心地よい小波の音が耳をくすぐる。
「ん・・・」
その音色で少年、ユーノは目を覚まし身体を起こす。
その傍らには、気を失っているユウナの姿が。
「結城さん、結城さん!」
「・・・ん・・・」
ユーノに揺さぶられユウナが目を覚ます。
身体を起こし周囲を見渡す。辺りは渚が迫る浜辺だ。
「ここは・・・?」
「分からない・・・。トシキのフォールドでどこか別の惑星に飛ばされたみたいだけど・・・」
ユーノも周囲を見渡すと、遠目に何かが見えた。
それは人型の上半身のような物で都市の中央に鎮座している。それが何かは何となくだが分かった。
「・・・マクロス」
「え?」
「ほら、あれ・・・」
ユーノに促されユウナもその方向を見る。
「ホントだ。じゃあここって・・・」
「グルルルル・・・」
突然背後から唸り声が聞こえた。
2人が振り返るとそこには空腹の狼が3匹、2人を見ていた。
「うそ!?」
「走って!」
2人は逃れるべく走り出すと、当然狼もそれを追う。
だが2人がいるのは海岸の波打ち際の浜辺。逃げ場など無い。
やがて2人は浜辺の奥にある岩場に追い込まれた。
飢えた3匹の狼は涎を垂らしながらゆっくりと迫る。
そして狼が飛び掛かり2人は目を瞑った。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
重い発砲音が鳴り響き、3匹の狼が撃たれ吹き飛ぶ。
何が起きたのか一瞬分からなかったが、2人が銃撃が飛んできた方を見る。
そこにいたのはフード付きの白いボロボロのマントを羽織り、襟に緑のラインが入った白いアンダーシャツと黒いカーゴパンツを着用し大型ライフルを持った青年。
特徴的なのは銀に見える白髪と金に見える黄色の瞳。2人にはすぐ分かった。
『トシキ(君)!!』
ユーノとユウナは歓喜の声を上げる。
自分達のリーダーとも言える青年が戻ってきたのだ。
だが今までと違う所もある。
両手と両足が怪物の時のような体表に変化しているままだ。
それでもトシキは2人を守るように背にしライフルを構える。
見れば他の野生動物もユーノ達を狙っているようだ。
「2人とも援護する、走れ!」
トシキの強い言葉を聞き、2人はトシキを背に走り出し、その2人を後目にトシキはライフルを撃ち野生動物を追い払いつつ後退。
3人は堤防を駆け上り上の荒れた道路へ。
「見て、建物がある!」
ユウナが建物を見つけそこへ駆け込む。
ユーノもそれを追って建物へ。トシキも背後の野生動物を片付け2人を追う。
建物のドア前に付き、トシキがドアを蹴破り中に敵や棲みついている動物がいないか確認。
確認を終え2人を先に中に入れ、その後に侵入がないようドアを閉め鍵もかける。
中は比較的広くそこまで暗くもない。更に多くのコンテナもあった。どうやら過去に廃棄された倉庫のようだ。
「一先ずは、これで安心だな」
「・・・トシキ君・・・」
何とか一息つける状態になり、突然ユウナが泣きそうな声を出し何事かと振り返った途端にユウナがトシキにもたれすすり泣き始める。
トシキは自分がどれ程心配かけたか分かっていたので、落ち着くまでそのまま泣かせ、かつ頭に手を添え撫でていた。
***
その後、何とか落ち着いたユウナと、ユーノ、トシキ3人で腹ごしらえをする事に。
幸いトシキが仕留めた動物の中には猪もいた為食材には困らなかった。ユーノが使えそうな燃料を持ってきてトシキが猪を捌き火を起こしてそれを焼いて食べるという構図だ。
食事の最中、ユーノはトシキにこれまで起こった事を全て話した。
「・・・そっか、ユーノ達は軍を抜けてアリスは残ったんだな」
「うん・・・。もう、トシキには甘えられないって」
「・・・甘やかしてたつもりなんてなかったんだけどな」
トシキも思う所があったのか声のトーンが落ちる。
それに気がかりなのはそれだけでない。
「それにユーノの言った事が本当なら、この戦争もアンドレアスさんが引き起こしたって線が太くなるな・・・」
「それもグレム中将と結託して、ね。トシキには信じられない話かもしれないけど・・・」
そう、今回のブリタニア軍の戦争は13年前にアンドレアスがでっち上げ行った内部粛清が発端になっている可能性が高い。
もし本当にそうならアンドレアスに付いていたとしても無事にセフィーラを奪還する気だったかも怪しくなる。
だがそれだけでは済まないのも事実だろう。
「それに、俺のこの身体の事も、聞きたい事だらけだ・・・」
そう言いトシキは自分の身体を見渡す。
今のトシキの肉体は一部が怪物の時のように変化したままである。人間に戻っているはずが何故中途半端な状態なのかそれが知りたかった。
だがそれよりも先に片付けるべき問題がある。
「・・・でも、まずはここより安全な建物を探そう」
「・・・そうだね、ここじゃ野生動物がいつまた襲ってくるかも分からないし。もうすぐ日も落ちそうだったし今夜は徹夜での警戒になりそうだね」
そう言いつつもユーノが外を見る。
トシキは残っている貯蔵品のコンテナから何か使えそうな物を探す。その際に埃を被っていた文字部分の埃を払うと、そこにはここが何処かを示すコンテナの納入先が書かれていた。トシキはそれを読み上げる
「A、laska、・・・アラスカ?」
そう、それはここが地球のアラスカである事を示していた。
つまり今トシキ達がいるこの惑星は、第1次星間大戦の戦場ともなった地球なのだ。
だがそれを今教えれば混乱を招くかもしれない。そう考えたトシキはその考えを一先ず頭の片隅に追いやりコンテナに残っていた毛布等を出す。
「ほら、使えそうなの持ってきたぜ」
「ありがとうトシキ、ごめんね、僕も戦えればトシキに負担かける事なかったのに・・・」
「気にすんなよ、俺こそ迷惑かけたんだし・・・」
トシキが言葉を続けようとしたところで、また別の動物の唸り声が聞こえだす。
「近くにいるぞ・・・」
そう言い、トシキは置いてある大型ライフルを再び手に取る。
「・・・さっきの道路のとこだな。俺が見てくる」
トシキはそう言って倉庫から出て確認に向かう。
「・・・本当、トシキは強いな・・・」
ユーノはその言葉の後に今までの疲労が出たのか大きな欠伸を一つ。
そのまま横になり眠りについた。
劇中曲:Wait soon ripe/罪と罰 地球の継承者
ED:Mirror/安田 レイ