『君らは神に選ばれました!光栄に思えよ♪』
両手を広げた自称神は道化のように不気味に嗤った。
《次は○○、○○。お降りの方はお知らせください》
あぁ次だな。ベルに触れる前に誰かが押してくれたのかバスにピーンポーンと音がなった。
さて次と言ってもあと10分はある。暇を潰そうにも持ってる本は学校で読み終わったし、スマホをいじる気分でもない。どうしようか、と窓の外を眺める。
お、おい!前を見ろ!
突然車内に大声が響いた。声の主を見ると30代くらいのサラリーマンが震えながら前を指差していた。なんだなんだと前に視線を向けると、大型トラックが突っ込んでくるところだった。
グワッシャンッッッ ヴィーヴィーヴィーッ
凄まじい衝突音、私の意識は激痛と共に闇に消えていった。
そして目覚めると白い空間に三日月の笑みを浮かべる自称神。周りにはさっきまで一緒にバスに乗っていた乗客半数+運転手さん。指差していたサラリーマンはいなかった。
なんだか厄介なことになったと溜め息を吐く私だった。
「選ばれたってどういうことだ?」
『そうだねぇ、選ばれたと言うよりお詫びかなぁ。天使が凡ミスしやがってねぇ。あぁそれとぉ!―――神は敬えよ?』
私と
そして神の威圧、これは神じゃなくても人知を超えた存在なのは確かだ。私を含め、皆膝をついたり酷い人はうつ伏せの状態で倒れ伏している。
質問した男子は膝をつくだけで済んでいた。この差はなんなのだろう、精神力?
『うんうん、頭が高いと思ってたんだよ!君には足置きをしてもらおうかな』
私たちが形的には平伏しているのが興にのったらしく、男子生徒は跪いた状態で頭を踏みつけられた。
いやあの男子凄いわ、反発心丸出しの顔してる。まだまだ心が折れてない。ただその分、神がめっさ愉快そうだけどな。
『それでお詫びとして特典をあげよう!ランダムにこの箱から紙が出てきて君たちの前に飛ぶ。そこに書かれたお題の範囲で能力を決めてねぇ―――泣いて喜べよ♪』
神がどこからともなく箱を取り出した。あの中に特典を決める紙が入っているらしい。なるべく凡用性のあるやつがいいな。そして最後の台詞、ぶれねぇな神。
『さて皆の前に紙が行き届いたかな!んじゃそれに触れてくれたまえよ!』
目の前に浮かぶ白紙の紙に恐る恐る指先を近付ける。触れた瞬間、紙に【超能力】と浮かんだ。
『へぇ君は超能力か、結構な当たりだねぇ。それで決まったかい?』
うぅん超能力か、と考え込んでいたらいつの間にか神が横にいた。
「うおっ、あっはい。兵部京介の超能力と同じでお願いします」
驚いて乙女らしからぬ声が出たが、神は目を細めるだけでそれには言及しなかった。目はこいつ女じゃねえな的な雰囲気だったけど。
『ふむふむ、彼と同じだと暴走の危険があるからねぇ。アンディ・ヒノミヤの無効化もオマケでつけてあげよう』
まじか、オマケくれるタイプだったの神様。予想外の良心的な対応に一瞬呆然としてしまった。
『不服かなぁ?厳しめにしようかなぁ』
あっこの神様、心が読める系だ。三日月の笑みを歪ませた神を見て慌てる。
「いやいやいや!ありがとうございます!とても嬉しいデス!神様太っ腹!」
やんややんやと神を持ち上げてゴマをする。周りの人たちの胡乱な目が痛いけど、ここは来世のために我慢。
『ふーん、それじゃあ君はもう逝っていいよ』
その言葉と共に足元に真っ黒な大穴が開き、私は為す術もなくそこに落ちていった。
『おめぇらもさくさく決めてね♪』
やっぱ神のくそやろう!!!
「ひーちゃん、大丈夫!?」
顔面にボールがぶつかって、前世の記憶を思い出した。この思い出し方はあれか、最後のくそやろうに対する報復か。
堰をきったように流れ込んでくる穴だらけの前世の記憶と、目の前にいる原作ヒロインの面影がある女の子に混乱して視界が霞んでいく。薄れいく意識の中で思った―――――
「お茶子ちゃんじゃん」
まさかの漫画時空への転生に頭を抱えながら、私の意識は黒に落ちた。
神『温情?違うよぉ!ただその方が長持ちするからさ♪』
この神は享楽主義です。いちいち玩具を集めるのが面倒臭いので、長持ちするように能力は与えます。ただ喜劇も悲劇も嗤って傍観しているだけ。