魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい 作:ちあさ
見てない方は前話から見てください。
耳がいいのも考えもの。
事前に察知できた音なら遮断も可能だろうが、戦闘する気マンマンで警戒して音を拾おうとしていたのなら、音響爆弾はさぞやよく効いただろう。
森の妖精さんがこちらに向かってきていることなど監視モニターや白いのの魔法でとっくに分かっていた。
なので彼女対策で覚えさせたハンドサインで事前に作戦を立てていた。
白いのがベストタイミングで爆発するように爆弾を設置していたのだ。
音でバレないように時限式じゃない爆弾使ったようなのでどうやって爆破させたのかは分からないが、きっとまた乱数調整でもしたのだろう。
彼女は順調にテロリストへの道を歩んでいるみたいだ。
そして僕達が呑気にたこ焼きパーティーをしていたのも彼女に気付いていないように思わせるためのタダのポーズ。
いや、普通に仲良くパーティー出来るならそれが良かったよ。
彼女のたこ焼きに混ぜるための魔法少女にもかろうじて効く猛毒も用意していたからね。
白いののハンドサインで作戦開始を理解した僕たちは爆発直前に隠しておいた遮音ヘッドホンを装着し、ぬりかべさんの壁で爆風の指向性を調整しつつビルから離脱。
森の妖精さんは爆発とビルの崩壊に巻き込まれたようだがあれで倒せているなんて楽観視していたらすぐにでも安楽死してしまう。
監視カメラやドローンを起動しながら次への戦場を設定する。
表通りへと出た僕は白いののハンドサインを確認して路駐車両を飛ばしてから、崩壊したビルの方を注視する。
そして飛ばした車両は狙ったとおり僕の”背後へ”と飛んできた。
まず僕を仕留めようと思ったのだろう、森の妖精さんがこっそりと近づいてきたその足元めがけて車は着弾した。
まだ音響爆弾の効果が残っているのか、直前になって気付いた彼女はギョッとしながらもなんとか迎撃する。
そのスキに僕は彼女を掴んでビルに”投げ”つけた。
僕の魔法は途中で破壊されることがない限り百発百中だ。
彼女は体をひねりながら受け身を取ろうとしたがそんな程度で弾道がズレるはずもなく、背中からビルの側面へと叩きつけられる。
そこにトップなんとかさんが十分に加速を付けたぶちかましを食らわせた。
当たる直前にキーンと音波による障壁を張ったようだが、彼女の加速力を殺し切ることはできずに苦悶の声をあげる。
だが殺しきれなかったのは確かだ。
トップなんとかさんが急いで離脱しようとしたところを殴りつけられて漫画みたいに吹き飛ばされる。
あれはもう戦闘不能だな。
箒の障壁はあったみたいだが、障壁内部に音の衝撃波を浸透させられたようで、トップなんとかさんは倒れたままピクピクしている。
まさに出オチ大将軍、出番があっただけマシだよね。
そんな犬の遠吠えが聞こえたような気がした。
体勢を立て直した森の妖精さんに青い子とぬりかべさんが近接戦を仕掛けるが、どうやら以前のぬりかべ戦の時はだいぶ手加減していたのだろう、お花畑さんの勇者満開魔法で強化されているはずのぬりかべさんが早々に殴り飛ばされてピクッてます。
付け焼き刃どころじゃなかったね。
青い子は純粋な近接戦闘技術は森の妖精さんを上回っているようだが、音による障壁や衝撃波、更に打撃の際の音波相乗攻撃を警戒して非常に戦いにくそうだ。
白いのに今後の展開について指示を仰いだらこのまま時間を稼げとサインが返ってきた。
どうやら時間さえ稼げばあっちが不利になる展開が待っているのだろう。
そういうことならやってやろうじゃないか泥仕合。
僕はぼうっと突っ立って戦闘を眺めていた黒いのの首を掴んで、
そーれぇ、ゾンビミサイル発射!!
森の妖精さんへと投げつけた。
そう、どうしても当たらないパワーキャラなら僕の魔法で当ててやればいいのだ。
ふんがーと飛んでくる黒いのを見て森の妖精さんは殴りつけて迎撃する。
一撃でバラバラになった黒いのは、しかしバラバラになったまま森の妖精さんへと命中する。
僕の魔法は”破壊”されない限り誘導は切れない。
車とか岩とかなら砕かれた時点で僕は破壊されたと無意識で判断してしまい誘導が切れてしまうが、そもそもゾンビは死なないのでバラバラにされたって”破壊”されたとは言えない。
せめて火で焼かないとゾンビは死なないだろう。
手だけになっても襲い掛かってくるゾンビ映画をここ何日かでたっぷり鑑賞したからバッチリだよ。
更に黒いのは体がバラバラにされても各箇所を動作させることは可能という変態っぷり。
口で、手で、足で、臓物で森の妖精さんへと噛みつき、爪を立て、絡みついて、締め上げる。
まさにスプラッター。
それを見たお花畑さんがヒギィといいながら気絶していったところまで様式美。
流石の森の妖精さんもそれは嫌がって何とか取ろうと格闘しているが、そんなスキを見逃す青い子ではない。
怒涛との連撃で確実に森の妖精さんにダメージを与えていく。
僕も援護をしようとしたら、ここで白いののサインが。
え?マジですか?
しょうがない、覚悟を決めてタンクローリーだ。
近くの駐車場へと走り、駐車してあるタンクローリーを魔法で飛ばす。
絡みつく黒いのと近接戦を繰り広げている青い子を巻き込んでタンクローリーは狙いどおりに森の妖精さんへと炸裂する。
立ちあがった爆炎は凄まじく、周りの野次馬たちをも巻き込んであたり一面は阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
黒いのは流石に死なないだろうが青い子の姿が見えない、まさか一緒に吹き飛んだのか?
どう見ても援護としては最悪の一手だろう、そう非難の視線を白いのに向ける。
そして白いのの口角は最大級に吊りあがっているのを見て僕は悟った。
まさか・・・ブルータス、おまえもか。
あまりのショックに一瞬狼狽えていた僕に爆炎から抜け出してきた森の妖精さんが殴りつけてきた。
本当に頑丈すぎるよこの人!
先日の再来のように全身を抉られるような痛みとともに地面へと叩きつけられ何度もバウンドする。
白いのの口はまだまだ吊り上がっている。
これは本気でヤバい。世界がヤバい。
更に意味不明に手を振ったりジャンプしたりと乱数調整までしはじめた白いのを見て、僕はさすがに死を覚悟した。
森の妖精さんもそれについてはなんか残念そうな目を向けていたが、僕を殺す方が先と判断して止めを刺そうと飛びかかってきた。
そこに彼女がやってきた。
なんでおまえがここにいる!
彼女は間一髪僕を抱き上げて助け出し、空を駆け━━
おまえは、おまえだけはこんなところに来ちゃいけないのに。
おまえのことだけは私が、いや僕が守ってやるって。
もう苦しませたりはしないって。
なのに、なぜ。
鉄腕少女は戦場へと舞い降りた。
今まで出番がなかった真打ちが満を持して登場です。
あと準備していたものが確実に役立つかなんていったら現実にはそんなことありません。
折角用意した武装も殆ど使えずじまいでした。
さて盛り上がってきたところ申し訳ありませんが次回は番外編です。
ですがつい先程、最終話まで書き終わったんで明日も複数回投入するかも。