死を視る王   作:水天宮

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直死もちアルトリアがメインなのに直死が出てこない……
どうしよう……





4

 

 

 

突如唸りを上げて現れる戦車。

青白い雷電がバチバチと轟音を立てて地面を灼く。

 

 

 

 

 

「双方、剣を収めよ! 王の御前である」

 

 

 

 

大男の芯のある大声が夜の闇に響く。

……丁度、戦車のある位置が、一度魔術を仕込んでいたところだった。

 

 

 

 

「ansuz」

「な──うわぁっ!」

 

 

 

 

炎が戦車を一度は包むも、所詮ただの魔術で宝具が破損するなどという事態には発展しなかった。

ただ隙はできたため、魔術回路を起動し、続けて魔術の追撃を行う。

同乗しているマスターに向けて幾つもの風の刃を叩き付けるも、全て大男に斬り伏せられてしまった。

 

 

「おいおい、聴こえていなかったのか? 剣を収めよと──」

「剣は、使っていない。すまんな、あまりにも丁度良かったから」

 

たまたま私が仕込んでいたところに着地した貴様らの運の無さを恨め、と言葉をつづけた。

 

 

「ふ────はははははははははははは!!!!! こりゃ一本取られたわい。なるほど、確かに剣は使っておらぬ!!!」

「笑ってる場合か! 魔術を使うセイバーなんて、反則にもほどがある……!」

 

ライダーのマスターが怯えながらこちらを見つめる。

その瞳には、強い恐怖の色が浮かんでいたが、同時に正確にこちらを観察する冷静さも備わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、気を取り直して────我が名は征服王イスカンダル!!! 此度の聖杯戦争では、ライダーのクラスをもって現界した!!!」

 

 

 

堂々と真名を宣言するライダー。

傍らの少年も、先ほどまで私と鎬を削っていたランサーも、背後のアイリスフィールも、思わず沈黙する。

 

 

 

 

「うぬらとは聖杯を求め相争う巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある」

 

 

 

その鋭くも純真な眼差しでこちらを真っ直ぐに見るライダー。

曰く、我が軍門に下り、世界を征し、支配し、あらゆる愉悦を味わないか……という、勧誘だった。

……あらかじめ知ってはいたとはいえ、こうして実際に目の当たりにすると何とも言い難い奇妙な心地になる。

 

 

 

 

「────よし。帰るぞアイリスフィール」

「えっ!? で、でも……」

「これ以上の収穫は望めない。帰還して休養をとり、次の作戦に臨むのがいいだろう」

 

 

 

────と、いうわけだがいいな切嗣?

 

────……そこからの撤収はいい。だが、作戦はまだ終わらない。

 

────了承した。

 

 

 

恐らくアーチボルトが工房を構えるホテルを攻略するのだろう。

……結局、ホテルは爆破する方向になった。

ただ、ある程度の囮として、私も単独でホテルの攻略に臨むことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『茶番はそこまでにしてもらおうか』

 

 

 

不意に、神経質そうな男の声が夜闇に通る。

僅かに眼を見開いたランサーとあからさまに怯えを見せたライダーのマスターから察するに、アーチボルトだろう。

 

 

『それにしても驚いたよウェイバー・ベルベット君。まさか召喚用の触媒を盗んだのが君だったとは』

「あ───せん、せい」

『……だが、結局のところ私も君も同じ穴の貉。聖杯という代物に目がくらみ、首を突っ込んだ愚かな俗物だ』

 

 

 

 

────ん?

 

 

 

 

『もはや同じ戦場に立つ身、この状況で魔術師の格など競うまい。もっとも、そのサーヴァントを君が扱えるかは疑問だがな』

「ほう、貴様が本来余を呼ぶ腹積もりだったという魔術師か。なるほど、余とは合わぬだろうなあ。共に戦場に赴き、敵と正面から(まみ)える者でなくては、到底余のマスターを務めることはできぬ。こそこそと勇壮な強者の陰に隠れて謀りをたくらむような輩など、こちらから願い下げだ」

「……俺の主を侮辱するか、ライダー」

『否定はしない。正面にでる魔術師など一部の例外程度のものだ。むしろ、それはセイバーのマスターに伝えよ』

 

 

 

 

あれ?

 

 

 

 

「──なんのことかしら、ランサーのマスター」

『単純なことだよアインツベルン。貴様らがあの魔術師殺し(メイガスマーダー)を招き入れたことなど知っている。大方、君をマスターと誤認させて、奴は裏で他のマスターたちを抹殺する腹積もりだろう。違うか? どうせ、私の工房も、建物ごと爆破でもするのだろう? 全く、忌々しいにも程がある。こうも堕ちたか、アインツベルン』

「んな────!?」

 

 

 

 

驚愕に慄くライダーのマスター。

ほう、と感心したように顎を撫でるライダーに、顔をしかめるランサー。

 

思わずアイリスフィールと顔を見合わせた。

右手で通信機のジェスチャーをとり、彼女があらかじめ携帯していた端末を私に渡してもらう。

すぐに起動し、マスターに繋ぐ。

真っ先に自分の口からでた声は、思った以上に冷え込んでいた。

 

 

 

「おい切嗣、クソったれマスター。完全に貴様の作戦がおしゃかになっているんだが?」

『……』

「うっかり、などという優雅な言い訳はいらんぞ。で? これで? 貴様は? どうするつもりだ? あ、さてはあれか? 貴様の知り合いとかいう情報屋。あれがスパイだったとかだな?」

 

 

 

沈黙を保つマスター。

埒が明かない、と電源を切り、アイリスフィールに返した。

 

「さすがだなロード・エルメロイ。情報屋でも雇ったか? これで我々は完全に出鼻をくじかれたわけだ。切嗣ざまぁ」

「セイバー、そんな悠長なことを言っている場合じゃないわ!」

「とはいうものの、どっちみち、こちらの大馬鹿野郎(マスター)がこの程度で諦める精神はしていない。現アインツベルン当主も似たようなものだ。そういう訳で、ライダー。勧誘は諦めろ。他を当たれ」

「むぅ……報酬は応相談だが?」

「鬱陶しいな貴様。そんなに私が欲しいならマスターに聞いてくれ。あと私は聖杯なんぞ要らん」

 

 

私は普通に言ったつもりだが、他の連中はそう受け取らなかったらしい。

ランサーも、ライダーも、そのマスターも、奇妙なモノを視る目をしていた。

おそらくランサーのマスターも同様だろう。真っ先に私に問いを投げた。

 

 

 

 

『それは、何故だセイバー?』

「不要だからだ。生前に未練は多々あれど、それを死してから千年も経って晴らすような性格はしていない。現世に望みなどない。第二の人生に魅力を感じないわけではないが、まずはサーヴァントの役目が最優先だ。……そこまで奇妙なモノに見えるか? 貴様とて聖杯は不要なのは同じだろう、ランサー」

「全くの不要ではないがな。此度召喚に応じたのは生前果たせなかった忠義を果たし、主に聖杯を捧げるためだ」

『世界を思うままにできる力だろう? それすら不要だと』

「そも、私はサーヴァント。マスターに従う駒だ。何があろうと、地獄の果てまでついていく」

 

 

 

断言した私。沈黙する闇。

始めに静寂を破ったのはライダーの呵呵大笑だった。

 

 

「いや面白い! 随分と潔いなセイバー! だが心せよ。如何に己を道具と定義しようと、生前の在り方まで損なってはならぬ。余には分かる。貴様は王者の気風を有する者……さては名のある王者であろう? それでは貴様の王道にも瑕が付こうよ」

「……さて。自ら国を滅ぼした暗君、ならば歴史に刻まれているかもしれぬな」

 

 

胸中に黒い感情がくすぶる。

いや、大丈夫。私はあの状況下で出来ることを尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

「ランサー、貴様はどうだ? 余の軍門へ下る気はないか?」

「先程の俺の話を聞いていなかったのか? 主を裏切ることはできない」

『何もかも思い通りになるとは思わんことだ、ライダー。我が槍、易々と手放すものか』

「うぅむ……そうかぁ、駄目かぁ。いや勿体ない。実に残念だ」

「ら、い、だぁぁぁ~~~~……何が軍門だよ、完全に拒否されてんじゃないかぁ……」

「しかしのう、坊主。"ものは試し"というではないか」

「"ものは試し"で真名ばらすサーヴァントが何処にいるんだよ!?」

「ここにいるではないか」

 

 

激昂する少年に平然と返答するライダー。

思わずがっくりとうなだれ沈黙する少年に些か同情の念を送る。

アイリスフィールも、ランサーも同様だった。恐らくアーチボルトもだろう。

 

 

 

 

 

しかし、不意に空気が変わる。

警戒しつつもいくらか緩んでいた空間が、再びライダーの手でがらりと変わっていった。

野太い声が夜の闇に轟轟と響く。

 

 

 

「────来たれ! 聖杯の招きを受けし英傑たちよ!!! されど姿を見せぬ臆病者どもには、この征服王の侮蔑を受けると知れ!!!」

 

 

 

征服王の力強い宣言。

 

 

 

一瞬、風が沈黙を運ぶが、それも声によって遮られた。

 

 

 

 

 

 

 

「──────我を差し置いて王を自称する雑種が二匹も湧こうとは」

 

 

 

 

街灯に現れる黄金の影。

世界のすべてを見下すように睥睨している。

……なるほど。あれが英雄王。

 

 

 

 

征服王が名を名乗るよう言い放ったが、それに不機嫌そうに断った英雄王が返答代わりに宝具を開く。

黄金色の波紋からいくつも現れる武器。そのすべてが一級品の宝具である。

 

 

 

 

「そんな、あんな数の宝具なんて────!?」

「……なるほど。サーヴァントのクラスは割と融通が利くようだな。遠距離攻撃手段があれば弓兵(アーチャー)、か。」

「まさか。クラスが我を縛っているのではない。我が、聖杯の敷いた法に合わせているだけよ」

 

 

 

ニヤリと口角を吊り上げるアーチャー。

刃の切先がこちらに向けられる。降り注ぐだろう黄金の死の雨に備えるため、剣を構える。

 

 

 

しかし、新たに現れた別のサーヴァントが頭上の英霊の注意を引いた。

漆黒の鎧は、同じ靄に包まれ判別がつかない。赤い光がやけに目立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

────心を強力な万力で潰されたような心地だ。

 

 

 

 

 

 

 

「は、はは、ははははははははは………………!!!!」

「セイバー!?」

「ん? ああ、悪いなアイリスフィール。だが一つ許しが欲しい。そろそろ、私も真名を明かそうと思う」

「な────唐突にどうしたというの! っ、まさか、あのサーヴァント……」

「ああ。まさか、こんなところで出会うとは思いもしなかったがな。しかも狂戦士(バーサーカー)……余程、私への恨みは深いらしい」

 

 

 

バーサーカーに注視している間に足場を落とされたアーチャーは激昂して襲い掛かろうとしていた。

そこを私の哄笑が阻害をしてしまった形になる。

 

 

 

「すまんが英雄王、そこをどいてもらうぞ。所詮は身内の不始末だ、私に片づけさせてくれ」

「……フン、興が冷めたわ。あの程度の雑種など、どうでもよいわ。勝手にするがよい」

「それはありがたい」

 

 

 

 

 

魔力で編んだ武装を全て解く。

ここに来るまでに纏っていた黒いスーツに戻した。

 

 

 

「セイバー? 一体何を……」

「剣を捨てるなど、非効率かつ非合理的。本来ならば禁忌だがな」

 

 

 

ジャケットを脱ぎ、ネクタイを解き、靴と靴下も脱ぐ。シャツはまくりあげた。

髪も高く結い直した。

 

 

 

 

 

 

「■■■■■■────A…………thur…………!」

「ほう? 私の名を呼ぶだけの知能はあるようだな。逆に言えばそれだけ狂化が不十分である、ということだが」

 

 

 

 

 

 

コンクリートの冷たさが足の裏から伝わる。

 

 

 

 

 

「本音を言えば、夕日の差し込む河川敷で……と、行きたいところだが、文句は言うまい。来るがいい、ランスロット。それと、言いたいことがあるのならはっきり言ったらどうだ」

 

 

 

私たちは、同時にぶつかりはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

シキ「生前云々より今重視。基本的にマスターに従うよ。え? ランスロット? バーサーカー? よっしゃ方針変更! 殴って蹴って叩きのめす! ケルト人だから是非もないネ!」

 

円卓見ていて毎回思うのが「コイツら一回全力で殴り合ったらいいんじゃね?」という感想。

全力で本音ぶつけ合う機会がなかったというのはなんとも悲しい。間が悪かったのだ。

 

 

 

もともとシキトリアが割とチート気味なのでその分不利になるようにちょっと他陣営も弄ってます。

この恩恵を最も受けているのがケイネス先生とランサー。

・先生の頭が割と柔軟

・ソラウさん不在

・情報が回っている

などですね。改めて考えると切嗣が本当に鬼門だったんですね。

しかしこれはこれで困った……簡単に退場させられない……二世が誕生しない……どうしよ……。

 

 

ケリィばれてますがまぁ原作からしてそこまで隠れている感じじゃなかったような……(うろ覚え)

というかZeroの流れがいい加減曖昧になってます。もう六年前とかマジか……(愕然)

 

 

 

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