歯車とは他の部品に力を伝える物。
彼も、その一つ。
しかし、その歯車はイレギュラーな部品だった。
世界の動きは変わり始まっている。
『時一瞬、事一生』
時は流れど、出来事は一生に残る。
彼と言う歯車は、どんな結果を残すのであろう。
by『…………』
ゴオオオオオォォォォォ
さて、私は空を飛ぶ手段を手に入れ優雅に飛んでいる。
ふぅー、これならある程度は楽が出来るな。 とりあえずはまだ行ってない場所に行きますかな。
ガクンッ
what!? ロボットのブースターを確認すると、噴射している炎が少しずつ弱くなっていた。 高度が下がる中…突然とブースターが止まってしまった。
おわぁー!! 落ちてるー!!!
先程の戦闘で、このロボットの燃料が大半が消費してしまっていたらしい。 その為に余り飛べなかったのが今の現状なのだ。 片方のブースターから止まってしまい、機体は回転しながら降下していく。
このままでは私はロボットの下敷きになってしまうので対処を行う。
ポンッ
私は身体をコックピットから抜き出して、ロボットから離れる為に蹴り距離を取った。
うわ〜…高〜い。 このまま落ちたら流石の私の鍛えた脚でも耐えられないだろう。 ならば…タイミングと調節で私の命を賭けることになる。
ヒューーー
私は落ちてる体勢を縦では無く、横にして空気を受ける面を大きくする。 少しでも落ちる速度を下げる。 徐々に荒野の地面が迫ってくる。 私は覚悟を決め、残り100mを切った瞬間に再び身体を縦にした。 頭を下に少し速度が上がるが、重要なのはタイミングと調節なのだ。
5…4…3…2…1…今!
私の得意な攻撃の1つ、目から放射出来るビームなのだ。 いつも化物達と戦って使ってる時は威力を収束させて攻撃手段として遠距離砲と使っている。
だが、収束せず広範囲にビームを撃てば威力は分散されるが勢いが発生する。 その為、それを使用すると私の身体は後ろに持っていくのだ。 最初の頃に色々とビームの打ち方を試していた時に発見したのだ。
今それを使う時!
ババババババババババババッ
私の目から放たれたビームは、不規則に広範囲と放たれていく。 そしてビームの調節が鍵となる。
今の私は先程の戦闘で多少のエネルギーを使っている為にエンプティーが心配される。 今私の身体を動かなくなれば…地面のキャンバスにぶちまける事になるだろう。 その為に加減をした放射が必要とされた。
ババババババッ
落ちる速度が遅くなるのと合わせて、ビームも弱めていく。 私の貯蔵を確かめながら。
残り10m。
ここまでくればビームは必要ないだろう。
バアァッ!!
最後に少し強めのビームを撃ち出し、落ちる速度一旦無くしてから身体を変え脚側を下にする。 再び迫り来る地面に、足に意識を集中させた。
そして、私の足が地面に着いた瞬間。
クルンッ
身体を左に転がるように身を丸くして受け身をとる。 腕が無い私には5点着地は出来なくとも、着地の衝撃を分散する事は出来るのだ。 そして、キメポーズ。
シャキーン
ふぅっ。 とりあえずは難は去ったな。
ドオォンッ!
少し離れた場所に私が乗っていたロボットが落ちてきた。 殆どオシャカになってしまったが…仕方あるまい。 そもそも燃料が無いとロボットは動かんのだ。 ならば捨てるに限る。
うん、とりあえずロボットが持っている赤いのを食するか。
さて、この後はどうするかな? あ…どうせだからオシャカになっちまったけど、返しますかなロボット。
あの戦場から余り離れていないようだし、狼煙でも上げて回収させるかな。
一先ずは…エネルギー補給エネルギー補給。
★☆☆☆☆☆
「では、ここからは篁中尉に説明を」
場所はアラスカ・ユーコン基地。 そこでのブリーフィングルームでXFJ計画の関係者達とソ連軍のジャール大隊の者達が集められていた。
「今話す事は私の…私ともう2人の話だ。 虚言だと思うなら構わない、だが今虚言を言う必要性も無い…あれは三年前の話だった」
篁唯依は、ブリーフィングルームにいる全員にあの時の事を話した。 日本帝国で訓練生の時を。 唯依自身が見た事を、体験した事を。 そして『あの』光線級と出会った事を。
「…これらが私と光線級の出会いだった」
シーン
唯依の昔話に聞いていた人間はリアクションが取れていなかった。 それもその筈、中にはBETAの中に奇行種がいると噂話で聞いていたが本当に存在しているとは考えられなかった。
スッ
1人の少年が挙手した。
「なんだ? 少年」
「俺の名前はキール、ジャール大隊の1人だ。 そして『あの』光線級に助けもらった1人だ」
XFJ計画の人間達は驚く声が漏れる。 少年は前回の戦闘で光線級に助けられた衛士のキール。 彼は座っていた椅子から立ち上がり、唯依に質問した。
「何故、『あの』光線級は俺を助けたんだ? 意味がわからねぇよ、BETAって名前自体に矛盾してねぇか?」
「あぁ、確かに。『人類に敵対的な地球外起源種』でBETA。 だが、『あの』光線級は別らしい。 そして『あれ』の名前は他の光線級と区別する為に上の人間が名称を決めた。 『ルクス』だ。 目的などは不明だが、私の方でも調べて見たが人類を襲う事なく…逆に守ってくれる亜種だ」
「では、『ルクス』は何故私達が乗っている戦術機に乗れるのだ? あれは乗っていると言えるのかはわからんが」
ジャール大隊隊長であるフィカーツィア・ラトロワが会話に参加する。 女性としては長身で、髪は長く後ろ髪は結んでポニーテールになっておりロシア人である。
「…詳しくはわからんが、ルクスは学習能力が異常に高く他の戦場でも目撃情報が上がっている。 その時に私達が乗る戦術機に興味を持ったのか、戦場に残る戦術機でも触れたのでは無いかと思う」
色々と常識から外れた話が上がり、再びブリーフィングルームは沈黙が広がる。 それを見て唯依は、ルクスの情報を映像に映す。
「ルクスは、他の光線級とは脚の形状が人に近い。 それもアスリートのように筋肉質で指は二本ではなく五本。 その為か…機動力が高く縦横無尽に動き、光線級の弱点であるレーザーの照射の際に動きを止める動作が無い。 両目での照射だけでは無く、片目で調節した撃ち方もルクスは熟す。
そして、戦車級を軽々と蹴り飛ばす強靭な脚力。
この能力が他の光線級に無く、ルクスだけが持っている能力とも言えるな」
ルクスの情報を上げて行く度に、それを見た人間達は冷や汗を流す。 ルクスのようなBETAがいれば、今頃は人類は敗北を約束されているだろう。 今の現状でも質量で負けているのだから。
「…話が長くなってしまったが、本題に入ろう。 今回集まってもらったのは…また私達の前に現れた時はルクスを捕獲、いや保護してほしい」
「「「「「!!??」」」」」
XFJ計画に所属しているアルゴスチームは全員が立ち上がり驚愕し、ジャール大隊達も同じ反応だった。
「おい、中尉! あんたが何を言っているのか解ってるのか!? BETAを捕まえろなんて」
アルゴス1のユウヤ・ブリッジス少尉は、ブリーフィングルームにいる人間達の代弁するような言葉を唯依に叩きつける。
それもその筈、敵であるBETAを殺さずに捕まえろと言っているのと変わらないのだから。 ユウヤ・ブリッジスの言葉を聞いた唯依は、ゆっくりと頭を下げて行く。
それを見た全員が驚いた。
「確かに無理難題な事と理解している。 だが、私はルクスを試して見たいのだ。本当に敵対しない存在なのか…手を取り合う事が出来るのか。
私はBETAに勝つ勝率を少しでも上がるなら、この身を捨ててでも拾いに行く。 それほど我々は攻め込まれているのだからな…。 大地や空、故郷などが奪われ大切な人を殺され…蹂躙され続けている。 そんな存在の1つに例外が、私達の光になるかもしれないのだ。
責任は全て私が持つ…だから頼む」
アルゴスチームの4人は唯依の性格を理解しているつもりだった。 しかし、目の前にいる彼女は普段とは違い何処か少女が何かに縋るような弱い姿に見えた。
「了解した。 では、篁中尉は我々がルクスを捕獲する事が出来たら何をしてくれるのだ?」
ラトロワは、現XFJ計画の日本側開発主任としての唯依に取引を持ち込んだ。
確かに今回の依頼はリスクが高いのだ。 敵対しなくても人間側からルクスにアクションを起こして、突如敵側に回られたら甚大な被害を被ってしまうのだから。
だからラトロワは唯依に聞いた、報酬は何だと。
「そちらの望む物を…用意できる物なら何でも」
「ふっ…ならば、坊やが使っていた『試製99型電磁投射砲』と言ったか? それを貰おうではないか」
「構わない」
「「「「「!?」」」」」
余りの唯依の即答にXFJ計画の人間とアルゴスチームを驚かす。 それもその筈、日本帝国の機密で重要な兵器をさも当たり前のように報酬に出したのだ。 それらを聞かされていた者達は、唯依の行動に驚かない訳が無い。
「あれは日本帝国の重要な兵器では無いのか? それをおいそれと他の国に渡しても構わんのか、篁中尉」
「確かにあれは簡単に他国に渡してしまえば、今の私の立ち位置は危ういだろう。 だが、兵器よりルクスの方に価値があればどうだ? 聞いた話では、あの電磁投射砲は量産の目処が立たないと開発部が言ってらしい。
ならば、確かに大量にBETAを倒せる兵器だが精密機械の為に不慮の故障などで突然動かせなくなれば…ただの屑鉄だ。 ならば、私はルクスに賭けるのだ」
頭を上げ自分の言葉を全て吐き出して行く唯依。 先程と変わって何処か修羅の道に挑む修行僧にも思わせる気迫を放っていた。
それを見たラトロワは、愉快そうに笑い始めた。
「あははははははっ!」
ラトロワの心の底からの笑いに、ジャール大隊の少年少女達は呆気に取られていた。 普段のラトロワは、物静かで厳しく時に優しいジャール大隊隊長である彼女があんな笑い方をするのは初めて見るからだ。
少年少女達に見せる母親の様な微笑む笑いでは無い、彼女自身が目の前にいる篁唯依の覚悟を認めた為に笑ったのであった。
「面白い賭けだな、篁中尉。 私も全てベッドしてもいいか? その賭けに」
「ふっ、負ければ何もかもが失ってしまいますが?」
「賭けずにチップを取られるだけの勝負は面白く無い。 ならば、身を削り勝利をもぎ取るだけだ。 それにルクスは、私の子供達を助けてくれた奴だ。 礼の1つ送らんとな」
清々しいほどの笑みを浮かべるラトロワは、唯依に近づいて右手を差し出す。 それを見た唯依も笑顔でラトロワの右手を握手で答えた。
こうして…アルゴスチームとジャール大隊は同盟が組まれた。
★☆☆☆★☆
同じくユーコン基地で、白人が個室で外部との連絡をとっていた。
「えぇ…確かに帝国が作り上げた兵器は凄まじいとの言葉しかありませんでした。 ですが、それよりも…」
『サンダーク中尉、君の言いたい事は分かるよ。 あのBETAの事だろう』
長身で髪はオールバックで金髪の男、イェジー・サンダークが通信機器を使って会話していた。
『…少し聞いた事がある。 極秘である計画で人間がBETAを使って何かをしているらしい。 それが使われるのが人かBETAなのかは分からないがな』
「ロゴフスキー中佐、良い案があります。 あのBETAと帝国の兵器を手にすれば戦況は、確実に我々の有利になるでしょう」
『簡単に言ってくれるな…確かに人を助けるBETAが味方になれば心強いだろう。 しかし、所詮はBETA。 下手な事をすれば敵に回ってしまうかもしれんぞ?』
フッと笑うサンダーク。
「あのBETAに関しては、良い案があります。 私の部下であるイーニャ・シェチナを使うのです。 彼女なら、あのBETAと交信する事が出来るはず。 そうすれば…あのBETAの考えなど手を組む事が出来る筈」
スカーレットツインの通り名をもった2人の衛士。 クリスカ・ビャーチェノワとイーニャ・シェチナである。 彼女達が乗る戦術機『チェルミナートル』は複座式で2人が操縦している。
そして、彼女達は作られた人間であった。 ある計画により作られ、調整され今は衛士としてサンダークの部下になっている。
その1人のイーニャ・シェチナには少し他の人間には無い能力が付与されていた。 それを知るサンダークは、ロゴフスキーに持ちかける。
「どうですか? 中佐も知っている通り、計画から生み出された彼女ならあのBETAと交信出来る筈と」
『……。 失敗は許されないぞ?』
「フッ、解りきっている事です」
こうしてルクスを求めて動く人間が増えた瞬間だった。
☆★☆★☆★
深夜、月が昼の太陽のように大地に光を降り注ぐ。 その中で人間は夜になれば寝に入るのは当然の行動。
ユーコン基地の施設に設置されたベットに寝ている篁唯依は魘されていた。
突撃銃の発砲音、金属がひしゃげる音、肉体が引き裂かれる音など様々な音がする中で…共に戦った彼女達の声が聞こえてくる。
助けて
早く
痛い
お願い
唯依ィィィィイッ!!
「はっ!? ……ッ、はぁ……ッ」
悪夢を見たかのように飛び起きた唯依。 息を切らし冷たい汗が全身を濡らしていた。
(……ここに来て、あのような夢を見るとは。 それもそうか…私は弱い人間なのだから。
それにしても、不可解な遠征に今では不完全な機体…ソ連軍であるサンダーク中尉の不自然な動きも見える。 問題は山積みか…)
唯依は弱り切った心境の中、枕元に置いてある父親から貰った懐中時計を握りしめる。
「…父様、私は…どう……すれば。 お前なら…どうするんだ。
ルクス」
唯依の声は、静かに暗い部屋に消えていった。
「では、篁中尉はルクスに対して…どのようなコンタクトを取ろうとしているのだ?」
「あぁ、それに関しては次にBETAの進軍に掛かっている」
ユーコン基地のハンガー内で、唯依とラトロワは話していた。
「私の考えでは…ルクスは他のBETAがいる場所が解っているのでは無いかと思っている。 様々な目撃情報では、殆どが我々とBETAとの交戦している時に出現確率が高いと見ている」
「ふむ…」
唯依の言葉に考え込み、腕を組むラトロワ。
「それが確かな情報なら…なぜ、私を此処に呼んだ?」
「それはルクスを誘き出す作戦には、私達が協力しなければならないからだ」
一機の戦術機に近寄る唯依。 それを眺めるラトロワ、唯依の考えが読めず溜息を吐く。
「それはルクスを捕獲する件で手を組んだ筈。 それとも、お前は私…ジャール大隊を疑っているのか?」
「違う、ルクスは他のBETAとは違い知能が高い。 それを予測して次の戦場に現れれば…必ずと言って最善な行動を取るだろう。
現に前の戦闘では、ジャール大隊の少年兵を助けては戦術機を操り被害を抑えているのだからな」
「……」
「次の戦闘でルクスを確認した瞬間に、ルクスの前に無人の戦術機を運び出す。 そうすれば…奴は再び乗り込むだろう」
唯依の話は、他の軍人が聞けば頭が可笑しいと思うだろう。 態々、人類の敵対するBETAに自分達の武器を渡すのだから。
しかし、ラトロワは決して笑わずに腕を組んだままで目を瞑り考え始める。 少し悩んだのかラトロワは片目を開き、唯依に問いかける。
「その為に…コックピットを解放させた戦術機一機を代償か。 だが、悪い話では無いな。 実際にルクスの操縦には驚かされているからな」
ルクスの戦い方には、彼女達には真似るには難しいものだった。
それは状況把握能力。 彼女達、衛士は戦闘中では通信を使い状況を伝い合い戦況を変えるもの。 しかし、ルクスは単独で周りの状況を把握しきっていた。
先の戦闘データを見た人間を驚かすほどに、自分の位置・他の戦術機・BETAの数や配置などを理解し把握して動いていたのだ。 ましてや、電磁投射砲の射線上にいる動けない戦術機や戦車などの味方達を迅速に退避させているのだから。
「この私達の行動により、ルクスには我々が味方であると理解させる事が重要。 少しでも…手を取り合う必要の手段とも言える。 その為に、この機体をルクスが発見され次第にジャール大隊に運んでほしい。 その為にラトロワ中佐を呼ばせてもらった。
アルゴスチームには、他にやってもらい事がある為に回せないのだ」
「…ふむ、よろしい。 ならば、その役目引き受けよう。 大博打な作戦だが…面白いと思う」
ラトロワの返答に、やっと顔の力が抜ける唯依。 それを見たラトロワも表情が柔らかくなる。
無言のままで2人はハンガーから外に出て、雲一つ無い青空を眺める。
「奴は来ると思うか?」
「ルクスなら必ず…」
「そうか、後は頼りない神でも祈っておくか」
「神に祈るぐらいなら、私はルクスに祈るがな」
小さく笑い合う2人。 一体のBETAにより、人と人を手を取り合う事になるとは誰も思ってはいなかったであろう。
一つのイレギュラーが、良い方向にも悪い方向にも傾く事がわかった瞬間であった。
どうも、ヨッピーです。
日々、仕事に追われ暇な時間が少ないです。
色々な展開を考えているですが…。
まぁ、在り来たりな展開より斜めな展開をしようと必死になるヨッピー。(´・ω・)
このような作品ですが…長い目で応援してください。(`・ω・´)ノシ
では、ジーク・ヨッピー!(`_´)ゞ