数人から数十人に膨れ上がったディヴァの追っ掛けたち。
黄色い声援とグレイへの怒号と殺意が入り乱れさせ手を取り合い逃げる2人を執拗に追いかけまわした。
2人が街を抜け、深い森へと逃げた頃には完全に深夜になっていた。夜行性の動物が闊歩する真夜中の森はかなりの危険に満ちているが、殺気立ったディヴァの追っ掛けに見つかるよりは遥かに安全と判断しての事だ。
焚き火を挟むような位置どりで静かな寝息を立てて眠るディヴァ。神剣の鞘に布を巻き枕にしグレイのローブをかけて、先ほどまでの出来事が何でもなかったかのようにまるで女神か何かの様な微笑みをたたえ寝ている。
グレイはしばらく辺りの様子を探っていたが、さすがにディヴァの追っ掛けももういない。危険な獣たちの気配も近くには無いのを確認すると火を消して自身も目を閉じる。
今日の出来事を頭の中で振り返りながら。
しばらくし目を覚ましたグレイは寝ていた場所にディヴァが居ないことに気付いた。
未だ獣たちも寝静まる夜明け前。
グレイは辺りを探るが彼女の姿は見えない。真夜中の森など危険すぎる。慌てて探しに行こうかと立ち上がったとき、かすかな声が耳に入ってきた。
ーー私の声が聞こえていますか?歌が想いが、私の愛が私の祈りがーーーー
歌?
ディヴァが歌っているのか?
グレイは耳をすませ、声を頼りに歩を進めた。
そこには大きな湖が拡がっていて、ディヴァは湖の畔にある岩の上に腰を下ろし歌っていた。
グレイは思わず目をこすった。まだ自分は寝ていて夢を見ているのではないかと錯覚さえ覚えるような景色が拡がっていたからだ。
彼女の膝にはウサギが、肩には小鳥がとまっている。岩の周囲には鹿や野狐といったものから、普段は凶暴なグリズリーまでがいる。まるで森中の動物たちが集まっているかのように全て皆が一堂に目を閉じて歌姫の歌を聴きいっているのだ。
グレイの足音に耳をピクリと反応し片目を開けるが、再び彼女の歌を聴きいる姿はとても幻想的な風景だった。
やがて彼女の歌が終わりに近付いたころ目の前の湖面が輝きを放ち、 白い光の帯が空に溶けていく。まるで空に還っていくかのように…。
そしてしばらくし歌が終わると集まっていた獣たちは一匹また一匹と立ち去って行った。
「ディヴァ」
「あ、グレイ。ごめんなさい起こしてしまいましたか。」
ディヴァはグレイの姿を捉えるとヒョイと身軽に岩から飛び降り笑顔でグレイに近付く。
「今のは一体なんだ。湖面から白い光の渦のようなものが空に溶けていくように見えたが。」
「え?グレイには今のが見えたのですか?」
微笑みを浮かべていたディヴァは驚いた顔になった。
見えたから聞いたのだが…そんなつまらない揚げ足が頭をかすめるが、今は何より目の前の事象がグレイには目に焼き付いて離れない。
「ディヴァ、おまえはまさか天使か何かなのか?」
「あははは、自分で今どき神や天使を信じる者はいないと言っていたのに私が天使ですか?」
「オレは存在までは否定してないだろ?で、どうなんだ。」
「残念ながら私は天使ではありませんよ。まぁ天使のような美女ではありますかね。」
「…」
グレイはディヴァの様子を伺うように見るが彼女が嘘を吐いているようには見えない。
そんなディヴァら自分で言っておいて顔を真っ赤にして照れながら、美女のついて流すグレイの足を蹴る。
照れるくらいなら言わなきゃいいのにと思う。
「で、結局今のは何だったんだ?」
「あれは浄化された精霊の成れの果てです。」
「精霊の成れの果て?」
「精霊は分かりますか?」
「バカにするなそれぐらいは知っている。精霊は地水火風に代表されるものが主で、長い術式をくんで精霊に干渉して術を行使するのが魔術士で、精霊そのものを使役するのが魔法使いなんだろ?」
「その認識で問題ないと思います。精霊とは精霊という生物が存在(いる)というわけではなく大気に含まれる元素のバランスを測るバロメーターにされているものです。それは地域や気候に左右されます。例えば火山帯の近くには炎の精霊が多いため炎の術はより強大になりやすく、逆に水は術を使えない事はありませんが非常に行使し辛くまた威力も半減したりします。そして術などに使用されたりしたあと…分かりやすく言えば燃えかすはどうなるか分かりますか?」
「オレは魔法も術も使えないから詳しくは分からないが…大気かなんかになるんじゃないか?」
「普通は数百年という長い年月をかけてそうなります。しかし現在のように国同士が争い血を流し合うと、大気は吸収しきれなくなり風に乗って世界を駆け巡ります。そうした精霊は風の吹き溜まりに集まり…淀み穢れ…瘴気を出します。瘴気は魔を呼びやがて…ッ、残念ですがお話しはここまでのようです。」
そう言ったディヴァの顔から微笑みは消え、彼女が向いた先には1人の男が立っていた。
〜なろうでノンビリ書いてるオリジナル作品です。
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