死を視る王   作:水天宮

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遅れて大変申し訳ありません。
さくさく進めていきます。






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特異点に降り立って真っ先に視界に飛び込んできたのはとんでもない砂嵐だった。

猛烈なまでの砂の世界に苦しみながらも、どうにか指示を出す。

オルレアン以降、特異点にレイシフトした直後にはセイバーとキャスターのアルトリアに偵察と斥候を任せるのが習慣となっていた。

高い白兵能力を持つセイバーに、多彩な術を行使するキャスターは、特異点修復の重要戦力として常に活動してきた。

 

 

 

砂の向こうに二人が消えるのを見送った後、俺たちも俺たちで行動を開始した。

その後、ハサンとの戦闘、ニトクリスとルキウスとの邂逅を経て、ニトクリスの案内のもと、オジマンディアスの大神殿へと向かった。

何やらてんわやんわあったとはいえ、それなりの情報提供と資源を譲ってもらい、気を改めて聖都を目指して進むことにした。

 

 

『──わかった。んじゃそこで合流しようか。でも気を付けてね、割とキナ臭いから』

『少なくとも史実における十字軍は一切確認できません。完全に異なるモノが、この特異点に存在しています。気をつけて』

 

 

二人のアルトリアからそんな忠告を受け、気を引き締めて聖都へと向かう俺たちカルデア一行。

道中、十字軍の敗退に驚愕するドクターとの漫才もしつつ、ダヴィンチちゃん特製マシンに乗って特異点の荒涼とした大地を走っていく。

 

 

 

 

だが。

その道中、サーヴァントが対峙する光景に遭遇した。

アーチャーのサーヴァントと思われる男。

ハサンの一人だろうアサシンのサーヴァント。

助けに行こうとするも、見たことのない緊迫感をにじませるダ・ヴィンチちゃんに制止された。

 

曰く、「ギフト」であると。

 

その言葉を飲み込み、意味をかみ砕こうとする中、アサシンのサーヴァントがに取引を申し出た。

自分の命は差し出すから、後ろの民草のことは見逃してほしい……と。

 

 

 

 

だが────

 

 

「その必要はありません、というより……その男はその程度の取引では止められませんよ、アサシン。貴殿はまっすぐ村まで逃げなさい」

 

 

不意に、銀の輝きがアーチャーを斬り裂かんと空を走った。

遅れて深く美しい青の衣が優しく翻る。

……セイバーのアルトリアが、アサシンとアーチャーの間に割って入ったのだ。

 

「貴、方……は──────」

「アサシン。ここは私が受け持ちます。どうか貴方は民を連れて逃れなさい。私の仲間が先導します。さぁ、急いで! こちらも時間はありません!」

「しかし、というか、貴様は……!」

「はいはいそこまでー。ホラ行くよ煙酔のハサン。こっちこっち! みんなも早く!」

 

どこからともなく現れたキャスターのアルトリアが眩い紅蓮の焔を右手に灯し、高く掲げてアサシンと民を誘導する。

戸惑いを見せながらも民は静かに従い、数十メートルほど進んだと思われるところで彼らの姿は一切確認できなくなった。

恐らく、隠蔽の魔術だろう。

 

 

それを見届けたセイバーのアルトリアは、改めてアーチャーのサーヴァントと向かい合う。

 

「解せない。一度は私の元から立ち去ったというのに、何故反転してまで「アレ」に従っている? 変質の果てに畜生へと落ちたとはいえ、「アレ」も私に他ならない。私の知る貴卿は歯向かう勇気を持ち合わせていたはずだ。だからこそ貴卿は私に諫言を残し、一度は円卓を立ち去った。「アレ」に貴卿が忠誠を誓う価値などない」

「騎士、王────」

「……もう一度問う。何故、眼を潰してまで、「アレ」に従っている?」

 

 

 

「……マシュ、さっき、胸が痛いって言っていたけど……」

「あのアーチャーも円卓の騎士、ということか。マシュに融合した英霊が反応しているんだろう」

「セイバーさんが言う「アレ」……これまでの状況から察するに、「獅子王」かと思われますが……いったいどういうことでしょう?」

「んー……「私に他ならない」って……また新しいアルトリアってこと?」

 

 

 

これで八人目である。

しかし、どうもセイバーのアルトリアは獅子王と思われる存在を余程嫌悪しているようだ。

これまでも、同じアルトリアの名を持つ英霊たちは自己嫌悪気味に度々喧嘩騒動を起こしていた。

セイバー称する「アレ」──獅子王と推測される英霊に対しては、一層拒絶の意を示している。

 

「──余計な時間を使ったな。この状況で必要なのは問答ではなく決闘か。……覚悟は出来ていような? だが、退くのなら止めはしない。どうする?」

「私は、悲しい……何故、何故今になって現れたのです、王……!」

 

アーチャーの問いに答えず剣を振るうアルトリア。

不意に、脳内に声が響いた。

 

 

────マスター。今のうちに聖都へ行ってください。

 

────え、でも……いいの?

 

────彼とは知らぬ仲ではありません。キャスターもすでに避難誘導を済ませたようです。

 

────おう、ばっちりだよ。聖都でのフォローはわたしがやるからね。

 

────分かった。任せる。

 

 

「マシュ、ダ・ヴィンチちゃん。聖都へ行こう」

「そうだね。騎士王が時間を稼いでいるうちに進もうか」

 

 

こそこそと、その場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

難民の集団の護衛を行いながら、聖都を目指す。

道中、女性から話を聞くところによると、十字軍は獅子王に滅ぼされたらしい。

獅子王もアルトリアだというのなら、一体なんのために?

また、月に一度、聖抜の儀という難民を受け入れる儀式があるらしい。

他にも、山岳地帯には山の民の村があり、そこに向かった民もいるらしい。

 

 

歩を進めるうちに、日も暮れ、夜闇に一帯が覆われる。

そんな中でも、辿り着いた聖都の堅牢な白亜の城壁は堂々とその威容を示していた。

ひときわ目立つのは聖都城壁の正門。

そこだけを空けるように難民のテントが大量に並べられている。

 

追いはぎ業者とのいざこざも流しつつ、聖抜とやらの開始をまつ。

アルトリアも揃って意味深な対応を示しており、一切気の抜けない状況だ。

 

 

 

不意に、視界が一気に明るくなった。

見上げると、いつの間にか昼になっている。

難民たちが狼狽えざわめく中、武装を着込んだ騎士たちの中から一際目立つ青年が進み出た。

その瞬間、難民たちがどっと歓声を上げる。

 

 

 

円卓の騎士──ガウェイン。

 

 

 

それを目にした瞬間、ダ・ヴィンチちゃんが顔色を変えた。

今すぐ離れろと言われても、どういうことなのか全く見当がつかない。

 

『ん? マスターそこから離脱するの?』

「いや、その、まだ何が何だか……」

「キャスター。君、獅子王の目論みに気づいていたね?」

『まぁね。離脱するならしてもいいよ。ガウェイン(あのバカ)ならわたしがブッ飛ばすから』

『とりあえず、通信に割り込むのはやめてくれないかなぁ……』

 

ドクターのぼやきを聞き流しながらも、騎士の演説は続いていく。

何処からどう見ても好青年そのもの、悪行を成すとは到底思えない。

異民族も異教徒も受け入れると堂々と宣言する。

その顔は、太陽のように難民たちに希望を予感させている。

 

 

 

しかし、その空気は不意に途絶える。

正門の上に立つ一人の影を何とか遠目で確認した。

その陰は静かにと難民たちにむけて語りかける。

 

「あの声……」

「確かに、アルトリアさんと声質と酷似していますが、なんというか……」

「あぁ。無感情というか……人間味がないというか……」

『惜しいね、マスター』

「どういうことですか?」

 

アルトリアはマシュからの問いに答えず、意味深に笑うばかり。

人影が言葉を締めくくった瞬間、白い光が一帯を照らし始めた。

難民たちの群れをよく見ると、片手にも満たない僅かな人が、黄金の光を発していた。

 

 

 

「その三名のみを受け入れる。回収しろ、ガウェイン卿」

「……御意」

 

 

このやり取りに、思わず耳を疑った。

次に続いた言葉にも、さらに耳を疑った。

 

 

 

「王は貴方がたの粛正を望まれました。では────これより、()()を始めます」

 

 

 

「せい、ばつ?」

『要するに、選ばれなかった連中皆殺しってことだよ』

「な────?!」

 

周囲に並んでいた騎士たちが難民を斬り殺した……!?

つい先程までの歓声が打って変わって悲鳴と慟哭しか聞こえない。

 

 

 

 

 

「ひ──ギャアアアアアアアアアアアア……!?」

「あ、あ──殺人鬼、殺人鬼が……やめ、ガアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

不意に、背後から身を凍らせるほどの断末魔が響く。

その叫びを聞いた逃げ惑う難民がさらに表情を凍らせた。

 

「そ、そんな……よりによって、こんな時に……!」

『い、一体何が!? 突然背後から新しいサーヴァント反応だぞ!? それも……騎士王と獅子王に酷似している!! 新しいアルトリアさんだ!』

「な────どういうことだ!?」

 

思わずドクターに叫び問いかけた瞬間、笑い声が響いた。

 

 

 

「アハ、アハハハハハハハ! キャハハハハハハハハハハ! 最高! 本当に素敵! やっぱり聖罰に合わせて殺すのが一番よね! 溜飲が下がる、というのかしら? 違う? まぁなんでもいいわよね。サイッコーにハッピーなのは変わりないんだもの!」

 

 

 

その声に、骨が凍る。

聞き覚えがあるのに、聞き覚えがない。

 

背後を振り返ることが出来ない。

理性が完全に麻痺している。本能がうるさく危険を訴える。

 

 

 

「あら? あらら? ふ────うふふふ、ふふふふふふふふ! あれかしら、朝の占いコーナーは見ていなかったけれど、わたしの運勢は最高だったのかしら。でも何人かつまらない騎士に取られちゃったわね。仕方ないからあきらめましょう」

 

 

 

殺意の視線。

憎悪も憤怒も嫌悪もなく、ただ「殺す」という意思しか背中には刺さらない。

 

「残りをわたしが頂けばいいだけだもの。それじゃ、そこを動かないでちょうだいね、カルデアのマスター?」

『えぇい、この特異点には騎士王が何人いるんだ!? 藤丸君、聞こえてるかい?!』

「あ、やっぱりそこ聞いちゃう? まぁ()()()()()()がないんだから仕方ないわよねぇ、魔術──いえネタバレはNGね。とりあえず、この特異点にはわたしと、あのいけ好かない王様の二人。そしてさらにカルデアから二人の追加注文が来たところかしら」

 

 

────追加注文wwww

 

────キャスター、真面目にしなさい。

 

 

脳内に二人のアルトリアの雑談が響く。

だが、それもどこか遠くに聞こえる。

 

 

 

「それじゃ、頂こうかしらね──!」

「先輩!」

「っ────!」

 

動けない。

逃げないといけないと分かっているのに、足が地面に縫い付けられている。

終わりたくない。殺されたくない。

なのに、体が全くいうコトを聞かない……!

 

 

 

「させるものかよクソ女──────ァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

 

突然、視界が白く染まった。

耳に入るのは聞きなれた声。

 

視界が元に戻ったとき、辺りは一変していた。

正門から離れている。

いや、まだ視認できる距離にはあるのだが、あの奥に入り込む構造から、出ていた。

 

 

「へ──僕、いつの間に……?」

「さっきの光、一体……」

「あれ? えっと……私、殺されたはずよね?」

 

周囲の難民たちも戸惑い、見回している。

先程間違いなく殺されたはずの人も、五体満足で立っていた。

 

 

『うっそだろ……カルデアの機器すら気づかないほどの幻術に、あの大人数を対象にした転移魔術だって!? そんなことが可能な魔術師が、一体どこにいるっていうんだい?!』

「いるじゃないか、この人理修復の旅における、最古参の一人がさ」

 

ドクターの慟哭ともとれる自問の叫びに、ダ・ヴィンチちゃんが冷や汗を流しながら応答する。

最後尾にいたはずだが、いつのまにか、集団の最前列に立っていた。

 

 

「先輩、あれ────」

 

マシュも確かに見ていた。

太陽の騎士と、凶悪な殺人鬼に対峙する、一人の少女。

白いドレスを纏った可憐な姫のような見目。

しかし、その実、強力な魔術師でもある根源接続者。

 

 

 

「……っ、アルトリア!」

 

 

思わずその背中に叫んでいた。

焦燥に駆られる俺を安心させるように手をひらひらと振るアルトリア。

 

「自分や身内の不始末はしっかり処理しないといけないからねー。とりあえず、久しぶりガウェイン。相変わらずそうで何より。けど諦めるのは早いと思うよ?」

「……それを他ならぬ貴方が言いますか。いえ、そも何故今になって現れたのです。もはや何もかも手遅れになったというのに、何故今になって立ち上がるのです」

「あ、そういうくだりはいいから。さっきトリスタンにも似たようなこと言われたし。まぁ、厳密に言えばわたしじゃないけどね? そのあたりは置いておこう」

「あら、どうりで聖都に騎士が足りないと思ったら。ええとその……どちら様だったかしら。とりあえずその騎士さんを相手取っているのはセイバークラスの貴方(わたし)だってことね」

「そうだよー。アイツも馬鹿だよねー。人の心が分からんとかほざいておきながらよくもまぁ獅子王に従えるもんだ。獅子王(アイツ)ってKYの権化みたいなものだよ?」

「そんなこと言ったの? わたしが言えたことじゃないけど、頭おかしいんじゃないかしら?」

「本当に人のコト言えねーな! ……いやまぁ、わたしもなんですけどね?」

 

高度な自虐、と受け取るべき……なのか?

一見して話が盛り上がっているようだが、その実息苦しいほどの緊張感に満ちている。

難民たちも固い表情でアルトリアたちのやり取りを見守っている。

 

「でも、これは本当に急いだほうがよさそうだわ。とうとうカルデアのマスターが来てしまったもの。わたしの薔薇色ロマンス&パラダイスも終わりが近いということね。それじゃ……とっととそこのご馳走の山を平らげるとしましょう。でも、味わうことも食事には必要よね!」

「させるかよアンポンタン。何のためにわたしがわざわざ、そう……わ・ざ・わ・ざ! ここまで来たと思ってるの? 仕事だよ! あと暇つぶし!」

「え、殺したいからでしょう?」

「半分正しいのがムカつく」

「あら意外。どうせわたしなんだから、てっきり殺意に目覚めたのかと」

「それはお前だけだ。確かに同一存在だけど、もうすでにお前たちはわたし達から乖離し独立した存在になっているんだよ」

「……問答は無用でしょう」

 

アルトリアと殺人鬼の雑談を無理やり止めるように剣を構えるガウェイン。

それに呼応するように、双剣を握りしめる殺人鬼、そして掌を二人に向けるアルトリア。

 

「貴方たちはこの聖都を穢す害悪。即刻処理させていただきます」

「よく分かってるじゃん。アーサー王はどう頑張っても怪物でしかないってことだね」

「考えてみれば、怪物の王様も、忠誠を誓う騎士も、滑稽でしかないわよね」

 

その言葉を皮切りに、三つ巴の戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

----

 

 

 

スーパーシキトリア大戦とはすなわち、特異点規模の自分殺しのことである。

 

 

 

シキトリアさんは基本的に自分が嫌い。

自分の嫌いなところがモロに出ている独立体は本当に不快。

 

 

 

というわけで新たなる独立体

・獅子王

本質と称される。神霊化している。管理・保存が目的。

・殺人鬼

本性と称される。とりあえず人を殺すことが目的。殺意のアルターエゴとも。

 

 

 

 

 

~現在の第六特異点~

 

セイバー「何でアイツに従ってんの? 人の心分からないって知ってるでしょ?」

トリスタン「勘弁してくれ(´;ω;`)」

 

キャスター「死ね」

殺人鬼「死ね」

ガウェイン「(何だか肩身が狭いなぁ)」

 

ラン「なにこれぇ」

アグ「なにこれぇ」

獅子王「……」

 

ベディ「(あばばばばばばばばばばばば…………)」

 

???「すやぁ(˘ω˘)」

モーさん「父上ぇ……(´;ω;`)」

??「どうしてこうなった\(^o^)/」

 

???「ニヤニヤ」

????「すやぁ(-ω-)」

 

観測魔「おもろいことになったwww」

回線「\( 'ω')/ウオオオオオアアアーーーッ!」

 

 

 

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