マクロス Infinity Rumble   作:天羽々矢

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STAGE30 V Infactor

上空に退避したユーノ達が見た物は全て信じられない物ばかりだった。

 

砂漠の渓谷が崩れ落ち、全てを血のような真っ赤な液体が埋め尽くそうとしている。

その血の海に呑まれる物に例外は無い。先程までいた研究施設も血の海に呑まれた。

 

「・・・どうなってるの・・・」

 

シズカはが絞り出すような声で囁く。

空も見れば赤い積乱雲のような厚い雲が覆い始めていて先程まであった砂漠が地獄のような光景に変貌しつつある。

 

トシキを失った悲しみと変貌していく光景への動揺で混乱し切っているシズカ達に、機体のレーダーが敵機接近のアラートを鳴らす。

 

「こんな時に・・・!?」

 

 

 

***

 

 

 

「この雲・・・」

 

「ブレイクの生体反応が異常波形を示している・・・!」

 

そこに急行しているのはシアンのSV-51λ、黒地と赤ラインのVF-25F、カーキ地に黄色ラインのVF-25S、先頭の機体は白地に金色のラインが入り両主翼端が緑に塗られた4発エンジンと前進翼を持つ機体・・・YF-29。

 

それぞれのパイロットの名は、黒江ナオト、ルビー・ローズ、ヤン・シャオロン、・・・枢木スザク。

 

「ブレイクが心配だ、急ごうスザク!」

 

「ああ!皆、スピードを上げるぞ!」

 

《了解!》

 

スザクの言葉にルビーとヤンが返事し、ナオトとスザクが加速するのを見て2人の機体も追従する。

 

 

 

***

 

 

 

「来る・・・!」

 

レーダーの敵機反応が急接近してきているのは明白。そして遂に肉眼で捉えた。

後ろの機体郡は見覚えがあった為驚きはしなかったが、先頭のYF-29が見えた途端に表情が驚愕に染まる。

 

「あれは、YF-29!?そんな・・・あんな物までブリタニアは!?」

 

YF-29は機体に使用される鉱物、フォールドクォーツの希少性から量産が非常に難しく出回る機体数が少ない。

それをブリタニアのような勢力が持っているのだ、驚くのも当然だろう。

 

そのまま両者は戦闘を開始するかに見え・・・

 

ドオォォォォォ!!

 

突然血の海から飛沫と共に銀色の左腕のような物が飛び出し、それが徐々に這い上がってくる。

 

それは形こそ人型だが人ではない銀色の“異形”。

全高はおよそ40か50メートルだろうか。全身が装甲で覆われ両腕には角状の物がトンファーのように肘部分に向けて伸び、手らしき物の下には機関砲のような器官がある。

狼のようだが何処か昆虫じみている頭部で額の部分から角のような突起物が生えている。

 

「オォォォォォォッ!!!」

 

異形は両腕を広げ天を仰ぎながら咆哮を上げる。

 

「何・・・あれ・・・」

 

RVF-25の後部座席にいるユウナが思わず呟く。

 

「キシャアァァァァ!!!」

 

更に銀色の異形の向いからも黒い何かが姿を見せる。

それは全高80メートル以上はありそうな上半身だけの人とは遠くかけ離れた物だった。

不気味に光る単眼と頭部に2本の角のような突起物、背部にはビームの射出口らしき物もあり、左腕は肥大化し鎌状に変化。右腕は退化したかのように縮小し3本のかぎ爪状の指に掌に機関砲のような器官があり遠隔操作兵器のように浮遊している。

 

「うぅっ!」

 

「結城さん!?」

 

突然ユウナが頭を押さえ苦しみ出す。見れば髪飾りに埋まっている紫色の鉱物のような物が発光している。

 

「・・・トシキ君・・・?」

 

「え・・・?」

 

ユウナが銀色の異形をトシキと呼び始めた。

その言葉にユーノも銀色の異形を見る。

 

「ユーノさん、あれにもっと近づけて!」

 

「え!?危ないよ!」

 

「お願い!!」

 

ユウナの願意に、ユーノが折れ銀色の異形に機体をよせる。

銀色の異形がRVF-25に気づき、右腕下部の機関砲を発砲する。

 

ユーノは機体を捻らせ攻撃を回避。

 

「ダメだ、僕たちを敵だと認識してるみたいだ!」

 

「そんな事ないよ!」

 

ユウナはキャノピー越しに銀色の異形に向け叫ぶ。

 

「トシキ君!目を覚まして!私たちだよ!」

 

ユウナは唯叫び続けるが、銀色の異形に聞こえるはずもなく再び機関砲をRVF-25に向け発砲しようとした瞬間、黒い異形がその左腕を横薙ぎし銀色の異形を殴り飛ばす。

銀色の異形は倒れるがすぐに起き上がりダッシュで黒い異形に接近。黒い異形は銀色の異形に左腕を振り下ろすが、今度はそれをテレポートとも言えるような瞬間移動で回避し右腕下部の機関砲を頭部へ向け撃つ。

 

「ヒャアァァァァッ!!」

 

頭部を撃たれ僅かに黒い異形が怯むがそれだけ。今度は左腕を血の海に叩き付け津波を引き起こす。

それを銀色の異形は上方にテレポートする事で回避し、落下しながら黒い異形の頭部に機関砲を撃つ。

 

「ヒャアァァァァッ!!」

 

黒い異形はそれを血の海に潜る事でかわし、血の海海面から不気味に光る単眼が覗いている。

潜った黒い異形は銀色の異形に向け刃状の縦波を発生させ襲い掛かる。

銀色の異形はその縦波をトンファー状に生えている角のような突起物で切り裂いて防ぎつつ右腕下部の機関砲を光る単眼に向け撃ちこむ。

 

「オォォォォォォッ!!」

 

黒い異形は頭部を押さえながら海上に再び姿を見せ、今度は浮遊している右腕を関節部に押し込んで取り付け発砲。更に背部の射出口からも紫色の光球が6つ射出されそこからビームが発射される。

ビームが発射されれば光球は消えるがその度に新たな光球が黒い異形から出され繰り返しビームが発射される。

 

それを見た銀色の異形は右腕の突起物を後方向きから前方へ回転させ、そこに電撃状のエネルギーが収束され始める。

そして右腕を黒い異形頭部へ向けるが、そこへいままで傍観していたブリタニアの編隊が攻撃を開始。

 

「ブレイク!・・・ダメ、完全に暴走してる!!」

 

その中の黒地と赤ラインのVF-25Fのパイロット、ルビー・ローズが他のパイロットに通信を放つ。

 

「スザク!」

 

「ああ!全機へ、眉間を撃って眠らせるんだ!その後本隊に連絡し捕獲する!」

 

『了解!』

 

YF-29のパイロット、枢木スザクから指示が飛びブリタニア側の攻撃が始まる。

 

「エイカさん、どうするんですか!?」

 

「・・・とにかく、ブリタニアを撃退するわよ!その後艦隊と連絡を取るわ!」

 

混乱の最中、エイカも指示を出しスザク達への戦闘を開始する。

 

「邪魔しないで!ブレイクが!!」

 

「仕方ない、こっちも応戦するぞ!」

 

「うん!」

 

ナオトとルビーが組み、編隊を組んだアリスとシズカと交戦開始。

依然銀色の異形にアプローチを続けるユーノのRVF-25にはヤンのVF-25Sが迫り、ユーノは回避行動を取る。

 

「これじゃ・・・!」

 

「何とか振り切って!トシキ君がやられちゃう!」

 

「無茶言わないで・・・!!」

 

何とかヤンを振り切ろうと機体を上下左右に旋回したり機体を揺さぶったりするがVF-25Sは食らいついて離れない。

そこへエイカのVF-19Sが迫りVF-25Sを引き剝がす。

 

「エイカさん!」

 

「こっちは任せて!」

 

そのままヤンとエイカはドッグファイトへ突入。

そこへスザクのYF-29が背後に回る。

 

「スザク!」

 

「ヤン、ここは任せて君はブレイクともう1体を!」

 

「OK!」

 

「くっ!」

 

エイカはスザクを振り切ろうとヤンの追撃を諦め上空へ逃げるが4発のエンジンを持つYF-29の機動性に敵う訳もなく易々と捕捉される。

 

「エイカ大尉!ハイデマリー准尉、大尉の援護を!」

 

「・・・」

 

シズカがハイデマリーにエイカのフォローを頼むが、ハイデマリーはVF-22のコクピット内で涙を零しながら放心状態となってしまっている。シズカの声は彼女には聞こえていながら聞こえていない。

 

「准尉!!」

 

シズカがハイデマリーに叫ぶがそれでも返答はない。

余程ショックが大きかったのだろう。

 

「これじゃ・・・!」

 

今のエイカ達は連携が全く取れていない。このままでは全滅は必至だろう。

 

「くっ!」

 

だがここでスザクが機体を反転させ突然飛んできた機関砲を回避。

見れば黒い異形に接近したヤンが攻撃を回避したがその流れ弾がスザクへの命中コースだったようだ。

 

「ゴメン、スザク!」

 

「いや、大丈夫だよ。今はブレイクともう1体を止める方が先決みたいだ!」

 

「そうみたいね!」

 

スザクとヤンが編隊を組み銀色の異形とスザクがブレイクと呼んだ黒い異形への攻撃を開始。

 

「ダメ!トシキ君!!」

 

「本当にどうしたの結城さん!?」

 

ユウナの言動に戸惑いを隠せないユーノ。

もし本当にあの銀色の異形がトシキなら何故こちらを攻撃するのか上手く説明できない。

 

そしてここで銀色の異形が右腕のチャージを終えたようで右腕上部に移動した突起物を黒い異形頭部へ向ける。

 

「あ・・・ダメぇぇぇぇっ!!」

 

その光景にルビーが叫ぶが届くはずもない。

右腕の突起物から重量子ビームが発射され、無慈悲にもそれは黒い異形・・・ブレイクを貫く。

 

「オォォォォォォ・・・」

 

ブレイクは苦しんで天を仰ぎ左腕を天に伸ばすように仰け反り遠吠えのような咆哮を上げた後、血の海に溶けるように海中へ呑み込まれていく。

 

「ブレイク・・・いやぁぁっ!!」

 

「落ち着け、ルビー!!」

 

ブレイクが消えた事で精神的ショックを受けたルビーが叫びナオトがそれを鎮めようとする。

 

「あいつ!!」

 

「ヤン、君も落ち着くんだ!」

 

一方ヤンは銀色の異形に向け突撃。スザクはそれを止めようとする。

しかし銀色の異形はスザク達はもちろん、エイカ達も敵と認識しているのか、両腕の機関砲を片っ端から撃ち接近を許さない。

 

「これじゃ近づけない!」

 

「どうするんだよスザク!?」

 

対応できない事に焦り始める。それはエイカ達も同様だ。

 

「何か手はないのか・・・何か・・・!」

 

「トシキ君・・・!」

 

そんな時、ユウナの脳裏にトシキとの会話がフラッシュバックする。

 

(私の歌なんてトシキ君のプレイヤーに入ってたのをそのまま歌っただけだし・・・)

 

(そんな事ないぜ?また聞かせてくれよ)

 

もしあの銀色の異形がトシキだとすれば・・・。

 

(お願いトシキ君、目を覚まして・・・!!)

 

そう願い、ユウナは息を吸い、

 

“ぼくは ここにいる 君は 空を見てた”

 

それはトシキが口ずさむ事もあった歌。

ユウナは自分の願いを込めそれを歌う。

 

“どこへ 行くんだろう 君の 悲しみは”

 

「・・・歌・・・」

 

その歌声に今まで放心状態だったハイデマリーが顔を上げる。

 

“吹き飛ばぬように 握りしめてた”

 

その歌声に銀色の異形の様子が妙になる。

乱射していた機関砲の攻撃が止み、混乱するかのように足物が覚束なくなってきている。

 

“わずかな命の かけらを”

 

“あげようか”

 

「動きが乱れてる・・・?もしかして歌が!?」

 

ユーノが後部座席のユウナと銀色の異形を見て歌が影響を与えているのではと仮設を立てるが、そこにスザク達がつけこむように銀色の異形に攻撃を仕掛けようとする。

 

「動きが乱れている今がチャンスだ!」

 

「分かった!」

 

「うん!」

 

「了解!」

 

編隊を組み銀色の異形へ突撃を仕掛けるが、

 

「邪魔はさせない!」

 

ユーノはRVF-25を加速させガンポッドを撃ち編隊を崩す。

 

「邪魔すんな!」

 

「そっちこそ!」

 

オープン回線でナオトから怒号が飛ぶがユーノは怯まない。

そしてそれを見て息を吹き返したようにエイカ達もスザク達と交戦を再開する。

 

今まで放心状態だったハイデマリーもトシキが落としたネックレスを握りしめユウナの歌声にシンクロするかのように口が開き始め、

 

“時が 流れたら 君も 同じように”

 

同じ歌を歌い始める。

そうしたらどうだろうか、ユウナの髪飾りとハイデマリーのネックレスについている紫色の鉱物が輝きを増し始める。

それに伴うかのように銀色の異形は更に混乱しているように見える。

 

”僕が いる訳を 忘れ 去るのかな”

 

瞳を閉じ2人は想う。

 

“トシキさん・・・”

 

“お願い、トシキ君・・・!!”

 

唯1人、そして自分が想っている青年を。

 

“君を思うほど ぼくは無力で”

 

「オォォォォォォ・・・」

 

銀色の異形は咆哮を上げるが、それは何処か弱く感じられる。

そして銀色の異形の周囲に光が収束し始め、

 

「マズイ、フォールドする気だ!」

 

スザクが列機全員に叫ぶ。

どうやら混乱による苦痛に耐えられなくなりフォールドで逃亡する腹積もりのようだ。

それを阻止すべく攻撃を仕掛けるが、

 

“小さな闇にも 消されて”

 

“しまいそうだ”

 

光が強まり全員が目を覆った瞬間に銀色の異形がフォールドにより姿を消した。

 

「く・・・逃げられた・・・!!」

 

「仕方ない。全機へ、作戦は中止。現戦域より離脱!」

 

スザク達が機体を翻しニュー・エイジアから撤退していく。

 

「トシキ君・・・」

 

ユウナは消えた消えた銀色の異形を思っている。

しかし、今の彼女達にはどうする事もできなかった。




劇中曲:Blood infactor/罪と罰 ~地球の継承者~

特別ED:あの頃へ/結城ユウナ(ICV:照井 春佳)、ハイデマリー・W・シュナウファー(ICV:植田 佳奈)
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