魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい   作:ちあさ

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物心つくまえから私には父に関する記憶がなかった。

写真もなければ母が語ることもなかったので当時はそれが当たり前のことなのだと漠然と考えていた。

ただ母は私に父親がいないことで不自由をしないようにと仕事と子育てを両立させ、私を寂しがらせることはなかった。

 

 

母はなんでもそつなくこなす器用な人でだったが、やたらと影響を受けやすく、凝り性な人だったように思う。

私が見ていた漫画やアニメも、最初は横目で見ていただけなのに、最後には私よりもハマって、部屋中漫画だらけになった事もあった。

夏休みの自由工作も私より熱中していて、毎年クオリティが上がり続け、どこからか工学知識や旋盤技術などまで仕入れてきて、私一人だけ明らかに大人作と分かる機械工作品を提出することになり恥ずかしい思いをしたこともある。

そんな多才な人ではあったが、何故かプレゼントのセンスはなかった。

小さい頃私が好きだったウサギのぬいぐるみをいつまでも好きなのだと思い込んでいたのだろう。

誕生日やクリスマス、何かのお祝いの度に新しいウサギのぬいぐるみを渡され、その度に私はもう子供じゃないんだよ、と母に怒って困らせていた。

 

 

だがそんなドタバタで楽しい日常は小学3年の頃、母子家庭を理由に私がいじめられだしてから壊れ始めていった。

いじめをしていた子たちは、自分の家庭とは違う私に対する興味本位で無邪気にからかっていたのかもしれない。

ただ子供の無邪気さというのは相手の痛みを理解できない分、非常に残酷であった。

それまで悪意というものを受けたことが無かった私の心はどんどん鬱屈していき、その矛先は母へと向かうことになった。

どうして、どうして私にはお父さんがいないの、と。

 

 

しばらく思い詰めていた母はある日何処かから新しい義父を連れてきた。

新しいお父さんだよ、これでもう寂しい思いをすることはないからね、と私を抱きしめてくれた母の顔はとても辛そうだったのを覚えている。

 

 

だがその義父はありていに言ってロクデナシだった。

働きにも行かず毎日酒やパチンコばかりしていて、やがて母や私に暴力を振るうようになって離婚することになった。

母は私に何度もごめんねと謝り、そして今度はもっと優しいお父さんを探すからねと私にいった。

だが次の義父も、またその次の義父も、同じような繰り返しでいつからか私は義父だけでなく母に対しても憎しみを抱くようになった。

 

 

そして中学に入った頃、私は何人目かの義父に性的虐待を受けた。

その人は母の前では優しい義父を演じていて、表向き短時間だが仕事をしていて母の目を巧妙に欺いていた。

今度こそは大丈夫と母は仕事で夜遅くまで帰らない日が多くなっていた。

義父は毎日母が帰ってくるまでの間、私の体をただただ貪るように穢していったのだ。

私の誕生日だったあの日も…。

 

 

 

 

その日のことは断片的にしか覚えていない。

ただ気づいた時は裸の私は義父を包丁で刺していた。

 

 

 

 

そして誕生日の為に早く帰ってきた母が義父の血と体液で汚れた私を見て――――

 

 

 

 

母にこれまでどれだけ穢されたのかを淡々と語り。

 

 

 

 

もう、お父さんなんていらない。

お母さんなんていらない。

 

 

 

 

私はその包丁を母へと振りかぶり。

 

 

 

 

誕生日プレゼントのウサギのぬいぐるみが赤く染まり。

 

 

 

 

その日、私の母はいなくなった。

 




アクセス数を見ていると何故か10話が11話より閲覧者少ないんだよね。
10話の1時間後に11話投稿したからお気に入りの最新話リンクから10話を見ずに11話に行った人が結構いたのかなって思ったり。

今後続けて投稿する時は本日何話目ですって書きますね。

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