「ごめんなさい!」
例の金髪の少女の見舞いに来ていたトシキに待っていたのは、シズカからの謝罪だった。
トシキは勿論、同行しているハイデマリーも少し困惑している。
「私は貴方の事を少し誤解していました。ジン中佐から聞きました、貴方が・・・」
「あ~ストップ。まず顔上げろよ?」
頭を下げたまま言葉を続けるシズカを一旦止める。
いきなり態度を変えられるのは、トシキとしても違和感しかなかった。
「いきなり謝られても気持ち悪いし、少しずつ慣れてこうぜ?」
トシキにそう言われると、シズカは難しそうな顔をする。ついでに頬も少し朱に染まっている。
「分かりました・・・宮本、さん・・・」
(名字呼びか・・・オヤジと母さんも入るんだけどな・・・。仕方ないか)
内心微妙に思いながらも仕方なくトシキは納得する。
その後はシズカと別れ、少女のいる医務室に着く。
担当医はおらず、例の少女がベッドで横になっているだけだ。
「まだ目、覚ましてないのか・・・」
「そうみたいです・・・かわいそうですね・・・」
ハイデマリーの言葉に小さく頷き、少女の手をそっと取った時だった。
頭部の1部が軽いスパークを起こした後、少女の目がゆっくりと開きその奥の青い瞳が見える。そして少女はゆっくりと起き上がる。
「トシキさん・・・っ!」
「ん・・・?わっ!?」
一連の動作に気づいていなかった2人は、少女の行動に驚く。
「再起動シーケンス、オールクリア。通常モードを起動します」
少女の口から淡々とした言葉が出るも、少女は目覚めた。
その事実にトシキ達は歓喜しそうになるが、少女の言葉でその思考は停止する。
「・・・始めまして、マスター」
「・・・へ?」
少女の言葉にトシキはおろか、ハイデマリーもポカンとなる。
〝マスター〟。確かに少女はそう口にした。・・・トシキに向け。
「マスターって・・・俺か?」
「肯定です。今後の行動を円滑にする為私に個体識別名称の登録をお願いします」
「??」
「名前をつけて欲しい、という事ではないでしょうか?」
少女の言葉に理解が追いつかないトシキの為か、ハイデマリーが解説する。
「そういう事か?」
とりあえず理解したトシキは何か良い名前を捻り出そうとするが浮かばない。
そんな中ふとよぎった。自分が過去に呼んでいた小説に登場した、少女と同じ金髪青眼の少女の名・・・。
「・・・アリス。アリスはどうだ?安直だけどな」
「・・・個体識別名称を認識、登録しました」
そう少女は言うと、ゆっくりとベッドから起き上がり、トシキに頭を下げる。
「私はあなたの従者として務めを果たしていく事を誓います。これからよろしくお願いします」
「あぁ・・・こちらこそよろしく・・・」
アリスと名付けた少女から挨拶を受け、思わずトシキも挨拶を返す。
トシキとアリス、主人と従者という奇妙な関係がここに誕生した。
その後に担当医が部屋に入り少女が起きていた事を慌ててジンに報告。
アリスの検査が行われその時にアリスがトシキをマスターと呼び、関係を疑い問い詰める者やその発言に笑う者で、トシキが赤面し悶えたのは別の話。
とある惑星、某所・・・。
夜空に舞うシアンカラーの細長く曲線的な形状の可変戦闘機。
その開発を任されていたであろう男たちがその可変戦闘機のデータを取っていたところに、黒いマントを纏った青年がやってくる。
「どうだ、準備の方は?」
「順調ですよ閣下」
開発者のリーダーであろう男がそう返答し、再び上空の可変戦闘機に目をやる。
「VF-27と同型のFF-3011/Cを搭載し、スーパーパックも装備できます。更にISC、リニア・アクチュエーターも装備。現行機にも引けを取らないどころか負けるところが想像できませんよ。ウチの〝SV-51λ ネヴァン〟は」
ED:Waiting for the rain/坂本 真綾