マクロス Infinity Rumble   作:天羽々矢

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STAGE31 決路

ニュー・エイジアから撤退し艦隊へ帰還したエイカ達はアンドレアスの執務室に呼ばれ、彼女達を待っていたのは地球本国部隊司令官のグレム中将だった。

 

「とりあえずは、ご苦労と言っておこう」

 

高圧的な態度は変わらずグレムは言葉を続ける。

 

「今回の惑星ニュー・エイジアでの一件は既に報告を受けている。実に利用価値のある物を見つけたな」

 

「利用価値・・・?」

 

グレム中将の言葉にユーノが戸惑いの言葉を上げる。

 

「そうだ。だが取りこぼしたのは失態だったな、よって逃げたもう1体を捕獲する為、これより義勇独立遊撃戦隊セイレーンは俺の中将権限により解体。今後は俺の指揮下に入ってもらう」

 

グレムの言葉に全員の表情が凍り付いた。

 

「むしろ貴様等のような成り損ないの兵士を俺の下で使ってやるんだ、むしろ感謝して欲しいくらいだ」

 

そしてグレムはアリス、ハイデマリー、ユウナに視線を向ける。

 

「特に貴様等3人は決定事項だ。異論は認めんぞ」

 

「そんな!どうして!?」

 

「報告では貴様等2人の歌声があの化物に対し有効だと報告を受けている。それを手元に置くのは当然だろう?それにその小娘もあの化物が小僧の成れの果てだとすれば必ず反応を見せる」

 

その言葉で全員が理解してしまった。

グレムは3人を戦況を有利に進める為の駒としか見ていない事を。

 

「これで話は終わりだ。貴様等と違って俺は忙しいのでな」

 

小馬鹿にしたような嘲笑を浮かべるグレム。

それにその場にいる全員が腹立たしげに握り拳を作るが、これ以上は相手にする必要もないと判断し一礼してから退室する。

もっとも誰もがグレムに対し敬意など払っていないが。

 

 

 

***

 

 

 

自室へ戻る通路をある程度進んだところでユーノが近くの壁を思い切り殴りつける。

普段の彼からすれば見られない光景だろう。

他のメンバーからも動揺が見られる。

じきにグレムから正式な通達が回りセイレーンは解体、彼の指揮下に入る事になる。

そうなればこのメンバーで行動する事はなくなってしまうだろう。

 

「ふざけるなよ・・・!」

 

ユーノから荒々しい声が発せられる。それだけ苛立っているという事だろう。

 

「僕たちは・・・セイレーンは・・・トシキが作った隊なんだ、それを勝手に自分の物にしようだなんて・・・!」

 

「でも、彼はマルコフ准将より上官です。命令に背く事はできません・・・」

 

全員が悲観的になりかけているが、ここでユーノがどんでもない事を口にする。

 

「・・・あんな人に従うくらいなら、僕はここを出る」

 

全員がユーノを驚愕の目で見る。

 

「正気ですかスクライアさん!?もしそんな事すれば、脱走どころでは済みませんよ!?」

 

「それでも出るよ!・・・結城さんの言った通りあの銀の怪物がトシキだとすれば、あのグレムって人は結城さん達を利用してトシキを兵器として使うつもりなんだ。そんな事の為に僕はここにいるんじゃない!」

 

力強いユーノの言葉に全員が息を呑む中、ユウナが両手でガッツポーズをする。

 

「そうだよ、トシキ君を兵器になんて・・・そんな事、絶対にさせないよ!」

 

ユウナも自ら軍を離反する覚悟をしたようだ。

 

「・・・ごめんなさい」

 

その2人を止めたのは、アリスだった。

 

「私は・・・軍に残ります」

 

「アリスさん・・・」

 

アリスは今までの体験、そして今回のトシキの消息不明でかなり参ってしまっている。

 

「きっと、私がいたからマスターがあんな事になってしまったんだと・・・」

 

「そんな事ないよ!アリスさんは今までトシキ君を支えてきたんでしょ?」

 

ユウナの言葉にアリスは首を横に振る。

 

「・・・私は、ただマスターに甘えてただけだったんだと思います。これ以上は・・・」

 

「・・・分かった」

 

「ユーノさん!?」

 

ユーノが肯定の言葉を出しユウナが困惑する。

 

「彼女の選択なんだ。僕たちにどうこう言える義理は無いよ」

 

ユーノの言葉にも一理ある。

ここで引き留めてアリスの意に反する。それはトシキも望んでいないだろう。

ユーノ、ユウナ、アリスは道を決めたが、シズカとハイデマリーは黙ったままだ。

 

「・・・僕と結城さんは今夜出るよ。それまでに決めておいて」

 

「またね」

 

そう言い残しユーノ達は発つ準備の為に自室に戻っていった。

 

 

 

***

 

 

 

ハイデマリーは今回の件でアリス同様にかなり参っている。

自分が慕っていたトシキがいなくなったのだ、心の支えがなくなれば当然だろう。

 

「准尉」

 

「・・・大尉」

 

ここで自室に戻る途中のエイカと会う。

息子であるトシキを失ったのに何故彼女は前を向けるのか、今のハイデマリーには分からない。

 

「どうしたいか決まったの?」

 

エイカの言葉にハイデマリーは俯いてしまう。

だからか、彼女に問いかけてしまう。

 

「・・・エイカ大尉は、大丈夫なのですか・・・?」

 

「私?」

 

「はい・・・トシキさんに・・・ジン中佐も失ってしまわれたのに・・・」

 

ハイデマリーの問いに、エイカは外を見ながら答える。

 

「そうね・・・確かにあの子やジンがいなくなってしまったのは辛いわ。でも、だからっていつまでも沈んでは、ジンやトシキ、それに同僚たちに呆れられてしまう気がしてね」

 

その言葉の後、エイカはハイデマリーを見る。

 

「大事なのは辛い出来事に対してどうするかだと思うわ。それは、貴女自身で決めなさい」

 

「私自身・・・」

 

「そう。だって、今ここにいるのも貴女自身が決めた事でしょ?」

 

そう言い残しエイカは戻っていった。

ハイデマリーも自室に戻り、エイカの言葉を考える。

 

自分が何をしたいか考え、自然と手に持っているネックレスに目が行った。

そして脳裏に浮かぶは、トシキの姿。

 

「トシキさん・・・」

 

ハイデマリーはゆっくりと、だが確かに両手で包むようにネックレスを握りしめる。

 

「・・・私は・・・トシキさんが好き・・・。それをまだ伝えてない・・・」

 

秘めている想いを口にし、ハイデマリーは遂に決心した。

握っているネックレスを首にかけ、支度を始める。

 

 

 

***

 

 

 

夜、ユーノとユウナは荷物を持ち格納庫の自分の機体に向かっている。

だがその先には誰かいる。ユーノは持っている拳銃を向けるが、直ぐに降ろす。

 

「服部さん!シュナウファーさん!」

 

その影はシズカとハイデマリーだった。2人共荷物を纏めている。

 

「2人共、一緒に来てくれるの!」

 

「トシキさんには、まだ言っていない事があります。ですからそれを伝えたくて・・・」

 

「私は、ただ今まで助けられた借りを返しに行くだけです」

 

シズカは相変わらずだが、2人共意志は確かなようだ。

 

「ありがとう、2人共!」

 

ユーノの言葉に2人は微笑み、共に機体へ向かう。

 

「やはり来たか」

 

突然声が聞こえ、全員が声の方を向く。

そこにいたのは・・・

 

「アンドレアス准将!それにエイカさんも!」

 

「貴方たちならこうすると思って、准将と準備しておいたわ」

 

エイカがユーノ達の機体を見てそう言う。

その言葉にユーノ達は首を傾げるが各々の機体上部に取り付けられているフォールドブースターを見て納得した。

 

「・・・准将、エイカさん、ありがとうございます!」

 

「私のような人間にはこんな事しかできないよ。君たちの思うように行動してくるが良い」

 

『はい!』

 

アンドレアスにユーノ達が敬礼し、機体に搭乗。

ユーノは更にトシキのVF-25Fにもアクセスし遠隔操作を行う。

ユウナはシミュレーターを受けていたお陰かアリスが残していったVF-19EFに搭乗し操縦を行う。

 

アンドレアスとエイカはユーノ達に敬礼し見送る。

 

ユーノ達の機体がカタパルトへ移動、発進準備は整った。

 

《セイレーン、発進許可は下りていないぞ、ただちに引き返せ!》

 

管制官から警告が飛ぶがユーノ達はそれを無視。強引に発艦を行う。

前方にはアステロイド地帯。そこさえ突破すればフォールド可能となり逃げきれる。

 

「皆さん、艦体に反応多数。追撃隊のようです」

 

「やっぱり来ますよね」

 

自分達はグレムの命に背き脱走したのだ。追われるのは当然だろう。

しかし大人しく捕まるつもりは彼らには無い。

 

「どの道、僕たちはもう戻れないんだ。なら強行突破しかないよ!」

 

「分かりました」

 

「了解!」

 

ユウナのVF-19EFは先にアステロイドから脱出させ、ユーノ、シズカ、ハイデマリーの3人で足止めを行う。

それに対し本国部隊の追撃戦力は全部で10機。

 

「これは、アリスさんのIFFがある!」

 

「アリスさん・・・」

 

その中にユーノ達のよく知る識別反応が。

グレムの下に移り機体をVF-171EXに変えたアリスの物だ。

 

《グレム中将の命令だ。ただちに機体を戻せ》

 

その隣のVF-171EX、リヴィ・コレット特務少尉がユーノ達に警告を飛ばす。

 

「・・・残念ですがそれには従えません。僕たちは、僕たちが正しいと思う事を成しに行きます!」

 

《・・・そうか、残念だ》

 

それで両者の会話は終了。

追撃隊のVF-171から短距離対空ミサイルが発射されるが、ユーノがフレアを投下し3人はそれぞれバラバラになりミサイルを回避。

その後はハイデマリーがミサイルを撃つ為にリヴィの後方に回るが、そこにアリスのVF-171EXが飛び入り。

 

「アリスさん・・・」

 

《どうして・・・どうしてこんな事!!》

 

アリスの悲痛な声が響く。それにハイデマリーは胸が苦しくなるがこれも自分の選択だ。

そんな甘い考えを捨てる為に頭を振る。

 

「あなたがトシキさんの為に軍に残ったのと同じ理由です」

 

《これのどこが私と同じだと言うんですか!?》

 

癇癪を起しアリスがハイデマリーの後方へ回り機体上部の30mm機関砲を発砲。

だがハイデマリーはそれを回避しつつアステロイドが密集する宙域へ誘導する。

 

「あなたは自分がトシキさんといる事が甘えだと言いましたね。でも私はそうは思いません」

 

ミサイルをアステロイドに撃ち込み粉塵を発生。

それで視界が遮られアリスは機体をガウォークへ変形させ静止。

 

「私は、私の想いを隠すのを止めたんです。だから、それを止めるというならあなたを倒します!」

 

そこへハイデマリーのVF-22がファイター形態でアリスに向け突貫。

アリスも機体をファイターへ変形させヘッドオンになる。

 

『はあぁぁぁっ!!』

 

2人は狙いすましハイデマリーはGV-17Lガンポッドを、アリスは機体上部の反重力砲を撃ち、両者はコクピットを向けすれ違う。

 

「・・・やはり、アリスさんは強いですね」

 

「ハイデマリーさん、戻って!」

 

「了解」

 

ユーノから通信が入りハイデマリーはアステロイドから離脱。

ハイデマリーのVF-22の尾翼は反重力砲が掠め僅かにスパークが起こっているがアリスは一旦ガウォークへ変形させ追撃しようとした時にエンジンが止まってしまった。

見れば左腕部の付け根部分に銃弾が直撃した痕跡が残っており、それにより内部回路が使用不能になったのだろう。

 

そしてハイデマリーはアステロイドを抜けユーノ、シズカ、ユウナと合流しフォールドブースターを起動。フォールド準備に入る。

 

「アリスさん。ユーノさんが言ったように私たちは私たちの道を行きます。あなたはどこへ行きますか?」

 

それがハイデマリーからアリスへの最後の言葉だった。

4人とユーノが従えるVF-25Fがフォールドし、追撃隊は艦体へ戻る。

 

近くにいたリヴィによりアリスも艦体へ戻されるが、コクピット内の彼女は涙を浮かんでおり嗚咽を上げていた。




劇中曲1:Deja vu/ACE COMBAT ASSAULT HORIZON
   2:Horizon/ACE COMBAT ASSAULT HORIZON

特別ED:First Pain/石川 智晶
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