いつまでもボコだと思うなよ   作:忍者小僧

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22 愛里寿とカラオケデート③

頬をパチンと叩き、正気を取り戻す。

大事な愛里寿を相手に、何を考えているんだ。

それに、愛里寿はまだ子供なんだぞ。

あんな幼い、ボコのプリントパンツを穿いているぐらいなんだ……。

だが。

脳裏に焼き付くように、まさにその幼いパンツが思い浮かぶ。

くそっ。

僕は邪念を振り払うように首を振り、愛里寿の手から、リモコンを受け取る。

その時、彼女の細い指先が、僕の指先にちょんと触れた。

小さい。

そして、温かい。

子供の体温だ。

そのことに、ドキッとする。

 

「総一郎さん?」

 

愛里寿がきょとんとした目で僕を見つめる。

僕は言った。

 

「ごめん。ちょっとぼんやりしてた。こっちのリモコンはね、フードメニューを頼むためのリモコンだよ」

 

自分の声が上ずらないか心配だったが、思ったよりも冷静に言葉を紡ぐことができた。

 

「フードメニュー?」

「うん。ほら、こうやってクリックすると、いろいろオーダーできるよ」

「わっ。本当だ!」

 

愛里寿はもの珍しそうに目を輝かせる。

 

「どんなメニューがあるのか、見てもいい?」

「うん」

 

すると、奥の真横にピタッと肩を並べて座る。

小さな体が僕に密着する。

 

「総一郎さん、次のページにクリックして?」

「う、うん……」

 

僕は再び、高まる心臓の鼓動を感じながら、リモコンのフードメニューを次々に表示していく。

 

「あ、今の! 止まって?」

 

愛里寿がメニューの一つを指さす。

それは、おいしそうなソフトクリームだった。

 

「食べ物だけじゃなくて、おやつもあるんだ……」

 

感心したようにつぶやく。

 

「愛里寿、食べたいの?」

「食べたいっていうか……」

「??」

「ほとんど食べたことないなって思って」

「え? ソフトクリームを食べたことないの?」

「うん。お母さまが厳しいから。島田流の跡を継ぐものとして、徹底的な体調管理を推奨されていて、お菓子とかもいろいろと制限があるの」

 

なるほど。

さすがは、戦車道の家元の家系だ。

逆を言えば、そこまでの努力があるからこそ、こんなにも幼いのに飛び級をするほどの実力と業績を獲得することができたのだろう。

僕は、先ほどまでの、欲にまみれた自分が恥ずかしくなった。

愛里寿い、めったに食べたことのないソフトクリームを食べさせてやりたくてたまらなくなった。

けれども、それが彼女を苦しめることになりやしないかも心配だった。

ちょっとした気の迷いでソフトクリームを食べて、それが体調管理に悪影響を及ぼしたら……。

いや、だけど。

今、彼女に、年相応の喜びを与えてやれるのは僕だけのような気がする。

僕は、意を決して愛里寿に問いかけた。

 

「ねぇ、愛里寿。ソフトクリーム、注文してみない?」

「え?」

 

愛里寿が、じっと僕を見る。

つぶらな瞳に吸い込まれそうだ。

その瞳は、まるで僕を値踏みしているようにも見える。

だ、ダメか?

 

あきらめかけたころ、愛里寿がほほ笑んだ。

 

「そうね。総一郎さんが勧めてくれるなら、ソフトクリーム食べたい!」

 

僕は自分が認められたような気分がしてうれしくなった。

 

「それじゃ、さっそく注文しよう!」

「あ、私がやってみたい!」

「いいよ。ほら、ここをタップして?」

「こう?」

「そうそう。そうしたら、個数を選択して……」

「総一郎さんも食べるよね?」

「あ、僕は甘いのは……」

「一緒に食べようよ」

 

愛里寿に頼まれると、断れない。

ソフトクリームを二つ注文した。

その間、特段歌う歌もないので、なんのなくボコの映像付きのカラオケを流す。

愛里寿は喜んでそれに見入っていた。

やがて、ソフトクリームが運ばれてくる。

ノックの音。

 

「はーい!」

 

愛里寿が扉を開けると、例の受付の女の子がいた。

手にはお盆を持っている。

 

「ありがとう! でも、お客様は開けてくれなくても大丈夫だよ?」

 

優しげに微笑んで、二つのソフトクリームを机に置く。

 

「お姉さん、見て?」

 

愛里寿が受付の女の子……西住という名札の子の袖を引っ張って、画面を指さす。

 

「ボコのPVだぁ!」

 

西住さんが嬉しそうに言った。

腕時計をちらっと見て

 

「一小節だけ歌ってもいい?」

 

愛里寿に問いかける。

愛里寿が大きくうなづくと、手にマイクを持っているフリをして、Aメロを少しだけ歌う。

目を閉じて、振り付け込みだ。

すごいな、この子。

歌詞を覚えているのか。

 

「それじゃあね~」

 

西住さんが出ていくと、愛里寿が僕に言った。

 

「私、あのお姉さん好き」

 

確かに二人は気が合いそうだ。

 

「愛里寿、続きを歌う?」

「ううん。ボコの映像を見ながら、ソフトクリームを食べるわ」

「そうだね」

 

僕は、テーブルのソフトクリームの一つを手渡した。

 

「ありがとう」

 

僕も、自分の分を食べる。

久しぶりに食べると、甘くておいしいな。

そのことを伝えようとして、顔を上げると。

愛里寿の股間の白い布が目に入った。

彼女は、さっき扉を開けた後、僕のちょうど向かいに座りなおしていた。

狭い部屋ならテーブルが邪魔で見えなかったかもしれないが、受付の西住さんが少し広い部屋に通してくれていたせいで、向かいに腰掛ける愛里寿の股間はなんの障害もなく見えていた。

ソファに腰掛けた拍子に、スカートがめくれあがったのだろう。

そんなことに全然気が付かず、一生懸命ソフトクリームを舐めている愛里寿の、細くて柔らかそうな太ももとその付け根がすっかり露出していて、パンツの一部も、見えてしまっている。

なんてすべすべとした雰囲気の太ももなんだ。

そして、色白で、きゃしゃで。

その細い太もものつけね、股間の部分を覆い隠す、白いパンツ。

少しもこっとした素材感が、いかにも子供らしい。

足ぐりの部分の中ゴムのぴちっとした感じが、アンバランスで、何ともいえないエロスを感じさせてしまう。

もう少しスカートがめくれたら。

お尻の部分だけではなく、前面にも、ボコのプリントがあるのだろうか?

見たい!

それを、見たい!

僕は、息が荒くなっていることを自覚していた。

やばい、やばい、やばい。

血が頭に上っている。

 

ぽたっ。

 

その時、何か冷たいものが、僕の手の甲に落ちた。

 

「え?」

 

それは、ソフトクリームの滴だった。

 

「あ、わわわ」

 

しまった。

溶け始めている。

僕は慌てて、ソフトクリームを舐める。

 

「ふふふ」

 

そんな僕の様子を見て愛里寿がほほ笑んだ。

 

「総一郎さん、ソフトクリームは苦手?」

「そ、そんなことはないよ?」

「総一郎さん、なんか、可愛い」

 

可愛いだと?

僕が?

たった今僕は、頭の中で君に、劣情を抱いていたんだぞ?

気が付いていないんだ。

だからこんなに無邪気なんだ。

くそっ。

 

僕は聞こえないように小さく舌打ちして、気を紛らわせようと、曲検索を始める。

歌うのは苦手だけど、なにか、なにかしていなくちゃ、おかしくなりそうだ。

何か、落ち着いたもの……そうだ……ジャズ、ジャズのスタンダード……。

『ジャンル』のジャズをタップして、アルファベット順に、曲名を眺めていく。

やがてその中に、『Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry』が現れた……。

 

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