休暇を終え艦隊と合流し、再び通常の生活に戻る。
アースガルズを撃沈した今セフィーラ軍の脅威となる物はないと言えるだろう。
だが、ブリタニアには更なる手札がある事を知らない・・・。
***
「ニュー・エイジア偵察隊からの連絡が途絶えた?」
アンドレアス・マルコフ准将の執務室で、エイカはそんな話をしていた。
それは惑星ニュー・エイジアにおいてブリタニアが何か研究していたと判断しそれの調査偵察が任務となっていた地球本国の調査隊の連絡途絶の報があったという。
「そこで我が軍にその調査隊壊滅の要因を偵察し、脅威となり得ると判断した場合はそれを排除しろ。とグレム中将からの指令だ」
その言葉にエイカは頭を押さえた。
要は自分の部下の尻拭いをしろ、という事だ。
「だが、こちらとしても脅威となり得る物をを放置しておく訳には行かない。そこでエイカ大尉、君に白羽の矢が立ったという事だ。人選は君に一任する」
「了解」
任務を受けエイカは執務室を出る。
彼女の中では人選はある程度は決まっていた。本来なら気は進まないがこの際やむを得ないだろう。他の隊を割いて戦力の分散は可能な限り避けたい。
エイカは決めてある人に声をかけに行く。
***
惑星ニュー・エイジア。
辺り一面が砂漠でそれ以外は特に何も見られない。
その惑星でブリタニア軍の動向を偵察に向かい消息を絶った部隊の捜索も兼ね敵情偵察に向かったのは、トシキ達セイレーン、エイカ、ハイデマリー、そしてユウナ。
ユウナは今回は何故か嫌な予感がしたという事で同行を志願した。
今は7人を分割し2チームに。エイカにはユーノとシズカが付き、トシキにはアリス、ユウナ、ハイデマリーが付いた。
今は砂嵐に遭っている為、洞窟内でやり過ごしている。
「いつになったら止むのかな、この砂嵐?」
洞窟の中でユウナが呟く。
そんな中でハイデマリーがユウナに近づく。
「結城さん、その頭の・・・」
「これ?トシキ君からのプレゼントだよ!」
「プレゼント・・・」
ユウナからプレゼントという単語を聞き、ハイデマリーは顔を伏せてしまう。
(やはり、もう私は・・・)
「え!?どうしたのハイデマリーさん!?どこか具合でも悪くなっちゃった!?」
「え、いえ、そうでは・・・」
「ちょっと皆さん、あまりうるさくするとマスターが起きてしまいます!」
2人のやり取りにアリスが慌てる。
それもそうだ、アリスの後ろではトシキが壁にもたれかかり、右膝を折って右腕を乗せそれを枕にするような形で眠っている。
「そ、そうだね・・・」
「・・・ごめんなさい」
アリスの注意に2人は謝る。
トシキもここ最近は最前線で戦果を挙げている、その疲れが出たのだろうか。
***
(はっ・・・はっ・・・!!)
唯、何も無い草原でトシキはライフルを撃ちながら走り続けていた。
何かから逃げているのか、はたまた何かを追いかけているのかは分からない。
そのトシキの頭上を2~3メートル程の昆虫のような物が追い越していき、トシキはそれにも発砲する。
そしてトシキの目の前に30メートル程の体躯と6本脚を持った赤い昆虫のような生物が立ちはだかる。
それを親の仇のように睨み付け、
(このバケモノがぁぁぁぁ!!)
ライフルを乱射しながら突撃していく。
***
「マスター?・・・マスター!」
マスターという声でトシキは目を覚ます。
見ればアリスがトシキのEX-ギアと銃器を持っていた。
「よく眠れましたか、マスター?」
「ああ、おはよ、アリス・・・」
ゆっくりとトシキが立ち上がる。
《こちらエイカ、砂漠の真ん中に研究所みたいな施設があるわ》
「了解、俺たちもそっちに行く」
EX-ギアを装着しライフルを持ったトシキが返答する。
アリス達も装備を確認しトシキに続く。
外の砂嵐は止み、停めてあった機体も動かせる状態だ。
「機体異常無し。母さんたちと合流しよう」
『了解』
バトロイド形態で砂漠を走り、ハイデマリーとアリスもそれに続く。
***
エイカが発見した砂漠中央の施設はピラミッドに、周囲の施設はスフィンクスに偽装された物だった。
その近くに機体を隠し施設の調査を開始。
中にあったのは多数の培養カプセルと破壊された操作パネル。更に足元には青い血液のような物と人間の血液があちこちに飛び散っていた。
「うっ・・・!」
中に入って早速ユウナが気分を害され、物陰に隠れ胃の中の物を戻してしまう。
更に奥に進むと壁に寄りかかって多量出血している状態の本国の偵察部隊の兵士を見つける。
エイカが近づき脈を見るが、静かに首を横に振る。つまりは既に死んでいる。
「ここで敵と戦闘になったのかしら・・・」
ここでの事態を推測しつつ捜索を続ける。
最深部には何かの大型カプセルに入っている虫のような物と、操作コンソールがある。
トシキはそれに近づき電源を入れる。そして画面に文字が表示される。
「・・・プロジェクト・・・
「バジュラ!?」
トシキが読み上げた言葉にユーノが反応する。
「どうしたユーノ、いきなり大声出して?」
「あ・・・ごめん・・・。でも、バジュラって、あのバジュラの事だよね・・・?」
「ああ・・・」
ユーノの言葉にトシキは曖昧ながら返答する。
バジュラとは、2059年に第25次新マクロス船団、通称マクロス・フロンティア船団が遭遇、交戦したとされる宇宙生命体だ。
その戦闘の後彼らは人類を理解し交配の為、別の銀河へ旅立ったとされているが詳しい事は定かでない。
ユーノが想像したバジュラとはまさにそれだ。しかしそれを意味するVであるのなら、一体何をするプロジェクトだったのだろうか。
「わあぁぁぁ!!」
「!?この声は、ユウナ!?」
ユウナの悲鳴が聞こえ、トシキはライフルを取り急ぐ。
そこは大広間のような部屋で、ユウナが両顎から斧のような物が生え、背中に角のような大型突起物が生えている狼のような怪物に襲われていた。
ハイデマリーは気を失ってしまっている。
怪物がユウナに前脚の爪を立てようとすた瞬間、トシキが怪物にライフルを撃つ。
「トシキ君!!」
「ユウナ、走れ!」
トシキの指示に従い、ユウナは立ち上がりその場から走る。
「来いよバケモノ!!」
怪物がトシキに飛びかかり、トシキは怪物にライフルを撃ち続ける。
その際に青い返り血がトシキにかかるがそれを気にする余裕はない。
そしてライフルが頭を撃ち抜くと、怪物はようやく止まった。
トシキは怪物が止まったのを確認すると、気を失っているハイデマリーに近づき肩を揺する。
「マリー、マリー!」
「う・・・トシキ、さん・・・?」
揺さぶられハイデマリーは意識を取り戻す。
それにトシキは安堵するが、それが致命的な隙となった。
グサッ!!!
「な・・・」
「!!??」
トシキの腹部を角のような物が貫通した。
後ろを見れば先程の狼型の怪物がそのバラの茎のように突起物の生えた尻尾をトシキの背にぶつけていたのだ。
「ゴハッ!!」
「トシキさん!!」
トシキが吐血し、ハイデマリーは冷静を保てていない。
頭部から流血を起こしながらも怪物はトシキ達に接近し、トシキを押しやり先にハイデマリーに狙いをつけたようだ。
ハイデマリーは動揺と恐怖で動けない。ここまま捕食されるのか・・・
「ギィアァァァッ!!」
突然、怪物が咆哮を上げる。
先程怪物がトシキを押しやったが這いずりながらも接近し怪物の左前脚に噛みついたのだ。
怪物は噛みついたトシキを振りほどこうと左脚を振り回す。
「がはっ!!」
振りほどかれトシキは壁に叩きつけられる。怪物は標的をトシキに変えゆっくり近づく。
そして捕食しようと口を開いた、その瞬間にトシキは傍らに落ちていたライフルを手に取り、残っている弾全てを怪物の口内へ撃ち込む。
それでようやく怪物は絶命したか倒れるが、トシキに覆いかぶさる形となりトシキも力を使い果たしたか気を失ってしまった。
それを見ていたハイデマリーとユウナは、しばし呆然としていたがすぐに我に返る。
「エイカ大尉!すぐに来てください!トシキさんが!!」
「トシキ君!目を覚まして!!」
ED:Mirror/安田 レイ