魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい   作:ちあさ

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魔法少女は死にました

森の妖精さんはもう終わりだとばかりに笑みを浮かべ、僕の頭に左手を伸ばしてくる。

痛みで動けない僕にはもう避けようがなかった。

ああ、ここで終わりか。

結局僕は  に謝ることすらできなかった。

そして彼女の手が僕の頭に触れようとした直前

 

左腕が斬り飛ばされた。

 

彼女がとっさに後ろへと飛び退り右へと視線をやる。

はたしてそこには刀をもった着流しの少女、いな魔法少女がいた。

その少女は凄絶な笑みを浮かべて刀を構え、そして振り抜く。

森の妖精さんはそれより早く回避行動を取った。

 

あれは斬撃を飛ばしているのか?

 

更に森の中から飛び出した魔法少女がビームを放ったり、いきなり現れた巨大なハムスターみたいな魔法少女が岩を投げつけたりしてきた。

その攻撃に森の妖精さんも僕へのトドメを諦め、回避に専念している。

 

 

おお、あの魔法少女、昔のアニメで見たことあるぞ。

たしかマジカルなデイリーヤマ○キだったかな、惣菜パンみたいな名前の魔法少女だったはず。

その彼女のビームに当たったものはどんどん消滅していっている。

アニメだともっとマイルドな表現だったが実際見るとトンデモナイ破壊力の魔法だ。

 

 

彼女達以外にもどんどん森の中から何人もの魔法少女?が現れて森の妖精さんへと攻撃をはじめる。

中には下半身が馬のようなケンタウルスみたいな魔法少女や登場と同時に決めセリフを言っている頭の残念そうなマスクをした魔法少女などもいて、まさにビックリ人間コンテストを開催できそうな顔ぶれだ。

流石の森の妖精さんもこの人数相手だともうお終いだろう。

 

 

そして放置気味になった僕のそばに青い宝石が投げ込まれ、そこに一人の魔法少女が現れる。

彼女は僕に助けに来たともう大丈夫だから安心するように告げ、僕を抱き上げて駆け出す。

どうやらここから僕を連れて離脱するみたいだ。

その青い魔法少女に抱かれている僕に並走する形で、白いのを抱きかかえた黒いのが追いかけてきた。

そして白いのが僕に彼女たちは何なのかと聞いてくる。

 

 

実は僕は森の妖精さんのナイト様殺害映像を見た後、鉄腕少女を預けた二人組、正確にはその主人である妖怪車椅子女にその動画を送ると同時に運営への対応をお願いしていた。

彼女も森の妖精さんに何処かであったことがある気がすると調べていてくれたらしく、今まで彼女の試験では事故で死ぬ人が多く、何やら不正な試験を行っている可能性があるという噂があり、だが今まで証拠が見つからなかったため動けないでいたらしい。

だが僕の渡した動画や試験のこれまでの内容があれば魔法の国へと働きかけることができる、否、動かしてみせると彼女が請け負ってくれた。

 

 

その後、森の妖精さんと謎生物を鎮圧するべく、複数の魔法少女達が派遣されることになったと、メールが来たのがこの前のトップなんとかさんに僕のストーキング活動がばれた頃だ。

それも森の妖精さんの魔法や戦闘力を勘案して、戦闘能力の高い魔法少女を選抜したそうだ。

今僕を抱いて運んでくれている魔法少女も、そんなベテラン魔法少女の一人なのだろう。

 

 

だが聞いていた話だと連携の確認などの準備で早くても後数日はかかるはずだが。

そのことを聞いてみたら、今夜集合したばかりで話し合っていたらいきなりここの戦闘の光景と助けを求める声が聞こえてきたそうで。

そして森の妖精さんを見たこの子以外の魔法少女が何故か騒ぎ出して我先にとここに向かっていったので仕方なく追いかけてきたそうだ。

おそらく兎の足が僕だけじゃなく彼女たちにまで作用していたのだろう、流石呪いのアイテム、連鎖的に感染して狂気をばらまくらしい。

それにしてもやっぱりベテランだけにバトルジャンキー度は高いのだな。

きっとマトモなやつだと生き残れない過酷な世界なんだろう、アイドル業界みたいな感じで。

 

 

 

 

僕の案内で彼女に組事務所まで送ってもらったらトップなんとかさんが来ていた。

なんでもいきなり飛び出していった僕を心配した組員さんが連絡したらしい。

彼女たちに僕を運んでくれた魔法少女の紹介をしようとお茶でもどうかと誘ったら、これから戻って森の妖精さんへの鎮圧へと急いで合流するからと断られた。

そして念のために、と彼女は僕に青い宝石を渡してきた。

あの戦力なら大丈夫だろうけどと言っていたが、そのセリフなんかフラグっぽくて嫌ですよ。

なにやら冷や汗をかいた僕はそれでもその宝石を受取り、ポケットにいれておく。

そして彼女は何らかの魔法なのだろう。現れたときと同じように一瞬で消えてしまった。

 

 

白いのは早々に変身を解除してソファーで眠っている。

中身おっさんじゃなかったんだね、白いのさん。

僕もトップなんとかさんに現状を説明した後、事件解決まで念のためここで待機してもらうことにした。

それで怪我の治療をしていたらトップなんとかさんが変身を解除するように薦めてきた。

どうやら変身を解除すると怪我がある程度治るらしい。

 

だが断る。

 

僕が今こうしてマトモに思考できているのは恐らく魔法少女になっているからだろうし。

魔法少女になった頃は気づかなかったし、僕も確信を持てたのはついさっき、元人格が強制的に起こされたときだったのだが、どうやら僕の魔法少女になる前の記憶はどうやら妄想とかそういうたぐいの代物みたいなんだよね。

学生として学校に通ったりしていた僕の記憶はどうやら現実を受け入れられなかった彼女が見ていた夢みたいなものらしい。

一言で言うなら狂っていたんだな。

それが魔法少女になったことによって狂った妄想が、魔法少女という殻を与えられて初めて一つの人格として確立したのではないかと僕は考えている。

なので僕が変身を解除したら、元の幸せな夢を見ているだけの状態に戻ってしまう可能性がある。

せめてさっきの覚醒で元人格が正気を取り戻していれば僕もお役御免となれたのかもしれないのだが。

 

 

僕はもう何度も読んだ週刊誌を開く。

特集でここ最近N市で連続して起こっている事件などを扱っていて、僕のアパートへの砲撃についても詳細が書かれていた。

砲撃されたアパートの部屋に住んでいたのは”二人”だったらしい。

僕が知っている記憶だと”一人”のはずなんだけどね。

その雑誌には住んでいて未だ行方不明になっている”二人”の名前が書いてあるが・・・。

僕の名前はさてどっちだったんだっけ、今の僕には確信が持てないでいた。

 

 

それもこれもまぁこの騒動が終わってからゆっくり考えるとしよう。

あんなに魔法少女の援軍がいるんだ、きっと速攻で片付けてくれる。心が軽い、こんな幸せな気持ちで寝るのは初めて、もう何も怖くない、僕一人ぼっちじゃないんだもん。

 

 

そう思っていたのがフラグになったのだろうか。

 

 

とりあえずできる範囲の治療をしてもらってベッドで寝ていたら、僕の上に青い魔法少女が転移してきた。

空から落ちてくるヒロインはもう間にあってます。

そう苦情を書いていたら、彼女が告げてきた。

 

 

 

どうやら彼女以外の魔法少女は全員殺されたそうです。

 

 




殺っちまったのでもうrestartできません。

広げすぎた風呂敷を上手く畳めるか心配です。

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