魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい   作:ちあさ

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本編
魔法少女はじめました


僕が僕であることを自覚したのは中学1年頃。

その日も蒸発した母の代わりに義父に散々汚された後の事。

この身体の元の人格の精神が耐えられなくなり、僕と言う存在が生まれることになった。

 

 

正直に言えば本当に勘弁してほしい。

 

 

生まれて初めてみた光景が血塗れで奇声をあげている全裸のおっさんとか。

そのうえ自分も全裸で凶器の包丁を持っているとか。

人格交代するならせめて刺す前にして欲しかった。

あまりにあまりの地獄絵図を前に呆然と立ち尽くしている僕は駆けつけた警官に取り押さえられて逮捕された。

あ、待って、トドメ刺してない。

 

 

 

 

その後のことも結構記憶は曖昧だ。

だけどなんとなく覚えていることをあげるとこんな感じ。

捕まった後の検査で、僕の身体にこびりついた義父の体液から、虐待されていたことが発覚した。

そして残念ながら義父が一命を取り留めたことと、そして一言もしゃべれないコミュ障な僕を、虐待が原因で精神的に病んでしまったと精神科医が診断したことにより、僕は罪に問われることはなく、入院&保護観察処分となった。

まぁ結局とどめはさせてないし、入院させられるし、今考えてもろくでもない結果だろう。

 

 

 

その後、結局コミュ障は治らなかったけど、なんとか高校には進学でき、N市のアパートで一人暮らしをすることになった。

このまま静かに暮らせていければよかったんだが、どうやら僕はほとほと平凡な人生とは無縁らしい。

 

 

蒸発した母は親からも勘当状態で、その親もとうの昔に無くなり、親戚筋は事件を起こした僕に関わりたくないらしく連絡もつかないし、義父はそもそも塀の中。

そんな僕に大学進学など望むべくもないので就職を考え手に職付けようと工学系高校に入ったのは良いけど、男だらけの中の少数派女子な僕。

ただし僕的には男性人格な上、事件の噂とコミュ障が祟って数少ない女子コミュニティにも混ざれず、ボッチ生活満喫中。

そもそもクラスメイトのことだって殆ど覚えてないしね。

なんかみんな顔が塗りつぶされたようにしか思い出せないんだよ。

やっぱり糞義父の件で人間不信になっているのかな、僕。

現状一人暮らしの僕は行政からの生活保護金とスズメの涙な奨学金のビンボー生活をしている。

最近の役所って親切だよね。僕がコミュ障だって分かっているんだろう

生活保護費をわざわざうちまで届けてテーブルの上に置いていってくれるんだ。

バイト?

無理無理、そんな知らない人と話さないといけないバイトとか本当に無理ですから。

将来は林の中の象のように暮らしたい。

 

 

そんな貧乏生活を送っているから娯楽にもあまりお金をかけられない僕は、いつからか基本料金無料のスマホゲーをやっていた。

なんかよく分からいけど、女の子のキャラで敵と戦い続けるゲームだ。

こんなのどこが面白かったんだろう。

こうやって僕もやってるけど未だに楽しさがわからない。

ある日のこと、僕が1人黙々とやり込んでいたその『魔法少女育成計画』というゲームから白黒の謎生物が出てきた。

そしていきなり魔法少女になるポンとか言い出した時に無言で包丁を投げつけた僕は悪くない。

絶対ゼッタイ悪くない。

 

 

いやさ、この消臭剤みたいな名前の謎生物からはなんかクセェ臭いがプンプンするんだよ。

絶対ココで殺しておかなきゃ後で後悔するって僕の包丁が囁いているんだ。

ほら、某聖杯奪い合うゲームだって最後聖杯アボーンでご覧の有様だよってなるじゃん。

美味い話には裏がある。

LUK値がマイナス方向に振り切っている僕のことだ、どうせろくでもないことに巻き込まれるのは目に見えているからな。

 

 

結局、包丁を5本ダメにしたところで、現時点でやつを殺すことは無理と判断。

魔法少女になってしまった。

 

 

名前はリップル。

「包丁を投げれば百発百中だよ」というふざけた名前の魔法を使う魔法少女が誕生した。

 

 


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