本来ならば、毎日でも画像を受信したかった。
それぐらいに心が疼いていたが、あえて一週間待った。
一週間というのが人間の行動をはかるうえで一つの区切りだと考えたからだ。
それに、ジョギングのついでに通り過ぎるだけならばともかく、人の家の前でノートパソコンを広げてデータを受信している姿を頻繁にさらしたくはなかった。
夜間に受信に行くか、日中に受信に行くか、早朝に受信に行くか迷った。
一瞬、深夜にしようかとも思ったが、考え直してあえて日中にした。
真夜中にノートパソコンを広げていると、ノートパソコンの光で目立って仕方がないからだ。
僕は就職のときに使ったスーツを着込み、ビジネスマンがノートパソコンを広げているのを装うことにした。
幸い、愛里寿のアパートのそばに小さな児童公園があった。
無線ルーターが電波を飛ばすことができる範囲は半径一五メートルだ。
そこはぎりぎり射程範囲に入っていた。
街には、小さな児童公園が点在していた。
法令上、児童公園の近くにはラブホテルなどのいかがわしい施設を作ることができない決まりがある。
風俗上の規制のために、ある時期に児童公園を次から次に作ったのだろう。
だが、その気遣いが、逆に今、この僕に盗撮のために利用されている。
そのことに強い興奮を覚えた。
データを受信し、自宅に帰る道すがら、勃起が抑えられなかった。。
スーツを着用しているときに勃起すると、随分と股間が気持ち悪い。
普段作業着しか着ない生活をしているから、それは新しい発見だった。
家に帰り、ノートパソコンを机の上に置く。
受信したデータファイルをクリック。
とうとう、愛里寿の部屋の盗撮画像を見る時がやってきた。
画像は予想以上に鮮明だった。
音声もそこそこクリアに撮れている。
技術の進歩はすごいものだ。
画像は、僕が愛里寿の部屋にいるところから始まっていた。
一週間前の画像だ。
改造ボコを棚の上に設置し、僕が帰っていく。
手を振って僕を見送ってくれた愛里寿が、にこにこと微笑みながら部屋に戻ってきた。
愛里寿は部屋に戻ると一直線に、ボコに近づいてくる。
可愛い顔が画面に大きく映る。
すごくうれしそうな笑顔で、いとおしそうにボコを見つめている。
「ボコ……かわいい」
愛里寿がつぶやいた。
「えへへ。これから、ずっとお友達でいてね」
それはボコへの言葉だ。
僕はその言葉に胸が締め付けられそうになる。
ぬいぐるみに話しかけているんだね、愛里寿。
なんて子供っぽくて愛らしいんだ。
「お名前、どうしようかな」
愛里寿がほんの少し思案顔をした。
「総一郎さんがくれたから……そ、総一郎ってつけちゃおうかな」
愛里寿が頬を赤く染める。
そして、ボコに向かって、呼びかける。
「きょ、今日からあなたは、総一郎よ……。あぅ、な。なんかやっぱり恥ずかしい! ぼ、ボコ! やっぱりボコはボコだよね、うん、あなたはボコ!」
僕はきっとこの瞬間、画面上の愛里寿よりも頬を赤くほてらせていただろう。
僕は、画面の中の愛里寿を抱きしめたくなる。
「ボコ……」
愛里寿が、うるんだ瞳でボコを見つめている。
「総一郎さんが、くれた、ボコ……」
紅潮した彼女の頬が、妙に艶っぽい。
あんなに幼くて、無垢なはずなのに、どうしてなんだ。
女の匂いが、ここまで感じられそうだ。
「……んっ」
愛里寿が、うつむいて、吐息を漏らした。
何やらもじもじとした様子で、スカートの裾をつかむ。
どうしたんだ、愛里寿?
「……あぅっ……」
愛里寿は、恥ずかしそうに、何かに戸惑うかのように、スカートの裾をつまんだ指に力を込める。
そして、一瞬のためらいの後、スカートの内側に、手を入れた。
それは、信じられない光景だった。
愛里寿の細い腕が、自らのスカートの中に入っていく。
もぞもぞとした動き。
スカートではっきりとは見えないが……まさか、股間をまさぐっている?
愛里寿?
まさか、君は、オナニーをしているのか?
「ん、んぅっ」
愛里寿の幼い細い声が、信じられないような色っぽい喘ぎを上げた。
「あ、あぅ……」
慣れない手つきでもぞもぞと、まるで自分自身の行為におびえているような表情をする。
そして彼女は、ちらりと、ボコを見た。
ボコと目が合った気持になったのだろうか。
恥ずかしそうに目を伏せる。
そして。
「ボ、ボコは、見ちゃダメ……」
そう呟いて、ボコの顔に、可愛いレースのハンカチをかけた。
そのせいで、画面がほとんど見えなくなる。
けれども、うっすらと、愛里寿の行動は見えた。
彼女は、ベッドへと移動している。
そして、おそらくは、四つん這いになって、お尻を突き出して。
下着越しに、股間をまさぐり始めたのだ。
僕は心臓が止まる思いだった。
何か着替えでも映ればと思っていたが、まさか。
愛里寿のオナニーに遭遇するなんて。
「んくっ、んぅぅぅ……」
画面にはうまく映っていないが、ガサゴソという衣擦れの音と、ぬちぬちと何かをこする音、そして愛里寿の、もどかし気な声が聞こえる。
はっきりと見えないことが悔しい!
くそっ。
僕は、心が破裂しそうになった。
しばらく後、ボコの顔を覆っていたハンカチがどけられた。
頬を上気させ、照れたような表情の愛里寿がそこにいた。
彼女は、スカートを脱ぎ、かわいらしい下着を露出させていた。
今日はボコのプリントパンツではなかった。
淡いブルーに、細かいドット柄が入ったスポーティーな雰囲気のパンツだった。
スーパーで売っているような、安っぽい子供パンツだ。
そのことがなおさら僕の嗜虐心を駆り立てた。
うまく映りきっていない。
そのパンツ越しに、割れ目をこすったのか?
大事なところのカタチ沿いに、湿っているのだろうか?
「ぼ、ボコ……。目隠し、しちゃって、ごめんね」
愛里寿がうつむく。
あぁ、ぬいぐるみ相手に本気で恥ずかしがっている。
その様子がたまらなくいとおしい。
ピンポン。
「え?」
唐突に、チャイムが鳴った。
戸惑いの声を上げたのは、僕も愛里寿も同じだった。
だ、誰だ?
誰がやってきた?
画面の中の愛里寿も、わたわたと慌てている。
もう一度、チャイムが鳴る。
愛里寿が、慌ててドアスコープをのぞき込む。
そして、はっと驚いたようになり、「い、いま開けます」と言っているのが聞こえる。
ど、どういうことだ?
愛里寿が急いでスカートを穿く。
そして彼女は、扉を開けた。