その後は衛星軌道のセフィーラ艦隊が降下し、部隊が籠城していたニューナイルを拠点に被害状況の確認や船体、機体の整備を行っている。
だが1ヶ所だけは穏やかではない。VF-0Xから降りたトシキを待っていたのはエイカ、ハイデマリー、シズカ3人の視線。
やはり説明しなければならないようで覚悟を決めた、その時だった。
ハイデマリーがトシキにゆっくりと近づき胸にすがりついた。
突然の事でトシキは反応できず顔を朱くするが、ハイデマリーがすすり泣いている事に気づく。
「無事で・・・よかったです・・・」
彼女達もエリュシオンから撤退した後にセフィーラ陥落の報を受け、トシキの身を案じていたのだ。
そして望まない形とは言えこの地で再開できた。その事に3人は心から安心していた。
「心配かけた、悪かったな・・・」
トシキはハイデマリーの頭にそっと手を置き静かに撫でる。
しかし状況はまだ解決していない。
「・・・トシキ、どうして貴方が軍にいるの?私は入れてないはずよ」
エイカの言葉にトシキは言葉を呑む。
確かにセフィーラではエイカはトシキを軍に入れていない。そのはずが軍に入っているのだ、訳を知りたいのは当然の事だろう。
どう説明したらいいか言葉に詰まっている時、
「その事については、私から説明しよう」
今のトシキにとって強力な助っ人が来た。
「アンドレアスさん!」
「マルコフ准将!?」
エイカはアンドレアスの登場に驚愕する。
そして、アンドレアスはエイカに事の経緯を説明した。
セフィーラ撤退戦で戦果を挙げたトシキに勝手ながら協力を申し出、アリスと共に義勇兵として現在は軍に協力している事。
「その・・・勝手に軍に入ってごめん母さん!」
説明を終えたエイカにトシキは深々と頭を下げる。
そんなトシキに、エイカは静かに歩み寄り、静かに手を頭に乗せる。
「・・・頑張ったわね、トシキ」
そう言葉を発し、そのまま静かに頭を抱き寄せる。
トシキは強張った表情をゆっくりと緩めていく。
「何だ?」
不意にVF-0Xを整備していた整備士が声を漏らす。
トシキはエイカを離し整備士に近づく。
「どうしたんだ?」
「ミヤ坊か。いやな、機体が救難信号を拾いやがったんだよ」
「救難信号?」
トシキは1部の軍人からは“ミヤ坊”と呼ばれている。
そしてVF-0Xのレーダーが緊急回線でSOS信号が発せられている事を伝えている。
位置は現在セフィーラ軍が駐屯しているエリアから北西へ進んだ場所だ。
「失礼します准将」
アンドレアスの副官である女性“フランチェスカ・バッティ・カーチス”がアンドレアスに耳打ちをする。
「どうやら救難信号の発信元はブリタニア軍からすればお尋ね者のようだ。多数の地上戦力が救難信号の発信元に向け移動している」
アンドレアスの言葉に一同が言葉を呑む。
そんな中で行動を起こしたのはトシキだった。
「
「はぁ?まだガンポッドしか補給が」
「ガンポッドがあればいい、出してくれ!」
「あ、おい!」
トシキがコクピットに飛び込み機器を立ち上げ、エンジンに火を入れる。
VF-0Xが滑走路に移動し許可を待たずに離陸する。
「マスター!」
「あの子、また勝手に・・・」
トシキの行動にエイカは溜め息をつくが、反対にアンドレアスはどこか微笑ましくしている。
「准将?」
「私達の役目はきっと、重要な局面で背中を押してやる事くらいなのだろう。カーチス中尉、出撃可能な機は救難信号の捜索に回せ」
「了解しました」
アンドレアスの指示を受けフランチェスカが司令室へと走る。
***
「間に合えよ・・・!」
トシキは全速で峡谷内を飛ばしている。
今のペースで飛行を続ければブリタニア軍よりは先に辿りつけるだろうが、それでも救援は少しでも早い方がいい。
《アンノウン捕捉!繰り返す、アンノウン捕捉!迎撃しろ!》
しかし運悪く先行していたブリタニア軍の地上部隊に発見されてしまう。
もし放っておけば他の部隊に連絡され警戒網が強化されてしまう。そうなったら救援は困難になる。
トシキは機体をガウォークへ変形させガンポッドで地上部隊を攻撃する。
《主力部隊のエアバンドはいくつだ?325・・・バカ野郎、聞こえない!こっち来い!》
「悪く思わないでくれよ!」
ガンポッドだけとはいえど相手は地上部隊。可変戦闘機相手は分が悪かったようだ。
一帯で遭遇した敵地上部隊を撃破しポイントへ向け再び加速。
一足遅れエイカ、ハイデマリー、シズカ、アリスが各々の機体で来る。
トシキによって壊滅した地上部隊を捉え、全機がガウォークへ変形し確認する。
「これは・・・」
「ブリタニア軍の地上部隊。小規模とはいえ全滅してます・・・では、マスターは!」
何かを理解したアリスは自機のVF-19EFをファイターに変形させ一気に速度を上げる。
「あの突っ走りよう、どこかの銀髪息子に似たわね」
「それはトシキさんの事ですか?」
ハイデマリーの言葉にエイカは分かりやすく吹けていない口笛を吹く。
気を取り直し、先行していったアリスを追う為エイカ達は機体をファイターに変形させる。
もうすぐ峡谷を抜ける。そこからはとにかく低空で飛行しブリタニア軍に探知されないようにするしかない。
「マスター!」
通信機にアリスの声が響く。
後ろを見れば、峡谷を抜けたアリスのVF-19EFがトシキに追いついてきている。
「アリス!?追いついてきたのか!」
「一緒に行くって言いましたよね!?」
アリスはまた置いてけぼりにされた事に少し腹を立てているようだ。
また突っ走った事を今になって少し後悔したのか少し頭をかくが、気を取り直しアリスに向き直る。
「一気にポイントまで行くぞ、離れるなよ!」
「はい!」
***
だが、そこに向かっているのはトシキ達だけではなかった。
上半分グレー、下半分は白のツートンカラーのVF-19A、黒い下地に赤いラインのVF-25F、そしてシアンカラーのSV-51。
「わざわざ3人で行かなくとも私がいれば十分だろ?」
「そうかな?あたしはシャーリーといても楽しいけど皆と一緒の方がもっと楽しいかも!」
「大丈夫だよシャーリー、ナオト君もいるんだから間違いないよ!」
「プレッシャーかかるからやめろよ・・・」
VF-19Aのパイロットらしき少女2人、VF-25Fのパイロットの少女、そして先頭・・・SV-51λのパイロットであるナオトが会話している。そして3機のレーダーが発せられている救難信号を捉えた。
「お、レーダーに反応。この先だ」
「こっちにも反応出たぞ」
「私のにも来たよ!」
「よし、シャーリー、ルビー、遅れんなよ!」
「ナオトこそ、私の背中みて吠えるなよ?」
「行っけぇ~シャーリー!」
「あぁ、待ってよ皆!」
3機は反応のポイントへ向け機体を加速させる。
・・・邂逅の時は近い。
劇中曲:Chapter03-信念-Faith/斑鳩
ED:吹雪/西沢 幸奏