いつまでもボコだと思うなよ   作:忍者小僧

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17 堕ちはじめる男

金田と別れた後、久しぶりに飲んだ酒に酔いながら、夜道を歩いた。

社員寮のアパートのそばの自販機で水を買い、それを飲み干す。

ふと、先ほどの着信音が気になった。

カバンに入れていた携帯を取り出し、メールフォルダをチェックする。

金田からのメールを受信していた。

どういうことだ?

先ほどの着信音は金田からのメール?

別れた直後に僕にメールをしたのか?

少し不思議に思いながら、受信したメールを開く。

 

≪プレゼントだ。≫

 

そんな簡潔な一文とともに、添付ファイルがあった。

添付ファイルにアクセスすると、動画が流れ出した。

 

「!!」

 

驚いて僕はすぐにその動画を閉じる。

それは、先ほど金田が僕に見せた冷泉麻子のポルノ動画だった。

誰かに見られなかったか、僕は周囲を見渡す。

擬似とはいえ、ロリ系の女優だ。

他人にいらぬ誤解を与えたくない。

…………。

幸い、周囲には誰もいなかった。

真夜中の漆黒の闇が、空洞のような道路を覆っている。

僕は胸をなでおろした。

 

「テロかよ」

 

呟きながら、自室の鍵を開ける。

部屋に入ると、疲れが湧き出してきて、僕はベッドに突っ伏した。

金田にメールを打つ。

 

≪プレゼント、見ましたよ。まさかあの動画とは≫

 

すぐに返事が来た。

 

≪うれしいだろ? 楽しめよ、総一郎。≫

 

僕はため息をついた。

 

≪せいぜい楽しませていただきます≫

 

皮肉交じりの返信をする。

メールを打ち終えると、仰向けになり、アパートの天井を眺めた。

安っぽい、ぼろいアパートだ。

電球が吊り下げられた殺風景な天井は、薄汚れている。

ふと、鼻先に柔らかい匂いがしたような気がした。

花のような匂い。

女の香水のような。

だが、それは気のせいだろう。

香りは一瞬で消えてしまい、もうそれを辿ることはできなくなった。

女……。

体が、猛烈に女を求めていた。

だが、この部屋には女はいない。

安アパートの、薄汚れた天井、染みのにじんだカーテン、壁際に捨て置かれたカップラーメンの空容器。

これが、これが僕の世界か!

愛里寿!

愛里寿!!

君がいなければ、僕の世界はこんなにも真っ黒だ。

君だけが僕の世界を変えてくれる。

なのに、この深夜、君はここにいない。

僕は、携帯を手に取った。

愛里寿の声が聞きたかった。

電話をしたかった。

だが、時刻はもう23時を回っていた。

幼い少女に電話をかける時間ではない。

…………。

………………。

胸の奥がうずいた。

激しい波がやってきて、僕の根っこを揺さぶるようだった。

まるで、『セクシュアル・ヒーリング』のマーヴィン・ゲイだ。

荒れた海を漂うちっぽけな船だ。

酔っていた。

頭が、判断力をなくしていた。

僕は、携帯のメールフォルダにアクセスした。

金田の送ってくれた動画。

まだ、消していなかった。

それにアクセスする。

画面の中に、小柄な少女が現れる。

冷泉麻子。

冷泉麻子。

冷泉麻子。

小さな、幼い少女に見える。

この女は、まるで愛里寿みたいな年齢に見える。

くそっ!

くそっ!!

僕は、画面に見入る。

見入る。

見入る。

画面の中で、少女が、大柄な男に上から押さえつけられている。

男は犯罪的な大きさだ。

小さな冷泉麻子との対比が凄い。

そんなに大きい男が、冷泉麻子のような小柄な女の上に乗り、押しつぶさんばかりに腰を振っている。

飛び散る汗・汗・汗。

なんだ、これは!!

なんなんだ!!!

何で僕は!

 

こんなにも、興奮、しているんだ!!!!?

 

僕は、しごいていた。

自分のペニスを。

飛び散る。

飛び散る。

飛び散る。

それは。

 

きっと僕の汗だ。

 

 

息も絶え絶えに、ベッドに仰向けになる。

やってしまった。

金田の、擬似ロリ動画で、ヌいてしまった。

動画……。

消さなくて、よかった。

それが、そのときの僕の、正直な気持ちだった。

金田から送られてきた瞬間は、部屋に戻ったらさっさと消してしまおうと思っていたのだが。

まさか、こんなにも、『使えるもの』だとは。

頭の奥がチカチカとした。

感情や感覚、価値観が、塗りかえられている。

 

…………。

 

僕は、携帯を、握り締めた。

もう、それなしでは生きていけないような気がした。

 

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