エリュシオンで体勢を立て直しているブリタニア軍。
その一角に建つ病院の前で、茶色の青年がリムジンの後部座席で誰かを待っている。その青年の名は枢木スザク。
そして、スザクの待つ人物が病院から出てきた。
その姿にスザクは笑みを浮かべる。
その人物がスザクの待つリムジンに乗り目的地へ向かう。
「怪我はもう良いのかい?」
目的地への道中、スザクが向かいに座る人物に問う。
「大丈夫。・・・心配かけて悪かった」
「その言葉は彼女たちにかけてあげたらどうだい?ずっと君の事を心配してたんだよ?」
スザクの言葉に向かいの人物、・・・シアン色のショートヘアが特徴的な少年ナオトが僅かに笑みを浮かべる。
だが、その顔はスザクから見て左を向いている為に顔の右側はどうなっているか分からない。
「・・・もう少しで、計画は果たされる。ナオト、君はもうここにいなくたっていいんだ。僕がルルーシュに・・・」
「何度も言ったろ。行き場のなかった俺を拾ってくれたんだ、最後まで付き合うよ」
スザクの勧告とも取れる言葉に、ナオトは拒否と最後まで共に行動するという意を示した。
「そうか・・・ありがとう」
その決意にスザクは静かに感謝を述べた。
***
リムジンが辿り着いた先はブリタニア軍の総司令部らしき宮殿。
そこではエース部隊であるウィッチーズの少女達ともう2人、ルビーとヤンが待っていた。
リムジンからスザクが降り、それに続きナオトも降りる。
『・・・!』
それを見た少女達の表情が驚愕に染まる。
「ナオト君・・・」
絞り出すようにルビーが声をかける。
それが向けられたナオトの顔には、・・・右眼に黒い眼帯が付けられていた。
「皆・・・心配かけてごめんな。それと、ただいま」
僅かでありながら、ナオトは待ってくれていた少女達に微笑む。
それを少女達は目尻に溜まっている涙をぬぐい、
『おかえり(お帰りなさい)!』
微笑み返してナオトを迎えた。
***
その直後に、宮殿から銀河中の全てのネットワークへ放送が流される。
「私は新生マクロス・ブリタニア総統ルルーシュ・ランペルージである」
青年ルルーシュは、訴えるかのようにスピーチを続ける。
「あの日、我々マクロス・ブリタニアは統合政府に偽りの罪を着せられ粛清された。あの日の痛みと屈辱を忘れた事はない。この13年もの間、我等は耐え力を蓄えた。そして遂に我等は立ち上がった!」
「今、我が覇道を阻む物は無い。各銀河の新統合軍も既に我等と戦い続ける力は残されていない。それでも抗うというのであれば我等の力を思い知る事となるだけだ」
「今、この時刻を持ってマクロス・ブリタニアはこの惑星エリュシオンを母星とし、ブリタニア皇国と改名。そしてその初代皇帝はこの私、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとなる!」
その宣言に宮殿内にいる全民が歓声を上げる。
それ程マクロス・ブリタニアの住民は統合政府に対し憎悪を抱いているのだろう。
「銀河よ、我に従え!!」
ルルーシュが右腕を横薙ぎし高々と宣言。
『オール・ハイル・ルルーシュ!!』
『オール・ハイル・ブリタニア!!』
その言葉に続くかのように観衆がコールを上げる。
そのコールの片隅で、スザクが部下から連絡を受けていた。
《枢木少佐》
「どうした?」
《新統合軍の艦隊、接近中です》
***
先の作戦で大きく戦力が削られたブリタニア軍を打倒すべく、その宙域に彼らはいた。
「ふん。何が我に従えだ、反逆者どもめ」
ルルーシュのスピーチを聞き、その艦隊の旗艦であるウラガ級空母の艦長席に座る男、グレム中将がそう吐き捨てた。
彼らは今が好機と踏み、惑星エリュシオンへの強行突入を慣行しようとしている。
そこに管制官の1人が声を上げる。
「フォールド反応確認!何者かがデフォールドしてきます!」
「構うもんか。全軍迎撃態勢を取れ!」
グレムの指示に発艦した40機を超えるVF-171がそれぞれ5機ずつの編隊を組み迎撃態勢を取る。
そしてその中には彼女の姿もあった。
《初の大規模作戦だが無駄に気負う事はない。自分のすべき事をすればいい》
「・・・分かりました・・・」
編隊の先頭を飛行するVf-171EXのパイロット、リヴィ・コレット特務少尉の言葉に同じVF-171EXを操縦する少女、アリスが返答する。
グレムの艦隊の前方にフォールドゲートが現れ、そこから出現したのは10を超える可変戦闘機の編隊。
その編隊の多くを占めるのは箒で模した星のエンブレム、ウィッチーズだ。
そして彼女らを先導するかのように先を飛行する4機、ルビーのVF-25F、ヤンのVF-25S、02のvf-27γ。
編隊の最前を行くは左右外翼に1発ずつエンジンが載せられ、計4発のエンジンを持、前進翼の機体。
機首と主翼前部がシアン、残り部分が白のカラーリングが施されている。
《敵強行偵察艦体、捕捉!》
《やってやるわよ、鬱憤溜まってんだから!》
ヤンが憂さ晴らしを宣言し機体を加速させようとした時、ヤンの頭上を前進翼を持つシアンと白の機体が飛びこす。
《ナオト!?》
その機体に向けヤンが声を上げる。
そう、シアンと白の前進翼の機体・・・YF-29Bに乗るのは復帰したばかりのナオトであったのだ。
そのままナオトのYF-29Bは速度を落とす事なく新統合軍の艦隊へ突撃していく。
「1機が限界想定速度を超え急接近!」
「身の程知らずめ、撃ち墜とせ!」
グレムの号令でVF-171全機がナオトに向けミサイルを一斉発射。
ナオトは目を閉じ集中。再度目を開き確実に直撃するであろうミサイルだけをHPB-01A 重量子ビームガンポッドとES-25A 25mm高速機関砲で迎撃しその他は全て回避。
《敵機AAMM回避、来ます!》
《馬鹿な、あれだけの数を!》
新統合軍のパイロット達はナオトが凄まじい数のミサイルを回避した事に驚きを隠せない。
その隙にYF-29Bが更に急接近、ビームガンポッドでVF-1711機を撃墜。
《何っ、ぐあぁぁっ!!》
更に続き4機を撃墜し前線を突破し艦隊へ。
《抜かれた!》
《全機
《了解!》
VF-171全機がガウォークへ変形し、後退しつつGU-14B ガンポッドで攻撃。
だがYF-29Bはバレルロールからガウォークへ変形し、右ローリングしつつバトロイドへ変形。
「へへっ・・・!」
ナオトは軽く上唇を舐め、巧みなペダルと操縦桿操作で攻撃を回避しつつビームガンポッドで周囲のVF-171を撃墜していく。
そのまま編隊を突破しステルスクルーザー艦1隻の上部を取り、ビームガンポッドを展開しバースト出力で艦橋を撃ち抜いた。
《すごい・・・!》
《あれだけの相手を一瞬で、すごいよナオト君!!》
後方で見ていたヤンを始めとする少女達がナオトに称賛の声を上げる。
《右眼を失い、感覚重視で飛ぶナオトの感覚が更に研ぎ澄まされたか・・・!》
中には冷静にナオトの動きから今どういう過程にあるかを分析する人物もいる。
その間にもナオトは攻撃の手を緩めず外翼エンジンポッド、肩、両脚のミサイルポッドからマイクロミサイルを発射。
艦体を護るVF-171ともう1隻のステルスクルーザー艦の艦橋を破壊。
そこへ編隊を飛び出し追撃の体勢を取る2機のVF-171EX。アリスとリヴィだ。
《私が追い込む。回って仕留めろ》
「はい・・・」
やはり何処か戸惑っているのかアリスの声に生気が無い。
それでも命令通りナオトの先を取り、そこでガウォークへ変形しガンポッドを叩きこもうとする。
が、そこでYF-29Bがバック転しながらアリスの後方へ。
「!?」
「隙あり!」
すかさずYF-29Bがシールドからアサルトナイフを取り出し、VF-171EXの右脚部を切断。
「きゃあぁ!!」
更にビームガンポッドを左手に持ち替えアリスのガンポッドを破壊した後に蹴り飛ばす。
「アリス軍曹・・・だが!」
そこへアリスに気を取られている今が好機と見たリヴィが急接近し、装備されているアーマードパックの30mm重機関砲を叩きこもうとするが、それを右捻り回転させ回避しそこへ右手持ちで展開されたガンポッドをリヴィへ向ける。
「・・・!!」
一瞬の事でリヴィは反応できず、YF-29BのビームがVF-171EXを貫き、VF-171EXは黒煙を噴いた後爆散した。
それを確認したナオトは再び艦隊へ急接近。
「えぇい、たかが可変戦闘機の1機ごときさっさと叩き落とせんのか!」
ウラガ級空母にいるグレムは、未だにYF-29Bを墜とせていない事に苛立ちを隠せない。
だがその間にもYF-29Bは新統合軍のVF-171を撃墜しながらグレムの乗る空母へ接近。
「対空迎撃!」
「間に合いません!!」
空母の対空砲撃をかわし、射程内に艦橋を捉えビームガンポッドを展開しバースト出力での発射体勢。
放たれたビームは迷う事なくグレムのいる艦橋へ。
「ふざけるな・・・こんな結末、俺は認めんぞおぉぉぉぉ!!!」
グレムの叫びが虚しく響き渡り、艦橋を一閃のビームが貫いた。
それに間髪を容れずにマイクロミサイルを空母へ叩きこむ。
空母は各所で爆発を起こしYF-29Bはその場から退避。その後に空母は中央から爆発し轟沈。
そこからはまさに蹂躙劇。指揮官を失った新統合軍は指揮系統が崩壊し機能しなくなりそこに付け込まれ一方的に撃破されていった。
***
戦闘が終わったその宙域には彼女、アリスを除き誰もいなかった。
たった1機のYF-29Bにより部隊は蹂躙され壊滅した。当然救助など来るはずもない。
ただ宇宙の暗闇だけが彼女の視界を埋め尽くす。
宇宙を漂う中、アリスはもう何も考える事ができない程に疲れ切っていた。
「マスター・・・」
アリスが絞り出すように声を出した。
彼女は主人に甘えられないと感じ自ら軍に残った、だが現実はあまりにも無慈悲であった。
主人であるトシキとすごした日々が酷く懐かしく感じられた。
(マスター。できるなら・・・もう1度会いたいです・・・)
静かに涙を流し始めるアリス。
だが、その思いはもう叶わない。このまま朽ちると思い瞳をゆっくりと閉じる。
そこへ飛行機のエンジン音が近づいてくる。
それは前に見た黒地に濃青色のラインの塗装を施したVF-27γ。それに誰が乗っているかはすぐに分かった。
やがてVF-27γがガウォークへ変形しその場で留まる。そしてキャノピーが開きパイロットが姿を見せる。
「ここにいたか、01」
それは水色ツインテールの少女。
アースガルズ要撃戦で遭遇した少女、02であった。
「あなたは・・・」
「これで分かっただろう。お前を分かる事ができるのは私たちしかいない」
今の彼女に02の言葉に反論する気力が残っているはずもなく、唯言葉を聞くだけ。
「さぁ、私と共に帰ろう」
02が手を差し伸べ、アリスは一瞬躊躇い・・・その手を取った。
ED:Mirror/安田 レイ
劇中曲1:All Hail Britannia!!!/コードギアス 反逆のルルーシュ
2:The Mother Will Comes Again/ARMORED CORE VERDICT DAY