新生マクロス・ブリタニア総統ルルーシュ・ランペルージからの宣戦布告から3日。
事態を重く見た統合政府はセフィーラ駐屯の新統合軍に惑星エリュシオンへの進攻を命じた。
トシキも参加すべく基地に行ったが、エイカに止められた。
「貴方が何て言っても、絶対に戦闘には連れていかない」
そう言い残し、エイカは進攻部隊の艦船に乗り込み艦隊は出発した。
「クソッ!」
自棄を起こしトシキは右手で近くの壁を思い切り殴る。
それでも吹っ切れる事はなく、殴った右手からは軽く出血を起こしていた。
「痛って・・・」
「マスター・・・」
見ていられなかったのか、後ろからアリスが心配そうな顔をしながら声をかける。
「お母様と、喧嘩されたのですか・・・?」
「・・・」
そこからはお互い、無言の時間が続いた。
アリスも何か言おうとするが、何故か口が閉じてしまう。
だからか、先に口を開けたのはトシキの方だった。
「・・・俺さ、最初は人助けのつもりだったんだ」
「え?」
「バルキリーに乗る理由が、最初はセフィーラがはぐれゼントラーディに襲われて沢山の人が怪我したり死んだりして・・・それを見てられなかったからオヤジと母さんにバルキリーの乗り方を教えてもらってたんだ」
「オヤジはすげぇバルキリー乗りで色んな人に慕われててさ・・・。そんなオヤジは俺の誇りだったし、憧れだったんだ。だからオヤジが撃墜されたって話を聞いたとき、どこかで認めたくないって思ったんだ」
「はい・・・」
「・・・母さんが、俺がオヤジの敵討ちをするのを望んでないって分かってるつもりだった・・・それなのに敵討ちをさせろなんて生意気言って・・・」
トシキの告白にアリスはただ黙るだけ。
「あ・・・ごめんな、アリスに何言って・・・」
「いえ・・・うれしかったです。マスターの事をまた知れて。普段のマスターは前向きですから・・・」
アリスにそう言われ急に恥ずかしくなり顔を朱くするトシキ。
その時だった。
「急げ!スクランブルだ!!」
基地に残っていた兵士が駐機している可変戦闘機に乗り込んでいく。
トシキはっその中の1人を止め状況を聞く。
「何があった!?」
「トシキ君か!セフィーラの衛星軌道にデフォールド反応があった!ここは危険だ!」
兵はすぐに停めてあった可変戦闘機に乗り込み滑走路へ移動。離陸する。
トシキは少し立ち尽くすが、右手を握りしめ駐機中のVF-0Xへ駆けこむ。
「マスター!!」
「アリスはすぐに逃げろ!」
すぐにキャノピーを閉め滑走路へ移動する。
《トシキ君!?何してるんだ!?すぐに避難しなさい!!》
「できるかよ!ここをやられたら母さんやマリー達が帰れなくなるんだ!!」
管制塔の静止も振り切りトシキはVF-0Xを発進させる。
トシキが上がった事で軍の指揮系統に若干の混乱が現れる。
《・・・防空任務に上がった全機へ。トシキ君はエイカ大尉達の家を守りたいそうだ。お前達もそうだろう?》
管制官の言葉に軍のパイロット達は一瞬黙るが、すぐに「そうだ!」「礼儀知らずを叩き出してやる!」等の声が出てくる。
《民間人に気概で負けるな、俺達も俺達の家を守るぞ!》
『おー!!』
管制官の声に新統合軍の兵達が雄叫びを上げる。
戦闘のセフィーラ新統合軍のVF-171が機体を翻したのを皮切りに他の機体も機体を翻して不明勢力へ突っ込んでいく。
トシキもその例に漏れず不明勢力との戦闘を始める。
不明勢力の編成はVF-11、VF-171と量産機がほとんどである。
《こちら第14飛行隊所属ラナー。敵は広範囲に展開中》
セフィーラ軍の女性索敵員が全機に連絡。
その報告通りデフォールドした勢力はハイドシティのほぼ全域に展開している。
《敵の所属が判明した。現在交戦中の勢力は宣戦布告で騒ぎになっている、新生マクロス・ブリタニア軍だ》
《ブリタニアが!?》
《宣戦布告早々に侵略とは、随分な大喰いだな》
敵の所属が分かりながらも軽口を叩けるという事はまだ余裕があるという事だろうか。
しかし事実、新生マクロス・ブリタニア軍の可変戦闘機部隊は練度が低そうな機動だ。
練度ではセフィーラ新統合軍が勝っているようで、1機、また1機と着実にブリタニア機を撃墜していく。
《挨拶も無しに人ん家に入り込みやがって。許されると思ってるのかブリキ野郎!》
「そうだな。帰す前に礼儀を教えてやろうぜ」
兵士の言葉に軽口をこぼすトシキ。
トシキもまたブリタニア機のを墜としていく。
ただし先に人を殺した事への恐怖からか、コクピットは狙っていない。
《ブリタニア軍の脅威レベル低下。持ち堪えられそうだ》
管制官からの連絡に兵士達は更にペースを上げる。
《ブリキ野郎の動きが鈍ってきた。もう息切れか》
確実にブリタニア軍の可変戦闘機の数が減ってきた。
もう1息で完全にブリタニア軍を排除できる。
《ブリタニア軍の脅威レベル更に低下。セフィーラから叩き出せ!》
この時は誰もがセフィーラ軍の勝利を確信していた。
***
《アースガルズよりウィッチーズ、発射準備が整った》
その宙域に鎮座しているのは全通式飛行甲板を持った艦船。
全長はおよそ600メートル以上はあるだろう。
「こちらアイネアス1、了解!斉射後はすぐに行動に入る!」
幼さの残る少年の声が初老であろう男性の声に返答し、艦船の後方から可変戦闘機の編隊が合流する。
VF-11B,MAXLがそれぞれ1機ずつ、VF-17Dが2機、VF-19Aが1機,F型が2機、VF-22が2機、S型が1機、
・・・そしてその編隊の先導機は、シアンカラーのSv-51。
《全機に告ぐ。これよりフレイヤを射出する》
《カウントを開始しろ》
艦船の艦首に位置するVLS発射管が開放される。
中には発射体勢の大型ミサイルが多数。既にミサイルのブースターには火が入っている。
《発射まで5秒、4、3、2、1、ファイア!》
合図と同時に多数のミサイルが一斉発射され、艦船を追い抜いた可変戦闘機編隊を追い抜く。
「フレイヤが着弾したら、皆好きなようにやってくれ。仕上げにかかろう!」
『了解!』
少年の声に、編隊のパイロット達であろう少女達が返答する。
そして彼らは、ハイドシティ上空に突入する。
***
《何だこれは?・・・ミサイル!?》
管制官でさえ気づくのが遅れ、それが致命的な隙となった。
突如飛来したミサイルが起爆。
・・・その瞬間大きな光が発生した。何も知らずそれに触れた統合軍の戦闘機は跡形も無く消滅。
更に光が消えると、その発生源に向け突風が吹き荒れる。それにより他の統合軍機も被害を受けた。
《3番機の無線が途切れた、3番機は何処だ!》
《多数の巡航ミサイルが空中で炸裂!味方の反応が消えた!?》
《どこから来た!?》
先程のミサイルで指揮系統は混乱している。
しかもミサイル炸裂時の閃光現象はある物と酷似している。トシキはジンにそれを僅かながらも教わっていた。
「まさか、反応弾か!?」
《敵巡航ミサイル飛来!》
《ただの巡航ミサイルじゃない!死にたくなければ避けろ!!》
追い打ちをかけるかのように先程と同型の大型ミサイルが多数飛来。
着弾し光球が発生、その後に吸い寄せられるような突風が吹き荒れる。
「街は・・・、街は大丈夫なのか!?」
トシキは無線機に向け叫ぶが、軍は混乱している為誰も返答しない。
更に畳みかけるような事態も発生する。
《警報!レーダーに新たな敵影!なんて数だ・・・》
ブリタニア軍の増援が到着する。
その群の先頭は、ミサイル発射直後にセフィーラに突入したあの編隊だ。
《捉えた、皆始めるぞ!》
《はい!》《ああ!》《おう!》《うん!》
会敵した瞬間編隊を崩し各自戦闘を開始する。
今まで相手にしてきたブリタニア軍の兵士とはレベルが違い、次々とセフィーラ軍の戦闘機が墜とされる。
《全機へ、防空司令部より撤退命令が下された。セフィーラを放棄する。進路を西にとり当戦域を離脱せよ》
管制官から信じがたい言葉が放たれた。
今確かに、セフィーラを放棄する。・・・つまりはこの星の人たちを見捨てるという事に等しい。
《何を言ってる?その命令には承服できない》
《戦力的不利は明白だ、命令に従え。進路を西にとり撤退せよ》
管制官は撤退を強要。しかし軍の一部は渋っている。
《こちらウィンドホバー、俺達も残る》
《聞け!我々は一時撤退し、その後各方面の統合軍と合流し反攻に転じる。お前達を失う訳にはいかない、命令に従ってくれ!》
管制官の願意にセフィーラ軍の全員が黙り込む。
先に口を開けたのはトシキだった。
「・・・オヤジだったら、ここは絶対に退く!皆行こう!」
トシキの声に、他のセフィーラ軍機もやむを得ずハイドシティ上空から撤退していく。
それでも尚巡航ミサイルが追撃し、何機かが餌食となったが、残った機はからがら撤退に成功する。
《全機戦域を離脱。合流地点を送信する、そこで落ち合おう》
これが管制官からの最後の通信となった。
通信を切ったトシキは遠ざかっていくハイドシティを見やる。
「・・・絶対に、戻ってくるからな・・・」
劇中曲1:INVASION OF GRACEMERIA/ACE COMBAT 6 解放への戦火
2:Overture/ARMORED CORE 4
ED:Waiting for the rain/坂本 真綾