魔法少女育成計画とかどうでもいいから平凡に暮らしたい 作:ちあさ
魔法少女になってから早数ヶ月、包丁の消耗が激しくて困る。
魔法と言っても別に投げる包丁が強化されるわけではないので、刃こぼれもすれば撃ち落とされれば折れてしまったりもする。
元々持っていた包丁はちょっとこだわって買った物が多く、使い捨てにするには勿体なく、ネットショップで格安の包丁を探してはまとめ買いしている。
そんな僕の部屋は溜め込んだ包丁が所狭しと並べられている。
これだけ集めているとやっぱり貧乏生活の身としてはかなり辛い。
何故か最近役所の人が生活保護費を持ってきてくれないんだよね。
だから僕はヤクザ屋さんのケツを蹴り上げることでお金を稼いでいる。
また今度、絡みたいさんがいない時にでも街のヤクザ屋さんを回って集金してこよう。
・・・このアパート、警察に踏み込まれたら色々アウトだな。
トップなんとかさんは聞いてもいないのに他の魔法少女のことをペラペラペラペラ喋ってくれる。
絡みたいさんには喧嘩を売らないほうが良いとか
移動呪文みたいな女王さまが派閥を作ってるだとか
キマシタワーを絶賛建設中の脳内お花畑さんとぬりかべさんの話だとか
聞いてて頭が痛くなるぐらいマトモなやつがいないのは魔法少女の仕様なのだろうか。
本当に魔法少女は地獄だぜ。
でもそれぞれの固有魔法も色々喋ってくれるのは非常に助かった。
こいつには個人情報保護法とかそういう概念はないんだろう。
無駄に世話焼きでおしゃべりで顔も広い、なんだか近所の世話焼きおばちゃんみたいな人だ。
いつの間にかコンビ扱いされていたけど、おかげでチャットを一度もしないのに他の魔法少女の動向を知ることができるので良しとしよう。
付き合う上ではこいつが一番マシみたいだしな。
そういえば鉄腕少女が最近行方不明だそうで、見かけたら連絡が欲しいとのこと。
・・・あれは悲しい事件だった。
彼女は本当に良い奴だったよ。
せめて彼女の未来がより良いものであることを祈っておこう。
それに彼女の魔法をより活かせるあの二人なら粗末に扱うこともないだろうし、
生活水準も劇的に良くなっただろうから案外喜んでるかもしれないしな。
なにはともあれ彼女の献身のおかげで僕の魔法はより使い勝手がよくなった。
おそらくトップなんとかさん経由で包丁を投げることしか能がない駄魔法と広まってるだろうから、
何かあった時のために弱点は潰しておかないといけない。
何しろ僕は他の頭のおかしい魔法少女と違ってごく平凡な一般人なんだ。
というか、話を聞いただけでも他の魔法少女の能力が豪華すぎて泣けてくる。
武器を強化する魔法とか、僕ならとりあえず米軍基地からナパーム弾でも拝借してくる。一発でN市が蒸発するだろう。
なんでも命令を聞かせる魔法も、条件は厳しいだろうけど、一度決まれば即死確定だ。
デフォルトで空を飛べて物体ならどんなものにでも変身できて重量すら再現する?月落としでもされたら宝石な某魔法爺さんでも異世界から呼ばない限り対処不能だろう。
あとどこでも穴が掘れるって能力もやばいだろう。近接戦闘ですべてが致死攻撃になりかねない。
直接戦闘じゃなくても変身を解いて家で寝てるときに街全域の地下を空洞化させてダイナマイトあたりで爆破して地盤沈下でもさせられたら余裕で死ねる。
おかげでここ数か月恐ろしくて変身解除もできず学生生活は泣く泣くあきらめた。
魔法少女でいる間は寝なくても大丈夫なのが救いだ、というより少しでも寝たらエルム街の悪夢がいつ襲い掛かってくるかわからないからな。
彼女が好戦的ではないって聞いて、それだけが本当に救いだった。
そんなこんなで情報収集と地道にN市を縄張り化する作業に従事していると、
久しぶりにマジカルフォンが強制起動し謎生物が陽気な声でイベント開始を宣言してきた。
どうやら魔法少女を半分殺さないといけないらしい。
鉄腕少女は売り飛ばされました。
魔法少女に人権はないからしょうがないね。