誤字・脱字報告ありがとうございました。
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修正しました。
「たまらないわぁ・・・」
その恍惚の表情は、全ての命あるものなら魅了されてしまうだろう。そして、彼女の声に、匂いに、仕草に逆らえなくっていく。そんな、そんな・・・彼女ですら、今は魅了されているかのように一人の少年を見つめる。
「ふふふ・・・。ロキはもう感づいちゃってるみたいだけど。仕方がないわよね?
見つけたのは、私の方が先なのだもの・・・。」
指先を口に当て、感情の高ぶりを自分で感じる。
そんな姿ですら絵になる。彼女は―――――フレイヤ。
美の化身たる彼女が、高ぶり、吐息を荒くし、欲しがるモノ・・・。
「もっと、もっと、私を満たしてくれる筈よ。あの子は。そうね。次は、貴方にまかせてみようかしら?・・・オッタル?」
「・・・・・・御意に。」
~ロキ・ファミリア ホーム~
「はぁぁぁぁぁっ!」
「・・・!!!」
一方的にベルが攻め続ける。だが、ここぞとばかりの一撃が入らない。
アイズは一度距離を取ろうとするが、下がろうとすればすぐに追いつかれ。
逆に距離を詰めればベルの射程に入ってしまう。
「くっ・・・!!!」
ベルの視線がわずかに下がった。
それを見たアイズは防御姿勢を取る。
「なっ・・・!!」
ベルは急に下がり短剣を投げてきたのだ。そして短剣とともにアイズに迫る。
アイズもかなりギリギリで短剣を躱してベルに回し蹴りを当てる。
「おわりにしよっか。」
「はぃぃぃ・・・・。」
二人が顔を洗っている横に、リヴェリアが来て話しかける。
「大分、強くなったのではないか?ベル。」
「そ、そんなことないです・・。もっと強くなりたいです!」
「どうなのだ?アイズ?」
「・・・・うん。強いよ。また、誰かに教えてもらったみたいだけど。」
アイズは少し頬をふくらましながら食堂へ行った。
「ベル、君は今、何階層だい?」
「えっと、12階層です。」
「12階層か・・・もっと降りれるのではないか?」
「そ、その・・・。ミノタウロスが・・・。怖くて・・・・・。」
「ミノタウロス?確かに強いが冷静に戦えばそう問題ないだろう。
・・・・ん?ダンジョンで遭遇したのか?」
ザザザザザザ―――――――――。
ザザザ―――――――。
むかし?ムカシ?
イツ~?
アレハ、ド、コ?
ザザザザザザザザザザザザザザ――――――――――
((今はいいんだよ))
ダッテ、ダッテ、ソコニハ・・・・・
((いいんだよ・・・。思い出さなくて・・・))
ナニモ・・・・。
((大丈夫・・。私がいるから・・))
ザザザ――――。
ザザ――――――――。
「えっと、昔、ミノタウロスに追いかけまわされてから・・・。怖くて・・・。」
「まさか、それでずっと12階層付近をうろうろしていたのか?!」
「・・・・・はい・・。」
「しかし、ダンジョン外のミノタウロスか。確かに、あれが突然出てきたら
心の傷にもなるだろう。」
リヴェリアはベルの髪をそっと掻き揚げながら
「だが、いつかは越えなくてはな。・・・遠征についてきたいだろう?」
「は、はい!」
「充分な知識は教えた。戦い方も様になってきている。なら、あとは、」
「「経験だ」ですね!」
「そうだ。私たちは今日から遠征だが、決して焦るなよ?ベル。
・・・死ににいくのではないぞ?」
最後の言葉はベルの耳に届くかどうかぐらいの大きさで呟いて
リヴェリアはその場を去っていった。
今日から、ロキ・ファミリアは43階層への遠征へ出る。
大規模なファミリア合同で挑む為、集合場所であるダンジョン入口周辺は
異様な空気を纏っていた。
「ロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナだ!皆、今日は集まってくれて感謝する!
我らの目標達成のため、いざ!向かおう!」
そんな空気を一掃するかのようにフィンが声を張る。
周囲からは雄叫びが聞こえる。
そんな中。
「ダンジョンに入る時は、必ずこれと、これとを持っていくこと。」
「は、はい」
「あと、調子にのって魔法使い過ぎちゃだめだよ?また倒れちゃうんだから。」
「あの、すみません。」
「だから、これも、これも・・・あと、これと。」
「アイズ・・・。まさか、何も持たずに遠征に行く気ではあるまいな?」
さすがに見かねたリヴェリアが口を出す。
「これ以上、アイズの所持アイテムが減らされるのは敵わないからな。」
そういって、何故かリヴェリアも貴重であろうポーションなどを渡していった。
「じゃあ、いってくるね。」
「ではな。」
ファミリアのみんなを見送った後、ベルはその場に一人だけ残り、とりあえず大量に渡されたアイテムをホームに持ち帰るのだった。
~ダンジョン内~
モンスターとて、冒険者に狩られる為に生存している訳ではない。彼らも自身が生存する為に生きている。そのために思考し、徒党を組み、冒険者たちに牙をむくのだ。
そう。思考がある故に。彼とてわかるのだ。――――――死の恐怖が。
先ほどまで20体近くいた同胞・・と意識しているかは分からないが。
同じフロアにいたミノタウロスは半数まで数を減らされていた。
彼らにとってほんの一瞬のことだったこともあり、動けぬ個体、逃げる個体と、
反応は様々だった。
「・・・ほぅ・・・。」
そう、同じ個体でも生存本能が強烈に高いもの。生まれてすぐ同個体の中では強者だと、決められているもの所謂――――強化種。彼らに恐怖はない。なぜなら、生まれながらにして強者であることを知っているからだ。
「・・・・こんなものか。」
たとえ、角をへし折られたとしても、彼らに逃げはない。何故ならそれが強者であるからだ。目前の相手に敵わぬと理解はしているが、彼はひかない。それが、強者の矜持。
「・・・ふん。・・・貴様にするか。」
肉弾戦で戦っていた男は、急に剣を彼に向けて投げつけてきた。
彼は、使い方を知っている訳ではなかった。だが、手にもった。それが、当たり前である様に。随分前から知っていたかの様に。
「・・・そうだ。それで、いい。」
再び目の前の相手が襲ってくる。剣を握りしめ、振り下ろす。
一体いつになったら終わるのか。
彼は体力の限界を感じながら。目の前の敵を淘汰しようとする。
怒りを・・・。怒りを覚えた。
目の前の男は自分と命のやり取りをしていない。
彼は強者である自分が弱者として扱われていることに憤りを覚えた。
そして。
「Woooooooooooo!!!」
吠えた。
「・・・これくらいだろう。」
目の前の男は彼を突き飛ばし、去っていく。
彼に残ったのは、強者である自分に縋り付く願望と、弱者と決めつけられた絶望と。
なにより、この溢れかえる怒りの矛先を探して彼は再びダンジョンを這いずる。
~豊穣の女主人~
「え?じゃあ、ベルさんしばらくひとりなんですか?」
「は、はい。でも、この間に少しでも強くなろうと思ってダンジョンに潜ろうかと思ってるんです!」
「んー。じゃあ、お弁当!作るのでちゃんと毎日この時間には顔をだして下さいね?」
「え?!いや、悪いですよ!」
「いいんです。私との約束ですよ♪」
「じゃ、そのときに、り」
「・・・・クラネルさん。私はその時間買い出しに出ているのでいない。」
「は、はい・・。」
「じゃあ、いってらっしゃーい!」
言い出そうとした言葉を引っ込めるベル。じゃあ、その時にリューさんにも訓練してほしいとはとても言いづらくなんとも微妙な気持ちで、ダンジョンに向かっていった。
~ダンジョン内~
「よっと。」
フロッグ・シューターによる、一斉の舌での攻撃をなんなくよける。
基本的にベルは遭遇したモンスターとは、逃げずに戦っていた。
以前は、逃げ方も分からなかったが、今では逃げる必要がないくらいには強くなっていた。
ここ数日間一人で、ダンジョンに挑み続けていたベルは、スキルの効果もあいまって、
ロキが多少引くくらいには、強くなっていた。
(今日は、これくらいで帰ろうかなぁ・・・)
こんもりと膨れ上がった魔石入れを確認しながら、いつものように上層へ上がっていく。
ベルにとってみれば慣れた道である。
(・・・・・・・?なにか・・・・いま・・・・)
微かに感じる気配。だが、モンスター襲ってくるときのものではない。
かといって近くに冒険者がいる訳でもない。
(気のせい・・・だよね。それに、早く帰らないと。ファミリアのみんな――――)
「はしれぇぇぇぇぇ!!!」
ダンジョン内に男の叫び声が響く。なにも珍しいことではないが、ベルにとってみれば
初めての経験だった。思わず臨戦態勢を取り、そのまま、声のする方へと向かう。
荒い息遣いはどんどんと近づいてくる。それも複数。必死に、逃げるように。
「・・・・くっ!いい!そのまま走れ!!」
手負いの女性を担いだ男が、ばっちりと目があったベルを見るなり、言い放った。
走りながら、何か口論していた様だが、ベルにとっては、それどころではなかった。
彼らの後ろから追ってきたモノ。
鳥肌が立ち、全身の毛という毛が逆立つんじゃないかというくらいに、
体中が警報を鳴らしている感覚。
この感覚は知っている。
そう、これは。
これ・・は。
ザザザザザザザザ――――――――――――。
ザザザザ――――――。
アレハ、イケナイ。
・・・・ドコ?・・ドコ?
ザ―――――――
コノ手hは???
((大丈夫だよ))
マタ???tいgあ??
((大丈夫。もう、しっているでしょう?))
ザザザザザ―――――――――
ザザザ――――――
先ほどから、指示を出している男から、怪我をしているのか、
少し遅れながら走っていた女性に、アレが剣を振りかぶる。
女性は、叫ぶことも、抗うことも出来ず。ただ、ただ涙を浮かべながら、
死を受け入れようとしていた。
「・・・・【ライジング】」
ベルは、魔法の詠唱と共に走りだしていた。ここで、彼ならば逃げることは容易い。
だが、彼には目標がある。夢もある。そして、果たさなくていけいない■■もある。
こんなに、怖いのに。こんなにも、涙が出そうなのに。
(ここは、逃げちゃ―――――駄目だ。だって。僕が、僕だけが知っている・・・。僕だけの英雄はこんなところで震えて泣いて、何も出来ないままな筈なんてないじゃないかっ)
無慈悲にも咆哮と共に振り下ろされた大剣は地面を抉った。
本来あるはずの、感触を味わえなかった原因を、すぐに見つけ、片角のミノタウロスは
怒号を上げる。
「早く逃げて下さい。」
「え?!で、でも!!!」
「僕が、僕が足止めしますから。早く!」
そういわれた女性は、涙を流しながら走る。口ではごめんなさいを、繰り返しながら。
少しだけ広い、空間の中にまるで闘技場のように、向かい合う白兎と片角。
ベルは、深く息を吐き出しながら向かっていく。
圧倒的強者を相手に。
(僕は、今日。冒険をするんだ!)
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