この素晴らしい世界に殺人貴を!   作:朎〜Rea〜

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おはようございます。
サブタイを超適当ですが入れました(・▽・)

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さて、今日は朝からソフトに淫魔編です。


男なら、推して知るべし

 本日は日がな一日、特にやることも無く散歩にあけくれる。やること自体はクエストやら、バイトやらはやることもあるのだが、今日一日は暇という時間をめいいっぱい満喫させてもらおう。

 

「こちらぁ、NECOOFFEでございますにゃ」

 

 店員が運んできた黒い液体を口に運ぶ。この、独特な風味、どこか煮干を思わせる――

 

「ぶっ――!? なんだこれは!?」

 

 塩っ辛い。そして、磯臭い。こんな飲み物が存在しているとは、恐るべしアクセル。

 

「やっぱ、醤油に煮干を入れただけじゃダメだったかにゃ?」

 

 このNECO、悪びれる風もなく首を傾げる。

 

「なんてものを飲ませるんだ!?」

 

 ありえない。コーヒーに見立てて、醤油をコーヒーカップに注ぐなンてありえない。煮干を添える意味がわからない。

 

「いやぁ、軽いジョークですよ旦那」

「冗談が冗談になってないぞ!? 醤油をそのまま飲むとすっごく辛いんだからな!?」

 

 おかげで、すごく気分が悪い。

 

「まさか、匂いで気付かずそのまま飲んでしまうとはにゃあ……志貴っち、こっちに来てからドジっ子属性でも追加したのかい?」

「なんだその不名誉な属性は!?」

 

 レンがこのナマモノを毛嫌いする理由がわかった気がする。これは、殺人衝動がなくてもやってしまいそうだ。

 

「あはは……志貴君、今日はどうしたの?」

 

 さつきが苦笑いをしながら水を運んできてくれる。

「特に今日はやることがないから、友人の顔を拝みに来たんだよ。それに、ウィズさんにも用があったしな」

「友人!? 私の事なのかな……かな……!?」

 

 さつきは顔を赤くしてなにか呟いているようだが、よく聞き取れなかった。

 

「私に用というのは?」

 

 奥からウィズさんが出てくる。本日、ネロさんと、黒いNECOは買い出しに行っているようである。

 

「ああ、最近ゴタゴタしていて忘れていたけど、魔王の幹部についてヴィズさんに聞いたら何かわかるかもしれないと思って……」

 

 当初の目的であった、魔王の討伐。その幹部について、この魔道具屋の店主に聞けば何かわかると聞いたことを思い出したのだった。

 ウィズさんから話が聞けたら、一歩前進することが出来るだろう。

 

「それでしたら、私も幹部ですよ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、条件反射で椅子から立ち上がる。

 

「あ、あのぉ……出来たら、メガネをつけてナイフを下ろして貰えると嬉しいんですけど……」

 

 どうやら、臨戦態勢になってしまっていたようだ。ウィズさんにも、なにか理由があるのかもしれない。こんないい人――いや、アンデッドか……が無意味にそんなことをしているとは思いたくはない。

 

「すみません……だけど、とても大切なことなんです。話してもらってもいいですか?」

「はい。構いませんよ」

 

 そういう訳で、話を聞いた。ウィズさんは魔王軍の幹部であるということは紛れもない事実であった。しかし、それは魔王軍の城の結界の維持を頼まれているという1点に関してのみである。魔王の結界をとくためには、幹部の全員を倒さないといけないらしいが、そこはアクアの力でなんとでもなりそうであった。最悪、結界を殺せばいい。

 

「ごめん、ウィズさん。何も聞かずにナイフを向けてしまって……」

「いえ、私が幹部というは紛れもない事実ですから。お気になさらないでください」

 

 ああ……なんていい人なんだ。こんな身近に女神はいたらしい。

 

「それじゃあ、話も聞けたし俺はお暇させてもらうよ」

「またいつでもいらっしゃってください」

 

 ニコニコと笑顔を向けてくれるウィズさん。本当に、癒される。

 

「あらあら、ウィズに鼻の下なんか伸ばしちゃって。妹に殺されても知らないわよ?」

 

「なっ!? レン、いつからそこに!?」

 

 この使い魔、本当に急に現れる。

 

「たったさっきよ。それにしても、だらけ過ぎなんじゃなくて?」

「いいんだよ。オンとオフは重要だろ?」

「そこは認めてあげるけど、あんまりだらしないことはしないでよね」

「悪かったよ」

 

 しばらくレンと歩いていると、挙動不審なカズマ君その他を見つける。

 

「あれ、カズマ君だよな?」

「ええ、そう見たいね。ほかのパーティーの男達とつるんでいるようだけど、なんか面白そうね」

 

 レンはニヤリと笑う。これは、なにか企んでいるご様子。

 

「つけるわよ、志貴」

 

 俺に否定権というものは存在していないようである。

 

「店に入っていったな……」

 

 カズマ君達御一行は、一件の建物に入っていった。何やら、キョロキョロと挙動不審でとても怪しい。

 

「あそこは……なるほどね……」

 

 レンはため息をつく。レンはあそこがなんかのか知っているのだろうか。

 

「レンはあそこが何か知っているのか?」

「知らないわよ。だけど、何がいるかというのはだいたいわかるわ。そして、何をする場所かということも推測は可能よ」

 

 呆れたような返事が返ってくる。それは、果たして察しの悪い俺へなのか、店に入っていった男達へなのかはわからない。

 

「へぇ、それじゃ、何をするところなんだよ?」

「あまり口にしたくはないわ」

 

 ここまで来て、レンは口を噤む。

 

「はい?」

「だから、口にしたくないと言ったの。レディーに言わせる気?」

 

 なんだか、苛立っている様子。

 俺、何かしたか?

 

「いや、そんな事言われてもな……ヒント位くれないか?」

「貴方ねぇ……分かったわ。あそこには淫魔が居るわ。それも大勢ね。あとは、想像しなさい」

 

 レンは大きくため息をついたあと、ヒントをくれた。

 

「淫魔? サキュバスとか、そういう奴か?」

「そ。もう分かったでしょ?」

 

 淫魔。古代ローマ神話とキリスト教の悪魔の一つ。夢の中に現れて性交を行うとされる下級の悪魔のことだったか。

 

「ああ、カズマ君には申し訳ないことをした……」

 

 どうやら俺達は、見てはいけないものを見てしまったらしい。

 しかし――

 

「淫魔って、夢魔の別称じゃなかったか?」

 

 レンは夢魔である。確か、ネロさんがそんなことを言っていた気がする。

 

「なっ!? 私を淫らなアイツらと一緒にしないでもらえる? 凍らすわよ?」

 

 レンの鋭い眼差しが俺を貫く。どうやら、夢魔と淫魔は違うらしい。

 

 

 その夜。

 

「これは蟹か?」

「ああ、私の実家が送ってきてくれたんだ」

 

 なるほど、それはありがたい。こんな世界に来てまで蟹を食べられるとは思ってもいなかった。

 一人に一鍋。なんという贅沢だろう。

 

「ああ……やっとカニが食べられるのね……」

 

 レンはどこか感傷に浸っている。何か、蟹に思い出でもあるのだろうか?

 

「うん、これこれ、この真っ赤な甲殻類がなくっちゃ、何もはじまらな――」

「ガリガリ。久しぶりに食べたけど、やっぱり筋張ってるっつーか、堅いっつーか、なんかまずいっつーか……」

 

 気づけば、レンの蟹鍋が奪われていました。どこかはともなく現れた、NECOの手によって……

 

「返しなさい。今すぐ返しなさい、ブサイク猫。あと貴女、相変わらずカラごと食べてるから、それ」

 

 暴れるかと思いきや、とても冷静なレン。

 

「およ? てっきりガン無視されるかと思い、大胆にも正面から食材を盗み食いしてみたのですが。にゃんだ、今回も付き合いいいな、白いの」

「……ふん。諦めただけよ」

 

 レンは諦めた表情でため息をつく。

 

「だって貴女相手につっこまないでいるなんて不可能だもの。これからは適当にあしらって、適当にリンチしてあげるって決めたの」

 

 レンの言っていることは、今日の一連でよく理解できていた。多分、それが最適解なのだろう。

 

「そういうワケだから……ほら、さっさと表に出なさい。お望み通り戦ってあげるわ。満足したら自分の国に帰ってよね」

 

 レンの周りに冷気が纏う。どうやら本気のようである。

 

「そ、ですか。でもにゃー。そこまで分かり合えたのなら、お友達まであと一歩。二人で仲良く鍋つつこうぜ?」

 

 そんなことを言いつつも、ガリガリと蟹を食べ続ける生物。蟹を食べる効果音でないことは確かである。

 

「だから、それがイヤだって言ってるの! せっかくの鍋タイムを邪魔しないでちょうだ――って、ああ!? あんなにあった赤いのが残り一匹に!?」

 

 もはや、ナマモノに慈悲などなかった。

 

「んー……まずいにゃあ。これが食材の王だとしたら、ふふふ、人類どもが今まで食べていたのは一体なんだったのか……んー、ところで口の中が血まみれになってきましたが」

 

 さっき、レンも言ってたけど、さっきから殻ごと食べてるから。本来、そういう食べ方じゃないから……

 なかなかにグロイから……

 

「やめて、返して! それ私の、私のカニなのにぃ! 絶対に許さない!!」

 

 レンは涙目で生物を掴んで、表に出ていったのであった。

 

「……なんだったのだ?」

「きっと、妖精の仕業ですよ」

「そうね! レンには悪いけど、食べちゃいましょ!」

「お前ら、鬼畜だな……」

 

 女子達の反応に呆れるカズマ君。しかし、その手はどんどん進んでいる様子。鬼畜である。

 

「カズマ、ちょっと火を頂戴。いまからこれの美味しい飲み方を教えてあげるわ」

 

 アクアの申し出に、カズマはティンダーを使う。どうやら、甲羅酒を作るらしい。

 

「ハァ……」

 

 アクアはできた甲羅酒を一口。とても幸せそうな顔をしている。やはり、美味しいのだろう。

 

「これはいけるな。確かにうまい」

 

 アクアに続き、ダクネスも甲羅酒を口にする。

 ついでに、俺も便乗させてもらう。

 

「確かに、これはなかなか――」

 

 美味い。その一言である。

 

「私にもください!」

「ダメだ、子供のうちから飲むとパーになると聞くぞ」

 

 めぐみんも俺たちに触発されたらしく、飲みたがるが、カズマ君に拒否されている。本当に、兄妹みたいである。

 

 そして、そのカズマ君はというと――

 

「カズマ君、どうしたんだい?」

 

 どうやら、乗り気ではないように見える。甲羅酒だって、飲んでいない。いつもなら、ありえないだろう。

 

「……うちから送られてきた物、口に合わなかったか?」

 

 ダクネスはただ、心配そうにカズマ君を見る。

 

「いや蟹は凄く美味い。ただ昼に知り合いと飲んでもう飲めそうにないんだ」

「……そうか」

 

 ダクネスは純粋な顔で笑う。普段からは想像できない笑顔であった。

 

 そして、楽しい時間も過ぎ――

 

「それじゃ、ちょっと早いけど俺はもう寝るとするよ」

 

 颯爽と、カズマ君は部屋を出ていったのであった。

 

 深夜。

 

『この曲者! 出会え出会えー!!』

 

 アクアの叫び声によって、俺は起こされた。

 

「おい、アクア。何事だ?」

 

 アクアとめぐみんの先には魔方陣に捕らわれた、サキュバスがいた。

 

「見て見て! 私の結界に引っかかって身動き取れなくなった曲者が「アクアーー!!」……」

 

 そして、アクアの説明を遮るように、カズマ君もやってきた。

 

「こっちにも曲者がいた!」

 

 タオル一丁の変態(カズマ君)がいました。その後ろからは、ダクネスも来ている。

 

「誰が曲者だ!」

 

 否定してあげることは難しいだろう。

 

「このサキュバス、結界に引っかかって動けなくなっていたの! きっとカズマか志貴を狙ってやって来たのね!」

 

 その瞬間、全てを察した。つまり、このサキュバスはカズマ君に夢を見せるためにこの屋敷にやってきたのだろう。

 

「サクッと悪魔祓いしてあげるわ!」

「おとなしく滅されるがいい」

 

 黒い顔で笑う、アクアとめぐみん。なんでこう、うちの女達はこうなのだろ。

 

「ニゲロ……」

 

 さて、どうしたものかと考えていると、カズマ君がそう言った。その顔からは、漢の表情がみてとれた。覚悟は決まったらしい。

 

「その子はカズマの精気を狙って襲いに来た悪魔なのよ?」

「正気ですかカズマ?」

 

 尚も、サキュバスを殺そうとする二人。カズマ君がそう決めたというのなら、俺も加勢するとしよう。

 

「おちつけ、二人とも。まだ実害は出ていないだろ。まずはだな――」

「今のカズマはサキュバスに魅了され操られている! 夢がどうとか設定がこうとか口走っていたから間違いない!」

 

 2人を落ち着かせようとしたところで、ダクネスが口を挟んでくる。

 

 カズマ君が魅了されてるってなにそれ?

 

「おのれサキュバスめあんな辱めを……ぶっ殺してやる!」

 

 顔を朱に染めたダクネスは普段言わないような暴言を吐く。

 

「どうやらカズマとはここで決着をつけないといけないようね……アンタをけちょんけちょんにした後でそこのサキュバスに引導を渡してあげるわ」

 

 対立する、男と女。ちなみに俺は蚊帳の外。もう、勝手にしてくれ……

 

「コイ……!」

 

 そうして、戦争は始まったのであった。

 俺はそそくさとサキュバスを逃がし、自分も離れに避難する。

 

「あら、こんな時間にどうしたのよ?」

「いや、屋敷にいると被害を蒙りそうでね……ほら、これ土産」

「これ……蟹鍋?」

「俺のあまりだけどな。食べてないだろ?」

「お、お礼なんて言わないんだからね?」

 

 今日も、レンはツンデレのご様子。

 

『いいからニボシ食べろツンデレ』

 

 どこかで、誰かがそんなことを言っていた気がした。




いかがでしたでしょうか。レンの蟹鍋はNECOのものです
ほんと、酷い(褒め言葉)
デストロイヤーはどうしたものか……


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