死を視る王   作:水天宮

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私には、複数の師がいる。

王としての在り方や剣術を教えた夢魔の男に加えて、原初のルーンに槍術、そして呪いの死槍を授けた女王。

万華鏡の如し魔法使い。天の杯捧げ持つ魔法使い。

地上のありとあらゆる叡智を記した、古き大図書館の管理者。

 

 

 

 

 

私と縁を結んだ魔術の家系は、我が師エルーシャ・ユリセシカ・フォン・アインツベルンの系譜であった。

もしかすれば、私がこうして召喚されたのも、ある意味必然であったのかもしれない。

この肉体を原型に、冬木の大聖杯は鋳造された……と、現当主の老爺が話していた。

彼らは此度の儀式を成功させることに強烈に過ぎるほどの意欲を示している。

関係者でもある私を剣士(最優)で召喚したのも、そんな執念の表れなのかもしれない。

 

 

 

……外見こそ我が師と酷似しているが、内面は系譜を受け継いでいることを疑うほどに異なる。

アイリスフィールも、ユーブスタクハイトも、もしかすれば、ユスティーツァも。

真面目に天の杯へ至ろうとしている彼らと、気ままで不真面目なエルーシャとは大違いだ。

本気で追い求める者には何も齎されることなく、ただ偶然に進んだ者にこそ与えられる結実。

何故だか、ひどく悲しいと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついたわ……すごいわね、ここが冬木……聖杯戦争の、舞台……」

「────────」

 

雑然としたコンクリートの街並み。行き交う人々。

懐かしいような、物珍しいような、なんとも奇妙な感慨を抱く。

同時に、この霊基(肉体)もまた、変に力がみなぎっている。

 

 

 

「どうかしら? もしかしたら、貴方の体にも、何か影響がある?」

「……そうだな。すこし、変調が見られる。ごく小規模かもしれないが、聖杯としての機能が扱えるかもしれん」

「それは────いいこと、よね?」

「さて。ひとまず、戦術の幅が増える……と、いうことにしておくがな」

 

 

 

せいぜい猫だまし程度のものだろうが、と吐き捨てた。

……魔術師であり、アインツベルンのホムンクルスであり、此度の小聖杯の器である彼女にとっては、「過程を省略して結果を得る」聖杯の機能を小手先程度に扱う私が奇妙に映るだろう。

彼女、そしてアインツベルンには申し訳ないが、私のチカラは「それだけのモノ」でしかない。

世界を変革し、支配することすら可能な冬木の聖杯よりも、大幅に劣る。

あくまで私は「原型」である。私の在り方を定める枷に過ぎない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、これからどうする?」

「切嗣は好きにしていい、って言っていたわ。ねえ、折角なんだし、少し見て回らない?」

「私は構わないが……あまり目立つ行動はするなよ」

 

分かってるわ、とアイリスフィールは返答するが、その瞳は初めて見る世界に興味津々で輝いている。

私は思わずため息をついたが、悪い気分はしない。

今はごくわずかな猶予期間(モラトリアム)、存分に楽しませた方がいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が暮れる。

 

「綺麗……夕焼けは何度も見たけれど、場所が違うだけでこんなにも変わって見えるなんて」

「そうだな」

 

徐々に降りてくる深いブルーのキャンバスを彩るように、ゴールドとオレンジの雲が横方向に伸びている。

その最奥には、いまだに優しく品のあるピンクが名残惜しげに残っている。

似たような光景は生前から何度も見てきたが、遠い異世界のように感じてしまうのはどうしてだろうか。

 

「日が暮れるまではあと数分ある。それまではまだ自由に行動できると思うが、どうする?」

「いえ、ここで待ちましょう。まだこの景色を見ていたいし、セイバーとも話したいわ」

「私と?」

「そうよ」

 

くすり、と微笑むアイリスフィール。一瞬、師の面影を感じた。

 

 

 

 

 

「アインツベルンの始まりって、どんな人なの?」

「始まり────エルーシャか? ……正直、現当主の翁や貴様、貴様の娘を見て、本当に系譜なのか信じがたかった」

「どうして?」

「外見こそ酷似しているが、内面がまるで違う。真面目に取り組んでいる貴様たちとは違い、あの女はとんだ不真面目だった」

 

 

 

 

────やっほーアル。ねえ見て、賢者の石ー! すごくね? うっかりこぼした薬剤がこんなの生み出したんだよ?

 

────そうですか、真面目に錬金術を修めている方々に誠心誠意謝罪したらどうですか。

 

────唐突に何!? だってしょうがないじゃん、できちゃったんだから。というか、あたしが出した課題やった?

 

────すでにそちらにまとめてあります。というか、参考書物を書くならもっと分かりやすくしてください。

 

────え? どっか分かりにくい箇所あった?

 

────擬音語、擬態語が多すぎます。なんですか、ぐーるぐーるって。

 

────ぐーるぐーるはぐーるぐーるだよ? できたならアルも分かってるんでしょ?

 

────いいえ、まったく。

 

 

 

 

「へ、へぇ……そうなの……」

「幻滅したか? だが、実際あの女は神域の天才だ。聖杯なんて代物を作り出している時点で、分かり切っていると思うが」

「貴方の肉体に聖杯の機能を付けたのも、始祖ユリセシカ……なのよね?」

「ああ。後で話を聞いたら、マーリンの目を盗んで細工を施すのに苦労した……らしい」

「花の魔術師の目を?! 現在(いま)の全てを見渡す千里眼でしょう? 凄まじいわ。どうして、そこまでしたのかしら?」

 

アイリスフィールの質問に言葉を詰まらせる。

沈黙する私を見て、どう受け取ったのか、困ったように笑みを浮かべた。

 

 

 

「ごめんなさい、余り喋らないほうがよかったわよね」

「いや……そうではない。ただ、何と説明したのものか、少し困っただけだ」

「そうなの?」

 

 

なら、いつか話してくれるとうれしいわ、とアイリスフィールはくすりと小さく笑って言葉をつづけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に、魔力の気配を感じた。

隠そうともしない強力な存在感に思わず振り返り、目を細めた。

私の態度に何かを感じたのか、アイリスフィールも緊迫した表情になった。

 

 

 

「……サーヴァントの気配がするな。どうも挑発しているらしい」

「乗るの?」

「ふむ──そんなものは無視して遠方狙撃なり何なりでからとっとと潰すに限るだろう」

 

 

 

この聖杯戦争をただの殺し合いとみるか、名誉ある決闘とみるか、娯楽の一つとしてみるか。

後者二つならば、正面から乗り込むのも手の一つ。しかし前者ならば、のこのこと姿を見せるのは下策だ。

 

 

 

 

「もっとも、マスターを誤認させられるならどちらでも構わないらしいが。どうする? 今は、貴様に従うぞ?」

「そうね、だったら────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は、ランサーかしら?」

 

太陽はすっかり沈み、夜の闇がコンテナを包む。

舗装された地面を照らす数本の電灯。

魔槍を携えた姿勢の良い美丈夫が、まるで舞台俳優の様に現代の照明に照らされ立っていた。

 

 

 

 

 

「わざわざサーヴァントも連れずに乗り込んでくるとは、中々勇気ある貴婦人であらせられる」

「まさか。私も列記とした参加者ですもの、そのような蛮勇にして愚行は犯さないわ」

 

返答を待たずに背後から斬りかかる。

姿隠しの効果を保持したまま、宝剣を力強く振り下ろすも、瞬時に赤槍で防がれた。

続けて姿勢を低くし、槍と地面の間を潜り抜けるように剣を切り上げる──これも防がれた。

向こうも穂先をこちらにつきだしてくるが、剣で右に流して再び斬る。

 

「っ、卑怯な……!」

「卑怯? これは戦争よ? 遠方から魔術で攻撃せずに、こうして姿を見せただけありがたいと思いなさい」

 

強気な発言をするアイリスフィールに呼応するように地を踏み鳴らす。

 

 

 

「ansuz」

 

 

 

瞬間、ランサーの足元に紅蓮の炎が奔った。

驚愕に目を見開くも冷静に跳躍して私と距離をとる。

 

 

 

「isa」

 

 

 

着地の隙を見計らって氷の弾幕を作り出し、徹底的に追いつめる。

だが、その大半は真紅の槍で切り払われた。

回避と防御を平行にこなしながらこちらへ向かってくる。

 

 

 

風王鉄槌(ストライク・エア)

 

 

 

上から押しつぶすように風の攻撃を加える。

だが、天に向けられた槍に霧散させられた。

そのまま槍が勢いよくこちらに向かってくるが、私はそれを剣で防いだ。

宝具と宝具とのこすれる音が嫌に響く。

 

 

 

「驚いたぞ、まさか剣と魔術を使いこなすとは……さては魔術師(キャスター)だな? 悪辣な企みは得意分野という訳か」

「単なるマスターの意向だ。単にこの聖杯戦争に見出しているモノが貴様とマスターでは異なるだけだ」

 

訝しげに琥珀色の瞳が細められる。

そこには目深に紫紺のフードをかぶり、バイザーで目を隠した私が映っていた。

 

「名誉か誇りか……その辺りを貴様は求めている。だが、私のマスターは単なる機械的な殺し合いとみているらしい。私はそれに従っているだけだ。……敵に忠告などおかしな話だが。参加者全員が同一の思考、なんてことはありえない」

 

 

 

ゆめ忘れるなよ、と魔力放出の勢いでランサーを押し出し、炎を発現させる。

しなやかに着地、そして回避したランサーは再び魔槍を繰り出した。

 

 

「ならば、貴殿は何故この戦いに身を投じている? 貴殿は、この聖杯戦争に何を見出している?」

「別に何も」

 

喉元を斬り裂く様に剣を振るったが、かわされた。

 

「聖杯なぞ不要。一度でも契約を結んだからには、地獄の底までマスターの供をする。それがサーヴァントという生き物だ。違うか、ランサー」

「いいや、違わない。……先程の言を改めよう。貴殿は、騎士の誇りを持つ者だ、セイバー」

 

 

ランサーの応答にちらりとアイリスフィールに視線を向けた。

こくり、と頷いた彼女は気高さを表す瞳を向ける。

 

 

 

「セイバー、この私に勝利を────騎士の矜持、存分に示しなさい」

「了承した」

 

戦い方に関して、マスターからは大した指示を受けていない。ただ、好きなようにやれ、とだけ。

ならば、ここから騎士の決闘に切り替えたところで何の問題もないだろう。

正眼に構え、短く息を吐き、地を抉るように足に力を込め、一気に駆けだす。

甲高い音が鳴らされ、刃が空を斬る。

 

 

 

「しかし、ルーン魔術ということは、俺と同郷か?」

「お手柔らかに頼もう、先輩」

「後輩の前で手抜きなどできるわけがない」

 

 

 

ともすれば雑談にも思える言葉の応酬。

されど、剣戟は止むことなく続いている。

槍と剣のぶつかり合いは、永遠にも思えるほどに続けられている。

 

 

 

だが、次の瞬間。

 

「AAAAAlalalalalalalalalalalalalie!!!!!!!!!!」

 

稲妻が落ちてきた。

 

ーーーー

 

エルーシャ師匠はいわゆるロ○ナ族とかグルグル族とかそういう系統です。

 

 

 

 

 

>本気で追い求める者には~

 

アサ次郎「ツバメ斬りたくて練習してたら第二魔法に至りました」

コクトー「夜の雪道を歩いていたら「」に出会いました」

 

こ れ は ひ ど い

正直作者は、魔法使いたちも魔法に「至ろうと目指して至った」とは思ってないです。

 

 

 

 

 

戦闘スタイル切り替えは特に意味ありません。

たまたま相手が騎士系だったからじゃあ合わせようかなと思った程度。

切嗣からも特に指示出てませんし。マスター誤認させればいいや。

シキ「正々堂々は何も考えずに済むから楽。え? 爆破? 非効率的だわー」

 

 

 

 

 

 

*隠蔽箇所解放

 

後の「冬木の聖杯」の原型となった、贋作といえ紛れもない聖杯。

もっとも、魔法使いにより大幅に弱体化されている。

せいぜいが過程を無視して結果を得る、という程度。

故に、聖杯探索にはあまり乗り気ではなかった。

 

 

 

自然の嬰児:Dを所持。冬木(とトゥリファス)以外の場所ではオミットされる。

戦争による負傷等で若干壊れているため、あまり使い物にならない。

少なくともイリヤ・アイリより下。下手したら黒桜よりも……。

まぁそんじょそこらの魔術師よりかはハイスペックです。

 

マーリン「気づいたら変な魔改造されてた件」

エルーシャ「ばれずに済んだ奇跡」

 

 

 

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