ちょっと、書かな過ぎたので超久しぶりに更新です。もう、月姫も忘れかけてます……リメイクはよ……
とりあえず、屋敷編です。最近、オリジナルをいくつか書いているので、その息抜きでこちらを書いていけたらな、と思っております。
それでは、どうぞ!
「ここかぁ」
俺達が案内されたのは、大きな屋敷であった。
「悪くないわ! この私が住むのに相応しいんじゃないかしら!」
はしゃぐ阿呆。なんでこんなに偉そうなのだろうか。
「元はとある貴族の別荘だったらしいですね」
これは、大家さんの受け売りである。めぐみんもなんだか嬉しそうである。
「とある貴族ね。しかし、森の洋館といい、こういう建物多いな」
「そうね。あの時はさつきがこちら側に来ているとは思っていなかったわ」
あれは、奇跡に近かった。
「しかし、除霊の報酬としてここに住んでいいとは太っ腹な大家さんだな」
そう。今回の以来は除霊である。その報酬として、大きな屋敷を貰うことになったのである。ウィズさんから依頼を横取りしたというのは、それはそれだ。
「大家さんが言うには払っても払ってもすぐに霊が現れるらしいぞ」
「それはかなり厄介だね……」
少しだけ、身震いがした。
「ん? 志貴さんはお化けとかダメなんですか?」
カズマ君は不思議そうに尋ねてくる。
「どちらかと言えば、苦手だね。ゾンビとかなら耐性はあるんだけど、実体のないものは得意ではないかな……」
そういえば、霊って点や線は見えるのだろうか? 見てみればわかるか。
「任せなさいよ! 私は対アンデッドのエキスパートよ!」
そういえば、アクアは女神様だったか。日頃の行いのせいで完璧に忘れていた。
「見える、見えるわ!この屋敷には貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間にできた子供、その隠し子が幽閉されていた様ね。元々身体の弱かった貴族の男は病死、隠し子の母親のメイドも行方知れず。この屋敷に一人残された少女はやがて若くして父親と同じ病に伏して――」
なにか壮大な解説をしているが、放置だ放置。
「ふーっ……」
「これで一通り掃除も終わったな」
日は暮れたが、どうにかこうにかで屋敷の掃除はだいたい終わった。
「それにしても、俺までよかったのかい?」
「何言ってるんですか。志貴さんは仲間じゃないですか」
「うん。そう言って貰えると助かるヨ」
仲間と言って貰えるのは嬉しいのだが、何故か引っかかるものがあった。
「なんで棒読みなんですか!?」
「あはは、それじゃあ、俺はこの屋敷を探索してくるよ」
誤魔化して、部屋を出る。早く1人になりたかったのだ。その理由は、この屋敷が――
「似てるな……」
「そうね。貴方が住むには贅沢……いえ、地獄かしらね? まさか宛てがわれた部屋の位置まで同じなんて、お笑いものね」
レンがニヒルに笑いながら姿を現す。
この屋敷、遠野邸と全く間取りが同じなのだ。おまけといわんばかりに、離れまでついている。
「ああ、全くだ。こちらの世界でも同じような屋敷に住むなんて、皮肉だよ」
「それで? どうして庭なんかに来たの?」
レンは分かっていて聞いているようだ。
「さて、ね」
空を見上げ、心臓のあたりを強く掴む。今宵は月が綺麗だ。あの日もこんな日だった。あいつは今、元気でやっているだろうか。
「ふぅん。ま、いいわ。聞かないであげる」
「そりゃ助かるよ」
きっと、お前のところに俺は戻ろう。その時まで、待っていてくれ。
これは、誓い。その誓いは俺が彼女に会うまで消えることは無い。
「それじゃ、私は離れでも貰おうかしら」
「ん? レンも部屋を貰うのか?」
それは意外だった。てっきり今まで通り、俺の部屋で寝るのかと思っていた。
「そりゃあね。どこぞの鬼畜と一緒にいたらいつ襲われるかわからないんだもの」
「それは俺のことを言ってるのか?」
「あら、あなた以外に誰が居て? ま、逃げ場がなくなったら上げてあげてもいいわよ? 仕方なく、仕方なくだからね!?」
ホント、レンってツンデレだよなぁ……
本人に言ったら凍らせられかねないけど……
「はわあああああああああああああっ!」
そうこうしていると、屋敷の方から叫び声が聞こえた。
「何だ……?」
「さぁ、あの女神様のようだけど、何かあったんじゃないの?」
何か、だと……? この屋敷にはもともと除霊が目的できたのだ。嫌な予感がする。
「いくぞ、レン」
「あの女神様に限って大事はないと思うけど、分かったわ」
大急ぎでアクアの部屋に向かう。途中でカズマ君とも合流する。
「何があった!?」
「かじゅまぁ……しきぃ……」
アクアは泣いていた。一升瓶をもって……
「これは大事に取っておいた凄く高いお酒なのよ。お風呂から上がったらゆっくりちびちび大事に飲もうと楽しみにしてたのに……それが私が部屋に帰ってきたら見てのとおり空だったのよおおおお!」
骨折り損のくたびれもうけとはこのことである。心配して損した。
「そうか、じゃあおやすみ。また明日な」
俺とカズマ君は部屋から出て、ため息をつく。
「これは悪霊の仕業よ! ちょっとこの屋敷を探索して目につく霊をしばき回してくるわ! ターンアンデッド! ターンアンデッド! ターンアンデッド! 花鳥風月! ターンアンデッド!」
駄女神は放っておいて、寝るとしよう。アクアがやるきになっているのなら、明日の朝には除霊できていることだろう。
ベッドに横になっていると、ふと、誰かの視線を感じたような気がした。
俺は起きあがり、あたりを見渡す。が、何もいない。
「なんだ……気のせいか……? おい、レン? なんかの嫌がらせか?」
返事はない。そういえば、レンは離れにいるんだったか。
じゃあこの視線は一体……
「ーーーーっ!?」
目を開けると、そこには人形が浮かんでいた。なるほど、これは怖い。
などと分析している俺だったが、体は本気で逃げ出していた。
「なんだ、なんなんだあれ!? 浮いてたぞ? 魔法か? マジか? いや、ここ魔法の世界か」
頭が回らない。マジでどうなってるんだ……?
後ろを見ると、大量の人形が追ってきている。真に迫るというのは、こういうことなのだろう。
「ちぃ、仕方ないか!」
ナイフを抜き、人形の死を視る。
「ここだ。灰燼と帰せ!」
【閃鞘・八点衝】
全ての人形の線を斬る。すると、粉々になった、人形がバラバラと音を立てて床に落ちていく。
「なんだったんだ……?」
「あ、いたいた。おーい、しきー」
人形を倒しながら屋敷をさ迷っていると、アクアが手を振りながら近づいてきた。どうやら、ダクネスも一緒らしい。
「あとは、この部屋だけね。一応ノックしておきましょ」
変に律儀な女神様。そして――
「かかってこいや悪霊がああああ! 後でウチの狂犬女神けしかけてやんぞこらああああ!」
思いっきり開いた扉に吹っ飛ばされたのであった。
後日談、というか今回のオチだけど、壮大に説明していたあのアクアの物語は事実だったらしく、寂しがっていた女の子が俺たちを驚かせていたらしい。
ちなみに、霊退治の報酬もでたのだが、そもそも、その霊を寄せ付ける原因となったのがアクアだったらしく、辞退することとなったらしい。
「その落とし方、使っても大丈夫なの?」
「ダメだろうけど、1回くらい大目に見てくれるだろ」
ちょっと、月姫感は出せたかな? と思っております。
屋敷が丸ごと遠野邸になっているのは、クロスオーバーだから気にしないでください。