ジンから真実が伝えられ、それによりリヴィは撤退。
取り残されたエイカ達はどうすればいいのか分からなくなっていた。
今まで信頼していたアンドレアス・マルコフ准将がブリタニアと内通していた事はやはり大きかったのだろう。
その情報を見てしまったのだ、離反したユーノ達はもちろん、エイカもまず間違いなく離反者として軍内に広まっているに違いない。
「どうすれば・・・」
何をすればいいのか、どうすればブリタニアを止められるのか分からない。
自分達は軍から孤立してしまっているのだ。
「まだ終わった訳ではないだろ?」
だが、ジンはこの状況でも諦めていない。
どうするかは決めているようだ。
「エイカ、子供たちと共にXGP8300600:ASR8283200に行くぞ」
「ジン・・・?」
今のエイカ達にはジンの言葉に従う他なかった。
言われた通りエイカ達は各々の機体を取りに行き、ジンと共に指定されたポイントへフォールドする。
***
アルファ星域XGP8300600:ASR8283200。
2051年に第2次統合戦争で地方分権を訴えた反統合勢力ビンディランスと統合軍が総力戦を行った宙域でもある。
そしてその残骸から成るデブリ帯に紛れるように1隻の艦船が停泊している。
ウラガ級護衛宇宙空母“リチャード”。セフィーラ軍の空母であるにも関わらずこのような場所で停泊していた事に驚いたが、ジンは躊躇無く着艦アプローチを開始。
エイカ達も戸惑いつつも着艦。
「こっちだ」
ジンに案内され空母リチャードの艦橋へ案内される。
艦橋で待っていたのは、
「お帰りなさい、ジン中佐」
「今は階級でなくていいと言ったぞ、マリク艦長」
空母リチャード艦長、金髪の初老の男性マリク・シザースだった。
マリクは苦笑いの咳払いをする。
「そうだったなジン、すまない。それより彼女たちがそうか?」
「そうだ。紹介・・・は必要ないか?」
「お久しぶりです、マリク艦長」
ユーノ、ユウナ、ジンを除いた全員がマリクに敬礼する。
「そのままで結構。だが礼儀として名乗らせてもらう。マリク・シザース。このウラガ級空母リチャードの艦長で少佐を務めている」
マリクが全員に挨拶をした後、事の経緯を説明する。
「エリュシオン進攻から撤退した本艦は孤立状態になり、司令部から通達が回る度に艦載機を出してはきたが、その度に帰ってこない部下の数が増えて、今ではジン1人だけになってしまってな」
物悲しそうに外の宇宙を見ながら静かに呟くマリク。
「飛行機の無い空母はお役御免という訳で、ここで昼寝中さ」
マリクの独白が終わり、エイカは核心を問う。
「マリク艦長。貴方はジンが接触する前から動いていたのですか?それとも・・・」
「・・・俺の艦に1隻高い傍受能力を持ったノーザンプトン級がいる。“メイオール”。地球からの暗号通信を傍受してな。アンドレアス・マルコフの内通を知ったのはその時だ」
エイカの問いにマリクが答えはっきりした。
今まで自分達はアンドレアスに利用されていたのか、と。
「・・・あの、シザース艦長」
「マリクで構わない」
おずおずとユーノが話しかけるが、マリクは気さくに対応する。
「じゃあマリク艦長、コレットさんは計画って言ってましたけどアンドレアスさんは何をするつもりなんですか・・・」
「そこからは私が説明しよう」
そこでジンが声を上げる。
ジンはエリュシオン進攻で撃墜された時、撤退の際にマリクの艦に拾われ命拾いしたのだ。
そしてリチャード艦内で眼帯と義手を付け、リハビリを繰り返していた。そして開戦からしばらく経った時に地球からの派遣部隊がセフィーラ軍に合流。その時にメイオールが地球からの暗号通信を傍受したのだという。
その後ジンは統合政府内に内通者がいる可能性を考え、マリクから許可を受け独自に調査を行っていたのだ。
「アンドレアスの目的は、統治体制を第2次統合戦争以前の状態である地球一極主導体制に戻す事だ」
ジンの説明にエイカ達は言葉を失くす。
もしそうなれば、辺境惑星の統治体制に圧力が掛かるだけでなく軍備拡充も滞る事になる。
だが未だに地球至上主義の意見が根強いのも事実である。
2059年にフロンティア船団がバジュラと遭遇・交戦した際に第53次超長距離移民船団、通称マクロス・ギャラクシー船団の幹部らが全人類を支配しようと陰謀を企てていたという記録からその声はまた1段と強くなっている。
だがそれを実現する為には何処かの自治政府を標的にする必要があった。
そこで標的になったのがマクロス・ブリタニア船団。アンドレアスはクリティカルパス・コーポレーションCEOであるグレムと結託してブリタニアに軍備や資金等を提供し、ある程度の軍事行動が可能になった所で新統合政府に対し反乱を企てているとでっち上げ攻め込む。それが13年前の内部粛清の真実だった。
その結果再び統合政府は地球主導になるはずだったのだがそこで誤算が生じた。
ルルーシュを始めとした幹部の子息が生き残っていた事により生じた反乱により、唯彼らの不満を煽っただけなのではとアンドレアスの行動を疑問視する声が上がり始めたのだ。
その為にアンドレアスは再びブリタニア軍を討伐し名声を得て地球至上を説くのだという。
その為にブリタニアが手に入れた、あの総角錐の結晶体を奪い自分が望む地球至上の世界を創り上げるつもりなのだろう。
だが真相を知ったジンを惑星ボルカンで仕留め損なっただけでなく、その真相をエイカ達にも知られた為にその計画を急ぐ事になったらしい。
そしてまずその前座として、グレムの部隊と共にバロータ3198XE第4惑星にて行われるブリタニア軍のオペレーション・スターダストに便乗し、銀色の異形となったトシキを制御下に置くのだという。
「だが、天の女神はまだ俺たちを見放してはいないようだ」
「え?」
マリクの言葉にエイカが戸惑いの言葉を上げた時、リチャードのレーダーがデフォールド反応を捕捉。
全員が身構えるがすぐに警戒を解いた。
デフォールドしてきたのはS.M.Sセフィーラ支社の旗艦でもあるマクロス・クォーター級戦艦、フォル・ブランニルだった。
「あれは!」
「俺たちの救援要請に応えて駆けつけてくれた援軍だ。それに・・・」
マリクが右前方を見ると、そこには停泊中の輸送艦があった。
「クリティカルパスがブリタニアに密輸しようとしていた所を拿捕した。機体も装備も選り取り見取りだ」
エイカとユーノ達にとっては大きくかつ心強い戦力強化となった。
フォル・ブランニルと合流後にマリクはフォル・ブランニル艦長であり自身の友人でもあるカーツ・ベッセルに挨拶に行った。
そして、ジン、マリク、カーツの3人によりオペレーション・スターダスト攻略の準備が整い、マリクのリチャード、カーツのフォル・ブランニルを中心に艦体を再編。更に拿捕した輸送艦から必要な装備を入手し対決姿勢は整った。
「空母リチャード艦長マリク・シザースより総員へ。セフィーラ新統合軍はブリタニア軍の作戦に乗じ強大な戦力を手中に収めようとしている。更にセフィーラの指揮官アンドレアス・マルコフ准将はその戦力によりブリタニア軍を殲滅し、再び地球一極主導体制による統治を築き上げようとしている。しかしセフィーラ全軍が彼の指揮下にある以上、救援を見込む事はできない。我々に残された可能性は、結城ユウナとハイデマリー・W・シュナウファー両名の歌声により銀の怪物とのコミュニケーションを行い無力化する事。総員、戦闘配置!」
「これより、本艦隊は緊急フォールドに入ります!」
マリクの言葉に全員が気を引き締める。
リチャード艦内ではユーノ達もスタンバイ。
特にユーノのRVF-25は対決に備え大幅な衣替えを果たしている。
目を引くのはデルタ翼でカバーされた主翼と両翼端に付いているエンジンポッド。それはトシキのVF-25Fに装備されているトルネードパックの物と同じだった。
今回の作戦に際し全員の機体にカスタムや改修が施されており、ユーノのRVF-25もその1つだ。
「エイカさん、ユーノさん、シズカちゃん!」
準備中のエイカ達にユウナとハイデマリー」がやってくる。
今のユウナは桜色にスパッツ状の衣装をハイデマリーは黒縁の白いマントと濃紺の軍服調の衣装を着ている。
「結城さん、ハイデマリー准尉、何ですかその衣装?」
「これ?私たちのイメージ衣装だよ!」
シズカの問いにユウナが答え、衣装を見せるようにその場で一回転。
それにエイカとユーノが微笑み返し、シズカは肩を竦める。
「私、絶対にトシキ君に歌を届けるからね!」
「うん。絶対にトシキを助けよう、僕たちで!」
「そうね!」
『うん(はい)!』
皆トシキを助けると団結し、艦体は対決の地、バロータ3198第4惑星へのフォールドを開始する。
ED:Mirror/安田 レイ
次回辺りは少し凝りたいと思うので、少し遅れるかもしれません。