白兎と・・・?
街ではちょっとした“噂”が広まっていた。
レベル1の冒険者が異形の魔物を倒した。
レベル1というのは嘘で最強のギルドから派遣された冒険者がこの町に来ていて査定をしている
レベル1の冒険者がミノタウロスの集団を食い散らからした。
あくまで“レベル1”という言葉が主張されていた。
主語は“意図的”に隠されているかのようだった。
~ロキファミリア 玄関~
「うわー! 太陽がまぶしいですねー」
呑気に手で日陰をつくりながらベルはリヴェリアに話しかける。
「そうだな。キミにとっては久しぶりの太陽だ。少しでも日光を
摂取しておくべきだな」
リヴェリアは今一度ベルの体を観察する。
あの戦いを最初から見ていた訳ではないが一体この小さいな体のどこに
異形の魔物を1対1で下す力があったのだろうと。
(しかもこの子は入団してから……オラリオにきてからまだ二か月も経っていない)
そんな子が自身の命までも犠牲にして戦いに挑んだのだ。
リヴェリアにとってみればどんな魔法より不可思議極まりない状態だった。
「おっとっと……。えへへまだ少しうまくあるけませんね……」
リヴェリアがベルを眺めながら思考に耽っているとベルの足がもつれたらしい。
「やはり、起きたばかりで辛いんじゃないか? 別の日でもいいんだぞ?」
ベルを抱えながらリヴェリアは優しく問いかける。
「いえ! 大丈夫です! ……その。部屋にいるとどんどん体が鈍っていきそうで……。
なので……大丈夫です!」
ほぼ全く根拠のない理由ではあるが、そのベルの表情からリヴェリアはそうかと一言だけ答えベルとともに
ヘファイストスのファミリアを目指す。
…………後ろからの人影にため息をつきながら。
~へファイトファミリア 私室~
リヴェリアはあまり“ヘファイストス”という神に詳しくはない。
良いファミリアを作り、そこで武器を作っているという程度だ。悪い印象はない。
だがこの光景で彼女の印象は変わりそうだった。
「これ……?! どういうことなの……!!
ねぇ! 何がどうなってるのかしら……?
どうなったのか! ねぇ? 聞いてるの?!」
部屋に入ってきた直後冒険者の左手をまさぐりながら早口でまくしたて
はぁはぁしていた赤髪の麗人がそこにはいた。
「コホン。失礼したわ。九魔姫にも……そのとんだ姿をみせてしまったわ。
……そのロキには言わないでおいてくれると……うれしいわ……」
本来あるべきの席に座り、さも何もなかったように二人にそう話しかける。
「ヘファイストス様、ご安心ください。私たちは今、この部屋に入ってきました。
なんの問題もありません」
「……あっ!!! はい! 今! 入ってきました!」
左手どころか全身レベルでもみくちゃにされたベルが顔を赤らめながらリヴェリアの横で
答える。
「では、改めて……話しを聞かせてくれますか?」
ベルに聞かせたくないことだけを伏せてリヴェリアは端的に話した。
武器の名前のこと。
武器の形状変化のこと。
……その武器が初めて刻んだ魔物のこと。
その話をじっくりと聞きながらヘファイストスはぽつりと
「まるで……ケラウノスね……」
そう呟いた。
「ちなみに白頭くん? 目が覚めてからその武器の名前って呼んだのかしら?」
一呼吸置いた後急にベルに話が回ってきた。
「え……? 名前ですか……? そういえば一度も読んでない……です」
「左手をかざして呼んであげなさい」
「は、はい……。シィア!」
ベルは両目をつむり左手を差し出しはっきりと口に出した。
「解決ね」
そうヘファイストスは言ってリヴェリアのほうを見る。
「これは、どういう……」
リヴェリアの方は今の現象が一体何なのかが理解できないといった顔だった。
「そうね。簡単に言うとその武器、白頭くんと一体化してるのよ。
収納魔法でもなければ召喚魔法でもない。自分の指先が少し伸びる感覚じゃないかしら?」
「は、はい。確かにそんな感じがします!」
ベルはシィアと名を付けた短剣をにぎにぎしながら返答した。
「……魔法では説明がつかない……というのは分かりました。
ヘファイストス様、ありがとうございました」
ヘファイストスの私室をさろうとする二人に
「そうそう。その武器……シィア……ですっけ? なにか変化があればまた教えて頂戴ね」
そういってヘファイストスは私室の奥に消えていった。
「これ……どうやって戻すんだろう……」
ベルは未だにシィアをにぎにぎしていた。