「わぉ……」
一度に二つも発表する気かよ…。
これって世間的には凄い事なのでは?
明日のニュースは大変なことになりそうだな…。
記者たちに同情するよ…。
「お? 早速出番みたいだな。行ってくるぜ」
「お気を付けて。頭」
「おう」
杖を付きながらも、意気揚々と組長さんは会見場に向かっていった。
背中は曲がっているけど、その後ろ姿からは凄まじい迫力を感じる。
これが組を纏める者のプレッシャーか…。
ここからでもカメラのフラッシュ音と記者達の質問の声がひっきりなしに聞こえてくる。
もうすぐ俺もあそこに行くのか…。
『では、史上初の委員会代表となった少女をご紹介いたしましょう』
お…俺の出番か…?
「い…行ってくる…」
「うん。頑張って」
「お…おう…」
ヤバい。
さっき以上に緊張してきた。
前世で初めてバイトの面接に行った時の事を思い出してしまった。
緊張感はこっちの方が圧倒的に上だけど。
手…震えてないかな…?
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いざ会見場に出ると、想像以上にカメラのフラッシュが眩しい。
マジで目がクラクラする。
俺はそのまま、組長さんの隣まで歩いて行って、そこで止まって正面を向いた。
そこには非常に沢山の記者達がカメラやマイク、ボイスレコーダーを持ってこっちを向いている。
『彼女こそが、この度、初めてのIS委員会代表のIS操縦者となった少女…織斑千夏さんです』
『織斑』という言葉が出た途端、急に記者達が騒ぎ出した。
やっぱり、その単語には敏感になるか。
そして、芳美さんが俺に向かって目配せをしてきた。
あ…自己紹介をしろってことね。
「え…えっと……初めまして。IS委員会代表IS操縦者となった織斑千夏と申します」
これでいいのか……な?
「すいません! 織斑さんが委員会代表となった経緯を教えて貰えませんか?」
来ると思った。
これは予め考えていたから応対可能だ。
「分かりました。私は……」
そこから、俺は自分がISと関わる切っ掛けを話した。
勿論、隠すべきところは隠したけど。
「成る程……ありがとうございます」
お、簡単に引っ込んでくれた。
「織斑ということは、貴女はあの織斑千冬さんの血縁者ですか?」
「はい。織斑千冬は私の姉です」
「「「「おぉ~!!」」」」
ごめん…姉さんの名前を出しちゃった。
「では、急遽解任されて逮捕された前支部長の事はどう思いますか?」
「え?」
なんでそんな事を聞くんだよ。
どうでもいいじゃん。
「え…えっと……」
なんて答えればいいんだ…。
頭がこんがらがってきた…。
「おい、お前さん」
「は…はい?」
「その質問は嬢ちゃんの代表就任と何か関係あるのかい?」
ギロリと睨みを利かせて、隣にいた組長さんが記者の人を黙らせてくれた。
こうして近くで見ると、凄い迫力だ…!
組長さんのプレッシャーをもろに浴びた記者は、急に声が小さくなっていった。
「あ…その……すいませんでした」
すげ~…。
前のデブとは雲泥の差だ。
「なら…新支部長は委員長とお知り合いと伺いましたが、どのような関係なのですか?」
「あいつとは旧知の仲よ。お互いに昔、ヤンチャしていたころに知り合ったのよ」
ヤンチャって……貴方は昔、何をしてたんですか。
「では、今回の支部長就任も?」
「あぁ。あいつに頼まれたからだ。互いに盃を交わした『兄弟』の頼みを無下には出来ねぇからな」
あ、急に記者の目が輝きだした。
もしかして…俺から注目を逸らしてくれた?
「フッ……」
こっちを見て微笑んだ?
(マジで組長パネェ~ッす)
山本さんを初めとした東友会の人達がこの人を神輿として祭り上げるのも分かる気がする…。
これなら命預けたくなるわ。
そこから、俺に対する質問は極端に減少し、その代わりに組長さん…いや、新支部長に質問が集中した。
胃に穴が開かなくて済みそうだ…。
この歳で胃薬とフレンズにはなりたくない。
「織斑千夏さんに質問いいですか?」
「は…はい? なんですか?」
不意打ちだった。
けど、少しは気が楽になったから大丈夫…な筈。
質問してきたのは、若い女性の記者だった。
「こうして委員会代表となった以上は、やはりIS学園に入学を?」
「はい。そのつもりです」
正確には、その予定になっている…が正解だけどな。
受験はするけど。
「ならば、次の質問を」
え? 終わりじゃないの?
「代表と言うことは、専用機を所持してるのですか?」
「ええ。この場では見せられませんが、私が初めて訓練所で訓練を開始する時に譲渡されました」
これならどうだ?
「将来は、お姉さんと同じモンドグロッソ優勝を狙って?」
「いくら姉妹だからと言って、姉さんの影を追うつもりはありません。ですが、やるからには頂点を目指したいと考えています」
なんて言ってみたが、本当は違う。
確かにブリュンヒルデの称号には興味があるが、俺にとってはそこは通過点でしかない。
訓練を重ねていくうちに、俺にも人並みの『欲』が沸いてきた。
俺は…『最強』になりたい。
それは万人が認める
俺が目指したいのは、強さの限界、その向こう側、強さの極限。
そこから見える景色を見てみたい。
……こんなこと、恥ずかしくて人前じゃ言えないけど。
「分かりました。ありがとうございます」
お…終わった。
でも、思ったよりは緊張が少なかった。
これも慣れか。
俺が質疑応答している間も、新支部長はずっと記者達の質問に答えていた。
これが上に立つ人間の器か。
その後も記者達の質問は続いていったが、その殆どは新支部長に向かっていた。
俺にも質問は来ていたが、その数は明らかに少なかった。
こっちは大助かりだけど。
この記者会見は全世界に生放送されたようで、俺と新支部長は一夜にして世界的有名人になってしまった。
ということは、必然的に色んな人の目に映るわけで……
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日本の某所。
とある部屋にて、黒い髪をポニーテールに纏めた剣道少女が、テレビ放送された記者会見を見て、その口に含んだ味噌汁を盛大に噴出していた。
「ブ――――――――――――――――――!! げほっ……げほっ……。今…テレビに映っていたのは…まさか……」
彼女が千夏と再会するのは、もうすぐ……
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そして、ここ中国にあるIS操縦者訓練施設。
そこでは嘗て日本に住んでいた黒髪ツインテールの少女が、他の訓練生たちと休憩をしていたが、休憩所にあるテレビに映った映像を見て、目が点になっていた。
「な…な…な…」
「どうしたの? 鈴」
「なんで千夏がテレビに映ってるのよ~~~~~!?」
彼女の叫びは訓練所全体に響き渡ったという。
そして、この映像が彼女を再び日本へと誘うことになる。
もうすぐ、『物語』が始まる。
記者会見の様子は完全に私の妄想です。
『ここはこうじゃないだろ!』とか『これはおかしくない?』とかいうツッコみは遠慮して頂くと嬉しいです。
そろそろ、入るかな……?