わりと展開はやいです
……本格的に直死の魔眼が関係なくなってきたなぁ
明確に敵味方が二分されていない状況下での戦闘ほどやりづらいものはないと思う。
第五特異点でも、エジソンたち合衆国側と手を組む以前は少ないけれど頼れるサーヴァントたちと共に戦っていたけれど。
それでも、何をすればいいのか、この先どんな手をとってどのような道を進むべきか、ひどく迷った記憶が今も色濃く残っている。
だが、それに比べて、眼前で三つ巴の死闘を繰り広げるアルトリアは本当に迷いがない。
ガウェインと殺人鬼も同様とはいえ、それでも長く共に旅をし、共にあらゆる戦いに身を投じ、仲を深めたからだろうか。
正直なところ、アルトリアが一切の迷いを見せなかったことには、非常に驚いた。
なにせ、彼女からは円卓の騎士たちの話を何度も聞いていたのだ。
深い信頼を寄せていた……否、今なお寄せていることを知っている。
アルトリアが常人の理解を超えた存在であることは知っていたけれど。
……いや。
俺は、ただ知っていただけなのかもしれない。
アルトリアの背後に展開された無数の魔法陣から次々と伸びる光の柱。
粛正騎士たちを焼きつぶしていく。
堅牢な銀の鎧はたちどころに砕け溶け、内側から鮮血が漏れている。
それ以外の一般兵士と思われる人々は、大した攻撃も加えることなく殺人鬼の刃に屠られていく。
魔術に焼かれ、双剣に斬られた騎士の死骸が白亜の聖都に見合わぬ装飾を施している。
そんな中でも、騎士ガウェインは毅然と立ち、太陽の聖剣を振るっていた。
殺人鬼と難なく斬り合い、降り注ぐ魔術の光を視線もむけずに回避する。
念話で伝えられる彼が所持している特殊能力──曰く、
「不夜」と名付けられたそのチカラ。
彼の立つ地を永遠に昼間にし、聖者の祝福を永遠に持続させるもの。
……うん、無理ゲー?
なにせセイバーのアルトリアがまず勝てないと断言するくらいだ。
いやどちらにせよいずれは戦わなきゃいけないし倒さなければならないのは確かなのだけれど。
ううーん……マジか……三倍パワーと真っ向からやり合うとか……どうしよ。
────夜にすれば問題ないって。
いや貴方はそうかもしれないけどね。俺たちはそうもいかないの。
ていうかそんなこと出来んの? まじで?
「じゃあやるね。といっても、三十秒だけなんだけど」
小さくアルトリアが呟いた瞬間、視界が一気に暗くなった。
へ、と呆けた声を上げて空を見上げる。
そこにあるのは青空であるはずなのに墨汁で塗りたくったように真っ暗である。
よく見ると、星々が輝いているのが見える。
「……ガチで夜になってるッ?!!?!!?」
「さて、どこまで削れるかな」
そう言い残したアルトリアはその場から掻き消えた。
何処に行ったかと辺りを見回したが、突如として打撃音が耳に入り、音のする方へと目を向けた。
だが、視界にアルトリアの姿を入れた瞬間、思わず目を疑ってしまった。
なにせ、ガウェインが思いっきりアルトリアに殴られていたのだから!
「魔術は対魔力で阻害できる? 悪いね、これ実は呪術なんだよ」
「ぐっ……お、のれ……!」
「あらあらまあまあ、さすがはわたし。性格悪いわぁ」
魔術、いや呪術の炎がガウェインの肉体を灼く。
その間もアルトリアは容赦なく殴打をつづけている。
ガウェインの貌の中心に一発とても強い拳を叩き込んだのを合図に、空は黒から青に戻った。
「それじゃ、選手交代の時間だ。マスター!」
「えっ?!」
「わたしは
「ちょ、でも、え?」
「ああ……別に倒したいなら倒してきても構わないんだよ?」
そんな不吉な言葉を笑みと共に残してその場から転移するアルトリア。
あらためて太陽の騎士を見やる。
端正な顔は傷と血液に塗れ、鎧も一部が欠け、汚れに黒ずんでいる。
それでもなお、彼は静かにこちらを見つめ、聖剣の切先を向けた。
「……先輩」
「ああ。行こう、マシュ」
***
Side:アルトリア・ペンドラゴン
掌に魔力を込めて、敵に向けて放つ。
それを双剣で斬り伏せ、わたしに斬りかかる殺人鬼。
上体を傾けて回避。殺人鬼の腹部に掌底を叩き込む。
奴は吹っ飛んだけれど、くるりと宙で一回転し、着地して跳躍で刺突を試みる。
離れたりくっついたりの繰り返しの中で、わたし達は互いにその
だがまぁ、やっぱり自分であるというか。
中々決着もつかず、殺そうとして殺されそうになるの反復運動になっている。
「向こうが気になる?」
「そりゃあね。けど、今はお前が優先だ」
「ふふ」
会話も時折挟まれるけど、それでもどこか単調な殺し合い。
このわたしでさえ退屈さを感じているのだ。目の前の殺人鬼は苛立ちで頭が爆発しそうになっていることだろう。
────マスター。ガウェインに集中して。
────いや……そっちが色々とヤバすぎて集中できない!
────え? 何で?
「うふふ。あの騎士さんも何だかこっちを気にしているわね。何故かしら?」
「お前みたいなやつが目と鼻の先にいたら誰だって気にすると思うけど」
よくよく考えてみれば、根源接続者同士の戦闘をマスターは見たことがなかったか。
両儀のヤツと一緒に某監獄塔まで殴りこんだことはあったけど。
カルデアに両儀が召喚されてから、真っ向から殺し合うことはなかったと思う。
結局、監獄塔はぶっ壊れちゃったからなぁ。折角いい感じの遊び場を見つけたのに。
後で直しとくか。
────だから召喚当時、巌窟王は疲れた顔をしていたのですね……。
────え? そうなの? 居合わせなかったから初耳。
「アルトリア!!! 念話で変な雑談するのやめて!!!!」
「はぁい」
「あらあら、怒られちゃったわね?」
割と離れているし、向こうも戦闘真っ只中なのに、丁寧に声を上げるマスターは本当に律儀だ。
何はともあれ、マスターたちから見ればわたし達の戦闘は文字通り天災に見えているのだろう。
「まぁなんでもいいさ。それに、もう頃合いだ」
「何を────────ッ、……!?」
冷気が肌を刺す。
吐息が白く染まる。
朽ちた荒野は、瞬く間に氷と雪に覆われていた。
『い、一体何が……?! とんでもなく膨大な魔力の高まりを感知したんだけど!?』
「心配はいらないよドクター。応援が来た、それだけだよ」
「どういうこと!? 説明して! ほう・れん・そう! 大事!」
「時には自分で考え自分で行動することも重要だよマスター」
「氷……まさか────」
何かに気付いたように舌打ちし、顔を歪ませる殺人鬼。
視線を向けると、ガウェインも同じような顔だ。
「すみません、遅くなりました」
「大丈夫、まだ致命的な痛手はない。あ、トリスタンは?」
「取り逃がしました。すでに聖都内に戻っているでしょう」
「そっか。それと、そこの馬鹿が問題の殺人鬼。あっちは
駆け付けたセイバーと事務的に情報を共有する。
ガウェインの前に相対するのはマスターにマシュ、ベディヴィエール。
「────って、ベディヴィエール!? いつパーティに入った!? 割と奥の方にいたよね!? 声掛けてくれるの待ってたのに!」
「戦闘中では掛けられませんよ。何せ、
「そうだけどさぁ」
ちょっとへこむ、と思わず肩を落とした。
そしてマスターたちに加わったサーヴァントはベディヴィエールだけではない。
本来であれば、彼女から放たれる魔力は赤雷のみだけれど、今回ばかりはその限りではない。
踏みしめる脚からパキパキと氷が生まれている。
「────ははっ、随分なツラじゃあねえか。なぁ? ガウェイン」
「モード、レット……!」
睨むガウェインに嘲笑を一つ向けて、モードレットは担いでいたクラレントを地面に突き立てた。
そこから膨大な魔力と冷気が発せられ、瞬く間に難民たちを遮る分厚い氷の壁を生み出した。
加えて、地面も見る見るうちに凍りつき、ガウェインと殺人鬼は足元を凍結され、身動きが取れなくなっていた。
見る見るうちに視界が白く染まり、猛吹雪が聖都正門前で吹きすさぶ。
「今ここで殺してやりたいけど──」
「さすがに不可能でしょう。撤退しますよキャスター」
「りょーかい」
一気に上空へ舞い上がり、置き土産とばかりに特大の魔力光線を聖都の騎士たちめがけて放つ。
直撃と同時に爆発し、ピカピカと光が目を覆う。
それを確認してすぐにセイバーは難民たちへと振り返り、マスターたちを見据えながら叫んだ。
「撤退!」
「殿は任せろー!」
***
Side:藤丸立香
集団の後方で浮いているキャスターのアルトリアの何と頼もしいことか。
無論、セイバーのアルトリアも、先ほど協力してくれたモードレットも強力なサーヴァントであることは間違いない。
これまで特異点を巡る中で、後方支援の重要さとありがたみを感じていただけあり、彼女の力にとても安心感を覚える。
当然ながら、油断はできない状況なのだけれど。
数万をくだらない大集団を導きながら、今後の展望を話し合う。
「これだけの人数を共にするというのも、少し厳しいな」
『分割しますか? 一応、避難先は三か所のあてがあります』
『三か所? えっーと……モードレットと、ハサンと……あぁ、
『だから通信に割り込まないでと……それでは、集団を三分割し、それぞれ護衛をつけよう』
「まぁ、俺らんとこも、何人も受け入れることが出来るわけじゃないしな」
素早く行動指針を立て、それ基づいた行動計画を立案する。
「それじゃあ、モードレット、キャストリア、俺たち、で別れようか」
『ベディヴィエール。貴方はマスターたちについてください。私はキャスターと共に行動します』
「……しかし、それではモードレット卿に従う難民たちを守る戦力が……」
「問題ねぇよチキン野郎。別に俺は単独行動してるわけじゃねえんだ。仲間がいるからここにこうしていられる」
『そうだね。その辺りは確認済み。まだ戦力はいるから安心していいよ、ベディヴィエール』
「人数の調整もするんだろ? 暗殺者の村だって、もともといる住人を追い出すわけにもいかねえんだから」
『大多数は我々が引き受けます。マスターたちが護衛する難民は、なるべく最小限にしましょうか』
キャストリアが魔術を用いて難民たちに説明。
各々の事情に合わせた分割をセイバーアルトリア中心に行っていく。
途中、ベディヴィエールと難民との間で山の民に行う説明等の交渉も行われた。
しかし。
『ん? ──あれ、聖都の騎士? ……あ、ランスロットだ』
『エッ!? ……うわわ、本当だ! 皆、気を付けて! サーヴァント一騎と粛正騎士がたくさん! こっちに向かっている!』
「! チッ──こんな時に、空気読めよろくでなしが」
舌打ちと共にモードレットが剣を振るい、身も凍るほどの猛吹雪が騎士に向かって吹きすさぶ。
さしずめ真冬の嵐、冬将軍といったところだろうか。
雪と氷に固められた真白の防壁が後方にどーんと出来上がった。
「おい、早めに別行動すんぞ! 俺んとこは少し距離があるが、山の村はもう目と鼻の先だ! 壁も吹雪も気休めにしかならん!」
「あ、ああ! ────みんな、聞いていたか? 俺たちのことはいいから、早く!」
「すまないな、少年! ……走れーーーーーーーー!!!!」
怒号とも聞こえる叫びと共に走り出す難民のみんな。
モードレットも氷の壁と雪の嵐で別グループの難民を守りながら引っ張っていく。
すでにアルトリア二人は最多数の難民共々いなくなっていた。いや、いるのかもしれないが、隠蔽の魔術だろう。
逃がさんと粛正騎士たちが馬に乗って迫ってくる。
行動が早い。サーヴァント──アルトリアによればランスロット──が崩した壁から次々に鎧をまとった騎士が現れる。
こちらを囲もうとしているのか、左右に分かれて向かってくる。
「っ、先輩! 追いつかれます! わたしは、迎撃を──」
「いいえ、レディ。ここは私が……」
「いや、あの数はベディヴィエール卿じゃ無理でしょ。あー、残念。円卓の騎士がひとりだけなら任せたんだけどなー」
「ダ・ヴィンチちゃん!? ちょっと、なんでバギーになんか乗ってるの?!」
そこからは単身自爆特攻しようとするダ・ヴィンチちゃんとの押し問答だ。
本当の出番だとか、最後の出番だとか言っているけれど、冗談じゃない。
ダ・ヴィンチちゃんは俺たちになくてはならない存在だ。こんなところで失う訳にはいかない!
『大丈夫だよマスター。生存の保障はできるから』
「キャストリア……」
『まぁ実際、誰かがランスロット達を押し留めなきゃいけないわけだし? それに最終的には……』
「ん? 何か言ったかい、アルトリアちゃん?」
『べっつにー! ほら行ってきなよダ・ヴィンチ! アルトリア、ド派手な打ち上げ花火見たいなー! 下からと横から、どっちかな!』
「うーん、このクズっぷり。殺人鬼もかくや。まぁいいや。それじゃあ、仕事をしようじゃないか。ダ・ヴィンチ、行きまーす!」
そう言って、そのままダ・ヴィンチちゃんは行ってしまった。
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原作通りなところは飛ばすなりはしょるなりしていきます。
「凍結」
モードレットの
氷の生成・雪の発生などを行使する。
今回に限り、モードレットは「魔力放出(氷)」を取得している。
シキトリアさんたちが向かった先はランスロットの難民キャンプ。
まだ話はついていないけどまぁ大丈夫、と楽観的に考えている模様。
>両儀のヤツと一緒に某監獄塔へ殴りこんだ
~四日目~
両儀「こんにちは」転移
ジャンヌ「!?」
巌窟王「」
~六日目~
シキトリア「はろー!」爆発
ジャンヌ「ひえっ」
天草「ファーwwwww」
巌窟王「」
単独顕現の無駄遣い。
ちなみにシキトリアさんは式→式ちゃん、「両儀式」→両儀、と呼び方を変えています。
~この後の第六特異点~
キャスター「やあ」
セイバー「やあ」
ラン「アイエエ!? ワガオウ!? ワガオウフタリナンデ?!」
モーさん「ただいまー」
??「おかえり」
???「相変わらずそうだな」
??「だな」
???「(˘ω˘)スヤァ」
???「しばらく静観」
????「すやぁ(ーωー)」
ガウェイン(凍結)「さぶい…」
殺人鬼(凍結)「ピキピキ(^ω^#)」
観測魔「もりあがってきた」
回線「うわぁ……」