死を視る王   作:水天宮

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短いです。
あまり書くこと思いつかないんですよね。

徹夜でアガルタ終わらせました。
EoRは最後にどんでん返し、という方針ですかね。





8

 

 

 

「とにかく、私は聖杯などいらん。欲しければ勝手に争え。私はただ、マスターに従うだけだ。そこに個人の願望は挟まない」

「うぅむ……もったいない。実に惜しい。やはり余の軍門に下ってヒトの歓びをその心に焼き付け、ともに世界を制するのは……」

「本当にしつこいな貴様」

 

 

 

 

 

 

勧誘は止まらなかった。

恐らく、この男にとっては相手が怪物だろうと何だろうと関係がないのだろう。

 

 

何かに心を打ち奮わせ、一人のヒトとして全力で突き進む。

これこそが征服王。

同じ時代に生きたニンゲンたちを魅了した人の王。

 

 

 

……とても、眩しい。

 

 

 

 

 

「貴様の軍門に下るなど、わざわざ私に従ってくれた騎士たちへの侮辱だろう。そんな真似はしないし、できるはずもない。わからないか」

「何を言うか。貴様と、騎士どもの誉れある英雄譚を制覇してこその我が王道。辱めなぞせんわ。余はこれでも相手を尊重するからのう」

「それは失礼をした。だが貴様に下りはしない。落第もいいところだが、これでも王として生きてきた。貴様のような侵略者に屈するなど、私の生きた道を否定するどころの話ではない。諦めろ」

 

 

 

 

 

そう。結局のところ、そこにつきる。

蛮族、帝国、死徒の侵略に相次いで悩まされてきた我が国。

余りにも広い版図を築き上げたマケドニアの超大国。

この両極端の国家を統べる者が出会えば、こうなるのは当然だろう。

 

 

 

 

「よいではないか騎士王。ともに最果ての海をめざし地を駆ける、そこに貴様がいるならば、実に心躍る! 我が軍勢に咲く星の花、想像するだけで美しさにため息が出るわ」

「必死すぎだろう征服王……」

「おうとも。必死にもなる。貴様はまさに戦場にて輝く地上の星。勇士たちを魅了し希望を抱かせる勝利の証。理想の王という枷に縛られているよりかは、余の軍勢にてヒトが何たるかを学ぶほうがよいであろう?」

「……そうかもな。だが断る。貴様の下では意味がない。私自身が王として民を導く、なら話は別だがな。だから諦めろ」

 

 

 

王という概念に固執している──と言われれば、実際にその通りだ。

だが私は王である。選定の剣を抜き、蛮族と帝国を退け、死徒と外惑星の生物を排した。

その過程を無視することはできない。ふさわしくないかもしれないけれど、私は、望まれる限り理想の王でいたいのだ。

どれほど征服王の誘いが魅力的であろうと、こればかりは譲れない。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、少しくらいよいではないか」

「いい加減気持ち悪いぞ貴様……!」

 

 

 

 

さすがにこれは頭が痛い。

いい加減この侵略中をどうしたものか、と内心悩み始めた矢先。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────我より先に宴を始めるとはいい度胸だな、雑種」

 

 

 

 

 

不意に、空気が変わった。

 

 

一応は和気藹々としていた宴席が一気に寒々しいものに変化する。

それもきっと、この男が持つ威圧感と声色によるからだろう。

 

 

 

 

 

 

アーチャーのサーヴァント。

 

 

英雄王ギルガメッシュ。

 

 

 

 

「おお、遅かったなアーチャー。貴様も余と共に酒を酌み交わし、共に語らおうではないか」

「このように埃積もった貧相な庭に呼びつけて、安酒を我に呑ませるなど、恐れを知らぬ奴よ」

「無論。貴様のような勇者を恐れて誘わんなど、この征服王の名が廃る」

 

 

 

酷薄な笑みを浮かべるアーチャーに堂々と返答するライダー。

この小さな庭園に、かつてそれぞれの形で自らの国家を統べた王が三人も集っている。

それが、どれほどの価値と意味を持つのかは、死人()には分からない。

 

 

 

 

 

 

 

「────何だこの雑味は。これが現代の酒? 笑わせる。これで我をもてなしたつもりか」

「そういうなアーチャー。ならば、貴様が知る極上の酒とは、余程の美味なのであろうな?」

「当然だ」

 

アーチャーの背後が黄金色に揺らめき、酒が入っていると思しき杯が取り出される。

それがライダーに手渡され、飲まれた次の瞬間、ライダーの眼が大きく開かれる。

 

 

 

 

 

「──うまい! これはうまいぞ。これほどの美酒は生前にも飲んだことがない。いやぁ、参った。どうだセイバー、貴様も飲むか? まっこと美味であるぞ」

「それは貴様が飲めばいいだろう」

 

 

 

 

 

他人が一度は口にしたものは、なるべく摂取しない。

そう言えばライダーは一瞬残念そうな顔をしたものの、すぐ喜色満面で酒をあおった。

かと思うと持ち込んでいた樽から新たな酒を私によこした。

このあたり、実に面倒見がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーチャーまで呼びつけていたのか。そこまでして宴を開きたかったのか?」

「無論だとも。華々しき英雄たちがこうも揃っていながら、語らう機会が全くないなど、寂しかろう? 余は寂しい。故にこうして宴を開いたのだ」

「……そういうものなのか? よく分からんな……」

「貴様には分かるまいよ。そやつはヒトの限界を極めし者。始めからヒトならざる貴様とは違う」

「それは分かっている。だから、少し物珍しく感じた」

 

 

 

 

生前ではどうだっただろうか。

騎士たちの一部が己の誇りや矜持を熱く語っているところを見たことがある。

そうではない者もいた。

前者はガウェイン、後者はアグラヴェインが主な騎士だった。

兄弟でありながら随分と対照的である。

 

ただ、少なくとも……私が語ることは、ほぼ皆無であったはずだ。

 

 

 

 

 

 

「まぁ、それだけだ。私は私。貴様は貴様。それ以上でも以下でもない。そういう考えも、あるのだろう。それはそれでいいんじゃないか」

「何ともつまらぬ娘だ。自らの武勇を比べ、次なる進歩の礎とすることの愉しみを解せぬか」

「比較の意味などあるまい。全ての頂点は我。後に王を名乗る有象無象の雑種どもが続く。そら、何の面白みもなかろう?」

「最初の一言のみ同意する。私も、貴様らも、何もかも違い過ぎる。比較以前の問題だ」

 

 

 

英雄王と私がそう口にすると、征服王は何とも興ざめそうな面持ちでため息をついた。

そして、征服王は再び酒を飲み、些か乱暴気味に甲高い音を立てて杯を床に置いた。

 

 

 

 

 

「ああもう、空気の読めん奴らめ! よい、では次の問答は即ち、「聖杯」だ!」

「飽きないな貴様……私はもうほとんど語ることないぞ」

「構わん。好きに感想を言えばよい。────余たちサーヴァントは聖杯を求めて冬木に現界した。故に、この問答で語るのは「何ゆえ聖杯を望むのか」に他ならぬ」

 

 

 

 

あるいは、何故聖杯戦争に身を投じるのか。その目的・真意を語り合う……ということらしい。

これまで散々聖杯は不要と断じてきた私にとっては、この酒宴は少しアウェーに感じる。

 

 

 

 

 

 

堂々と太い声が夜の庭園に響き、それに応えるように酷薄な声が響く。

 

 

私は無言でその応酬を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「────そも、「争う」という前提から間違っているのだ」

 

 

 

 

 

 

 

二人の王の声を聞き流しながら、私はこの先の展望を考える。

 

 

 

恐らく、この後アサシンが玉砕覚悟で突っ込んでくるだろう。

その後……未遠川でキャスターの巨大海魔が召喚される。

 

 

また次の日にランサーと決着をつける……が、今の状態で勝利できるか怪しい。

アーチボルトに弱点たる婚約者は同伴せず、起源弾で魔術師として終了してもいない。

 

これでマスターはどう勝利するつもりなのだろうか。

ランサーなら私が殺せば良いだけの話だが、マスターは恐らくそれだけでは済まさないだろう。

 

 

 

 

 

……いや、待てよ?

かのロード・エルメロイ、時計塔にて神童とまで謳われる天才魔術師。

その教え子ウェイバー・ベルベットはいずれ大聖杯を解体し、真の意味で聖杯戦争を終結に導く。

 

 

 

この二人が揃っているのなら、あるいは────

 

 

 

 

 

そも、ランサーの宝具ならば、小聖杯を…………

 

 

 

 

 

 

「受肉、だ」

「っ──はあああああああ!!!?」

 

 

 

 

ライダーのマスターの叫びで思考が現実に引き戻される。

どのような会話だったか。

確か、征服王の目的は世界征服で、聖杯を求めるのは受肉するため……だった、はず。

実際に眼前でそのような会話が繰り広げられている。

加えて、アーチャーが手ずから殺すという宣言もされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイバー。貴様にとって聖杯が不要であることは分かっておる。ここで余が聞きたいのは、何故この聖杯をめぐる戦争に参加したか、だ」

「────何故、か」

 

 

 

ライダーから向けられた視線に思わず目を瞬かせた。

 

 

……どこまで話せばいいのだろう。

 

大聖杯にて息を潜ませているこの世全ての悪(アンリマユ)のことまでべらべらと話していいのだろうか。

傍らのアイリスフィールや恐らく聞き耳を立てているマスターがどう動くかも分からない。

下手に情報を明かして最悪の方向に動き出したらたまったものではない。

 

 

 

どう説明したものか。

あくまで抑止の話は伏せておいて、私個人の話をすればいいだろうか。

 

 

 

 

 

「……呼ばれたから、か?」

「何だと?」

 

 

 

怪訝な顔をする面々。

抑止側はさておき、どうあれ、騎士王()を呼びだしたのは紛れもない衛宮切嗣自身の選択であることは確かだ。これはゆるぎない事実である。

 

 

 

 

 

 

「望まれたから、求められたから、それに応える。……すまんな、こういう説明しか思いつかん」

「う、む……まぁ、未だヒトを知らぬ無垢なる貴様ならば、言葉にするのも難しかろうな」

「気遣いに感謝する、征服王」

「……ふむ。僅かながら我の興味を引いたぞ、雑種。貴様は根底の欲求を自覚していないだけだ」

「どういうことだ、英雄王?」

 

 

 

私ですら気づいていない私自身の欲求────この男が理解するのも分からなくもない。

余りにも広い視野を持つ男、マーリンと同じ千里眼の持ち主。

彼ならば、こうして枷によって縛り付けている私の性質を見抜くのも容易いだろう。

 

 

 

 

 

「我が貴様に告げると思うか?」

「いいや、まったく。まぁ、心の片隅にとどめておくさ」

 

 

そう言って、杯の酒を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ああ。忘れていたが、そろそろ出て来たらどうだ、アサシン」

 

 

 

飲み終わった私がそういうと、突然空気が殺気立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、すまない。訂正しよう。アサシンが出てくるなど、あってはならないことだからな」

 

 

 

 

 

まあ、私には関係ないが……と、言い終わった後、指先から魔弾を放った。

こっそり魔眼を起動して、死点の中心を狙って撃つ。

何体かは潰せたらしい。

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

「一応聞くがアーチャー。これは貴様が呼んだのか?」

「言葉に気を付けろよ雑種。……時臣め。どこまでもつまらぬ男よ」

 

 

 

二人の会話のすぐ後に姿を現す複数の影。

アサシン。ハサン・サッバーハ。あるいは、百の貌のハサン。

 

 

 

 

 

 

「……お互い、マスターには苦労するな?」

「セイバー」

 

 

 

 

私の発言を嗜めるアイリスフィール。

 

 

その後、征服王が杯を掲げてアサシンに宴に入るよう誘うも、返答は短剣の投擲だった。

 

 

 

 

そして、立ち上がるライダー。

 

魔力の風が彼を中心に吹き荒れる。庭園の花々が散っていく。

 

 

 

 

 

 

最後の問いが投げかけられた。

 

私は────

 

 

 

 

 

 

「……わたしは。一人でしか生きられない。孤高でなければならない。だって、誰かと一緒にいたら、その人を傷つけてしまうでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

英雄王の失笑と私の答えを突っぱねたライダー。

 

次の瞬間、世界は宵闇から青空と灼熱の砂漠に変化していた。

 

 

 

 

 

振り返れば、征服王に従った勇者たちが揃っている。

 

征服王の朗朗とした叫びに呼応する。

 

 

 

 

 

 

間違いなく、彼らはヒトとしてこの世界に生きたのだろう。

 

ヒトであることを歓び、ヒトのままに征服王(人の王)に従い、広大な世界を走り抜けたのだろう。

 

 

 

 

 

 

……なんて、()しい。

 

 

 

 

 

同時に、羨ましくも思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

後はほぼ原作通りなので省略します。

最後のほうちょっと違うけどわざわざ書くほどではないかなと。

 

 

AUOはシキトリアさんのこと他の雑種どもとは違う、という認識。

これはこれで愉悦対象であることは事実ですが、それでも何か異なる、みたいな。

征服王も割と高く評価していますが、お節介勧誘が激しい。

無色透明、純粋無垢な亡霊みたいなもんだから仕方ない。

 

 

 

王道問答は難しいですね。

AUO始めとした濃厚なキャラクターたちは私の手では書ききれません。

何を喋らせても「何か違う」となるあたり難易度が高すぎる。

 

 

 

 

次回は未遠川大海魔決戦です。多分。

 

 

 

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