マクロス Infinity Rumble   作:天羽々矢

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OP:明日へのキズナ/HIMEKA


STAGE29 V の 悪夢 ACT2

そこに向かっていた黒地と白ラインのVF-19A。

そのパイロットの少女ブレイク・ベラドンナは、自分が慕っている少年と軍の総統の青年の会話を思い返していた。

 

 

 

***

 

 

 

「頼むよルルーシュ!少しでいいんだ、俺に時間をくれよ!」

 

「それは無理だ。計画は最終段階に入ろうとしている」

 

惑星エリュシオン。

新生マクロス・ブリタニアの本拠地とも言える惑星の一角で少年と青年、ナオトとルルーシュが話していた。

だが少し険悪な雰囲気だ。

 

「俊樹はもしかしたら、統合政府に良いように使われてるだけかもしれない!だから・・・」

 

「だから説得の時間をくれ、と?奴は既に多数の我が兵を手にかけている事は分かっているだろう」

 

「それは・・・」

 

「整理をつける時間が欲しい気持ちは分かるが、今は時間が惜しい。ナオト、悪いが次の任務に行ってくれ」

 

「くっ・・・」

 

ナオトは悔しそうな顔をするが、総統であるルルーシュの命令とあれば従うしかない。

部屋から退室し任務に向かう。

その時のナオトの表情が焼き付いて離れなかったブレイク。そこで彼女は悪行と分かっていながらも彼の為に行動を起こした。

 

それは、セフィーラ新統合軍からトシキを連れ出す事・・・。

 

 

 

***

 

 

 

「あそこね・・・」

 

ブレイクはニュー・エイジアの研究施設を発見し機体を向ける。

もしもの時は・・・ブレイクが忌み嫌っている“あの力”を使うかもしれない。

だが、それを知っても彼・・・ナオトは受け入れてくれた。ブレイクにはそれが嬉しかった。

そんな彼に少しでも報いたい。その思いが彼女を動かしていたのだ。

 

 

 

***

 

 

 

「う・・・」

 

施設内でトシキの意識が回復した。

とは言えど応急手当レベル。腹部を中心に負傷箇所には包帯が巻かれている。

その上トシキは狼型の怪物の血液を多量に浴びてしまっている。

 

トシキの眼前では全員が心配そうに見ていた。

 

「皆・・・」

 

「マスター!!」

 

「~っ!!??」

 

アリスが感極まりトシキに抱き着くが、重傷を負っているトシキの身体からすれば激痛以外の何でもない。

声にならない悲鳴を上げる。

 

「よかったです、マスター・・・!!」

 

「ちょっ、アリス・・・いでででっ!!」

 

「ちょ、ちょっとアリスさん、トシキ大怪我してるから!」

 

「あっ・・・!」

 

トシキの現状を確認し慌ててトシキから離れる。

トシキは立とうとするが身体が痛む上に力が入らない。

 

「まだ無理しちゃダメだよトシキ君!」

 

「結城さんの言う通りです。私たちが肩を貸しますからそれで歩けますか?」

 

「・・・悪いなユウナ、服部・・・」

 

シズカとユウナの肩を借りゆっくりと立ち上がる。

 

「トシキがこの状態だし、ここは一旦戻った方が」

 

「そうね。皆、ここはスクライア君の言う通り戻りましょう」

 

エイカが全員に指示を出し、全員施設からの脱出を目指す。

一刻も早く帰還しトシキの検査をしなければ。あの血液にどのような性質があるか分からない。

 

ユーノとハイデマリーが先行し、警戒しながら進んでいく。

 

「・・・ブリタニアの兵士どころか、僕たち以外は誰もいないんじゃないかな・・・?」

 

「そうかもしれませんが、油断は禁物です」

 

ハイデマリーの言葉はもっともだが、今は時間が惜しい。

ユーノが先行し通路に出た、その瞬間だった。

 

「うあっ!?」

 

ユーノの右脚の内側を銃弾が掠め倒れこむ。

ハイデマリーがすぐに銃弾の飛んできた方向を見ると、奥からライフルとサブマシンガンを片手で一丁ずつ持ち、腰には日本刀のような剣を差している少女、ブレイク・ベラドンナが姿を見せた。ブレイクは既に右手に持つライフルの銃口を向けている。

 

「ミヤモト・トシキはどこ?」

 

「トシキ・・・?」

 

ブレイクの言葉に全員が戸惑う。

それ以前に何故トシキのフルネームを知っているのか。

 

「私の知り合いがその人を探しているの。知っているなら教えてもらうわ」

 

ブレイクの言葉で、彼女の狙いがトシキだという事は言うまでもなかった。

厄介な事にトシキは今重傷で動けるような状態ではない。

 

それを理解しているハイデマリーはエイカ達に目配せし、シズカとユウナに見つからないよう移動するよう伝えエイカとハイデマリーはブレイクに銃を撃つ。

 

当然ブレイクは後退し身を隠すが、その時に、トシキに肩を貸して移動しているユウナとシズカが見えてしまった。

その光景でブレイクは2人に肩を貸してもらっている青年がトシキだと直感で理解し物陰から飛び出す。

 

それにハイデマリーとエイカが反応しすぐにブレイクに向け銃撃を行うが、ブレイクは壁を走るという荒技をやってのけ2人をかわしシズカ、ユウナ、トシキ3人の前に立つ。

 

「あ・・・!」

 

「く・・・!」

 

守るようにトシキの前に出る2人。

 

「その大怪我してる人がトシキね?ナオトが待ってるわ」

 

「直人・・・!」

 

ブレイクがナオトと言った瞬間トシキが反応した。

惑星クラストラニアでの事が思い返される。ナオトはトシキを説得しブリタニアへ引き込もうとしていた。

それを思い返し、やはりナオトもトシキとは戦いたくないと思っている事は分かる。それでも・・・

 

「・・・悪い2人共、もう大丈夫だ」

 

「な、宮本さん!?」

 

「トシキ君!?」

 

2人の肩から外れるトシキ。

どういう訳か、あの重傷を負いながらもう立てる程回復している。

 

「ユーノ・・・もしもの時の為に俺のメサイアを戻しておいてくれないか?」

 

「トシキ・・・!」

 

ユーノに言い残しトシキは皆が来た道を戻っていく。

 

「待ちなさい!」

 

それを見てブレイクはトシキの後を追う。

 

「マスター!」

 

アリスもトシキを追おうとしたが、シズカに右手を取られ追う事ができない。

 

「シズカさん、どうして止めるんですか!?」

 

「・・・本当なら宮本さんを止めるべきだったのでしょう。けど彼は私たちの為に時間稼ぎを買って出たのだと思います」

 

「そんな・・・」

 

「だからこそ、早くマルコフ准将へ報告して宮本さんの救援に向かうべきです!」

 

シズカの涙ながらの力強い言葉に全員が言葉を呑んだ。

確かにそうだ。1人とはいえあのまま続けていたら全員が行動不能にさせられた可能性も否めない。

 

そして全員がその言葉に頷き施設から脱出しようと再び移動を始める。

・・・たった1人、トシキを追い引き返したハイデマリーを除き。

 

 

 

***

 

 

 

「はっ・・・はっ・・・!」

 

痛む身体に鞭打って移動を続けるトシキ。

気づけば施設屋外の大型射出口らしき大穴の上の足場まで来てしまった。

 

「ここは・・・戦艦の発着場・・・」

 

「そこまでよ」

 

後ろを見ればライフルを構えたブレイクが迫ってきている。

いよいよ万事休すか・・・

 

「一緒に来てもらうわ。ナオトが待ってる」

 

ブレイクが目の前まで迫り、彼女がライフルを降ろしかけた・・・

 

「・・・!」

 

「なっ!」

 

トシキが飛び掛かり右手のライフルを奪い取ろうとする。

ブレイクはトシキを振りほどくがライフルを奪われ、トシキは残っているマガジンを装填する。

ブレイクはトシキから一旦距離を取り、トシキはブレイクに発砲。しかし今のトシキには反動が強すぎたか1発撃つ度に身体に激痛が奔る。

 

「があぁぁ・・・!!」

 

それでも自分を奮い立たせブレイクに発砲を続けるトシキ。

 

「・・・仕方ないわね。無理にでも連れていくわ」

 

ブレイクは右手で腰の刀を抜き左手のサブマシンガンをトシキに向け発砲。

その内の2発がトシキに命中。今の彼の意識を朦朧とさせるにはそれでも十分すぎだ。

トシキは霞む視界でブレイクを何とか捉えられているのも奇跡だろう。そしてブレイクがトシキに刀を向ける。

 

「これも貴方とナオトの為よ」

 

そう言ってブレイクがトシキを担ごうと身を屈め・・・

 

「トシキさん!」

 

声が聞こえ、ブレイクに弾が放たれる。

トシキがその方向を見れば、機関銃を持ったハイデマリーがいた。

その光景でトシキは自分を奮い、落ちたライフルを再び手に取る。

 

ブレイクは足場の端まで追い立てられたがまだ立て直せる、そう判断し姿勢を低くしたがトシキがある物を投げた。球体のようで赤いランプが点滅している。

それを見て一瞬でグレネードだと判断し避けようとしたが、トシキが持っていたライフルをグレネードに向け撃ち、命中した瞬間グレネードが爆発し、ブレイクは爆風で飛ばされ足場から投げ出される。

 

「がっ・・・!」

 

トシキもその爆風で飛ばされるが運よくあった手すりに背中を打ち付けて止まった。

 

「あ・・・」

 

投げ出されたブレイクの下に足場は無い。

 

「嫌・・・」

 

静かに拒否の言葉を呟くがどうにもならない。

思い浮かべたのは友人達、そして自分が想っている少年。ブレイクは叫んだ。

 

「ナオトオォォォォォッ!!!」

 

ブレイクはそのまま大穴の底へ落下していった。もう助からないだろう。

ハイデマリーはトシキに駆け寄る。

 

「トシキさん!」

 

「マリー・・・」

 

トシキは意識を保っているだけで奇跡だ。

そんな中、トシキは上着のポケットから何かを取り出す。

それは天使の羽を持った銀の剣十字のネックレス。中心にはユウナの髪飾りと同じような紫色の鉱物のような物が付いている。

 

「遅れたけど・・・これ・・・お前への・・・」

 

「あ・・・」

 

トシキの手からネックレスが滑り落ち、トシキの身体が手すりから落ちていく・・・

 

「駄目・・・」

 

ハイデマリーは手を伸ばし止めようとしたが、遂に間に合わずトシキが大穴へ落ちていく。

 

「あ、あぁ・・・!」

 

ハイデマリーはその光景を目の当たりにし、全身の血の気が引き周囲の音が遠ざかっていくように感じる。

目からは大粒の涙が零れ頬を伝い床へ落ちる。

 

「いた、ハイデマリー准尉!」

 

そこへ機体を回収しガウォークへ変形させたシズカ達が合流。

トシキのVF-25FとハイデマリーのVF-22はユーノのRVF-25から遠隔操作されている。

 

「・・・トシキは・・・?」

 

ユーノは静かに問いかけるが、ハイデマリーは動かず唯涙を零すだけ。

 

「そんな・・・」

 

「嘘・・・」

 

それで理解してしまった。

・・・もうトシキはいない、いなくなったのだ、と。

 

エイカとシズカは口元を押さえ、嗚咽を押さえようとするがそれでも泣く事をこらえる事はできない。

ユーノも顔を背けるが頬からは涙が伝っている。アリスとユウナは思い切り泣き叫ぶ。

 

 

 

***

 

 

 

だが神という物は彼女達に泣く事を許す機会さえ与えるつもりは無いようだ。

 

突然地響き音が響きだし周囲の壁が崩れ出す。

それにいち早く気づいたのはユーノだ。

 

「・・・いけない、これじゃ巻き込まれる・・・!皆!!」

 

ユーノの大声で放心状態に近いハイデマリー以外の全員が現状を理解し上空へ退避。

ユーノもガウォークの左腕でハイデマリーをそっと掴み、VF-25FとVF-22を従え上空へ逃げる。

 

・・・真の悪夢が始まろうとしていた。




劇中曲:This will be the days/Casey Lee Wiliams

ED:Mirror/安田 レイ
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