死を視る王   作:水天宮

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マリーは激怒した。いや正確には激怒ではないのだが、とにかく怒った。必ず、かの女子力底辺のマスターをどうにかしなければならぬと決意した。

マリーには21世紀の平民の暮らしがわからぬ。マリーはフランス革命期の王妃である。身体を着飾り、化粧をして暮らしてきた。けれども度重なる戦闘で少女らしさがほぼすべて欠落したマスターに対しては、人一倍危機感を抱いていた。


そう、女はいつの時代も、どこの文明でも、自らを美しく飾り立ててきた。現代でも変わらない。21世紀でも、女は変わらず己を磨き上げている。むしろ、文明の発展により、かつてないほど美しく在る機会に恵まれているのではないだろうか。



だが。
だがしかし。
我がマスターはどうだ。
身に着ける服といえば礼装、礼装、そして礼装。中には愛らしい意匠の礼装もあれど、マスターはてんで魔術の道具としか見ぬ。誰一人として、マスターのおしゃれな私服を見たことがない。年頃の乙女なのに、着飾らない。
化粧もしない。マリーは知っている。マスターの肌荒れがひどくなっていることを。マスターの唇がかさついていることを。洗顔フォームも、化粧水も、リップクリームすら使わないことを!



これはいけない、とフランスの王妃は叫んだ。
協力するわ、とコルキス魔女は裁縫道具を手にした。
ついでだから後輩も、とコノートの女王は笑みを浮かべた。

でも、大した事件にはならないだろう、と赤い外套の弓兵は楽観した。


「マスターとマシュはおいそれとカルデアからは出られない立場だ。だから、うん、平行世界までお買いものしに行こうぜ! え? 時計塔? だいじょーぶだいじょーぶ、ばれないばれない!」

後にある男性サーヴァントはこう語る。
「女って怖い」と。



亜種平行世界 少女意識改革




***

とかなんとか考えてたら間が空いていました。
続きです。





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Side:アルトリア・ペンドラゴン

 

さて変わりましてこちら深夜のランスロットの難民キャンプ。

わたしたちが護衛していた集団とこちらに元々いた面々で知り合いも何人かいた模様。感動の再会があちらこちらで起きていた。

その後、戻ってきたようやくランスロット(瀕死のダ・ヴィンチもいた)と交渉し、彼らを受け入れることにした。

余裕なんてないだろうに、それでも預かってくれるわけだから、こちらも相応の働きをしないといけない。

難民や騎士の生活環境を整え、この地を護り隠す結界を張り、ハサンたちの村やモードレットの城との連絡役を請け負った。

要は雑用係である。

ぶっちゃけランスロットと彼に従う騎士、そしてわたし×2という過剰戦力でやることなんてないんだなこれが。

本来ならダ・ヴィンチにも手伝ってもらいたいところだけど、あの怪我ではそうも言っていられない。

 

「ふふふーさすがはランスロット、縮めてさすラン。獅子王の命に馬鹿正直に従わないでこういうことしちゃうんだもんねぇ」

「そうですね。現実を受け止めながらも柔軟に対応し、打開策を作り出す。自分が思う、最善を諦めない」

「円卓における最高の騎士にふさわしい。だからこそ、わたしはお前を重んじたんだし、ギネヴィアを託したんだから」

「……恐縮です」

「あれ、わたし変なこと言った? 顔しっぶいよ?」

 

またしても人の心が分からなかったか。

 

「いえ、なんでも。──それで、王よ。今後はどうなさるおつもりですか」

「機を見て聖都に攻め入る。モードレットも一緒だし、エジプト側も引き込むよ。けどそれはもうちょっと先の話だと思うな」

「オジマンディアス王と交渉する必要もありますからね。他のサーヴァントと連携をとるにも、準備が必要です」

「少なくともレディが復帰するまでは待つということでよろしいでしょうか」

「そうだね。それまでに、特異点放浪してる三蔵ちゃんも引き込んで、アグラヴェインに捕まってる人も救出しないと」

 

アトラス院の件はひとまず黙っておこう。

今後の見立てを頭の中に描いて行動を決めようとしていると、渋い顔のランスロットがこっちを見ていた。

 

「……どうしたの?」

「その……非常に伺いにくいのですが、王は他の騎士を断罪なさるおつもりですか?」

「へ? なんで?」

「いえ、その、あまりにも迷いが見られないというか……」

「迷うも何も……カルデアに敵対する行動をとっている以上、連中はマスターの敵。つまりサーヴァントであるわたしの敵だ」

「敵である以上、攻撃の手は緩めませんし、人理を汚す目的と、それに加担する行為は決して許されるものではありません」

「だから戦う。────ふむ、ランスロットのいう「断罪」は少し違うかな。あくまで敵は敵、それ以上でも以下でもない」

「なるほど。お考えはよく分かりました。では不詳ランスロット、王の意に従い、我が剣でもって敵を討ち滅ぼしましょう」

 

渋い顔は消え、生前見慣れた冷静な面持ちのランスロット。

何やら変なことをいったかと不安になったが、杞憂だったようだ。

……いやまぁ、彼が隠しているだけ、という可能性もあるけれど。

いかんな、ヘコみそうだ。とりあえずこの件は置いておこう。

 

「さて、ダ・ヴィンチの一命も取り留めたし、マスターんとこ行ってくるか。セイバー、伝言ある?」

「いいえ。ああでも、日頃の鍛錬を忘れぬよう、伝えておいてください」

「王は、カルデアのマスターに剣を教えていらっしゃるのですか?」

「私だけではありませんよ。彼に、モノを教えるサーヴァントは何人かいます。そちらからの宿題も、忘れないように」

「りょーかい。んじゃ、行ってきまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とまぁ、ダ・ヴィンチは無事だから安心してね。それと、剣もそうだけど、魔術の練習もお忘れなく」

「分かった。ありがとうアルトリア」

 

マスターに僅かながら落ち着きが戻っている。

夜が明けないうちに到着したため、朝になるまで待っていたのだが、随分と驚かれた。

ていうか百貌(HSN80)からは攻撃された。

解せぬ。

冬木のこと覚えてんのかな。

覚えているといえば、呪腕先生とアーラシュ氏にも意味深な視線が向けられているような。

後者は多分人違いだとおもうんだけどね。

 

「さて、そっちは何か問題等あるかな?」

「うーん……やっぱり、みんな顔が重苦しい、というか……あんなことがあったから、仕方ないと言えばそうなんだけど……」

「まぁね。こればっかりは、時間をかけるしかない。火急の知らせとかは?」

「ちょっと、食糧が足りないかな?」

 

それは死活問題だろう。

わたし個人の考えだが、人間の三大欲求のうち、食欲ほど困るものはないと思う。

睡眠欲は眠くなったら寝るし、性欲も自家発電でまぁどうにかなる。

しかし食欲は、食べ物がなければどうにもならない。

カルデアからの支援も、村で育てているだろう作物も、そう多くないはずだ。

 

これは早いうちに俵さんに来てもらわねば。

つまり三蔵ちゃんを探さないと。

 

「食糧関係はアテがある。というのも、アグラヴェインが拘束しているサーヴァントに、食べ物出せる宝具を持つ男がいてね」

「そんな宝具あんの!?」

「あるんだな、これが。彼を救出すればきっとどうにかなる。──そういえば百貌、ハサンの一人に捕まってる子いたよね?」

「き、貴様なぜそれを……」

「そりゃ調べたもん。どうせだし、今からこっそり連れてくる?」

「昼間はさすがに目立つんじゃないか? やるなら、夜の内がいいと思うな」

「空間転移ができれば、どうとでもなったんだけどね」

 

上手くいかないものだ、と嘆息した。

 

「連絡事項はこんなものかな? 今からモードレットのとこに行くけど……折角だし、マスターも行く? マシュも一緒にさ」

「いいのか?」

「向こうの事情もある程度把握しておいた方がいいぜ?」

「そう、だな。わかった。あんまり時間は掛けられないけど……」

「大丈夫、手早く済ませるからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side:藤丸立香

 

村がある山々の麓と砂漠の境界周辺は、妙に雪が降り積もっている。

雪だけではない。大地の一部は氷に覆われ、さらに一部は氷に変化している。

 

 

 

「寒いでしょ? ほら、上着」

「ありがと、って、どこから取り出したんだ?」

「ただの虚数魔術だよ?」

「そんなさらっと説明するものではないですよね?」

 

雪原地帯に入ったときは、まだ青空が顔をのぞかせていた。

だが、少し進むと雪が降り始めた。

 

 

 

「ニトクリスみたいに、天候もある程度操れるものなのかな?」

「オンオフぐらいは可能だと思うよ」

 

 

村に来たばかりのころ、アーラシュから聞き及んでいたモードレットの領地。

曰く、「どっからどう見ても目の上のたんこぶなのに全然攻め入ることが出来ないし何度も嫌がらせされて腹が立ってる」とのこと。

聖都の騎士からみればモードレットは間違いなく叛逆者。

オジマンディアス王から見れば勝手に自分の領土を凍りつかせる侵略者だ。

故に、双方から幾度となく攻撃されてきたようだが、その悉くを退けたらしい。

おまけに何度かちょっかいもかけていたとか。

 

 

 

「確か、サーヴァントも複数名滞在している、という話でしたが」

「円卓の騎士はモードレット含め合計三人。彼らに協力しているサーヴァントは二人。アーチャー・エミヤとランサー・クーフーリン」

「なんと」

 

予想外の組み合わせだ。

しかも中々充実している。

 

 

「あぁでも、円卓の一人……確か、パーシヴァルだったはず。彼は戦死したって話だったかな。あっちのまともな戦力は四人だね」

「では、モードレット卿と、あと一人とはいったい?」

 

ベディヴィエールは出立する俺たちに同行を願い出た。

彼も彼なりに思うところがあるのだろう。

 

 

「──サー・ケイ。ケイ兄さんだよ」

「……心は痛まないのでしょうか。苦楽を分かち合った友と対峙するなど────」

「余計な気遣いは要らないと思うけどな。その辺の分別はちゃんとついてるでしょ」

「っ! ……申し訳ありません、王」

 

基本「それもあり」な姿勢のアルトリアには珍しい、咎めるような口調。

ちらりと向けられた目線からも、ベディヴィエールの発言に対する不満が表れている。

目に見えて悔いをにじませる彼に、俺は思わず助け舟を出した。

 

「いや、友と戦う覚悟を決めたって、何も思わないはずはないと思うけどな。だって、一緒に戦い抜いた仲間なんだから」

「──そういうもの?」

「ああ。その覚悟だって、悲しくて、悔しくて、泣きたい思いを抱きながら、どうにか下した決断だと思う」

「ふうん……?」

 

上手くフォローできたかは分からないけど、不満げな表情は消えていた。

このあたりは考え方の違いだろう。

特に、アルトリアは、かつての配下に深い親しみの情を抱きながら、敵なら敵とあっさり割り切って行動している。

 

 

「それでも獅子王に従うのは理解できないなぁ。特にトリスタン。いや、前から何考えてんだかよく分かんなかったけど」

「あの、これは個人的な推測なのですが、きっと、「最後まで従うことが出来なかった」ことを悔やんでいるのではないでしょうか」

「……? 何で?」

「それは、その……多分、円卓の方々は、アーサー王の剣として、忠義を果たすことこそが、生前抱いた望みだったと思われます。けれど、それが果たされることはありませんでしたから……その悔いこそが、獅子王に従う理由なんじゃないかって……」

 

マシュは自分の推測を述べているが、いまいち自信が持てないのか、いささか弱い口調だ。

 

 

「──つまり、わたしのせい?」

「違います。それは断じて違います」

 

しかし、アルトリアの問いには打って変わって毅然とした声で否定した。

……もしかしたら、マシュが宿したという騎士の叫びなのかもしれない。

 

「考えても仕方ない、か。生前に関して言えば相互理解を完全放棄してたわけだし。いい加減、溜まりに溜まったツケを払わないとね」

「とんだ駄目王じゃん……?」

「わたしもそう思う。今にしてみれば、何で王をやろうと思ったのやら」

「とんだ駄目王じゃん!!!」

 

頼むからしっぶい顔した二人のためにも少しは格好いいところみせて!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

降っていた雪はいつの間にか吹雪へと変わっていた。

積もった雪に足をとられ、思うように進めない。

おまけに視界は真っ白で向こうに何があるのかもわからない。

これはエジプト・聖都が手こずるのも納得がいく。

 

「もう少しだよ。ここまでくれば迎えに来るはずだから」

 

虚数魔術で渡された手袋とマフラーも付着した雪で白く染まっている。

マシュの鼻先も朱い。ベディヴィエールも険しい顔だ。

 

 

 

「さてこの辺でいいかな? それっ!」

 

アルトリアが上空に打ち上げた光弾が、花火の様に爆散する。

それを合図に、積もった雪を舞い上げるほどの強風が嘘のように納まった。

吹雪に隠されていた影が、カーテンを開く様に現れた。

 

 

「──ご足労、感謝するキャスター。それと、カルデアのマスターもな」

 

カルデアの厨房で見慣れた外套の弓兵。

普段、優しく向けられる眼は俺を値踏みするように鋭くみつめている。

思わず背筋が伸びるが、かばうように前にでたアルトリアに視線が向けられた。

 

 

「こちらこそアーチャー。一応、彼がマスターの立香。あと彼女はマシュ。そして──」

「サー・ベディヴィエール……獅子王の招きに応じなかった騎士の一人、か」

「そ。とりあえず、こっちがどんなものか見せたいから、案内よろしく。

道中、連絡事項があったら聞くよ。あと、誰かに伝言あったらそれも聞くけど」

「伝言はない。では、こちらの状況だが、ランサーが殺人鬼と交戦してな……」

「うっそ、マジ? 先輩大丈夫かな……」

 

 

 

雪は相変わらずしんしんと降り注いでいるが、先ほどの俺たちを拒むかのような冷徹さは感じられない。

むしろ、この優しい雪は、歓迎しているかのようにも思える。

並ぶ二人の背中を追いかけて、さっきまでよりは幾分歩きやすい雪原を進んでいく。

隣を歩くベディヴィエールの顔は、険しいままなのが気になった。

 

「ベディ? どうかした?」

「あ──いえ、その……少し、信じられなくて」

「何が?」

「あのモードレット卿が、こうして王に叛き、自らが治める地を築いている、というのは、何とも複雑な気分です」

 

 

伝承に曰く、モードレットは自らが王の子だと明かし、王位を譲り渡すよう求めたが、それは却下された。

それは、ブリテンが終わりを迎えかけているからだと、アーサー王は静かに説いた。

実際にこの直後、「ソラから降りしモノ」たちによって、ブリテンは一度徹底的に蹂躙されてしまうのだ。

神秘の世界では「朱い月のブリュンスタッド」と呼ばれているらしい、人智を超えた怪物たち。

それらの攻撃から民を守るために、アーサー王は民と騎士を残して、終幕戦争に身を投じるのだと。

 

 

「終幕戦争の後、モードレット卿が王となることは一度としてありませんでしたから……だから、どうも、奇妙というか」

「そうですね……わたしも、何故か不思議な心地です」

 

感慨深く頷くマシュとベディヴィエール。

どうにも話に入れない。

 

 

 

「あ、マスター! 見えたよ、ほら! あそこ!」

 

幾分の寂しさを斬るように前方のアルトリアが振り返って声を上げる。

駆け足で彼女のもとに辿り着くと、すぐにその威容を視認できた。

 

その真白き城壁は聖都のそれと同一の物。けれど蒼き氷に包まれ美しく飾られている。

エミヤが皮肉げな笑みを浮かべてこちらを見た。

 

「何はともあれ、ようこそ。この凍結雪城────フローズン・キャメロットへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----

 

 

 

 

 

書けばすぐ終わるのになかなか進まない。

根本的に私に小説執筆は向いていないのだろうか。

 

とか考えてますがとにかく、このスーパーシキトリア大戦は完結させます。

まえがきの小ネタもお披露目する機会があればいつかまた。

 

 

 

 

 

*凍結雪城(フローズン・キャメロット)

 

モードレット、ケイ、エミヤ、クー・フーリンが拠点にしている。

氷と雪に覆われているのはどうも事情があるようで……?

 

 

 

 

~現在の第六特異点~

 

ダ・ヴィンチちゃん「(˘ω˘)スヤァ」

ラン「(大丈夫かな王……)そわそわ」

セイバー「……ランスロット卿?」

 

サリアさん「久しぶり……?」

呪腕先生「う、うむ……」

 

殺人鬼「先輩チッスチーッス! さあその心臓貰い受けるわ!」

槍ニキ「いやそれ俺の台詞! 舐めた口利くな後輩!」

 

キャスター「シロウのご飯食べたい」

赤弓「……少しは我慢したまえ」

 

モーさん「父上まだかなワクワク」

ケイ兄さん「はよ来いやイライラ」

???「(˘ω˘)スヤァ」

 

???「砂漠いくか」

????「(ーωー)ムニャァ」

 

観測魔「なるほど、こういう分岐を辿ったわけね」

回線「こういう可能性もあるんですね……」

 

 

 

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